目次
センターラインの種類
センターラインの色によって過失割合は大きく変わってくるんだよ。
今回の記事では、センターラインの色によって異なる過失割合について、詳しく見ていこう。
まずは、センターラインの種類をチェックしていくよ!
道路を走っていると、道路の中央に引かれている線を見かけます。
センターラインの種類と意味について、皆さんは、把握しているでしょうか。
センターラインの種類は、主に4つあり、それぞれ意味が異なります。
では、紹介していきます。
白色の破線
最初は、白色の破線のセンターラインです。
白色の破線のセンターラインは、幅員6メートル未満の道路に引かれているもので、このセンターラインは、右側にはみ出すことや追い越しをすることが可能です。
白色の実線
次は、白色の実線のセンターラインです。
白色の実線のセンターラインは、幅員6メートルを超える、大きな道路に引かれているもので、このセンターラインは、右側にはみ出すことが禁止されています。
ただし、センターラインをはみ出さなければ、追い越しは可能です。
つまり、物理的に、センターラインからはみ出さずとも、追い越しが可能となる幅員があるので、道路内であれば、追い越しが可能ということになっています。
黄色の実線
続いて、黄色の実線のセンターラインです。
黄色の実線のセンターラインも、白色の破線と同様、幅員6メートル未満の道路に引かれているもので、このセンターラインは、右側にはみ出すことや追い越しをすることが禁止されています。
ただし、工事や駐車車両等によって車線がふさがっているような場合には、例外的に、センターラインを右側にはみ出して通行することができます。
白色の破線と黄色の実線の組み合わせ
最後に、白色の破線と黄色の実線の組み合わせのセンターラインです。
白色の破線と黄色の実線が組み合わさったセンターラインは、車両がどちらにいるかによって異なってきます。
自分の近くにあるセンターラインが白色の破線の場合には、センターラインから右側にはみ出すことができます。
それに対し、自分の近くにあるセンターラインが黄色の実線の場合には、センターラインから右側にはみ出すことは禁止されています。
白色の破線と黄色の実線をそのまま組み合わせたような感じとなります。
車線境界線
上記では、センターラインの紹介をしましたが、同一方向に走る車線の間に引かれている線を車線境界線といいます。
これは、複数の車線を区切るための線です。
こちらの方も紹介いたします。
白色の破線
最初は、白色の破線の車線境界線です。
比較的よく見かけるもので、特に車線変更禁止や追越禁止等の規制はありません。
白色の実線
次は、白色の実線の車線境界線です。
センターラインが白色の実線の場合には、右側へのはみ出しが禁止となっていましたが、車線境界線の場合は、どうでしょうか。
車線境界線が白色の実線の場合は、特に車線変更禁止や追越禁止等の規制はありません。
つまり、白色の破線の場合と同様になります。
この点は大きな違いですので、覚えておいてください。
黄色の実線
続いて、黄色の実線の車線境界線です。
黄色の実線の車線境界線は、右側へのはみ出しが禁止されています。
つまり、車線変更も追い越しも禁止されています。
白色の線と黄色の実線の組み合わせ
最後に、白色の線(車線変更線の場合、破線も実線も意味は同じです。)と黄色の実線の組み合わせの車線境界線です。
自身が左側の車線を走行している場合には、左の車線境界線に、右側の車線を走行している場合には右側の車線境界線に従うこととなります。
例えば、左側に白い線、右側に黄色い線が車線境界線として引かれている場合、左側の車線から右側の車線への車線変更等は可能ですが、右側の車線から左側の車線への車線変更等は禁止されています。
イメージとしては、一方通行になっているという感じです。
黄色の実線(車線境界線)の車線変更で事故が起きた場合の過失割合
ここでは、同一方向に進行している車両同士の事故を想定しています。
最初に、車線変更が禁止されていない場合における過失割合を見ておきましょう。
この場合の過失割合は、いわゆる『赤い本』では、車線変更をした車両の過失が70%、車線変更をしていない車両の過失が30%となっています。
道路交通法上、車両はみだりに進路変更(車線変更も進路変更の一種です。)をしてはならないと定められているため、車線変更をした車両の過失の方が大きくなっています。
次に、車線変更が禁止されている場合にはどうでしょうか。
いわゆる『赤い本』には、車線変更禁止場所で車線変更して事故を起こした場合について、過失割合として20%修正する旨記載されています。
つまり、この場合、車線変更をした車両の過失が90%、車線変更をしていない車両の過失が10%ということになります。
このように、車線境界線の色が白色か黄色によって(車線変更禁止か否かによって)、過失割合が変わる可能性があります。
ただし、いわゆる『赤い本』は、過失割合の基本的な考え方を示したもので、事情によって異なる場合がありますので、注意してください。
対向車がセンターラインをはみ出して正面衝突した場合の過失割合
では、対向車がセンターラインをはみ出して正面衝突した場合の過失割合はどうでしょうか。
センターラインオーバーの事故は、センターラインオーバーをした車両の全面的な過失(100%)というのが原則です。
道路の左側を走行するというのは、道路交通法に定められている、最も基本的な原則の一つですから、これに違反するのは、非常に大きな過失といえるでしょう。
ただし、センターラインオーバーをしていない車両に、前方不注視や速度超過といった過失がある場合には、センターラインオーバーをしていない車両にも過失が認められることがあります。
なお、過失割合が100%を超えることはありませんが、追越禁止場所において追い越しをして、センターラインオーバーの事故を起こした場合には、センターラインオーバーをした車両の過失が加算される要素となります。
また、センターラインオーバーの事故といえども、様々な事情がある場合には、センターラインオーバーをした車両の運転者の過失が100%になるとは限りません。
例えば、
- 一方通行や道路左側部分の幅員が車両の通行のために十分ではないとき
- 道路の損壊・道路工事等の障害のために道路左側部分の通行ができないとき
- 左側部分の幅員が6メートル未満の道路において他車を追い越すとき
- 勾配の急な道路の曲がり角付近について道路標識等により通行方法が指定されているとき
等(道路交通法17条5項)については、双方の速度や道路状況等の具体的な事情に基づいて個別的に検討を要する場合があります。
このようにセンターラインオーバーの事故といっても、一概に、センターラインオーバーをした車両が100%悪いと言い切ることはできません。
また、センターラインが白色の実線(右側へのはみ出し禁止)や黄色の実線(原則として右側へのはみ出し禁止)の場合には、センターラインオーバーをした車両に不利に考慮(過失が加算)されます。
センターラインをはみ出した車両を避けて事故が起きてしまった場合
そんな時には早めに弁護士に相談しよう。
センターラインをはみ出してきた車両を避けたことによって事故が発生した場合、どのように考えるべきでしょうか。
典型的な例として考えられるのは、センターラインオーバーをしてきた車両を避けようとして大きく左側にハンドルを切り、それによって、運転していたバイクが転倒する、ガードレール等に接触するといった場合でしょう。
このような場合、非接触事故・誘因事故などと呼ばれることがあります。
つまり、ある一方の車両の走行が引き金となって、車両同士は接触していないものの、事故が起きたといった意味で使われます。
バイク等の転倒事故などで、比較的よく問題となります。
非接触事故・誘因事故の場合
- 実際の車両の走行の危険性(事故との因果関係)
- 回避行動の適切性(過剰な回避行動となっていないか)
などを検討し、過失割合を算出します。
比較的、近い事故類型の過失割合から考えて修正することもあれば、状況によって修正しないということもあり得ます。
上記の典型的な例でいえば、一方の車両がセンターラインオーバーをしてきている事実があり、他方の車両の運転者がハンドルを左に切らなければ車両同士が接触して事故になっていた、そして、ハンドルを左に切ることが過剰な回避行動ではなかったといった事実が認められれば、通常のセンターラインオーバーの事案と同じように扱われる可能性が高いと考えられます。
つまり、センターラインオーバーをした車両の過失が100%とされる可能性が高いというわけです。
しかしながら、実際、非接触事故・誘因事故の場合、接触していないがために、事故状況がよくわからないといった事態が起きます。
最悪、バイクが単独で転倒したなどといった評価を受けてしまう可能性もあり得ます。
そのような場合に備えて、事故発生直前の状況が分かるように、ドライブレコーダーを利用したり、目撃者を見つけたりしておき、それを基に、きちんと事故状況を立証できるようにしておくのが良いでしょう。
そのうえで、弁護士に相談しておくのが良いと考えられます。
阿部栄一郎
早稲田大学法学部、千葉大学大学院専門法務研究科(法科大学院)卒業。2006年司法試験合格、2007年東京弁護士会登録。
交通事故、不動産、離婚、相続など幅広い案件を担当するほか、顧問弁護士として企業法務も手がける。ソフトな人当たりと、的確なアドバイスで依頼者からの信頼も厚い。交通事故では、被害者加害者双方の案件の担当経験を持つ。(所属事務所プロフィールページ)
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故の加害者・被害者には、誰でもなり得るものです。しかしながら、誰もが適切に交通事故の示談交渉をできるわけではありません。一般の人は、主婦が休業損害を貰えることや適切な慰謝料額の算定方法が分からないかもしれません。ましてや、紛争処理センターや訴訟の対応などは経験のない人の方が多いと思います。保険会社との対応が精神的に辛いとおっしゃる方もいます。
不足している知識の補充、加害者側との対応や訴訟等の対応で頼りになるのが弁護士です。相談でもいいですし、ちょっとした疑問の解消のためでもいいです。事務対応や精神的負担の軽減のためでもいいですので、交通事故に遭ったら、一度、弁護士にご相談されることをお勧めします。