目次
リコール対象車に乗り続ける危険性
今回の記事ではリコール車を放置する危険性や、リコール車が事故を起こした場合の責任の所在について詳しく見ていこう。
リコールの法的根拠等
自動車のリコールには法的根拠があるのでしょうか。
道路運送車両法63条の2に根拠があります。
同条は、国土交通大臣が、保安基準に適合しない恐れがある自動車について、必要な改善措置を講ずべきことを勧告、公表、命令することができる旨定めています。
また、道路運送車両法63条の3は、保安基準に適合していない、又は、適合しない恐れがある自動車について、自動車メーカーが国土交通大臣に、必要な改善措置の内容を届け出るべき旨を定めています。
その他、保安基準に適合するか否かはとは別に、自動車メーカーが自主的に自動車の不具合を無償で修理する場合等もあります。
リコール対象車の危険性
上記のとおり、リコールは保安基準に適合しない、又は、適合しない恐れがある自動車が対象となります。
例えば、ブレーキに不備がある場合やハンドルが効きにくくなるといった場合もあります。
当然、そのような不具合がある場合、重大な事故を引き起こす可能性があります。
また、保安基準に適合していない場合、リコール部分を放置していると車検に通らないこともありますし、売却時の査定額が下がるといった不利益もあるでしょう。
リコール対象車による事故の過失割合

リコール対象部分が原因となった自損事故
リコールの対象となった箇所(例えば、ブレーキやハンドル)が原因となって自損事故を起こした場合、運転者などが被った損害はどのように賠償されるのでしょうか。
製造物責任法という法律があり、同法では、製造物の欠陥によって、身体生命や財産に損害を被った場合、当該製造物の製造者(メーカー)は、被害者の損害を賠償する旨定めています。
ですので、リコール対象となった箇所が原因で自損事故が起きた場合、自動車メーカーが被害者の損害を賠償することとなります。
なお、多くの場合、自動車メーカーが加入しているPL保険で賄われるものと考えられます。
リコール対象車による事故の過失割合
次に、リコールの対象となった箇所が原因となって他者を巻き込む事故を起こした場合はどうでしょうか。
基本的には、上記と同様、製造物責任に基づいて、自動車メーカーが被害者の損害を賠償することとなります。
この場合、事故の当事者双方が被害者となり、自動車メーカーは、双方の損害を賠償することになると考えられます。
ただし、リコールの対象となってから、相当期間が経過しているにもかかわらず、修理等をせずにいたことが原因で交通事故が起きた場合は、状況が異なる可能性があります。
例えば、加害者となった自動車のブレーキに不具合があったにもかかわらず、5年以上修理せずに放置していた場合などです。
製造物責任法に基づく責任は5年経過すると、消滅時効により、責任を負わなくても良いこととなります。
そうなると、ブレーキに不具合のある自動車を修理せずに放置していた加害者の責任が問われる可能性が高くなります。
リコールについては、多くのメディアで報道されるため、自分の自動車がリコール対象となった場合には、早めに修理等をしておく必要があります(修理費用は、自動車メーカーが負担します。)。
リコール車による事故の責任の所在

上記のとおり、自動車メーカーは製造物責任法に基づいて、交通事故における損害賠償責任を負います。
また、一般的には、交通事故の加害者となった者も被害者に対して損害賠償責任を負うこととなります。では、その関係はどのようなものとなるのでしょうか。
あくまで抽象的な議論となりますが、例えば、リコール発表からそれほど期間が経過していいない(数週間、1か月程度)場合は、自動車メーカーが負う製造物責任法に基づく責任が重くなると考えられます。
それに対し、リコール発表から1年、2年が経過していた場合はどうでしょうか。
その間、リコール対象となった自動車の所有者は、リコールの内容を確認する時間もあったでしょうし、修理(自動車メーカーが無償で修理します。)をするだけの時間もあったと考えられます。
道路運送車両法でも、自動車の所有者は、自動車が保安基準を満たすように整備する義務を負っています。
このような場合は、自動車メーカーの製造物責任があるとされながらも、加害者となった運転者にも一定の過失があった(過失相殺)と判断される可能性はあると考えられます。
そして、自動車メーカーと加害者とで、一定割合の損害の負担をすることになると考えられます。
なお、実務的には、保険会社において、過失割合に応じて損害額を負担することとなります。
リコール対象車での事故は保険適用があるのか

リコール車で事故を起こした場合でも自動車保険は利用可能だよ。
ただし、リコールがあるとわかっていたのに何年も放置していて、それが原因となって事故が起きてしまった場合には、保険適用とならない可能性もあると考えておこう。
リコールの対象車であったとしても、基本的には損害保険の対象となります。
ですので、対人対物保険の保険金や車両保険の保険金も支払われます。
ただ、非常に重要なリコール箇所であるにもかかわらず、長期にわたってリコール対象箇所を修理をしていない場合、その客観的な状況から、故意による事故などと判断され、損害保険の適用とならない可能性も否めません。
いずれにせよ、リコール対象になった場合、早急に修理をしておく必要があるでしょう。
阿部栄一郎
早稲田大学法学部、千葉大学大学院専門法務研究科(法科大学院)卒業。2006年司法試験合格、2007年東京弁護士会登録。
都内の法律事務所勤務、弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所を経て、2026年四季の風総合法律事務所にパートナー弁護士として参画。交通事故、不動産、離婚、相続など幅広い案件を担当するほか、顧問弁護士として企業法務も手がける。ソフトな人当たりと、的確なアドバイスで依頼者からの信頼も厚い。交通事故では、被害者加害者双方の案件の担当経験を持つ。(所属事務所プロフィールページ)
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故の加害者・被害者には、誰でもなり得るものです。しかしながら、誰もが適切に交通事故の示談交渉をできるわけではありません。一般の人は、主婦が休業損害を貰えることや適切な慰謝料額の算定方法が分からないかもしれません。ましてや、紛争処理センターや訴訟の対応などは経験のない人の方が多いと思います。保険会社との対応が精神的に辛いとおっしゃる方もいます。
不足している知識の補充、加害者側との対応や訴訟等の対応で頼りになるのが弁護士です。相談でもいいですし、ちょっとした疑問の解消のためでもいいです。事務対応や精神的負担の軽減のためでもいいですので、交通事故に遭ったら、一度、弁護士にご相談されることをお勧めします。
