解決までの流れ

私有地だと交通事故として扱われないって聞いたけどホント?私有地と道路の区別はどこから?

投稿日:

シカ
私有地で事故を起こすと、保険がきかないって聞いたんだけれど本当?

ミミズク
そんな事はないよ!
たとえ私有地であっても、ほとんどの交通事故で保険は利用できるよ。
今回の記事では、私有地での交通事故について、詳しく見ていこう。
まずは、私有地と一般道との違いについて、チェックしてみよう。

交通事故は発生した場所によって変わる?

交通事故の定義

そもそも、交通事故とは何なのでしょうか。

道路交通法第67条第2項では、

「車両等の交通による人の死傷若しくは物の損壊」のこと

をいうとされています。

ここでいう、交通とは、道路上における交通を意味していると言われています。

換言すると、道路交通法上の道路以外で事故が起きたとしても、交通事故とはいいません。

また、交通事故統計における「交通事故」は、

「道路交通法第2条第1項第1号に規定する道路において、車両等及び列車の交通によって起こされた事故で、人の死亡又は負傷を伴うもの(人身事故)並びに物損事故をいう。」

とされています。

これらのことから、交通事故は、道路交通法上の道路において発生したものであることが分かります。

道路の定義

では、次の疑問として、道路の定義は何なのでしょうか。

先ほどの交通事故の定義の際にも挙がった「道路交通法第2条第1項第1号」が道路のことを定めた条文です。

同号を見てみましょう。

同号によると、道路は、

  1. 道路法第2条第1項に規定する道路
  2. 道路運送法第2条第8項に規定する自動車道
  3. 一般交通の用に供するその他の場所

の3つのいずれかに当てはまる場所のことを意味しています。

上記①②については、常識的に考えられるいわゆる道路のことです。

一般交通の用に供するその他の場所とは

では、上記③一般交通の用に供するその他の場所とは何なのでしょうか。

一般交通の用に供するその他の場所については、一言で言ってしまえば、道路交通法を適用して交通の安全と円滑を図る必要がある場所ということになります。

そして、法律上、道路に該当するかの判断基準は、

  • 「道路の体裁の有無」
  • 「客観性・継続性・反復性の有無」
  • 「公開性の有無」及び「道路性の有無」

といった要素を考慮して決めると考えられています。

ここでは、複雑な議論は省いて、具体例のみを挙げることにしますが、具体的には、事実上道路として使用されている私道、広場、大学構内の道路、公園内の通路、ショッピングセンター等の駐車場といった場所は、一般交通の用に供するその他の場所に該当するといえます。

他方で、他人の入ってこない自宅の庭等は、一定程度の広さがあったとしても、一般交通の用に供するその他の場所には該当しないということができます。

また、工場の構内や港湾の埠頭も一般交通の用に供するその他の場所に該当しないものと考えられます。

以下、道路交通法上の道路以外の場所のことを「道路外」といいます。

道路交通法上の道路と道路外の違い

道路外では、道路交通法の適用がありません。

ですので、道路外では、免許を持っていなくとも、車両を運転することができます。

また、道路外で事故が発生したとしても、当該事故は、交通事故として扱われず、交通事故証明書は発行されません。

例えば、免許を持っていない人が自宅の庭で運転しており、知人を轢いてしまったという場合、交通事故にはならず、交通事故証明書は発行されません。

また、無免許運転にも該当しません。

しかしながら、道路外であるからといって、刑事責任を免れるわけではありません。

過失運転致死傷罪等の刑事責任を負う可能性は十分にあります。

私有地で事故が起きた場合には

シカ
道路外で事故を起こしてしまった場合にはどうしたら良いのかな?

ミミズク
道路外での事故は、警察を呼ぶ必要がないとされているのだけれど、その場で道路外かどうかを判断することは難しいよね。
だから事故を起こしてしまった場合には、警察を呼んだ方が良いね。

上記で交通事故や道路について述べてきました。

しかしながら、一般人の目から見た場合、その場所が道路交通法上の道路か道路外であるかどうか分かりません。

そこで、ここでは、民間人や法人が所有している土地のことを私有地と考え、私有地で事故が発生した場合にどのように対応すれば良いのか考えていくことにします。

なお、ここでいう私有地は、結果として、道路交通法上の道路に該当することもありますし、道路外ということもあり得ます。

私有地で事故が発生した場合には警察や救急車への連絡が必要か

私有地で事故が発生した場合、厳格に言えば、道路交通法上の道路といえれば、道路交通法上、警察への届出義務が発生します。

他方で、道路外であれば、道路交通法の適用はなく、警察への届出義務は発生しません。

救護義務も同様の考え方となります。

しかしながら、実際のところ、道路交通法上の道路か道路外かというのを短時間で明確に判断することは難しいです。

また、多くの人が立ち入ることのできる場所は、道路交通法上の道路と評価されることが多いと考えられます。

ですので、事故が発生してしまった場合には、その場所がどのような場所であっても、まずは、警察に届け出ることとし、負傷者がいたら救急車を呼ぶなどして救護義務を果たすのが良いと考えられます。

ちなみに、駐車場内の事故で、相手方車両の運転者がいない場合(駐車中の場合等)は、相手方車両の運転者が戻ってくるまで待つ、スーパーやショッピングセンターの駐車場等の場合には店内放送をしてもらって相手方に来てもらうなどの対応を採ってもらい、確実に相手方車両の運転者と話をする方が良いでしょう。

仮に、事故を起こしたにもかかわらず、相手方車両の運転者がいないからといって、何もせずに立ち去ってしまった場合、警察への届出義務違反(道路交通法上の道路での事故の場合)となってしまう可能性もあります。

私有地の所有者に責任はあるのか

私有地で車両同士、車両と歩行者の事故が発生したという場合、通常、私有地を所有しているというだけで責任が発生することはありません。

しかしながら、民法717条に定める土地の工作物責任によって、私有地の所有者が賠償責任を負う可能性はあります。

民法717条は、土地の工作物(土地に接着して築造した設備のことをいい、様々な物が該当します。)の欠陥によって他人に損害を与えた場合に、工作物の占有者・所有者が賠償責任を負うことを定めた条文です。

スーパー等で駐車場を設置した場合において、例えば、駐車場の車止めに欠陥がある、見通しの悪い出入り口にミラーを設置していないといったことが理由で事故が発生した場合、私有地の所有者が賠償責任を負う可能性があります。

保険の適用はどうなるのか

事故が発生した場所によって、保険会社との契約の適用の有無が問題となるのでしょうか。

しかしながら、多くの損害保険会社では、人身事故のことを「自動車の所有、使用または管理に起因して他人の生命または身体を害すること」、物損事故のことを「自動車の所有、使用又は管理に起因して他人の財物を滅失、破損または汚損すること」と定義(多少の表現の違いはあるかもしれませんが。)していますので、場所はあまり関係ないように思われます。

実際、当職が経験した事故で、このような事故がありました。

自宅駐車場に駐車をする際、いつもであれば駐車の邪魔にならないような場所に自転車が置いてあるにもかかわらず、その日は、駐車スペースに自転車が置かれており、そのことに気付かずに車両を後退させたところ、当該車両が自転車に接触し、その勢いで自転車が倒れ、隣の駐車場(隣家の敷地)に駐車していた車両にぶつかって当該車両を損傷したというものです。

このような事案では、事故の発生場所が自宅の敷地内ですので、道路外での事故となります。

しかしながら、任意保険は問題なく適用されるという話でした。

実際のところ、場所による保険適用の有無は、ほとんど問題とならないと考えられます。

しかしながら、道路外での事故の場合、交通事故証明書が発行されません。

そうなると、客観的に、事故が発生したか否かということが分からないということもあるかもしれません。

そのような場合、保険会社が、事故発生そのものを確認できないという理由で保険金の支払いを拒否するということもあり得そうです。

なお、損害保険会社の保険の適用については、保険契約の内容次第ですので、ご自身の契約している保険会社の約款等を確認して、道路外の事故でも保険の適用があるか否かを確認してください。

道路外での事故で保険金請求をする場合

シカ
道路外の事故で、事故証明を発行してもらえなかった場合にはどうしたら良いのかな?

ミミズク
人身事故証明書入手不能理由書を作成して、任意保険会社に提出すれば、保険対応が可能になるよ。

道路外での事故の場合、交通事故ではありませんので、交通事故証明書が発行されません。

そのようなときでも、人身事故証明書入手不能理由書などを任意保険会社に提出し、任意保険会社が事故の存在を認めてくれるのであれば、保険金支払いなどの対応をしてもらえると考えられます。

道路外での事故による罰則等

シカ
道路外の事故では罰則はあるの?

ミミズク
道路外での事故の場合、違反点数の適用はないけれど、行政処分を受けたり、刑事責任を問われることがあるから注意しなければいけないよ。

道路外で事故を起こした場合、免許等はどうなるのでしょうか。

道路外で人を怪我させることを道路外致死傷といいます。

道路外致死傷の場合、違反点数制度の適用はなく、違反点数がつけられて、運転免許が停止されることや免許が取消されることはありません。

しかしながら、道路交通法103条が道路外致死傷のことを定めており、公安委員会が定めた基準により、免許の停止や免許の取消しの行政処分を行うことができるとされています。

また、刑事上の責任を免れることはなく、過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪は、道路外でも適用があります。

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阿部栄一郎

阿部栄一郎

弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所所属。

早稲田大学法学部、千葉大学大学院専門法務研究科(法科大学院)卒業。2006年司法試験合格、2007年東京弁護士会登録。
交通事故、不動産、離婚、相続など幅広い案件を担当するほか、顧問弁護士として企業法務も手がける。ソフトな人当たりと、的確なアドバイスで依頼者からの信頼も厚い。交通事故では、被害者加害者双方の案件の担当経験を持つ。(所属事務所プロフィールページ

■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故の加害者・被害者には、誰でもなり得るものです。しかしながら、誰もが適切に交通事故の示談交渉をできるわけではありません。一般の人は、主婦が休業損害を貰えることや適切な慰謝料額の算定方法が分からないかもしれません。ましてや、紛争処理センターや訴訟の対応などは経験のない人の方が多いと思います。保険会社との対応が精神的に辛いとおっしゃる方もいます。
不足している知識の補充、加害者側との対応や訴訟等の対応で頼りになるのが弁護士です。相談でもいいですし、ちょっとした疑問の解消のためでもいいです。事務対応や精神的負担の軽減のためでもいいですので、交通事故に遭ったら、一度、弁護士にご相談されることをお勧めします。

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