慰謝料

交通事故でPTSDになってしまったら慰謝料はもらえるの?専門家が解説します!

投稿日:2020年3月24日 更新日:

シカ
交通事故の後、医師からPTSDの可能性があるって言われたんだ。
PTSDってどんな症状なの?
ミミズク
交通事故により強いストレスを感じると、PTSDになってしまう事があるんだ。
PTSDは眠れなくなる、事故を思い出せない、車を避けたくなるなど様々な症状が出てしまうよ。
今回の記事では、交通事故によるPTSDの症状や、PTSDは後遺症として認められるのか、説明するよ。
まずは、PTSDの症状について、見ていこう。

PTSD

PTSDとは

PTSDの内容・原因

PTSDは、Post Traumatic Stress Disorderの略語で日本語では心的外傷後ストレス障害と呼ばれているものです。

PTSDは、強烈なショック体験、強い精神的ストレス等が心のダメージとなり、時間が経過しても、その経験に対して強い恐怖を感じるといわれていています。

強烈なショック体験、強い精神的ストレスは、人によって異なりますが、例えば、震災などの自然災害、火事、事故、暴力や犯罪被害など生死に関わる実際の危険にあう出来事が原因となるといわれています。

PTSDの症状

PTSDの代表的な症状としては

  1. PTSDの原因となった出来事が繰り返し思い出される
  2. PTSDの原因となった出来事を思い出させる物事からの回避
  3. 思考や気分に対する悪影響
  4. 覚醒レベルと反応の変化といったものがあると言われています。

交通事故を例にとって具体例を説明すると、上記①は、交通事故で生命が脅かされた体験を何度も思い出すということです。

人によっては、再度体験するような感覚に襲われること(フラッシュバック)もあるようです。

上記②の具体例は、交通事故の後、車の運転ができなくなる、車を見るのを避けるといった行動が挙げられると思います。

上記③の具体例は、上記①とは逆に交通事故の重要部分を思い出せなくなるということになります。

その他、感情が麻痺したり、うつ病になったり、関心を寄せていたことに対する関心が薄れたりするということがあるようです。

上記④の具体例は、不眠や集中ができなくなることを挙げることができます。

その他、感情のコントロールができなくなって、突然、怒ったりするということもあるようです。

相談等で話を聞いたことのあるケース

実際に、私も、交通事故の被害者の方が、交通事故後に車の運転ができなくなったり、車を見ること自体を避けるようになったり、抑うつ症状が出るようになったという話をよく聞きます。

また、PTSDの症状を訴えるケースは交通事故の被害者が多いのですが、中には、交通事故を起こして人を死傷させてしまった方(一般的には加害者といえるでしょう。)がPTSDになったという話も聞いたことがあります。(加害者にとって、交通事故によって、他人を死傷させてしまったことが衝撃的な出来事として心のなかに残ったものと思われます。)

交通事故で負った怪我の程度も様々で、重症といえる方もいれば、一般的には治療をすれば治癒する怪我で症状を訴える人もいます。

精神的な症状の場合も同様、最終的に快復する方もいれば、症状が残る人もいます。

PTSDの治療例

治療例

私は、医師ではないので、PTSDの専門的な治療方法についての知識や経験は持ち合わせていませんが、PTSDの症状を訴える方は、一般的に、精神科や心療内科で治療をしています。

そして、治療としては、

  1. 医師や心理カウンセラー等による治療
  2. 薬物療法

が行われるようです。

上記①は、PTSDの原因となった出来事に近い体験を再体験して、その出来事に危険はないことを繰り返し認識して段々と症状を抑えていく持続曝露療法や視点・考え方などを変えて物事を見る認知療法などがあるといわれています。

上記②については、PTSDなどによって、うつ病の症状などが出ている場合に、抗うつ薬や抗不安薬などが処方されることがあります。

その他、症状に合わせて気分安定薬などが処方されることもあるようです。

交通事故における留意点(素因減額)

交通事故の被害に遭った場合、多かれ少なかれ精神的なショックを受けると思われます。

そして、その精神的ショックによって症状が出るか否かも人それぞれだと思います。

また、上記のとおり、交通事故の精神的ショックによって、抑うつ状態になったり、うつ病を発症したりすることもあります。

しかし、交通事故による衝撃がそれほど大きくない場合や交通事故による怪我が軽微な場合などに抑うつ状態・うつ病を発症した、精神科・心療内科に通院したということになると、状況によっては、素因減額が問題となることがあります。

素因減額とは、交通事故による損害の発生・拡大が、被害者自身の素因(被害者がもっている要因)に原因がある場合に損害賠償金を割合的に減額することをいい、素因のうち、精神面を原因とする場合を心因的素因といいます。

つまり、一般的に、抑うつ状態やうつ病を発症するとは考えにくい交通事故において、抑うつ状態となったうつ病となったと主張する場合、加害者から、抑うつ状態やうつ病は被害者自身の心因的素因によるものであると主張されて、損害賠償額が減額されるおそれがあるのです。

交通事故においては、PTSDなどの精神的な症状と交通事故との因果関係(原因と結果の関係)について、十分に注意をしなければならないと考えています。

なお、後述のとおり、そもそもPTSDの診断において本人又は他人の生死に関わるような衝撃的な体験をすることが前提となっているため、比較的軽微と評価される交通事故において精神面や精神科への通院等を主張すると、素因減額が問題となると思われます。

交通事故でPTSDになってしまった場合の後遺障害の等級は

シカ
PTSDでも後遺障害等級認定を受けることができるの?
ミミズク
そうだね、症状によって、後遺障害認定等級を受けることができる場合もあるけれど、PTSDの場合、交通事故との因果関係を証明するのが難しいと言われているよ。

自賠責において予定されている後遺障害の等級

PTSDは、非器質性精神障害の一種であるといわれています。

非器質性精神障害とは、脳組織に器質的異常が確認できないものの、精神状態が発生していることをいいます。

このことからもわかるとおり、PTSDは、脳組織の損傷等を客観的に確認できません。

そして、客観的な脳組織の損傷がないことから、交通事故とPTSDとの因果関係(原因と結果の関係)の立証は難しいといわれています。

それでも、交通事故によって、PTSDを発症し、後遺障害として残存した場合、自賠責保険では、原則として9級、12級、14級の3つの等級が用意されています

以下が、自賠責保険における後遺障害の等級の認定基準です。

  • 9級
    精神障害により、日常生活に著しい制限を受けており、常時援助を必要とする。
  • 12級
    精神障害により、日常生活に著しい制限を受けており、ときに応じて援助を必要とする。
  • 14級
    精神障害により、日常生活及び社会生活に一定の制限を受ける。

なお、平成15年に労災障害認定基準の改定前までは、自賠責保険における非器質性精神障害は、後遺障害として認められても14級止まりでした。

現在では、14級以上の後遺障害の等級が認められていますが、その意味では、以前と比べて少し理解が進んだと思われます。

PTSDでの後遺障害の認定基準は

自賠責における基準は、上記のとおりですが、これだけではよくわかりません。

ただ、PTSDに関する自賠責の基準は明確なものとはいえません。

実際には、労災における障害認定基準、専門医の診断などを参考にして自賠責保険制度としての等級評価を決定しているようです。

以下、参考となる事項を紹介します。

労災障害認定基準では、Ⅰ.抑うつ状態、Ⅱ.不安の状態、Ⅲ.意欲低下の状態、Ⅳ.慢性化した幻覚・妄想性の状態、Ⅴ.記憶又は知的能力の障害、Ⅵ.その他の障害(衝動性の障害、不定愁訴など)といった症状の有無が問題とされています。

そして、診療に当たった医師に対して、就労意欲の状態についての評価(概ね正常、意欲低下、欠落)を求めると同時に能力低下の状態に関し、ⅰ.身辺日常生活、ⅱ.仕事・生活に積極性・関心をもつこと、ⅲ.通勤・勤務時間の遵守、ⅳ.普通に作業を持続すること、ⅴ.他人との意思伝達、ⅵ.対人関係・協調性、ⅶ.身辺の安全確保保持、危機の回避、ⅷ.困難・失敗への対応の8項目についての段階評価(適切又は概ねできる、時に助言・援助が必要、しばしば助言・援助が必要、できない)を求め、その結果を基に労災の基準に当てはめて、原則として9級、12級及び14級の認定をします。

ちなみに、労災における医師に対する照会事項は次の内容です。

https://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/11/s1120-10g3.html

次に、専門医がPTSDの診断基準として用いているものにICD-10、DSM-Ⅳがあります。

ICD-10、DSM-Ⅳは、専門的な基準であるため、私には、詳細を紹介できないのですが、2つの基準は、概ね、本人又は他人の生死に関わるような衝撃的な体験に加えて、上記のPTSDの症状として紹介した

  1. PTSDの原因となった出来事が繰り返し思い出される
  2. PTSDの原因となった出来事を思い出させる物事からの回避
  3. 思考や気分に対する悪影響
  4. 覚醒レベルと反応の変化

といったことを診断基準にしているようです。

以上のとおり、自賠責保険における後遺障害等級の認定は、労災の基準や診察に当たった医師の診断やその他の資料を基に自賠責保険における基準に当てはめて運用しているということのようです。

労災の基準や診療にあたった医師の診断内容等を参考としているとはいえ、それのみで判断しているわけではないという点で少しわかりにくいことは否めません。

PTSDで後遺障害が認定されたときの賠償金は

PTSDで後遺障害が認定された場合、等級に応じた後遺障害慰謝料が支払われることになります。

自賠責保険における後遺障害慰謝料は、次のとおりです。

  • 9級:616万円
  • 12級:224万円
  • 14級:75万円

また、裁判所基準に近いといわれている赤い本における後遺障害慰謝料は、次のとおりです。

  • 9級:690万円
  • 12級:290万円
  • 14級:110万円

また、後遺障害が残存した場合、賠償金として逸失利益(将来得られたであろう収入のうち、後遺障害によって失われた金額のことと理解してください。)が認められます。

そして、逸失利益は、事故前年の収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間によって算出されます。

労働能力喪失率の目安は後遺障害の等級によって定められており、労働能力喪失期間は症状固定時の年齢から67歳までの期間(将来の収入であるため、正確にはライプニッツ係数という数字を用います。)を用います。

ただ、後遺障害の等級によって定められている労働能力喪失率はあくまで目安であり、実情に応じて、裁判において目安と異なる労働能力喪失率が認められることもあります。

後遺障害の等級に応じて定められている労働能力喪失率の目安は次のとおりです。

  • 9級:35%
  • 12級:14%
  • 14級:5%

事故前年の年収が600万円、症状固定時の年齢が45歳の人がPTSDで後遺障害として12級と認定された場合を例にとって計算してみましょう。

事故前年の収入600万円×労働能力喪失率14%(12級の労働能力消失率の目安)×労働能力喪失期間(45歳から67歳までの22年間。ライプニッツ係数は16.697)によって算出すると、逸失利益は1402万5480円となります。

後遺障害等級認定手続は

シカ
PTSDにより後遺障害等級認定の手続きを進めるにはどうしたら良いのかな?
ミミズク
後遺障害等級認定の手続きは、相手の任意保険会社が手続きを進める事前認定と、自分自身で手続きを進める被害者請求の二種類があるよ。
少しでも高い等級を希望するのであれば、自分で手続きする被害者請求がお勧めだね。

2つの後遺障害の認定手続

では、上述の後遺障害の等級を認定してもらうためには、どのような手続きをとれば良いのでしょうか。

後遺障害の等級認定手続は、自賠法が定めており、2つの方法を定めています。

1つ目が、自賠法15条を根拠とする手続です。

実務では事前認定などと呼ばれています。

事前認定で後遺障害等級認定手続をするというのは、加害者の任意保険会社を通して、自賠責保険に対して、後遺障害の等級認定手続をすることをいいます。

2つ目は、自賠法16条を根拠とする手続です。

実務では被害者請求などと呼ばれています。

被害者請求で後遺障害等級認定手続をするというのは、被害者が直接、自賠責保険に対して、後遺障害の等級認定手続をすることをいいます。

事前認定と被害者請求はどちらがいいのか

事前認定で後遺障害等級認定手続をするのと被害者請求で後遺障害等級認定手続をするのとでは、いずれが良いのでしょうか。

事前認定のデメリット

事前認定の場合、上述のとおり、加害者の任意保険を通じて後遺障害等級認定手続をします。

敵方がその必要資料を作成して、自賠責保険に対して後遺障害等級認定手続をするということになります。

事件によっては、後遺障害を否定する方向の意見書を添えることもできるわけです。(もちろん、後遺障害の等級を認定してほしいという意見書を添えることもできます。私は、そのような担当者の意見書を添えて手続をしたということも聞いたことがあります。ただし、保険会社としては、できる限り保険金の支払を抑えたいと思うでしょうから、毎回、被害者に好意的な意見書を添えるということはないでしょう。)

つまり、敵方である加害者の任意保険の担当者に後遺障害等級認定手続のための資料を握られてしまうというリスク、デメリットがあるわけです。

また、事前認定の場合、後遺障害等級が認定されたとしても、後遺障害の等級に対応する自賠責の保険金は支払われません。

交通事故によって、働けなくなるなど、経済的に困窮していることの多い被害者にとって、後遺障害の等級に対応する自賠責保険金が支払われないというのは死活問題になりかねません。

この点は、デメリットといえます。

被害者請求のメリット

被害者請求の場合、上述のとおり、被害者が直接、自賠責保険に対して後遺障害等級認定手続をします。

そのため、自賠責保険に対して提出する書類は、被害者側で全て揃えることになります。(ただし、事故の状況や治療費の支払い状況等によっては、加害者の任意保険から収集する資料もあります。)

これは、一般の方にとっては、重い負担となりかねません。

しかしながら、被害者請求で後遺障害等級認定手続をする場合でも、弁護士がその手続を代理すれば、被害者本人の手続的な負担は相当程度に軽減されますので、それほど大きなデメリットとはいえないと考えています。

また、これは、上述のデメリットと表裏ではありますが、被害者請求の場合、自賠責保険に提出する書類を全て被害者側で管理することができます。

加害者の任意保険会社の担当者の意見書や任意保険会社の担当者が依頼した医師の意見書が提出されるということはありません。

この点は、被害者請求のメリットといえると思います。

さらに、被害者請求で後遺障害等級認定手続をして後遺障害の等級が認定された場合、等級に対応する自賠責保険金が支払われます。

交通事故によって、働けなくなるなど、経済的に困窮していることの多い被害者にとっては、賠償金の一部とはいえ、自賠責保険金が支払われるのは大きなメリットといえます。

以上のことからすれば、後遺障害等級認定手続をする際には、被害者請求の方法でする方が被害者にとってメリットが大きいといえると思います。

まとめ

シカ
交通事故により精神的なショックが大きいとPTSDの症状が出てしまう事があるんだね。
PTSDでも後遺障害等級認定を受けることができるなんて知らなかったよ。
ミミズク
PTSDの場合でも後遺障害等級認定を受けることができるから、後遺症が残ってしまった場合には、弁護士に相談するのがお勧めだよ。
弁護士に相談することで、後遺障害等級認定の手続きをスムーズに進める事ができるし、示談を有利に進める事が可能になるよ。

今回のコラムをまとめると次のとおりとなります。

  • PTSDなどの非器質性精神障害について、交通事故では、原則として9級、12級、14級の後遺障害等級が用意されている。
  • 交通事故では、後遺障害が認定されると等級に応じて後遺障害慰謝料及び逸失利益が損害賠償金として認められる。
  • 後遺障害等級認定手続は、事前認定よりも被害者請求の方がメリットが大きいといえる。

 

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阿部栄一郎

阿部栄一郎

早稲田大学法学部、千葉大学大学院専門法務研究科(法科大学院)卒業。2006年司法試験合格、2007年東京弁護士会登録。都内の法律事務所勤務を経て、2010年丸の内ソレイユ法律事務所入所。交通事故、不動産、離婚、相続など幅広い案件を担当するほか、顧問弁護士として企業法務も手がける。ソフトな人当たりと、的確なアドバイスで依頼者からの信頼も厚い。交通事故では、被害者加害者双方の案件の担当経験を持つ。■交通事故示談交渉の森閲覧者へのメッセージ:交通事故の加害者・被害者には、誰でもなり得るものです。しかしながら、誰もが適切に交通事故の示談交渉をできるわけではありません。一般の人は、主婦が休業損害を貰えることや適切な慰謝料額の算定方法が分からないかもしれません。ましてや、紛争処理センターや訴訟の対応などは経験のない人の方が多いと思います。保険会社との対応が精神的に辛いとおっしゃる方もいます。 不足している知識の補充、加害者側との対応や訴訟等の対応で頼りになるのが弁護士です。相談でもいいですし、ちょっとした疑問の解消のためでもいいです。事務対応や精神的負担の軽減のためでもいいですので、交通事故に遭ったら、一度、弁護士にご相談されることをお勧めします。

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