クリーニング代って運転手に請求しても良いの??
だけど、クリーニング代を請求するためには要件があるし、走り去っていく車を特定する必要が出てくるため、多くの人がクリーニング代の請求を諦めてしまっているんだ。
今回の記事では、泥はねによる損害賠償請求について、詳しく見ていこう。
車が歩行者の横を通るとき、勢いよく水や泥をはねて歩行者の衣類や持ち物が汚れてしまうケースがよくあります。
車からの水はね、泥はねで服を汚された場合、相手に損害賠償請求できるのでしょうか?
相手に与えられる刑罰や反則金、逃げてしまった場合の対処方法も押さえておきましょう。
今回は車からの水はねや泥はねで服などを汚された場合の対処方法をお伝えします。
悪質な車に泥水をはねられて納得できない方はぜひ参考にしてみてください。
目次
歩行者に泥水をかけた場合の反則金
雨の日などに水たまりの横を通っていると、勢いよく走ってきた車から水や泥をはねられて衣類や持ち物が汚い水で濡れてしまうことがあります。
このように、歩行者の泥水をかけた車には罰則が適用されないのでしょうか?
実は道路交通法において、車は泥水や汚水などを飛散させて他人に迷惑をかけてはならないと規定されています。
道交法第71条第1号
車両等の運転者は、次に掲げる事項を守らなければならない。
1 ぬかるみ又は水たまりを通行するときは、泥よけ器を付け、又は徐行する等して、泥土、汚水等を飛散させて他人に迷惑を及ぼすことがないようにすること。
つまり車は、水たまりなどの場所を走る際には、徐行したり泥除け器をつけたりして歩行者などに泥水を飛散させないよう注意しなければなりません。
車が泥はねをした場合の反則金
車が道路交通法71条1号に違反して泥はねや水はねを起こし、人に迷惑をかけた場合には反則金制度が適用されます。
反則金の金額は車の種類によって異なりますが、以下のとおりです。
- 大型車の場合、7000円
- 普通車、二輪車の場合、6000円
- 小型特殊自動車、原付の場合、5000円
ただし車に泥はねをされた場合でも、加害者が実際に反則金を支払わねばならないケースは少数です。
加害者が走り去って不明となるケースが圧倒的に多いうえ、加害者が見つかっても「徐行していた」と主張したり、故意はなかったと認定されたりするケースが多いためです。
水はねや泥はねの加害者に処罰を与えてほしい場合の対処方法
水はねや泥はねの被害に遭ったとき、相手が走り去っても何もしなければ相手が反則金を支払わなければならない可能性は極めて低くなります。
どうしても処罰してほしければ、相手車両のナンバーを控えましょう。
具体的には、メモをとったり写真撮影したりして、記録を残す必要があります。
衣服の汚された部分の写真も撮影すると良いでしょう。
その上で警察に被害申告すれば、警察が動いてくれる可能性があります(ただし微罪なので、動いてくれない可能性もあります)。
なお車のナンバーを控えていたら、たとえ警察が動いてくれなくて刑事事件にならなくても民事的な損害賠償請求をするための情報として使えます。
いずれにせよ、悪質な泥はね、水はね被害に遭ったら相手のナンバーや車の色、車種などの特徴を押さえておきましょう。
加害者にクリーニング代を請求するための要件
車によって泥はねや水はねの被害を受けた場合には、加害者へ民事的な損害賠償請求も可能です。
具体的には衣服のクリーニング代、壊れたものがあれば弁償のための費用などを請求できます。
以下では損害賠償請求するための要件をご説明します。
車を運転していたこと
まずは、相手が車を運転していた加害者本人であることが必要です。
単に同乗していただけの人へは通常損害賠償請求できません。
相手が水たまりを把握していた、もしくは意識すれば認識できる状況であったこと
次に、加害者に「水たまりがある」という認識があったこと、あるいは注意すれば認識できる状況であったことが必要となります。
損害賠償請求を行うための「不法行為」の要件として、故意または過失が必要だからです。
水たまりを勢いよく走って歩行者の服を汚したとしても、運転者に故意も過失もなかったら損害賠償請求はできません。
- 故意…「わざと」行うこと
- 過失…「不注意」によって行うこと
たとえば雨の日で大きな水たまりができていて、安全な速度で運転していたら明らかに水たまりを認識できたのにあえて高スピードで走って泥はねをした場合、相手に少なくとも過失が認められるでしょう。
衣服や持ち物が汚れたこと
次に「損害の発生」についても証明しなければなりません。
水はねによる損害の具体的な内容は、以下のようなものです。
- 衣服が汚れてクリーニングが必要になった
- カバンや靴、アクセサリーなどの持ち物、装飾品が汚れてクリーニングや修繕が必要になった
- スマホなどの持ち物が壊れた
上記のような事情があれば、クリーニング代や修繕費用、弁償費用などが損害となります。
損害賠償請求をするための証拠
水はねや泥はねによって衣類などを汚されたとき、相手に損害賠償請求するには証拠が必要です。
現行犯でもない限り、後に相手に「水はねや泥はねによって被害を受けた」と言っても相手は「知らない」と反論する可能性が高いためです。
証拠としては、以下のようなものを集めましょう。
- 水はねや泥はねをされたときの動画や写真
- 相手が走り去るときに撮影した相手の車(ナンバーが写っているものが好ましい)
- 衣類や持ち物の汚れた状況を撮影した写真や動画
- クリーニング代の領収証
- 修理費用の見積書、領収証
- 壊れたスマホなどの時価相場を示す資料(ネットのフリマサイトや中古スマホの販売サイトで同意機種の料金をチェックするなど)
水はねした車のナンバーを控えた場合の対処法
相手が特定できても、賠償金を支払ってもらえないことがあるから、弁護士にお任せするのがおすすめだね。
ナンバーから相手を特定するには
相手が走り去ってしまった場合、ナンバーを特定できても自分ではそのナンバーの持ち主が誰かわからないケースが多いでしょう。
その場合、相手を特定できません。警察に提出しても、すぐに調べてもらえるとは限りません。
車のナンバーから所有者を割り出したい場合には、弁護士に依頼するようお勧めします。
弁護士は弁護士法23条照会という方法で各種の情報を調査できるからです。
車のナンバーさえわかっていれば、弁護士法23条照会によって車の所有者を調べられる可能性があります。
損害賠償請求の依頼を前提に弁護士へ相談してみましょう。
相手が支払わないときの対処方法
水はねや泥はねの被害に遭ったとき、相手にクリーニング代などを請求しても支払いを拒まれる可能性があります。
無視されるケースも少なくありません。
相手が支払わないときには、以下のように対応しましょう。
弁護士に依頼する
自分で請求しても払ってもらえない場合には、弁護士に損害賠償請求の代行を依頼しましょう。
弁護士からの請求であれば相手も真剣に対応する可能性が高まります。
どうしても払わない場合には、訴訟を起こして請求できます。
少額訴訟を利用する
自分で相手に損害賠償請求したい場合には、少額訴訟も有効です。
少額訴訟とは60万円以下の少額な請求を行う際に利用できる簡単な裁判手続です。
一般の裁判と違って1日で審理を終え、判決まで出してもらえます。
簡易裁判所で少額訴訟を提起できるので、訴状を用意して証拠を添えて提出しましょう。
相手車両が走り去ってしまった場合の対処方法
だから、水はねが起きた場合には、必ず相手のナンバーと車種、特徴を把握しておこう。
水はねや泥はね被害を受けた場合、相手はほとんどのケースで走り去ってしまいます。
その場合、必ず相手車両のナンバーや特徴を押さえましょう。
その場で確認できたら賠償請求できる可能性が高くなる
水はねや泥はねの被害に遭ったとき、相手に反則金を支払わせたり損害賠償請求したりするのは簡単ではありません。
手間の割に得られるメリットが小さいので、あきらめてしまう方も多いでしょう。
ただ、水や泥をかけられたその場で相手が停車し、水はねを認めたら状況が変わってきます。
その場で相手と連絡先を交換し、クリーニング代などを請求しましょう。
相手が悪質な場合、警察を呼んで取締を依頼する方法もあります。
つまり現行犯の場合には、賠償請求できる可能性が高くなるのです。
加害者へ請求できる金額は?
慰謝料などの賠償金を請求できないから注意しよう。
水はねや泥はねの被害に遭ったとき、相手にはどのくらいの金額を請求できるのでしょうか?
一般的には以下のとおりの金額です。
- 衣類のクリーニング代
- 壊れたものの修理費用(ただし物の時価が限度)
- 修理が不可能な場合には壊れた物の時価
汚れについてはクリーニング代程度が限度ですし、修理が必要なものがあっても時価が限度となるので、通常高額にはなりません。
ただスマホやパソコンの買い替えが必要になった場合などには、ある程度の金額を請求できる可能性もあるでしょう。
請求できる金額が低い場合、あえて労力と時間を使って相手に請求するのは得策になりません。
慰謝料は請求できない
水はねや泥はねの被害に遭ってお気に入りの服やアクセサリーなどが使い物にならなくなったら精神的苦痛を受けるので、相手に「慰謝料」を請求したいと考える方も多いでしょう。
ただ、水はねや泥はね被害で相手に慰謝料を請求することは基本的にできないと考えるべきです。
こうした物的損害しか発生していない場合、被害者には慰謝料が発生するほどの精神的損害を受けないと考えられているからです。
ただし水はねや泥はねだけではなく相手の車によってケガをさせられた場合には慰謝料も請求できます。
たとえば相手が大きく水を跳ね上げて、その衝撃で転倒して負傷した場合などです。
相手に対する賠償請求は弁護士へ相談を
だけど、クリーニング代だけの賠償請求となると、弁護士費用の方が高くついてしまう可能性が高いから、まずは無料相談などを利用して相談してみよう。
道路上を歩行していたり自転車で走ったりしていると、乱暴な運転をする車によって迷惑をかけられるケースが少なくありません。
被害を受けて自分で対応する方法がわからない場合には、弁護士に相談してみましょう。
弁護士であれば、刑事的な側面と民事賠償の両方の側面からアドバイスをしてくれます。
損害賠償請求の代理を依頼すれば、自分で対応するよりも効果的に相手に支払いをさせることが可能です。
今は多くの弁護士事務所で交通関係の無料相談を実施しています。
泥はねや水はねの被害に遭って困っている場合、まずは一度弁護士に相談してみましょう。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。