赤ちゃんや子供が交通事故に遭ってしまった時には慰謝料の請求はできるの?
赤ちゃんや子供でも、大人と同じように慰謝料を請求する事が出来るよ!
条件によって回答が異なるから、詳しく調べてみよう!
交通事故に遭うのは、大人(成人)だけとは限りません。
子供や赤ちゃんも事故に遭うことがありますし、妊娠中の女性が交通事故に遭った場合には、生まれる前の胎児も被害を受けることがあります。
こうした子供や赤ちゃん、胎児などの場合であっても、加害者から慰謝料を支払ってもらうことができるのでしょうか?
大人と違う取扱いがあるのかも問題となります。
今回は、交通事故の慰謝料を子供や赤ちゃんでももらえるのかどうか、解説します。
目次
赤ちゃんでも慰謝料がもらえるのか?Aさんのケース
Aさんは、生後10ヶ月の子供と一緒に車に乗っていました。
すると、いきなり車が飛び出してきて横から衝突されました。
ちょうど赤ちゃんがいたところにぶつかられたので、赤ちゃんは大けがをしてしまいました。
命は取り留めましたが、後遺障害が残るかもしれません。
Aさんは、相手に子供の分の慰謝料を支払ってほしいと考えています。
これは、認められるのでしょうか?
子供や赤ちゃんでも慰謝料がもらえる?
Aさんのケースを解説する前に、慰謝料の種類を整理してみます。
慰謝料とは、精神的損害に対する損害賠償額のことです。
交通事故の場合、
- けがをしたこと自体に認められる入通院慰謝料
- 後遺障害が残った場合に認められる後遺障害慰謝料
- 死亡した場合に認められる死亡慰謝料
の3種類があります。
こうした慰謝料は、交通事故で被害者が強い精神的な苦痛を感じるため、認められるものです。
そうすると、Aさんのケースのように、被害者が子供や赤ちゃんで、小さすぎるために痛みや苦痛を伝えられない場合には、支払いを受けることができないのでしょうか?
実は、そのようなことはありません。
外に伝えられるかどうかや、本人の精神が成熟しているかどうかにかかわらず、慰謝料を支払ってもらうことができます。
交通事故でけがをしたり死亡したりした場合の精神的苦痛は、男女や年齢などを問わず誰でも共通のものだからです。
そこで、どのような人でも慰謝料の金額はほとんど一定です。
収入の高い人や年齢の高い人の方が慰謝料が高額になることもありません。
Aさんの場合でも、子供はきちんと相手に慰謝料を支払ってもらうことができます。
その際、大人の男性がもらう慰謝料と同じくらいの金額を払ってもらうことも可能です。
胎児でも慰謝料がもらえる?
妊婦さんが事故に遭った場合には、お腹の中の赤ちゃんにも慰謝料請求できるのかな?
まだ生まれていない場合には、慰謝料請求できる場合とできない場合があるよ。
どんな場合に慰謝料請求できるのかをチェックしてみよう!
胎児が生まれてきたら、慰謝料請求ができる
それでは、仮に被害者が胎児だった場合には、どのような扱いになるのでしょうか?
今回Aさんは、生後10ヶ月の赤ちゃんを連れていましたが、そうではなく、仮にAさんが妊娠中に事故に遭ったとしたら・・・のケースです。
この場合、事故当時まだ赤ちゃんは生まれていませんが、それでも慰謝料が認められるのでしょうか?
これについては、認められます。
交通事故の慰謝料は、不法行為にもとづく損害賠償請求の1つです。
そして、不法行為において、生まれる前の胎児は「既に生まれたものとみなす」と規定されています(民法721条)。
よって、事故当時に生まれる前の胎児であったとしても、事故によって損害を受けたら、相手に慰謝料請求することが認められています。
ただ、胎児が相手に慰謝料を請求するには、胎児が生きて生まれてくることが必要です。
胎児が相手に慰謝料請求できるのは「生まれたものとみなされる」ことが理由なのですから、実際に生まれてこなかった場合、権利の主体になることができないためです。
また、胎児が相手に慰謝料請求するとき、問題になるのは主に後遺障害慰謝料です。
具体的には、交通事故の影響で奇形になって生まれてきた場合に認められます。
胎児に対する慰謝料が認められた判例
たとえば、妊娠中の母親が交通事故に遭って、その後生まれてきた子供に四肢麻痺や精神発達障害が残った事案において、およそ5000万円の損害賠償が認められた事例などがあります。(千葉地裁S63.1.26)
2-2.胎児が慰謝料請求する場合の問題点
胎児が慰謝料請求をするとき、問題になるのが交通事故との因果関係です。
交通事故の直後に早産で生まれてきた場合などは比較的立証が容易ですが、そうでもなく、事故後しばらくしてから子供が生まれた場合には、子供の奇形や障害と交通事故との間に因果関係があるのかどうかがはっきりしないことがあります。
そうなると、被害者側としては「交通事故によって障害が発生しているから、慰謝料を支払ってほしい」と主張しても、相手は「それはもともとの子供の性質であり、事故とは関係がない」と言ってきます。
そこで、胎児が相手に慰謝料請求するには、医学的に十分な資料を揃えることが重要です。
- 交通事故の状況がどのようなものであったか
- それによって胎児にどのような影響があったのか
- 医学的に、胎児に発生した障害が交通事故によって起こるものとして妥当なものかどうか
など、適切に判断する必要があります。専門医に相談して意見を聞きながら慰謝料請求の手続きを進めましょう。
胎児でも生まれてくれば慰謝料請求できるんだね。じゃあ生まれてくることが出来なかった場合にはどうなるの?
交通事故によって流産、中絶したかどうかがポイントになるよ。
早速見てみよう!
3.流産、中絶した場合はどうなるの?
次に、交通事故が原因で流産や中絶した場合について、考えてみましょう。
たとえば、先の例で、Aさんが子供を妊娠中に事故に遭ったけれども、その後流産してしまったり、Aさん自身の治療のために中絶を余儀なくされたりしたケースです。
実際、胎児への影響があるため、妊娠中の女性は腹部のレントゲン撮影を禁止されていますが、交通事故の治療のためにレントゲンが必要になることがあります。
その場合、治療を優先しなければならないので、中絶しなければならないケースが結構あります。
このように、事故当時に胎児であった場合、実際に生まれてくることができなければ、上記の「生まれたものとみなす」という規定(民法721条)を適用してもらうことができません。
そこでその子供(胎児)は、相手に慰謝料請求することができません。
そうなると、Aさんは、子供を失っても泣き寝入りするしかないのでしょうか?
実は、このような場合、Aさん自身の賠償金の金額を増額することによって調整が行われています。
子供を流産したり中絶したりすると、母親は大きな精神的苦痛を感じるものです。
子供が生まれていない以上、子供自身の慰謝料が認められませんが、その分Aさんの慰謝料を増やしてもらえるということです。
判例でも、出産予定日の4日前の胎児が死亡した件で、母親の慰謝料として800万円が認められた例がありますし(高松高裁平成4.9.17)、妊娠18週のときに事故に遭って死産してしまった場合に、母親の慰謝料として350万円が認められたケース(大阪地裁平成13.9.21)、妊娠2か月のときに交通事故に遭って衝撃で流産してしまった場合に母親の慰謝料として150万円の慰謝料が認められたケースなどがあります。
実際にはどの位の慰謝料を請求する事ができるのかな?
慰謝料は入通院の期間や、後遺症などによって金額が変わってくるよ。詳しく調べてみよう!
4.子供や赤ちゃんの慰謝料はどのくらい?
それでは、子供や赤ちゃんが交通事故に遭ったとき、具体的にはどのような慰謝料が認められるのでしょうか?
以下で、順番に見てみましょう。
4-1.入通院慰謝料
まずは、入通院慰謝料が認められます。
これは、交通事故が原因で病院に入通院して治療をしたときに認められる慰謝料のことです。
病院に支払う治療費や通院交通費、付添看護費用などとは別に認められるものであり、入通院をした日数が長くなると、入通院慰謝料の費用も上がります。
入通院慰謝料の計算方法には3種類がありますが、もっとも高額になるのは裁判基準なので、それを用いて計算すべきです。
裁判基準では、軽傷のケースとそれ以外の通常のケガのケースで、入通院慰謝料の金額が変わります。
具体的には、以下の通りの金額となります。
通常のケガのケース
軽傷のケース
入通院慰謝料の金額について、子供か赤ちゃんか大人かによる違いはありません。
子供であっても、治療が必要になったらその分の慰謝料を請求することができます。
4-2.後遺障害慰謝料
交通事故で子供や赤ちゃんに後遺障害が残ったら、後遺障害慰謝料を請求することができます。
事故に遭った胎児がその後奇形をもって生まれてきた場合も同じです。
後遺障害慰謝料の金額は、後遺障害の等級によって異なりますが、具体的には以下の通りです(裁判基準)。
1級 | 2800万円(2600~3000万円) |
2級 | 2370万円(2200~2600万円) |
3級 | 1990万円(1800~2200万円) |
4級 | 1670万円(1500~1800万円) |
5級 | 1400万円(1300~1500万円) |
6級 | 1180万円(1100~1300万円) |
7級 | 1000万円(900~1100万円) |
8級 | 830万円(750~870万円) |
9級 | 690万円(600~700万円) |
10級 | 550万円(480~570万円) |
11級 | 420万円(360~430万円) |
12級 | 290万円(250~300万円) |
13級 | 180万円(160~190万円) |
14級 | 110万円(90~120万円) |
()内で幅があるのは、事案によって柔軟に対応するためですが、子供だからといって慰謝料が減らされるわけではありません。
事故の状況や相手の対応、事故後本人が受けた不利益の内容などによって、金額が調整されます。
後遺障害慰謝料も、子供か大人かによって金額が変わることはありません。
4-3.死亡慰謝料
子供や赤ちゃんが交通事故で死亡したら、死亡慰謝料も認められます。
子供や赤ちゃんは、死亡によって強い精神的な苦痛を受けるため、死亡と同時に慰謝料が発生すると考えられているのです。
ところが、死亡してしまったら、本人が慰謝料請求をすることができません。
そのため誰が慰謝料の請求権者となるのかが問題です。
この場合、慰謝料は相続人に相続されます。
相続人になる人は、民法によって規定されています。
配偶者は常に相続人になり、第1順位の相続人は子供です。
ただ、子供や赤ちゃんには配偶者も子どももいないので、第2順位である親が相続人となります。
両親がいる場合には両親が相続人となって子供の分の慰謝料を請求しますし、親も両方死亡している場合には、祖父母が相続人になって慰謝料請求をすることができます。
子供や赤ちゃんが死亡したときの死亡慰謝料の金額は、だいたい1800万円〜2600万円くらいです。
これは高額な裁判基準による数字ですから、任意保険基準や自賠責保険基準になると、これより大きく下がります。
赤ちゃんや子供が事故に遭った場合、実際には親の負担も大きいよね。
親に対しては慰謝料請求できないの?
子供が事故により死亡した場合や、後遺症が残った場合、付添によりかかった交通費などの実費は請求できるよ!
請求のための手続きについてもしっかりと調べておこう。
5.近親者に慰謝料が認められるのか?
今までは、子供や赤ちゃん自身の慰謝料について考えてきましたが、子供や赤ちゃんが事故に遭ってけがをしたり死亡したりすると、親も大きな精神的苦痛を被ります。
そこで、親自身に固有の慰謝料が認められないのかも問題です。
たとえば、冒頭のAさんのケースで、赤ちゃん自身の慰謝料だけではなく、Aさん自身に慰謝料が認められないのか?ということです。
5-1.死亡のケース
まず、子供や赤ちゃんが死亡したケースを見てみましょう。
この場合には、親には固有の慰謝料が明確に認められます。
民法711条において、不法行為によって被害者を死亡させた場合には、配偶者や子ども、親に対しても精神的損害を賠償しなければならないと定められているからです。
そのため、赤ちゃんが死亡したら、赤ちゃんの死亡慰謝料だけではなく母親と父親の固有の慰謝料も認められるのです。
胎児が生まれずに死亡した場合には、父親には慰謝料が認められないこともありますが、既に生まれている子供が死亡した場合には、親である父親にも固有の慰謝料が認められます。
また、子供が死亡した場合、親以外の兄弟姉妹や祖父母などの近親者にも固有の慰謝料が認められることがあります。
5-2.後遺障害のケース
次に、子供に後遺障害が残ったケースを見てみましょう。
この場合、子供に後遺障害慰謝料が認められることは明らかですが、それ以外に親の固有の慰謝料が認められるのでしょうか?
確かに、子供に一生残る後遺障害が残ったら、親は耐えがたい精神的苦痛を感じるでしょう。
しかし、後遺障害の場合、死亡の場合とは異なり、親の固有の慰謝料は認められないことが原則です。
本人が生きている限り、本人が慰謝料請求をするのが本筋ですし、民法711条がわざわざ「死亡のケース」に限定しているからです。
ただし、後遺障害の場合であっても、死亡と同じくらいの強い精神的苦痛を受けたと認められる場合には、例外的に近親者に慰謝料が認められています。
それが認められるのは、子供に要介護の重度な後遺障害が残った場合などに限られます。
具体的には、植物状態になってしまったり全身麻痺が残ってしまったりしたようなケースです。
これらの場合、親の苦痛は子供が死亡したのと同じ程度になるものと評価されるからです。
そこで、Aさんの場合も、もし子供が交通事故の影響で意識不明となり、そのまま植物状態になってしまったりすると、Aさん自身の慰謝料を相手に請求することができます。
5-3.後遺障害がないケース
最後に、子供に特に後遺障害も残らなかったケースを見てみましょう。
この場合、親には慰謝料は認められません。
そのため、子供の入通院慰謝料がすべてになります。
6.子供の場合に認められる損害
子供や赤ちゃんが交通事故被害に遭ったとき、慰謝料以外にも請求できる損害があります。
中でも次の2つは、特に注意した方が良いものなので、ご紹介します。
6-1.通院付添費
まず、通院付添費があります。
子供が事故でけがをしたら、その後病院に入通院をしなければなりませんが、入通院の際にかかった付添看護費用は損害費用として認められるので、相手に支払い請求することができます。
入院の場合には当然看護師についてもらうものですが、通院の場合には、通常の大人のケースでは、付添看護をつけないことが普通です。
母親が付添である場合でも、仕事をしている事もありますから、休業損害を被っている事もあるでしょう。
被害者が子供の場合、親が子供に付き添って病院に行かなければならないことが多いですし、Aさんの場合でも、子供は生後10ヶ月の赤ちゃんですから、当然Aさんが病院に連れて行かないといけません。
すると、この場合、通院でも付添費用が認められるのです。
金額は、1日あたり3300円程度になります。
相手の保険屋の担当者と示談交渉をするとき、相手は通院付添費用を入れずに金額を計算してくることがあるので、補償として、これをきちんと盛り込んでもらうよう、注意が必要です。
6-2.逸失利益
次に、逸失利益にも注意が必要です。
逸失利益とは、交通事故で後遺障害が残ったり死亡したりしたことによって、将来の収入が減少したりなくなってしまったりしたことによる損害のことです。
逸失利益が認められるのは、通常は収入がある人なので、働いている大人が対象になります。
逸失利益を受ける場合には、生きていた場合に、今後必要とされる生活費を控除し、生活費控除率を差し引いた上で計算される事になります。
しかし、子供や赤ちゃんが被害者の場合にも、逸失利益が認められます。
子供や赤ちゃんは将来成長して働いて収入を得る可能性が高いからです。
そして、子供や赤ちゃんの逸失利益は、子供の性別によって金額が変わります。
それは、この場合、賃金センサスという統計資料における平均賃金を使って計算するからです。
平均賃金は、男女によって異なり、男性の方が女性よりも高額になるため、男児の方が女児よりも逸失利益が高くなるのです。
最近は、女性の場合には男女の平均賃金を使うことにして多少の調整をしていますが、それでも男性の平均賃金よりは少なくなるので、不公平は是正されていません。
Aさんの場合にも、赤ちゃんの逸失利益を計算して相手に支払い請求することは可能ですが、子供が男の子か女の子かによって、異なる数値になることはやむを得ません。
7.Aさんの赤ちゃんはどのくらい慰謝料がもらえるのか?
それでは、本件でAさんは具体的に相手からどのくらいの慰謝料がもらえるのでしょうか?
これについては、赤ちゃんが受けた傷害の程度によって異なります。
けがが軽くて通院3ヶ月で済んだら、73万円くらいの入通院慰謝料がもらえます。
後遺障害が残って左手がなくなってしまった場合には、後遺障害5級が認定されて1400万円程度の慰謝料が認められますし、入通院した分の慰謝料も加算されます。
たとえば、入院3ヶ月、通院10ヶ月の場合なら入通院慰謝料は319万円となるので、慰謝料の合計額は1719万円(1400万円+319万円)となります。
死亡した場合には、2000万円程度の死亡慰謝料を支払ってもらうことになります。
事故に遭ってしまった時の適切な対応についても詳しく教えて!
事故後の対応によって、慰謝料がもらえなくなってしまう事もあるから注意しよう!
8.子供が交通事故に遭った場合の適切な対処とは?
最後に、子供や赤ちゃんが交通事故に遭ったときの適切な対応方法をご紹介します。
8-1.人身事故の届出をする
交通事故に遭ったら、まずは人身事故としての届出をすることが何より重要です。
人身事故として届出をしないと、自己の存在自体を認めてもらうことができないので、後から相手に賠償金の支払い請求をすることができないからです。
そのためには、事故が起こったらすぐに警察を呼んで、人身事故であるという申告をして、実況見分をしてもらいましょう。
8-2.すぐに病院に行く
事故に遭ったら、すぐに病院に行くことが重要です。
交通事故後、しばらくしてから病院に行くと、そのけがは交通事故以外の原因で発生したけがだと言われてしまい、慰謝料支払いを拒絶されてしまうおそれがあるためです。
また、子供は事故によって、どのようなけがをしているかがわかりません。
子供自身が上手に説明できないため、外からはわからなくても重大なけがをしている可能性もあるのです。
そこで、交通事故で実況見分が終わったら、すぐに病院に連れて行きましょう。
緊急を要する場合には、実況見分に立ち会うことなく救急車で病院に行くことになります。
8-3.症状固定まで通院する
子供が事故でけがをしたら、その後「症状固定」するまで通院を継続することが重要です。
症状固定とは、「それ以上治療を継続しても症状が良くならない」状態のことです。
交通事故の入通院慰謝料は、症状固定するまでの分が支払われるので、症状固定するまで確実に通院を続けたら、治療日数が多い分慰謝料の金額が上がります。
また、後遺障害は、症状固定した時点で残っている症状について認められるので、適切に後遺障害の認定を受けるためには、確実に症状固定するまで通院を続けることが必要となります。
8-4.通院費用の支払いを打ち切られたら、健康保険を利用する
交通事故後、通院をするときには相手から通院治療費の支払いをしてもらえることが多いですが、事故後の通院が長びいてくると、相手の保険会社から、保険金としての、通院費用の支払いを打ち切られることがあります。
相手は、「治療は終わって示談をしたい」などと言ってくることが多いです。
しかし、そのような言葉に乗ってはいけません。
交通事故後の通院は、必ず症状固定するまで継続すべきだからです。
相手が治療費の支払いを打ち切ってきたら、自分の健康保険を使って病院に通院しましょう。
一般的に、交通事故の通院では健康保険が使えないと思われていることがありますが、そのような制限はないので、堂々と利用すると良いです。
8-5.整骨院の費用も請求できる
子供が交通事故でむちうちになった場合などには、整骨院や接骨院に通院することもあります。
整骨院は病院ではありませんが、整骨院での施術についても治療費や慰謝料を支払ってもらうことができます。
ただ、整骨院の場合、「治療に必要である」かどうかが問題になることがあります。
相手から「交通事故のけがの症状改善に役立っていない」と言われると、慰謝料の支払を拒絶されることもあります。
そこで、整骨院に通院をするときには、事前に病院の医師に相談をして、医師に勧めてもらうか、最低限同意を得ておく必要があります。
医師の許可なしに勝手に整骨院に通院すると、トラブルの原因になるのでやめましょう。
8-6.領収証をとっておく
子供が入通院によって治療を行った際、健康保険を利用して通院をしたら、自己負担での支払が発生することが普通です。
その場合には、支払った金額についての領収証をとっておくことが必要です。
自分で支払った治療費については、後に相手に支払い請求をすることができますが、その際、いついくらの支払をしたのかを証明する必要があるからです。
通院が長期になる場合でもすべて捨てずにとっておきましょう。
8-7.なるべく定期的に頻繁に通院する
入通院慰謝料は、入通院の期間に応じて支払われますが、そのためには定期的にある程度の頻度以上で通院をする必要があります。
通院が不定期であったり通院日数が少なかったりすると、入通院の日数が、実通院日数の3.5とされてしまうので、短くなって慰謝料が減らされてしまうのです。
そこで、子供がけがをして確実に入通院慰謝料を受けとりたいなら、多少面倒でも最低週3、4回程度は通院を継続することをおすすめします。
8-8.後遺障害の等級認定を受ける
交通事故後、高額な慰謝料を獲得するには、確実に後遺障害の等級認定を受けることが非常に重要です。
等級認定を受けないと、後遺障害慰謝料の支払いを受けられないためです。
後遺障害の等級認定を受けるためには、損害保険料率算定機構という機関において審査を受ける必要があります。
確実に高い等級の認定を受けるためには、専門家である弁護士に手続きを依頼することをお勧めします。
8-9.通院付添費、交通費も忘れず請求する
子供や赤ちゃんが被害者の場合、親も一緒に通院しますし、交通費などもかさむことが多いです。
そこで、これらについても確実に請求しましょう。
親の付添看護費用や交通費も損害の内容として認められます。
付添看護費用は定額ですが、交通費については領収証をとっておいて、示談交渉時にまとめて請求しましょう。
自家用車で通院した場合には、ガソリン代や駐車場代、高速道路代なども請求することができます。
8-10.弁護士に示談交渉を依頼する
交通事故で、なるべく高額な慰謝料の支払いを受けたいなら、弁護士に示談交渉を依頼することが重要です。
弁護士が示談交渉をするときには、高額な裁判基準を使ってもらえるので、自分で示談交渉をするよりも確実に慰謝料の金額が上がるためです。
Aさんのケースでも、自分で示談交渉をすると慰謝料が400万円のケースにおいて、弁護士に示談交渉を依頼したら金額が800万円以上に上がることなども普通にあります。
子供は交通事故によって苦しんでいるのですから、正当に権利を行使して、高額な慰謝料を支払ってもらうべきです。そのためには、法律のプロである弁護士の力を借りましょう。
赤ちゃんや子供が交通事故に遭ってしまった時の対応や慰謝料についてしっかりと理解できたよ!
子供だからといって泣き寝入りしないで、損害を被った分は、しっかりと請求できるようにしよう!
まとめ
以上のように、子供や赤ちゃんが交通事故に遭った場合でも、相手に慰謝料請求することが可能です。
- 慰謝料は、基本的に大人の場合でも子供の場合でも金額が同じになります。
- 子供が死亡したり重度の後遺障害が残ったりすると、親にも固有の慰謝料が認められます。
- 確実に慰謝料を支払ってもらうためには、確実に症状固定するまで通院を継続し、後遺障害の等級認定を受けましょう。弁護士に示談交渉を依頼すると、弁護士費用がかかってしまいますが、慰謝料がアップするのでおすすめです。
今回の記事を参考にして、正当に権利を主張して、高額な慰謝料を支払ってもらいましょう。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。