今回の記事では信号がついていない交差点での事故の過失割合や交通ルールについて、詳しく見ていこう。
信号無灯火での交通ルール
災害や停電等で信号が灯火していない交差点では、信号による交通整理がされていない交差点と同じルールで通行することになります。
信号による交通整理がされていない交差点での主なルールは次のとおりです。
- 交差する道路が同程度の幅員の場合には、左方優先となります。
つまり、運転手から見て、左側から走行してくる車両が優先します。 - 優先道路の場合には、優先道路を走行している車両が優先します。
優先道路であるか否かを確認する方法は、優先道路の標識がある場合はその道路が優先道路です。
また、交差点内でも中央線や車両通行帯を連続して設けている道路がある場合はその道路が優先道路です。 - 交差する道路の幅員が明らかに異なる場合、明らかに広い道路(広路)が優先します。
そして、明らかに広い道路を走行している車両が優先します。
上記のとおり、優先関係等はあるものの、信号が灯火していない交差点は非常に危険です。
信号が灯火していない場合、車両は交差点の手前で一度停止し、前後左右をよく確認したうえで進行するのが良いでしょう。
また、信号が灯火していない交差点において、警察官が手信号で交通整理をしている場合は、警察官の手信号に従います。
警察官の手信号は、法律上、信号が灯火しているのと同等の効果があります。
警察官の手信号は次のようなものがあります。
- 警察官が腕を横に水平に広げている場合
警察官の左右は青信号、警察官の正面と背面は赤信号
- 警察官が腕を垂直に上げている場合
警察官の左右は黄信号、警察官の正面と背面は赤信号
- 警察官が灯火を横に振っている場合
警察官の左右は青信号、警察官の正面と背面は赤信号
- 警察官が灯火を頭上に上げている場合
警察官の左右は黄信号、警察官の正面と背面は赤信号
実際の現場では、警察官の動きや誘導等でどのように進行していけば良いか判断できると思われます。
信号無灯火の交差点での事故は自治体などに管理責任を問えるのか
信号は、都道府県の公安委員会が設置、管理しています。
この設置・管理に問題があった場合、自治体に責任を問うことができるのでしょうか。
また、信号は電気で灯火していますので、電力会社の電力供給に問題があった場合、電力会社に責任を問うことができるのでしょうか。
昭和57年の古い裁判例ですが、停電によって信号が灯火していない交差点において発生した事故について、県と電力会社の責任を認めたものがあります。
この裁判例では、停電の原因が電力会社にあったこと、国道と県道が交差する主要な道路における交差点であったこと、湾曲部を抜けて加速しがちな部分にあった交差点であったことなどの事実を認定しました。
そして、その状況から、県と電力会社に対して、代替措置(携帯発電機などで電気を送る等)を採る義務があったにもかかわらず、その義務を果たさなかったということで交通事故の損害賠償責任(県については国家賠償責任)を認めました。
なお、法律上の責任は認められたものの、原告の損害自体は補填されていると判断され、結果として、請求は棄却(原告の敗訴)されました。
上記裁判例は存在するものの、信号が灯火していない交差点で交通事故が発生した場合でも、自治体や電力会社が責任を負うことはほとんどないといえるでしょう。
上記裁判例では、電力会社が原因で停電が発生していましたが、停電の原因の多くは自然災害です。
自然災害によって電力を送ることができなかった場合において、自治体や電力会社の責任を問うことは難しいでしょう。
また、上記裁判例のように電力会社の都合、つまり、事前に停電が分かっている場合(近年では、計画停電等が考えられます。)、携帯発電機での対応や警察官の手信号による交通整理が行われる(代替措置)と考えられます。
信号無灯火の交差点での交通事故の過失割合
道幅が同じ場合には、左方優先となるんだよ。
上記のとおり、信号無灯火の場合は、信号で交通整理が行われていない交差点と同様の扱いとなります。
交差する道路が同程度の幅員の場合には、左方優先となるため、交差点で接触事故等が発生した場合、基本的な過失割合は、左方から走行していた車両40、交差道路を走行していた車両60となります。
交差する道路の一方が明らかに広い(広路。交差する道路を狭路とします。)場合には、広路を走行している車両が優先となるため、交差点で接触事故等が発生した場合、基本的な過失割合は、広路を走行していた車両30、狭路を走行していた車両70となります。
信号無灯火の交差点で起きた事故の過失割合の修正要素
信号無灯火の交差点で起きた事故であろうと、信号が灯火している交差点で起きた事故であろうと、過失割合の修正要素は変わりません。
例えば、わき見運転をしているなど著しい前方不注視、15km/hから30km/hの速度超過、酒気帯び運転などは、過失割合の修正要素となります。
事故によりケースバイケースですが、5%から20%程度、過失割合が修正される可能性があります。

阿部栄一郎
早稲田大学法学部、千葉大学大学院専門法務研究科(法科大学院)卒業。2006年司法試験合格、2007年東京弁護士会登録。
交通事故、不動産、離婚、相続など幅広い案件を担当するほか、顧問弁護士として企業法務も手がける。ソフトな人当たりと、的確なアドバイスで依頼者からの信頼も厚い。交通事故では、被害者加害者双方の案件の担当経験を持つ。(所属事務所プロフィールページ)
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故の加害者・被害者には、誰でもなり得るものです。しかしながら、誰もが適切に交通事故の示談交渉をできるわけではありません。一般の人は、主婦が休業損害を貰えることや適切な慰謝料額の算定方法が分からないかもしれません。ましてや、紛争処理センターや訴訟の対応などは経験のない人の方が多いと思います。保険会社との対応が精神的に辛いとおっしゃる方もいます。
不足している知識の補充、加害者側との対応や訴訟等の対応で頼りになるのが弁護士です。相談でもいいですし、ちょっとした疑問の解消のためでもいいです。事務対応や精神的負担の軽減のためでもいいですので、交通事故に遭ったら、一度、弁護士にご相談されることをお勧めします。