今回の記事では、初心者マークや、シルバーマークをつけている車と事故を起こしてしまった場合の過失割合や、慰謝料について、詳しく見ていこう。
目次
初心者マーク、シルバーマークとは
初心者マーク
初心者マーク、若葉マークと呼ばれる物は、正式には、初心運転者標章といいます。
道路交通法第71条の5第1項により、普通免許を取得して1年未満の運転者などが自動車を運転する際に、自動車に貼り付けることが義務付けられています。
なお、初心者マークは、他人の自動車であろうと、レンタカーであろうと、普通免許を取得して1年未満の場合には、自動車に貼り付ける義務があります。
また、普通免許を取得して1年以内に免許停止となった場合、当該免許停止期間は普通免許を保有している期間となりません。
ですので、仮に、免許停止期間がある場合には、免許停止期間を除いて1年間、初心者マークを自動車に貼り付ける必要があります。
シルバーマーク
シルバーマーク、もみじマークと呼ばれる物は、正式には、高齢運転者標章といいます。
なお、2011年までは、現在のシルバーマークとはデザインが異なる物が用いられていました。
道路交通法第71条の5第3項及び第4項により、70歳以上の者が自動車を運転する際に、自動車に貼り付けることが義務付けられています。
ただし、正確には、70歳以上75歳未満の者については、「加齢に伴って生ずる身体の機能の低下が自動車の運転に影響を及ぼすおそれがあるとき」に、高齢運転者標章を自動車に貼り付ける義務があります。
なお、シルバーマークも、初心者マーク同様、他人の自動車であろうと、レンタカーであろうと、70歳以上の場合には、自動車に貼り付ける義務があります。
初心者マークやシルバーマークには、どのような効果があるのか
初心者マークやシルバーマークは、道路交通法上、単に貼り付けることを義務付けられているだけではありません。
他の運転者は、初心者マークやシルバーマークを貼り付けている自動車に対して、走行の邪魔をしてはいけないといったことが道路交通法に定められています。
具体的には、道路交通法第71条の5の4が、初心者マークや高齢者マークを貼り付けている自動車の運転者(もちろん、初心者マークや高齢者マークの要件を満たすことが前提です。)に対して、危険の防止のためにやむを得ない場合を除いて、幅寄せをしてはならないことや進路変更(割り込み等)をして走行の邪魔をしてはならないことを規定しています。
初心者マーク、シルバーマークと過失割合の関係
初心者マーク、シルバーマークによって過失割合が変動するケース
上記でも述べたとおり、道路交通法上、運転者は、初心者マークや高齢者マークを貼り付けている自動車に対して、幅寄せや進路変更(割り込み等)をして走行の邪魔をしてはいけないことが定められています。
ですので、初心者マークや高齢者マークを貼り付けている自動車に対する幅寄せや進路変更をきっかけとして交通事故が発生した場合、初心者マークや高齢者マークを貼り付けていない自動車の運転者には、基本的に過失割合に10%の過失が加算されるものと考えられています。
つまり、初心者マークや高齢者マークを貼り付ける義務のある運転者は、幅寄せや進路変更をきっかけとした交通事故の場合において、道路交通法上、保護される対象となっているために、過失割合が修正されることとなります。
過失割合が加算されないケースは
道路交通法第71条の5の4が想定している場面以外の場面における交通事故においては、一般的に、初心者マークや高齢者マークを自動車に貼り付けていること(もちろん、初心者マークや高齢者マークの要件を満たすことが前提です。)によって、過失割合が影響を受けるということはありません。
自動車の運転者は、初心者であるから、高齢者であるからといって、特別な保護の対象となるわけではありません。
特に、近年、認知能力や判断能力の低下した高齢者が重大な結果を伴う交通事故を引き起こしていることが社会問題となっています。
このような高齢者は、自動車を運転せず、免許証を返納するという選択肢もあるのですから、高齢者の運転者が全般的に保護されるという結論を導くことはできないと考えられます。
なお、これに対し、高齢者の歩行者は、保護の対象となります。
高齢者としては、自動車の運転を避けることはできても、歩行をすること自体は避けることがでませんし、歩行者としては、その身体的な能力の低下は、保護の対象となると考えられます。
過失割合によって慰謝料はどう変わるのか
過失割合は、交通事故によって生じた損害の負担割合を意味します。
つまり、自分の過失割合が大きければ大きいほど、被った損害に対する負担額は大きくなりますし、自分の過失割合が小さければ小さいほど、被った損害に対する負担額は小さくなります。
例えば、交通事故によって、頸椎捻挫となって6か月通院した場合の通院慰謝料の目安は89万円となりますが、自分の過失割合が10%の場合は通院慰謝料が80万1000円になりますし、自分の過失割合が30%の場合は通院慰謝料が62万3000円となります。
なお、過失割合は、相手方の損害の負担割合という意味もありますので、過失割合が大きければ大きいほど、相手方の損害のうち、自分が負担する額も増えるということになります。
過失割合に納得できない場合には
過去の裁判例をチェックする
交通事故に関しては、過去の膨大な数の裁判例があります。
保険会社から、又は、加害者から提示された過失割合に納得できない場合には、過去の裁判例をチェックして、適正な過失割合を検討するというのが良いと思われます。
そして、そのうえで、保険会社と交渉するのが良いと考えられます。
弁護士に相談する
過去の裁判例をチェックするといっても、慣れていない方からすれば、大変でしょう。
また、実際に、自分にとって有利な裁判例を見つけたとしても、本当に当該裁判例が自分の交通事故に沿ったものであるかといったことの検討も難しいかもしれません。
そのような場合には、一度、弁護士に相談して、適正な過失割合を確認してみるのも良いと思います。
そして、信頼できる弁護士がいたら、その弁護士に交通事故の紛争解決を委任するというのも良いかもしれません。
自分で、交通事故の紛争解決をする場合、時間や労力その他の負担がありますが、弁護士に依頼すれば、そういった負担を軽減することができます。
阿部栄一郎
早稲田大学法学部、千葉大学大学院専門法務研究科(法科大学院)卒業。2006年司法試験合格、2007年東京弁護士会登録。
交通事故、不動産、離婚、相続など幅広い案件を担当するほか、顧問弁護士として企業法務も手がける。ソフトな人当たりと、的確なアドバイスで依頼者からの信頼も厚い。交通事故では、被害者加害者双方の案件の担当経験を持つ。(所属事務所プロフィールページ)
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故の加害者・被害者には、誰でもなり得るものです。しかしながら、誰もが適切に交通事故の示談交渉をできるわけではありません。一般の人は、主婦が休業損害を貰えることや適切な慰謝料額の算定方法が分からないかもしれません。ましてや、紛争処理センターや訴訟の対応などは経験のない人の方が多いと思います。保険会社との対応が精神的に辛いとおっしゃる方もいます。
不足している知識の補充、加害者側との対応や訴訟等の対応で頼りになるのが弁護士です。相談でもいいですし、ちょっとした疑問の解消のためでもいいです。事務対応や精神的負担の軽減のためでもいいですので、交通事故に遭ったら、一度、弁護士にご相談されることをお勧めします。