今回の記事では、積み荷への損害賠償請求について、詳しく見ていこう。
積み荷の損害賠償請求は可能か
配送車が車両と接触した場合、配送車の運転手や積み荷の所有者である配送会社は、接触した車両の運転手等に対して、積み荷の損害賠償請求をできるでしょうか。
結論としては、積み荷に関する損害賠償も可能です。
ただし、配送車と接触した車両との間の過失割合に応じて損害賠償額は減額される可能性があります。
例えば、配送車の運転手の過失割合が30%の場合、積み荷についての損害賠償も30%減額(30%分は、配送車を所有している会社や配送車の運転手が負担しなければならなくなります。)されることとなります。
過失割合によって、損害賠償額が変わることとなりますが、過失割合は、事故状況によって変わります。
そのことからすれば、事故状況を写真や動画等で客観的に保存しておくことが非常に重要となります。
例えば、ドライブレコーダーの動画は事故状況を確認するうえで非常に重要な証拠となります。
また、事故発生当時、配送車がどのような積み荷を積んでいたかに関する証拠も重要となります。
例えば、配送前に積み荷を写真や動画で撮影しておくことは非常に重要です。
さらに、事故発生直後に、壊れた積み荷を撮影して証拠としておくこと(交通事故によって、積み荷が損壊したこと)も非常に重要です。
積み荷の損害賠償の額

ただし、楽器など高額な物を積んでいた場合には、全額負担してもらえるとは限らないんだよ。
交通事故で配送車の積み荷の損害を賠償してもらえるということですが、その賠償額はどのようになるのでしょうか。
配送先に売却する金額まで賠償してもらえるのでしょうか。
しかしながら、あくまで、損害賠償額は、当該積み荷の時価額となります。
その場合、必ずしも、積み荷の配送先に売却する金額まで賠償してもらえるとは限りません。
特に、中古品の場合、新品と同額を賠償してもらえる保証はありません。
積み荷にパソコンがあった場合で、交通事故によってパソコンが壊れてパソコン内に保存していたデータが失われた場合はどうでしょうか。
パソコンの時価額については、損害賠償の対象となると考えられます。
また、過去に、パソコン内のデータ修復費用も損害賠償として認められたケースもあります。
ただ、この裁判例は、今から20年以上前のものです。
現在は、クラウドサービスなどが広がっており、データをクラウドサービスに預けていることも多いと考えられます。
そのようなことを考慮すると、データの修復自体が損害とならない可能性もありそうです。
積み荷が楽器の場合はどうでしょうか。
楽器については、中古品であっても、新品と比較して、時価額が低くならない場合もあり得ます。
過去、裁判例でバイオリン本体が700万円、弓が200万円の賠償額が認められたケースがあります。
ただし、楽器の時価額の算定は難しい面があり、必ずしも、主張する楽器の時価額が賠償額と認められるとは限りません。
積み荷の損害賠償が否定されたケース(因果関係が否定されたケース)

交通事故によって積み荷が損壊した場合において、その積み荷の全てが損害賠償の対象となるとは限りません。
損害賠償が認められるためには、交通事故と積み荷の損壊との間に因果関係(原因と結果の関係)が認められなければなりません。
例えば、交通事故から数年経ってから、パソコンが交通事故によって壊れたと主張したとしても、交通事故とパソコンの損壊との間の因果関係が認められない可能性は高いと考えられます。
また、同様に、楽器の損壊について、必ずしも、交通事故との間の因果関係が認められないケースもあります。
積み荷の損害賠償請求は専門家に相談するのが良い

交通事故によって積み荷が損壊したというケースにおいては、そもそも、交通事故と当該積み荷の損壊との間の因果関係があるか否かの判断が難しいです。
交通事故発生時に当該積み荷が存在していたのか、また、交通事故によって当該積み荷が損壊したといえるのか、判断が難しい点があります。
こういった点は、専門家に相談して、判断してもらうのが良いと考えられます。
阿部栄一郎
早稲田大学法学部、千葉大学大学院専門法務研究科(法科大学院)卒業。2006年司法試験合格、2007年東京弁護士会登録。
交通事故、不動産、離婚、相続など幅広い案件を担当するほか、顧問弁護士として企業法務も手がける。ソフトな人当たりと、的確なアドバイスで依頼者からの信頼も厚い。交通事故では、被害者加害者双方の案件の担当経験を持つ。(所属事務所プロフィールページ)
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故の加害者・被害者には、誰でもなり得るものです。しかしながら、誰もが適切に交通事故の示談交渉をできるわけではありません。一般の人は、主婦が休業損害を貰えることや適切な慰謝料額の算定方法が分からないかもしれません。ましてや、紛争処理センターや訴訟の対応などは経験のない人の方が多いと思います。保険会社との対応が精神的に辛いとおっしゃる方もいます。
不足している知識の補充、加害者側との対応や訴訟等の対応で頼りになるのが弁護士です。相談でもいいですし、ちょっとした疑問の解消のためでもいいです。事務対応や精神的負担の軽減のためでもいいですので、交通事故に遭ったら、一度、弁護士にご相談されることをお勧めします。
