未成年による事故は、誰に賠償請求すれば良いの??
今回の記事では、未成年と事故を起こしてしまった場合の賠償金請求先や、未成年との事故による注意点について、詳しくみていこう。
交通事故は、日々起こっています。
ですので、未成年者の子供が乗っている自転車が加害者となることもあるかと思います。
未成年者が加害者になる場合、被害者としては、きちんと損害賠償請求してもらえるのか、非常に気になるところです。
今回は、その点について、述べていきたいと思います。
未成年者への損害賠償請求は可能か
12歳未満の未成年者への損害賠償請求は難しい
まず、最初に思い浮かべるのは、加害者本人である未成年者への請求だと思います。
しかしながら、加害者であるからといって、直ちに損害賠償請求ができるわけではありません。
民法712条は、損害賠償請求を受けるためには、加害者に責任能力が必要である旨定めています。
では、この責任能力は、どの程度の年齢になれば、備わっているといえるのでしょうか。
個々人の能力や状況、加害行為によっても異なると思われ、多少曖昧なところはあるものの、概ね、12歳程度であれば、責任能力があると判断されることが多いと思われます。
そうなると、あくまで一つの基準ですが、加害者が12歳以上の場合には、未成年者に対して損害賠償請求することが可能となります。
逆に、12歳未満の場合には、未成年者に対して損害賠償請求をすることができないということになります。
加害者である未成年者に責任能力がない場合はどうすれば良いか
加害者が12歳未満で、責任能力がないと判断された場合、被害者は、誰に対して、損害賠償請求すれば良いのでしょうか。
民法714条は、責任能力がない者の責任については、責任能力のない者を監督する法律上の義務を負う者が責任を負う旨定めています。
12歳未満の未成年者の法定代理人は、多くの場合、親権者である両親となるかと思いますので、加害者が12歳未満の未成年者で、責任能力がない場合、被害者は、親権者である両親に対して、損害賠償請求をすることとなります。
責任能力がある未成年者でも支払能力がない場合にはどうすれば良いか
12歳以上の未成年者に対しては、損害賠償請求をすることができます。
ただし、未成年者は、被害者の損害を賠償する能力がない(支払能力がない)ことが多いと思われます。
そのような場合、どうすれば良いのでしょうか。
12歳以上の未成年者であったとしても、両親などの親権者の親権に服していることが多いと思われます。
そのような場合、親権者である両親が、加害者である未成年者の法定代理人として対応し、事実上、損害賠償をしてくれることが多いと思われます。
実務上も、未成年者が加害者である場合、責任能力の有無にかかわらず、親権者である両親に対して、損害賠償請求をすることが多いと思われます。
なお、親権者である両親の法的な立場でいえば、責任能力のない未成年者の場合には、親権者である両親自身の責任となり、責任能力のある未成年者の場合には、未成年者の法定代理人である親権者として対応する(責任自体は、未成年者が負っている。)ということになります。
両親が責任能力のある未成年者の損害賠償請求に応じない場合
責任能力がある未成年者の場合、親権者である両親は、未成年者の代理人として対応する義務が生じるに過ぎません。
あくまで、未成年者が損害賠償義務を負っているので、親権者である両親は、自分の資産で損害賠償をする義務はありません。
その場合、被害者としては、加害者である未成年者の両親が一般的な不法行為責任を定める709条の要件を満たしていることを立証できないと、両親に対して、損害賠償請求をすることができません。
具体的には、両親が、未成年者がしてしまった行為に関して監督義務があること、そして、当該監督義務違反と損害との間に因果関係があることが必要となります。
なかなかハードルが高く、全ての事案で、必ず、両親の責任が認められるとはいえないと思われます。
自転車に乗る未成年者とぶつかってしまったときの対応
事故後には、お互いの連絡先を交換して、証拠となる物を撮影したり、目撃者の連絡先を聞いておこう。
警察と救急車を呼ぶ
加害者が未成年者であっても、通常の交通事故と同様、警察と救急車を呼びましょう。
仮に、交通事故直後の怪我が軽微であるとしても、少し時間が経ったら、症状が出てくるかもしれません。
きちんと、通院をしておくことによって、交通事故と怪我との間の因果関係を明確にすることができます。
また、警察に連絡することによって、後々、交通事故証明書を取得することができます。
交通事故証明書は、いつ、どこで、誰と誰との間で、どのような交通事故が発生したか(類型)ということ記載されており、交通事故の存在に関する有力な証拠となります。
交通事故直後に警察を呼ばなかった場合
交通事故直後に警察を呼ばなかった場合、後になって、警察に届け出ることによって、交通事故の受付をしてもらうことが出来る場合もあります。
ただ、交通事故発生から時間が経過してしまうと、警察としても、本当に交通事故が発生したのか否か、当事者は合っているのかといった点を確認することができません。
やはり、交通事故直後に、警察を呼んだ方が良いでしょう。
連絡先等の交換・事故の証明となる物を残しておく
加害者が未成年者であったとしても、加害者の連絡先を確認しておく方が良いでしょう。
加害者を通じて、親権者である両親に連絡を取ることができる可能性が高まります。
また、これは、交通事故一般にいえることですが、交通事故直後に、可能であれば、事故の状況の分かる写真等を撮影しておく方が良いと思います。
写真等を撮影しておけば、事故状況を客観的に残すことができ、交通事故の発生状況等を知る手がかりとなります。
仮に、目撃者がいる場合には、目撃者の連絡先も聞いておく方が良いでしょう。
ただし、目撃者といっても、どの時点の状況を見たのかによって、その重要性が変わります。
最も重要な目撃者は、事故の直前から事故の瞬間、そして、事故直後までを見た目撃者です。
そのような目撃者は、事故態様をきちんと確認しており、当事者の過失割合を定めるに当たって、非常に重要となります。
それに対し、事故直後に駆けつけて、怪我を負っている状況を確認したのみの目撃者は、事故の瞬間を見ていないため、当事者の過失割合を定めるに当たっては、それほど重要な情報を持っていないことが多いです。
未成年者の自転車とぶつかってしまった場合の注意点
適正な過失割合にならない、賠償金を支払わないなど、様々なトラブルが発生しがちだから注意が必要だよ。
未成年者は保険未加入の可能性がある
未成年者が自ら損害保険に加入している可能性は低いです。
しかしながら、両親が、個人賠償責任保険に入っていたり、学校側で用意された損害保険に加入している可能性があります。
その場合は、交通事故に使用できる保険の保障内容であるかを確認した方が良いでしょう。
なお、多くの場合、個人賠償責任保険は、自転車による加害行為を保障の対象としています。
適正な過失割合が定まらない可能性がある
保険に加入していない場合、保険会社や保険会社の担当者は、示談交渉に一切関与しません。
その場合、客観的な過失割合を定められない可能性がより高まります。
また、双方が悪くないなどと主張し合ってしまい、過失割合を定められないということがあり得ます。
被害者からすると、適正な過失割合が定まらないと、きちんと賠償してもらえないということにつながってしまうため、不利益を被る可能性があります。
親権者である両親への請求
上記でも述べましたが、未成年者が加害者である場合、責任能力の有無にかかわらず、結局のところ、親権者である両親に対して、損害賠償請求をすることが多いです。
加害者である未成年者が保険に加入していない場合、親権者である両親との間で、直接の交渉をする必要があります。
親権者である両親との間で、示談の内容が確定したら、最低限、示談書の形で残しておく必要があります。
可能であれば、強制執行が可能となる公正証書にしておくのがより良いと思います。
弁護士への相談
加害者が未成年者である場合、上記でも述べたとおり、様々な問題が生じる可能性があります。
特に、保険に加入していない場合などには、過失割合を含めた示談交渉が難航する可能性があります。
適正な過失割合に基づいて、適正に損害賠償をしてもらうということを考えれば、弁護士に相談する、弁護士に委任するということは、非常に重要なことでしょう。
弁護士に委任すれば、被害者の代わりに、示談交渉や損害賠償請求をしてくれますので、被害者にとっては、加害者と直接話し合わなくてよくなり(精神的な負担の軽減)、また、賠償金も適正な金額に近づくものと考えられます。
阿部栄一郎
早稲田大学法学部、千葉大学大学院専門法務研究科(法科大学院)卒業。2006年司法試験合格、2007年東京弁護士会登録。
交通事故、不動産、離婚、相続など幅広い案件を担当するほか、顧問弁護士として企業法務も手がける。ソフトな人当たりと、的確なアドバイスで依頼者からの信頼も厚い。交通事故では、被害者加害者双方の案件の担当経験を持つ。(所属事務所プロフィールページ)
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故の加害者・被害者には、誰でもなり得るものです。しかしながら、誰もが適切に交通事故の示談交渉をできるわけではありません。一般の人は、主婦が休業損害を貰えることや適切な慰謝料額の算定方法が分からないかもしれません。ましてや、紛争処理センターや訴訟の対応などは経験のない人の方が多いと思います。保険会社との対応が精神的に辛いとおっしゃる方もいます。
不足している知識の補充、加害者側との対応や訴訟等の対応で頼りになるのが弁護士です。相談でもいいですし、ちょっとした疑問の解消のためでもいいです。事務対応や精神的負担の軽減のためでもいいですので、交通事故に遭ったら、一度、弁護士にご相談されることをお勧めします。