解決までの流れ

適切な賠償金を獲得しよう。事故発生から解決までの流れを解説

投稿日:

クマ

交通事故を起こしてしまったら、まずは何をすれば良いの?

シカ

交通事故を起こしてしまった直後は、動揺していることが多いから、適切に対応できない事も多いよね。

今回の記事では、交通事故に遭ってしまった時の解決までの流れを詳しく説明するね!

 交通事故が発生したら、その後どのような流れで解決に至るのでしょうか?

きちんと理解しておくと安心です。

また適切に対応することによって有利な解決にもつなげやすいでしょう。

 今回は、交通事故が発生してから解決までの流れを解説していきます。

交通事故発生直後の流れ

交通事故に遭ってけがをしたら、以下のような流れで対応を進めていきましょう。

警察への通報と届け出

クマ

交通事故は、加害者と被害者、どちらが警察に連絡すれば良いの?

シカ

加害者、被害者どちらにも警察に通報する義務があるんだ。

相手が警察に連絡してくれるだろうと考えるのではなく、自分から通報しよう。

交通事故が発生したら、当事者(車両の運転者や同乗者)は必ず警察に事故の報告をしなければなりません(道路交通法721項後段)。

これは道路交通法によって課される義務なので、被害者であっても通報しなければ違法です。

また自分以外の人がけがをしていれば、可能な範囲で救護も行いましょう。

歩行者の場合には通報義務や救護義務はありません。

ただし通報しないと後で賠償請求が難しくなってしまうおそれもあるので、義務がなくても必ず警察への連絡をしましょう。

けがをしていたら「人身事故」として届け出る必要があります。

軽傷だからとか、加害者に頼み込まれたからという理由で物損事故にしてしまう方がいますが、そうすると後で「人身事故の証明書」を発行してもらえず、賠償請求で面倒な手続が必要になってしまいます。

むちうちなどではその場で痛みを感じないケースもありますが、調子がおかしいと思ったら人身事故として届け出ましょう。

通院・入院

クマ

怪我をしていなければ、病院へ行く必要はないよね?

シカ

交通事故を起こした直後は、気が動転している事もあって、怪我に気が付きにくいんだ。

気持ちが落ち着いてから症状が出始める事もあるから、交通事故後は病院へ行くのがお勧めだよ。

事故現場での対応が終わったら、必ずすぐに病院に行きましょう。

軽傷でも後から状態が悪化する可能性があります。

交通事故から時間を空けて通院すると「事故と無関係のけがではないか?」と思われて賠償金を払ってもらえない可能性も発生するので、事故直後に病院に行くことが重要です。

 通院中は、定期的に病院に通いましょう。

通院頻度があまりに低いと賠償金を減額されてしまう可能性があるからです。

後の後遺障害認定を考えるなら、通院時における医師とのコミュニケーションや受ける検査の内容等も重要です。

 通院時には、一度早い段階で弁護士に相談をしておくことをお勧めします。

相談をすれば、どのような後遺障害が認定される可能性があるのか、また認定を受けるために必要な検査内容や通院方法についてのアドバイスなどを受けられます。

症状固定

交通事故後の治療は「症状固定」まで継続します。

症状固定とは「治療を継続しても、怪我がそれ以上治らなくなった時点」です。

症状固定すると治療をしても意味がなくなるので、通院を終了します。

 ただし交通事故では症状固定時までの治療費や休業損害、入通院慰謝料が支払われるので、早期に治療を打ち切ると損をしてしまいます。

必ず医師が「症状固定」と判断するまで入通院を続けましょう。

 また症状固定時に残っている症状(後遺症)について「後遺障害」として認定される可能性があります。

症状固定したら後遺障害認定の準備を進めていきましょう。

交通事故による後遺障害の認定を受けるまでの流れ

クマ

症状固定と判断された場合には、どうすれば良いの?

シカ

症状固定となったら、次は後遺障害認定の手続きを進めよう。

症状固定後、後遺障害認定を受けるまでの流れは以下の通りです。

「後遺症」と「後遺障害」の違い

症状固定時に残っている症状を「後遺症」と言います。

ただ、後遺症が残ってもすべてのケースで「後遺障害認定」を受けられるとは限りません。

後遺障害として認められるのは、後遺症の中でも自賠責保険の「後遺障害認定基準」認定要件に合致するケースのみだからです。

単に「後遺症が残っている」だけでは、後遺障害慰謝料や逸失利益などの賠償金も支払ってもらえません。

 後遺障害慰謝料とは後遺障害が残ったことによる精神的苦痛に対する慰謝料、後遺障害逸失利益とは後遺障害が残ったことによって将来得られなくなってしまった収入です。

 症状固定時に何らかの後遺症が残ったら、正式に「後遺障害」として認めてもらうために「後遺障害等級認定」の手続きを進めていく必要があります。

きちんと「後遺障害」と認められて、はじめて高額な後遺障害慰謝料や逸失利益を払ってもらえます。

後遺障害の等級とは

クマ

後遺障害には等級っていうのがつくんでしょ?

シカ

そうなんだ。怪我の度合いに応じて等級が付くことになるよ。

等級の数字が少ないほど、重度の後遺障害として認定されるんだ。

自賠責で後遺障害認定を受けると、ケースに応じた「等級」をつけられます。

「等級」とは、後遺障害の程度や内容に応じたランクのようなものです。

後遺障害の等級は1級から14級まであり、1級がもっとも重度です。

当然、等級が上がるほど慰謝料や逸失利益などの賠償金も高額になります。

たとえば両手が失われた場合や植物状態になった場合などに1級が認定されます。

14級に認定されるのは、軽度なむちうちなどのケースです。

後遺障害の等級はどのようにして決定されるのか

後遺障害の等級は、自賠責保険が審査をして決定します。

そこで後遺障害認定を受けたいときには、被害者が自賠責保険に後遺障害認定の申請をする必要があります。

申請すると自賠責保険が「後遺障害に該当するか」「該当するなら等級はどれになるか」を審査し、後遺障害を認めるか、認めるなら何級にするか決定します。

自賠責保険での判断内容に不服がある場合、被害者は「異議申立て」ができます

異議申立ての申請先は自賠責保険です。

それでも自賠責保険の判断が変わらない場合「自賠責保険・共済紛争処理機構」というADRに調停を申し立てて判断をやり直してもらったり、訴訟を起こして裁判所に適切な等級を判断してもらったりすることも可能です。

後遺障害認定を受けるために必要な資料

クマ

後遺障害認定を受けるには、どんな書類が必要なの?

シカ

事前認定なら、後遺障害認定書だけ用意すればいいのだけれど、被害者請求の場合には、その他にもたくさんの書類が必要になるよ。

後遺障害の認定はどのような流れで受ければ良いのでしょうか?

まずは後遺障害診断書を入手しましょう

後遺障害診断書とは、後遺障害について特化した内容の診断書です。特別な書式があるので、自賠責保険から入手して医師に渡し、作成を依頼しましょう。

後遺障害診断書の内容次第で後遺障害の認定を受けられるかどうか変わってくるので、後遺障害診断書は非常に重要です。

 後遺障害認定請求の方法には「事前認定」と「被害者請求」という2種類があります。

事前認定とは、加害者の任意保険会社に後遺障害の等級認定の手続きを任せる方法です。

この場合、必要書類は後遺障害診断書のみで、それを相手の保険会社の担当者に渡せば手続きが完了します。

 被害者請求は被害者が自分で後遺障害認定請求をする方法です。

この場合、以下のようにたくさんの書類が必要です。

  • 交通事故証明書
  • 事故発生状況報告書
  • 診療報酬明細書
  • 診断書
  • 休業損害証明書
  • 交通費明細書
  • 後遺障害診断書
  • 検査結果に関する資料

被害者が自分一人で被害者請求を行うのは大変なので、できれば弁護士に依頼しましょう。

交通事故の示談までの流れ

クマ

交通事故から示談の流れを大まかに教えて!

シカ

よし!示談交渉までにはどんな手続きが必要になるのか、順を追ってみてみよう。

示談金とは

症状固定後、後遺障害認定も終わったら、いよいよ示談交渉を開始します。

示談交渉の目的は「示談金」の支払いを受けることです。

示談金とは、加害者と被害者が話し合って決定する損害賠償金のことですが、内訳として以下のようなものが含まれます。

  • 治療費
  • 入院付添費
  • 入院雑費
  • 通院交通費
  • 休業損害
  • 入通院慰謝料
  • 後遺障害慰謝料
  • 後遺障害逸失利益

 上記のような損害の1つ1つの項目について正しく計算し、合計額を出します。

それに過失相殺などを適用して、最終的に支払われるべき「示談金額」を決定し、相手から支払いを受けます。

示談交渉の流れ

示談交渉の流れは、以下の通りです。

  1. 症状固定して後遺障害認定を受ける
    まずは症状固定まで通院し、後遺障害認定を受けましょう。
  2. 相手の保険会社の担当者と話を始める
    後遺障害認定が終わったら加害者の保険会社の担当者と具体的な示談の話し合いを開始します。
    電話や書面を使ってやり取りするケースが多数です。
  3. 賠償金の計算や過失割合の認定を行う
    話し合いでは、個々の賠償金の計算や、被害者と加害者それぞれの過失割合の認定を行います。
    加害者側から「このくらいでどうですか」などと言われるので、被害者が納得したらその内容で決まります。
  4. 賠償金の金額や過失割合の数値について、双方すりあわせを行う
    賠償金の金額や過失割合の数値について、双方が納得できる数字を話し合って模索していきます。
  5. 最終的に合意できたら、示談書を作成する
    双方が合意したら「示談書」を作成します。
    通常は保険会社が示談書を作成して郵送してくるので、被害者が署名押印して返送すれば示談書が完成します。
  6. 示談書作成後、速やかに支払いを受ける
    示談書ができると、保険会社が速やかに指定した振込先に示談金を振り込んできます。

適切な賠償金を獲得するには

クマ

賠償金に納得できない場合にはどうしたら良いの?

シカ

交通事故案件に長けている弁護士に相談するのがお勧めだよ!

弁護士に依頼することで、高額な弁護士基準で示談金の請求が可能になるんだ。

示談の際、保険会社が提示する金額は法的に認められる基準よりも大幅に低くなっているケースが多いので注意が必要です。

任意保険会社は、法的な基準ではなく自社独自の「任意保険基準」で賠償金を計算するからです。

弁護士に相談すると、法的な基準で計算してくれるので、相手の提示額が低額であると指摘してもらえます。

いったん相手の提示内容に合意すると後で覆すのは困難となるので、示談書に署名押印する前に弁護士に相談しましょう。

交通事故の加害者となってしまった場合の流れ

クマ

交通事故の加害者となってしまった場合には、どうすれば良いのかな?

シカ

自分の加入している任意保険会社へ連絡をしたり、被害者へ謝罪をしたりする必要があるね。

加害者側の示談までの流れについても、チェックしてみよう。

加害者となった場合には、以下のような流れで手続きを進めましょう。

  1. 事故直後の加害者の義務
    交通事故を起こした加害者には、被害者の救護義務と事故現場での危険防止措置義務、警察への報告義務が課されます。
    これらはすべて道路交通法上の義務であり、果たさなければ罰則も適用されるので、必ずきちんと対応しましょう。
    特に救護義務を怠って走り去ると「ひき逃げ」になって重い犯罪が成立してしまうので注意が必要です。
  2. 保険会社への報告
    次に加入している任意保険に報告しましょう。
    電話で報告をすれば、保険会社側で担当者が決まり、後は保険会社が示談交渉の窓口になってくれます。
  3. 任意保険に加入していない場合
    任意保険に加入していない場合には、自分で被害者と示談交渉するしかありません
    また保険から賠償金が支払われないので、自分で自腹を切って支払いをしなければなりません。
    ただし自賠責保険に入っていたら、自賠責の限度額までは自賠責保険から支払いが行われます。
    自賠責保険にも入っていなかったら、全額が自腹になります。
  4. 被害者への謝罪
    事故を起こしたら、道義的な義務として被害者に謝罪をしましょう。
    入院先にお見舞いに行ったり自宅に菓子折などを持って訪ねて行ったりすると良いでしょう。
    誠意を見せることにより、刑事事件における処分も多少軽くなる可能性があります。
  5. 示談
    保険に入っていたら示談交渉は保険会社に任せることが可能です。
    入っていない場合、自分で話し合いをして賠償金額や支払い方法を決定する必要があります。
    示談ができたら示談書を作成して、支払いをします。

刑事事件について

クマ

交通事故の加害者は、逮捕されてしまう事もあるの?

シカ

事故の状況によっては逮捕されてしまう事もあるんだよ。

少しでも罪を軽くするためにも、出来るだけ早く、弁護士に相談するようにしよう。

交通事故(人身事故)の加害者には「犯罪」が成立するので、刑事事件になる可能性があります。

逮捕されなくても在宅のまま捜査が行われ、起訴されるケースが多くなっています。

略式起訴になれば罰金刑が言い渡されます。

罰金を支払ったら手続きは終わりますが前科がつきます。

通常起訴になったら法廷に出廷して裁判官によって裁かれます。

この場合、懲役刑を言い渡される可能性もあり、執行猶予がつかなかったら刑務所に行かねばなりません。

悪質な場合には、交通事故でも裁判員裁判になったり実刑になったりする可能性があります。

なるべく刑罰を軽くしてもらうには、早期の段階で刑事事件のノウハウを備えた弁護士に対応を依頼する必要があると言えるでしょう。

まとめ

クマ

交通事故発生から解決までの流れが良くわかったよ。

加害者でも被害者でも、弁護士に相談するのが大切なんだね。

シカ

自分一人で解決を考えるよりも、少しでも示談までを有利に、そして楽にできるように弁護士に依頼するのがお勧めだよ。

弁護士事務所によっては、加害者の相談を受け付けていない事務所もあるから注意しよう。

交通事故に遭ったら、事故直後、治療中、後遺障害認定、示談交渉の各段階で適切に対応する必要があります。

自分一人でできることには限度があるので、できるだけ早い段階で交通事故に積極的に取り組んでいる弁護士に相談しましょう。

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福谷陽子

福谷陽子

元弁護士・ライター。
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。

■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。

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