交通事故後の対応も、通常の事故と同様に、救護をして警察を呼ぶという流れになるんだ。
今回の記事では、外国人と交通事故を起こしてしまった場合の対処法について詳しくみていこう。
目次
交通事故の相手が外国人であった場合の対処法
交通事故の相手が外国人であったとしても、日本で交通事故に遭ったのであれば、基本的な対処は、通常の交通事故の場合と変わりません。
車両等を運転している場合には、車両を直ちに停止させ、負傷者を救護し、道路上の危険を除去します。
また、警察に交通事故が発生したことを報告します。
交通事故の当事者がそれほど大きな怪我を負っておらず、話ができる状況であれば、お互いの連絡先を確認する、付保している保険会社を確認するといったことができれば、なお良いです。
なお、警察官が連絡先の交換などに協力してくれることもあります。
交通事故の相手が外国人であった場合の慰謝料・損害賠償
外国人が運転していた車が会社の車や、借りている車の場合には、持ち主へ賠償請求することも可能だよ。
外国人が母国で治療をする場合にも、治療費を負担しなければいけないのかな?
請求先、損害賠償の責任
慰謝料などの請求先は、交通事故の相手が外国人であるからといって、変わるわけではありません。
外国人が任意保険に加入しているのであれば、任意保険会社に対して請求することになります。
また、仕事中に交通事故に遭ったということであれば、勤務先が損害賠償義務を負いますし、他人から借りた車両やレンタカーということであれば、車両の持ち主やレンタカー会社が損害賠償義務を負うということもあります。
外国人が母国等で治療する場合
外国人が交通事故で怪我をしたとしても、日本の病院で治療を受けること自体は可能です。
日本で治療を受けたのであれば、日本人が日本で治療を受けた場合と変わりません。
問題となるのは、外国人が母国に戻って治療を受けた場合です。
その場合、日本から外国人の母国に戻るための渡航費といった費用も発生します。
また、怪我の状況によっては、母国にいる親族が日本に来るということもあり得るところです。
こういった費用は賠償の対象となるのでしょうか。
過去の裁判例では、精神的な要因を理由とした母国への渡航費、妊娠中といった事情がある場合の母国への渡航費が認められた例があります。
また、妊娠中といった事情があることから、母国から親族が日本に来た際の渡航費、交通事故で重傷を負ったことから、母国から親族が日本に来た際の渡航費が認めれたという例があります。
つまりは、事情を総合的に考慮して、その必要性を判断するということになります。
外国人も逸失利益を受け取れるのか
交通事故の被害者が外国人であったとしても、後遺障害の等級が認定されれば、逸失利益を請求することができます。
ただ、日本人と異なり、外国人の場合には、在留資格が関わってきます。
- 「永住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」、「特別永住者」
「永住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」、「特別永住者」など、日本での在留活動に制限がない在留資格がある場合には、日本人と同様に逸失利益を算定することになります。
逸失利益は、基礎収入×労働能力喪失率(等級によって目安があります。)×労働能力喪失期間(ライプニッツ係数)によって算定されます。 - 就労可能な在留資格を持っている外国人
就労可能な在留資格を持っている外国人の場合は、日本で得ていた収入を基に逸失利益を算定することになります。
ただし、労働能力喪失期間によっては、在留期間を超えることがありますので、在留期間を超える逸失利益を日本人と同様に請求する場合には、在留期間が更新される可能性を立証する必要があります。
在留期間を超えた後に母国に帰る予定だった場合等には、母国における収入を基に逸失利益を算定することとなります。
外国人が無保険であった場合
そんな時には、自分の加入している任意保険を利用したり、政府保障事業の利用を検討してみよう。
日本人で無保険ということもあり得ますが、交通事故の相手が外国人で、その外国人が無保険というということもあり得ます。
交通事故の加害者が外国人で、その外国人が無保険であった場合、原則として、加害者である外国人に対して、損害賠償請求をするということになります。
しかしながら、加害者である外国人が十分な資力を有しているとは限りませんし、仮に、加害者である外国人が母国に帰ってしまった場合、慰謝料等の損害賠償を受け取るのは難しいでしょう。
加害者である外国人に対して損害賠償請求をするのが難しい場合、自分の加入している任意保険等を利用するということを検討する必要があるかと思います。
代表的なものは、人身傷害保険です。
その他、搭乗者傷害保険、無保険車傷害保険といった保険もあり、そういった保険によって、自分の損害を補償してもらうということになります。
自分の保険もないという場合、政府の保障事業に請求することを考えることになります。
政府の保障事業は、ひき逃げや加害者が自賠責保険に加入していない場合(無保険車)といった場合に、加害者に代わって被害者の損害を填補する制度です。
支払限度額は、自賠責保険と同額で、損害の全てを賄うことができないことが多いでしょうが、最低限の補償を受けることができます。
加害者である外国人が損害賠償を支払ってくれない場合
受け取れる賠償金を支払ってもらえないという事態を防ぐためにも、外国人と交通事故に遭ってしまったら、弁護士に相談するのがおすすめだよ。
外国人に対しても、訴訟を提起することは可能です。
外国人が日本に在住している場合は、訴訟提起の方法も日本人が加害者である場合と同じです。
しかしながら、外国人が母国に帰っている場合には、海外送達(送達は、裁判上の書類を正確に届けることとご理解ください。)が必要となります。
海外送達の期間は国によって異なりますが、数か月から1年を超えるということもあり得ます。
そのため、外国人が母国などの海外に居住している場合には、訴訟を進行させるのが非常に難しくなります。
また、日本の裁判所の判決による強制執行は、日本にある財産しか対象にできません。
つまり、日本の裁判所の判決では、海外にある財産に対して強制執行をすることはできないのです。
国によって異なりますが、日本の判決の効力を認めてもらうために、海外(資産のある国)の裁判所で手続きを踏む必要がありますが、結果として、認められない可能性もあります。
加害者が日本人であろうと外国人であろうと、変わらず、弁護士に相談することで物事がスムーズに進む可能性があります。
弁護士に相談すれば、法的な知識や損害額の相場を知ることもできます。
解決のためには、弁護士にサポートしてもらう方が良いでしょう。
阿部栄一郎
早稲田大学法学部、千葉大学大学院専門法務研究科(法科大学院)卒業。2006年司法試験合格、2007年東京弁護士会登録。
交通事故、不動産、離婚、相続など幅広い案件を担当するほか、顧問弁護士として企業法務も手がける。ソフトな人当たりと、的確なアドバイスで依頼者からの信頼も厚い。交通事故では、被害者加害者双方の案件の担当経験を持つ。(所属事務所プロフィールページ)
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故の加害者・被害者には、誰でもなり得るものです。しかしながら、誰もが適切に交通事故の示談交渉をできるわけではありません。一般の人は、主婦が休業損害を貰えることや適切な慰謝料額の算定方法が分からないかもしれません。ましてや、紛争処理センターや訴訟の対応などは経験のない人の方が多いと思います。保険会社との対応が精神的に辛いとおっしゃる方もいます。
不足している知識の補充、加害者側との対応や訴訟等の対応で頼りになるのが弁護士です。相談でもいいですし、ちょっとした疑問の解消のためでもいいです。事務対応や精神的負担の軽減のためでもいいですので、交通事故に遭ったら、一度、弁護士にご相談されることをお勧めします。