今回の記事では、初心者マークや高齢者マークとはどんな物なのか、表示しないとどんな罰則があるのか、詳しくみていこう。
目次
初心者マークとは
1年間は初心者マークを表示する義務がある
初心者マークは向かって左側が黄色、右側が緑色の葉っぱの形をしたマークです。
若葉マークなどと呼ばれることもありますが、正式名称は、初心運転者標識といいます。
なお、ここでは初心者マークで統一いたします。
普通自動車の運転免許を取得してから1年間、自動車の運転者は、初心者マークを自動車に付けて運転しなければなりません。
初心者マークを表示して運転しなければならない義務は、道路交通法71条の5に定められています。
なお、この1年間は、免許を受けていた期間となりますので、仮に、普通自動車の運転免許を受けてすぐに免許停止の行政処分を受けた場合などは、免許停止の期間は除くこととなります。
また、あくまで運転免許を受けている期間なので、免許を受けていれば、実際に運転したことがあるか否かとは関係はありません(ペーパードライバーでも、運転免許を受けてから1年間が経過すれば、初心者マークを表示する義務はなくなります。)。
初心者マークの表示位置
初心者マークを表示する位置等についても、決まりがあります。
道路交通法施行規則9条の6は、初心者マークの表示位置等について、「地上0.4メートル以上1.2メートル以下の位置に前方又は後方から見やすいように表示するものとする。」と定めています。
初心者マークの表示位置は、前方と後方の2か所、そして、高さが決まっており、他の運転者等から見やすいように付けなければなりません。
ただし、初心者マークをフロントガラスに貼り付けてはいけません。
フロントガラスに貼り付けても良い物は、道路運送車両の保安基準29条に定められており、その中には、初心者マークは入っていません。
フロントガラスに貼り付けることができるのは、車検を通った後に交付される検査標章や自賠責などの保険標章などといった物に限られます。
なお、初心者マークをリアガラスに貼り付けてはいけないといった規定はありませんが、運転者が後方を確認するのに支障のある位置に貼り付けるのは避けた方が良いでしょう。
実際に初心者マークを貼り付ける場所は、前方のボンネットの見やすい位置や後方のリアバンパー、トランクの辺りとなるかと思います。
初心者マークを表示しなかった場合の罰則
初心者マークを表示しない場合、道路交通法違反となり、次の罰則があります。
【反則金】
- 大型車(準中型のみ)6,000円
- 普通車4,000円
【行政処分点数】
- 1点
ちなみに、免許を受けて1年経過した後に初心者マークを付けていたとしても、罰則はありません。
ただし、後述の初心運転者等保護義務の対象とはなりません。
高齢者マークとは
どちらのマークでも、高齢者マークの表示は努力義務となっているため、表示しなくても罰則はないんだよ。
高齢者マークを表示する義務がある人とは
高齢者マークには2種類あります。
1つ目が向かって左側がオレンジ色、右側が黄色のもみじの形をしたマークです。
もみじマークなどと呼ばれることもあります。
もう1つがオレンジ色、黄色、緑色及び黄緑色の四色を組み合わせた真ん中にSの文字が入っている四つ葉の形をしたマークで、四つ葉マークなどと呼ばれることもあります。
もみじマークは2011年まで使用されていたもので、四つ葉マークは2011年から使用され始めたものです。
いずれも、現在でも使用することができ、正式名称は、高齢運転者標識といいます。
なお、ここでは高齢者マークで統一します。
70歳以上の運転者で加齢に伴って生じる身体機能の低下が自動車の運転に影響を及ぼす恐れがあるときには、高齢者マークを表示する努力義務があります。
表示の努力義務は、必ずしなければならないわけではありませんが、表示するように努めるという義務のことを指します。
この義務は、初心者マークと同様、道路交通法71条の5に定められています。
なお、道路交通法71条の5第3項には、75歳以上の運転者に対する高齢者マークの表示義務が定められています。
しかしながら、道路交通法附則22条で、高齢者マークの表示義務の条項は当分の間は適用しないと定められているため、現時点(令和6年9月)では、高齢者マークの表示義務はありません。
高齢者マークの表示位置
高齢者マークの表示位置等については、初心者マークの表示位置等と同じです。
初心者マークと同様、道路交通法施行規則9条の6に定められています。
前方と後方の2か所、地上0.4メートルから1.2メートルの間の高さに、他の運転者等から見やすいように付けるよう定められています。
高齢者マークを表示しなかった場合の罰則
上記のとおり、現時点(令和6年9月)では、高齢者マークを表示しなければならない義務は定められていません。
あくまで高齢者マークの表示は、努力義務に留まるため、70歳以上の運転者が高齢者マークを付けなかったとしても、罰則はありません。
マークを付けるメリット
事故のリスクを減らすことができる可能性がある
初心者マークや高齢者マークが自動車に付けられていると、周囲の運転者も、初心者や高齢者が運転していると認識します。
そうすると、周囲の運転者も、危険な運転や無理な運転をしない可能性が高まり、事故のリスクを減らすことができると考えられます。
運転者の自覚
これも、事故のリスクを減らすことができる要素の一つだと思われますが、初心者マークや高齢者マークを自動車に付ける、あるいは、付けているということで、運転者自身が、注意力を高めたり、自分の運転技術を自覚するという効果があると思われます。
運転者としても、無理な運転や危険な運転をしないという自覚の下で運転するため、事故のリスクを減らすことができると考えられます。
周囲の運転者は配慮が必要
これらの車と事故を起こしてしまうと、罰則を受ける事になるよ。
道路交通法71第5号の4は、運転者が、初心者マークを表示すべき義務を負っている運転者や高齢者マークの表示の努力義務を負っている運転者に対して、配慮をすべき義務を負っている旨定めています。
これを初心運転者等保護義務といいます。
具体的には、危険防止のためにやむを得ない場合でないにもかかわらず、幅寄せや進路変更をすることを禁止しています。
なお、既に述べましたが、運転免許を受けて1年以上経過した運転者が自動車に初心者マークを付けている場合、周囲の運転者は、当該初心者マークを付けている運転者に対して初心運転者等保護義務を負うわけではありません。
初心運転者等保護義務に違反した場合は、次の罰則があります。
【反則金】
- 大型車・中型車7,000円
- 普通車・二輪車6,000円
- 小型特殊車5,000円
【行政処分点数】
- 1点
阿部栄一郎
早稲田大学法学部、千葉大学大学院専門法務研究科(法科大学院)卒業。2006年司法試験合格、2007年東京弁護士会登録。
交通事故、不動産、離婚、相続など幅広い案件を担当するほか、顧問弁護士として企業法務も手がける。ソフトな人当たりと、的確なアドバイスで依頼者からの信頼も厚い。交通事故では、被害者加害者双方の案件の担当経験を持つ。(所属事務所プロフィールページ)
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故の加害者・被害者には、誰でもなり得るものです。しかしながら、誰もが適切に交通事故の示談交渉をできるわけではありません。一般の人は、主婦が休業損害を貰えることや適切な慰謝料額の算定方法が分からないかもしれません。ましてや、紛争処理センターや訴訟の対応などは経験のない人の方が多いと思います。保険会社との対応が精神的に辛いとおっしゃる方もいます。
不足している知識の補充、加害者側との対応や訴訟等の対応で頼りになるのが弁護士です。相談でもいいですし、ちょっとした疑問の解消のためでもいいです。事務対応や精神的負担の軽減のためでもいいですので、交通事故に遭ったら、一度、弁護士にご相談されることをお勧めします。