駐車場内で車を当て逃げされてしまったんだ。
当て逃げされてしまった場合には、どうしたら良いの?
駐車場内で発生した事故も交通事故だから、まずは警察に通報しよう!
今回の記事では、当て逃げされてしまった時の対処法や、注意点などを順を追ってみていこう。
駐車場内では、よく「当て逃げ事故」が発生します。
世間では「駐車場内の事故は交通事故ではない」などと言われますが、当て逃げ被害に遭ったらどのように対応するのが良いのでしょうか?
保険が適用されるのか、相手がわからないときにどうしたらよいのかなど、駐車場で当て逃げ被害者の立場になったときの対処方法を解説していきます。
まずは警察に連絡
駐車場内の事故は「交通事故」ではない?
一般に「駐車場内の事故は交通事故にならない」と言われます。
これはいったいどういう意味なのでしょうか?
実は道路交通法では、交通事故の定義について「公道上や一般交通の用に供する場所」で起こった事故と規定されています。
つまり公道や不特定多数の車が行き交う場所で発生した事故だけが「交通事故」であり、純然たる私有地内で車がぶつかっても「交通事故」ではないと理解されています。
たとえば個人所有の駐車場などは公道でも不特定多数の車が行き交う場所ではないので道路交通法上の「道路」とはいえず、そこで事故が発生しても交通事故にならないのです。
ただし駐車場や私有地でも「不特定多数の車が行き交う場所」で車が当たったら交通事故になります。
たとえばスーパーや飲食店の駐車場、商業施設の大きな駐車場などで当て逃げが発生した場合には通常「交通事故」として取り扱ってもらえます。
駐車場で当て逃げ被害に遭った場合でも、基本的には一般の交通事故と同じように対応を進めていきましょう。
駐車場で当て逃げされたら通報しよう
では実際に駐車場で当て逃げ被害に遭ったとき、何をすれば良いのでしょうか?
まずは通常の交通事故と同様に「警察に通報」しましょう。
道路交通法では、交通事故の当事者は警察に事故を報告しなければならないとされています。
また警察に報告しないと犯人を探すことも困難となります。
被害者の立場からすると警察に報告することによるメリットはありますがデメリットはありません。
当て逃げ被害に遭ったことと事故の状況、現場などを伝えて警察に来てもらい、状況を確認してもらいましょう。
交通事故証明書を取得する
警察を呼んだら他にはしなければいけない事はないの?
必要に応じて交通事故証明を取得しよう。
その他にも、警察に被害届を提出しておくのがお勧めだよ。
警察に届出をしたら、「交通事故証明書」が発行されるようになります。
交通事故証明書とは、事故の詳細な内容が書いてある公的な書類です。
以下のような情報が掲載されています。
- 事故車のナンバーなど
- 事故の当事者名
- 当事者の住所、電話番号
- 加入している保険会社名
ただし当て逃げの場合、相手情報の詳細は不明なので相手の欄には氏名等の詳細情報の記載はありません。
交通事故証明書は「自動車安全運転センター」に申請すれば取得できます。
交通事故から1週間くらい経過してから、ネット上で申請するか郵便局から専用の払込用紙で申請すると良いでしょう。
被害届を提出
当て逃げ被害に遭い、加害者の捜査をしてほしいなら警察で「被害届」を提出しましょう。
事故の報告をしても、必ずしも警察が積極的に捜査をしてくれるとは限りません。
できるだけ捜査を促すには被害届を提出した方が有効です。
後日警察署に行き、当て逃げ被害の被害届を提出しましょう。
当て逃げの証拠を集める
当て逃げって犯人を捕まえる事はできるの?
当て逃げ程度の事故の場合、警察が積極的に動いてくれないことが多いんだ。
警察に積極的に動いてもらうためにも、自分自身で犯人を見つけるための証拠を集めて警察に提出しよう。
当て逃げはひき逃げと比べると軽い犯罪なので、警察もさほど力を入れて捜査を行わないものです。
被害者としてはなるべく多くの証拠を用意して、警察に提示し、捜査活動を促しましょう。
以下で被害者が駐車場の当て逃げ事故の証拠を集める方法をご紹介します。
ドライブレコーダーを確認
自車内にドライブレコーダーを設置していた場合、当て逃げされたときの画像が残っている可能性があります。
録画内容を確かめて、相手の車両が写っていたら警察に持ち込みましょう。
管理者の協力を取り付け、防犯カメラの映像を入手する
駐車場には「監視カメラ」が設置されているケースが多数です。
当て逃げされた状況が撮影されている可能性が高いので、現場に監視カメラが設置されていないか確認しましょう。
実際に近年、監視カメラの映像から犯人が発覚する事例は極めて多くなっています。
カメラがどこにあるかわからない場合でも、見えにくい場所に設置されている可能性があります。
駐車場の管理者に電話をして当て逃げ被害に遭ったことを伝え、カメラの内容を見せてもらいましょう。
個人的にお願いしても見せてもらえない場合には、警察に行って「現場に防犯カメラがあって当て逃げの様子が写っていると思うけれど、見せてもらえない。警察の捜査によって管理者へ開示を求められませんか?」と相談してみましょう。
警察からの照会であれば、通常は駐車所の管理者がカメラの画像を開示します。
目撃者を探す
アナログな方法ですが、目撃者を探すやり方もあります。
たとえば駐車場にガードマンや誘導員が常駐しているケースでは、それらの方が当て逃げを目撃している可能性が高いです。
なるべく事故発生時に「当て逃げ現場を見ませんでしたか?」と聞き、見た人がいたら連絡先などを聞いて警察に話をしてもらいましょう。
現場で確認できなかった場合、後日でも良いのでなるべく早めに「その日その時間に誰が担当していたか」を確認し、担当者へ当て逃げ現場を見なかったか確認します。
もし事故現場を見た人がいたら詳細を聞いて、警察へ話をしてもらいましょう。
このようにして当て逃げ犯人についての情報を集めることができれば、警察も動きやすくなって当て逃げ犯人が逮捕される可能性が高くなります。
保険が適用されるのか
当て逃げの場合には、自動車保険は使えるの?
相手がわからないから相手の保険会社は利用できないよね。
使えるのは自分の保険だけになるよ。
だけど、自分の保険を利用する場合には、メリットやデメリットがあるんだ。
当て逃げでは、当面の間「加害者」が不明です。
加害者がわからないのに保険が適用される可能性はあるのでしょうか?
自賠責保険は適用されない
駐車場内の事故であっても人身事故であれば「自賠責保険」が適用され、治療費や休業損害、慰謝料などの保険金が支払われます。
しかし当て逃げは「物損事故」です。
事故によって誰もけがをしたり死亡したりしなかった事故を「物損事故」と言います。
自賠責保険は物損事故には適用されないので、当て逃げの場合には自賠責保険は適用されません。
加害者不明な間は任意保険も適用されない
それでは加害者の任意保険は適用されるのでしょうか?
通常の物損事故の場合には、加害者の「対物賠償責任保険」が適用されて、車の修理費用などを支払ってもらえます。
しかし当て逃げ被害の場合には、少なくとも当初の段階では加害者が不明ですから、どこの任意保険会社に加入しているかがわかりません。
加害者が見つかるまでは加害者の対人賠償責任保険に賠償金を請求できません。
加害者が見つかったら対物賠償責任保険に請求可能
後日加害者が見つかったときには加害者の加入している対人賠償責任保険に請求をして車の修理費用や代車費用などを請求できます。
そのためにも、なるべく多くの証拠を集めて警察に動いてもらう必要があります。
当て逃げに適用される保険
以上のように、当て逃げの場合には当面の間加害者側の保険は一切利用できません。
適用される保険はないのでしょうか?
実は当て逃げの場合、自分の「車両保険」を使える可能性があります。
車両保険とは被保険者の車両、契約車両が傷ついた時の修理費用を出してもらえる保険です。
車両保険が適用されれば自分の保険会社から車の修理費用などを出してもらえます。
当て逃げで保険を適用する場合の注意点
当て逃げで自分の車両保険を利用する場合には、どんなデメリットがあるの?
等級が上がってしまったり、免責されない金額が発生してしまう事があるんだよ。
当て逃げの際に車両保険を適用するときには、以下のような点に注意が必要です。
当て逃げには適用されない可能性がある
まず当て逃げの場合、必ず車両保険が適用されるとは限りません。
車両保険には通常2種類のコースがあります。
1つはリーズナブルなエコノミーコース、もう1つは補償の手厚いコースです。
保証の手厚いタイプの場合は当て逃げ被害にも車両保険が適用されるのが通常ですが、リーズナブルなエコノミーコースの場合には当て逃げ被害が補償対象外となっているケースが多数です。
当て逃げにも車両保険が適用されるのか、まずは加入している保険会社に確認してみる必要があります。
等級が下がる可能性がある
車両保険を適用される場合でも、車両保険にはデメリットがあるので要注意です。
それは保険の「等級」に関する問題です。
通常、車両保険を利用すると保険の等級が3等級も下がってしまいます。
自動車保険の金額は等級が高いほど安くなるので、車両保険を使うことによって次年度からの保険料が大幅に上がってしまう可能性が高まります。(保険の契約内容によっては下がる等級が1等級のケースもあります。)
ただし車両保険を利用しても等級が下がらない特約をつけている場合には、車両保険の利用による等級ダウンの心配はいりません。
車両保険を適用するときには、保険会社に等級に対する影響をしっかり確認する必要があります。
免責があること
車両保険には、一定の「免責額」が適用されるのが通常です。
免責額とは、一定の金額までは保険会社が責任を負わない金額です。
多くの場合、10万円や5万円まで免責とされており、その金額を超える部分にしか保険金が支払われません。
つまり免責される5万円や10万円は自腹になるということです。
ただし免責を0にする特約をつけていれば免責が適用されず、全額を保険会社に出してもらえます。
このように車両保険を適用すると「等級」や「免責」の影響でほとんどメリットがなくなるおそれがあり、注意が必要です。
等級維持特約や免責をなくす特約をつけているなら心配ありませんが、一般の契約内容にしている場合には利用しない方が良いケースも少なくありません。
車両保険を利用するかどうかは、車種や車の状態、かかる修理費用の見込み額などを考慮して、保険会社とも相談しながら慎重に判断しましょう。
保険会社に連絡する
自分が加入している保険の補償内容は、あまり理解していないかも…特約つけていたかなぁ?
保証内容を確認するためにも、当て逃げにあってしまったら、自分の保険会社へ連絡して相談してみるのがお勧めだよ。
当て逃げ被害に遭ったときには、自分の加入している保険会社にすぐに連絡を入れるべきです。
保険の内容は確認してみないとわからない
自動車保険を契約していても、契約内容を正確に理解していない方が多数です。
エコノミーコースになっているのか保障の手厚いものになっているのか、等級維持特約をつけているのかなど意識していない方もおられるでしょう。
保険会社に聞いてみたら、自分では意識していなくても等級維持特約や免責を0にする特約をつけているケースがあり、車両保険を適用するメリットが発生します。
確認しないと契約内容の詳細はわからないので、まずは保険会社に事故の報告をして相談するところから始めましょう。
過去の事例から参考になる情報を教えてもらえる
保険会社では、過去にさまざまな事例を取り扱っており、その中には当て逃げ被害の事例も多数あるはずです。
相談すれば「以前に当て逃げでこのような解決ができた事例がある」「ある人はこのように工夫して上手に解決できた」など教えてくれて、参考になる可能性もあります。
一人で悩んでいると悔しさだけが募って辛くなりますが、専門知識を持っている人に話を聞いてもらえると気持ちが楽になるものです。
まとめ
当て逃げされてしまった時の対処法や、保険を利用するメリット、デメリットが良くわかったよ!
当て逃げだからと諦めずに、自分自身で証拠を見つけることが大切なんだね!
当て逃げは諦めてしまう人が多いけれど、犯人を探し出すことができる可能性は0ではないんだ。
自分の車両保険で車体を直すことができる場合もあるから、警察と保険会社への連絡を忘れずに行うようにしよう!
当て逃げ被害に遭った場合、まずは警察と保険会社に報告をして、その後はできるだけ自力でたくさんの証拠を集めましょう。
相手が見つかったら相手の保険会社や相手本人にも賠償請求できます。
泣き寝入りする必要はないので、状況に応じて適切に対処を進めていってください。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。