頭痛やめまいが続いていると、慰謝料を多くもらう事ができるって聞いたんだけれど本当?
今回の記事では、交通事故後の頭痛やめまいは原因や、受け取れる慰謝料について、詳しく見ていこう。
交通事故に遭うと、頭痛、めまいや吐き気の症状が止まらなくなる方がおられます。
いつまでも治まらないと、不安になりますよね?
事故でめまいや吐き気に悩まされている場合、後遺障害が認定されて高額な慰謝料を請求できる可能性もあります。
今回は交通事故で頭痛、めまいや吐き気が起こる原因と後遺障害、慰謝料について解説します。
目次
交通事故後に頭痛、めまい、吐き気が出る場合にはむち打ちや脳障害の可能性が高い
考えられる病名について、チェックしていこう。
そもそも交通事故に遭うと、どうして頭痛やめまい、吐き気などの症状が起こるのでしょうか?
原因として多いのは「むち打ち」や「脳障害」です。
むち打ちとは、首の骨である「頸椎」の損傷によって発生するさまざまな症状の総称です。
頸椎内には「神経」が通っているので、頸椎を損傷すると運動機能や感覚機能などにいろいろな症状が顕れます。
事故に遭ったときには何も感じなくても、翌日以降に症状が出てくるケースもあり、要注意です。
脳障害とは、脳が損傷することによって発生する症状です。
交通事故後に発生するむち打ちや脳障害の分類
交通事故で起こりうるむち打ちや脳障害を分類すると、以下のようになります。
頸性神経筋症候群
事故の衝撃で「副交感神経」の働きが阻害されて生じる症状です。
めまいや頭痛、吐き気だけではなく、うつ状態となったり気分が苛立ったりする方もおられます。
バレ・リュー症候群
交感神経が異常な状態となり、自律神経失調症に似た症状が出るものです。
頭痛、めまい、吐き気だけではなく不眠、倦怠感、疲労感、食欲不振、下痢、肩こり、腰痛など全身に症状が顕れる可能性があります。
外傷性脳損傷
交通事故で脳出血、脳挫傷などの脳障害が発生すると、頭痛、めまいなどの症状が顕れるケースがよくあります。
軽症の場合、当初は気づかなくても後日に自覚症状が顕れて気づく方もおられます。
重症の場合には半身麻痺や感覚障害、意識障害などの重大な症状が発生する可能性もあり注意が必要です。
脳脊髄液減少症
脳脊髄液減少症は、事故の衝撃で脳を覆う膜が破れて中の髄液が漏れ出す症状です。
この場合にも頭痛やめまい、耳鳴りなどの症状が顕れる可能性があります。
交通事故後の頭痛、めまい、吐き気と後遺障害について
後遺症として認められると、後遺障害慰謝料の他にも、逸失利益を受け取ることもできるんだ。
交通事故後、頭痛やめまい、吐き気が収まらない場合には「後遺障害」として認められる可能性があります。
後遺障害として認められると高額な「慰謝料」や「逸失利益」を請求できるので賠償金が一気に増額されます。
具体的にどういったケースで後遺障害認定される可能性があるのかみてみましょう。
自賠責で後遺障害認定を受ける
後遺障害認定は加害者の自賠責保険が行っているため、認定を受けるには、自賠責保険へ後遺障害認定の申請を行い、「等級」を定めてもらう必要があります。
後遺障害には1~14級の「等級」があり、どの等級に認定されるかによって大きく慰謝料や賠償金の金額が異なります。
めまいや頭痛に苦しむ被害者が高額な慰謝料を受け取るには、なるべく高い等級の認定を受ける必要があります。
後遺障害が認定されたときに支払われる慰謝料と逸失利益
吐き気、頭痛、めまいの症状が残って後遺障害が認定されたら、どのような賠償金が払われるのでしょうか?
後遺障害慰謝料
交通事故で後遺障害が認定されると「後遺障害慰謝料」を支払ってもらえます。
後遺障害慰謝料とは、後遺障害が残ったことによって被害者が受ける精神的苦痛に対する賠償金です。
後遺障害が残ると誰でも同じように精神的苦痛を受けるので、被害者の年齢や性別、職業などに無関係に慰謝料が支払われます。
精神的苦痛の程度は後遺障害の程度に比例すると考えられるので、認定等級が高くなれば慰謝料が高額になります。
等級ごとの後遺障害慰謝料の相場は以下の通りです。
等級 | 後遺障害慰謝料の金額(弁護士基準) |
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
後遺障害逸失利益
後遺障害が残ったら「後遺障害逸失利益」も請求できる可能性があります。
これは「後遺障害が残ったことによって得られなくなった将来の収入」です。
後遺障害が残ると労働能力が低下して、将来獲得できたはずの収入を得られなくなるため、逸失利益として支払いを受けられます。
逸失利益を請求できるのは、基本的に事故前に働いて収入を得ていた人です。
ただし主婦や子ども、学生でも逸失利益を払ってもらえます。
逸失利益の金額は、後遺障害の等級が上がると高額になります。
また事故前の収入の高い人ほど高額になりますし、同じ収入なら若い人の方が働ける年数が長い分、高額になります。
高額な賠償金を得るには後遺障害認定が重要
頭痛、めまいや吐き気の症状が残っている場合、きちんと後遺障害認定を受けられたら「後遺障害慰謝料」と「後遺障害逸失利益」の両方を支払ってもらえて一気に賠償金が増額されます。
事故後は適切な方法で自賠責保険へ後遺障害認定請求を行い、なるべく高い等級の認定を受けることが大切です。
むち打ちや脳障害により後遺障害認定等級を取得するには
交通事故でむち打ちや脳障害となり、後遺障害認定を受けるにはどのように対応すれば良いのでしょうか?
良い治療機関を選ぶ
まずは「どこで治療を受けるか」が非常に重要です。
最新の医療機器を備えており、専門医が対応してくれる病院を選びましょう。
特に12級以上の等級認定を受けるには「MRI」を始めとした画像診断による検査結果で症状を証明することが必須です。
精度の高いMRI機器を使って適切に調べてくれる医療機関を選ばないと、適切に後遺障害認定を受けられなくなる可能性があります。
また難しい脳障害や脊髄損傷等のケースでは、専門医でないときちんと診られない可能性もあります。
適切な治療を受けないと、治るものも治らず苦しみ続けることになってしまうので、まずは専門医の所属する信頼できる病院を探して通院を開始しましょう。
定期的に通院する
むち打ちのケースでは、症状が劇的に改善することのないまま通院期間が長引きがちです。
仕事をされている方や家事育児に忙しい方などは、症状固定前に通院しなくなってしまうケースが少なくありません。
しかし通院を辞めてしまったらその時点で「完治した」とみなされて後遺障害認定を受けられなくなる可能性があります。
また通院を続けていても間隔が空きすぎると、「もはや通院は不要となった」と思われてやはり完治とみなされる可能性があります。
後遺障害認定を受けたければ、症状が続いている限り通院をサボらずに定期的に通いましょう。
通院のために仕事や家事を休んだら「休業損害」を払ってもらえるので、最低でも週に2、3回は通院するようお勧めします。
医師に症状を正しく伝える
医師に自分の症状を正しく伝えることも非常に重要です。
特にMRIなどの画像検査で異常を把握できないケースでは、被害者の自覚症状から後遺障害の有無を判断するしかありません。
たとえばまだ症状が残っているのにたまたま調子の良かった被害者に病院に行き「確かに今日は頭痛がありませんね」などと医師に伝えると「治った」と勘違いされてカルテに書かれる可能性があります。
すると後に後遺障害認定請求をしたときに「この時点で完治していた」とみなされて後遺障害非該当とされるでしょう。
症状の内容を伝えるときには、医師に勘違いをされないようにわかりやすく説明すべきです。
その日たまたま調子が良いからと言って、治ってもないのに「おさまりました」と告げてはなりません。
日常的にどういったことで苦しんでいるのか、全体的な症状を伝えましょう。
必要充分な検査を受ける
自賠責の後遺障害認定では、画像診断結果が非常に重視されます。
そこでまずは「MRI」「CT」レントゲンなどの画像によって症状を立証すべく努力しましょう。
事故当初は脳出血があっても時間が経つと消えてしまうケースなどもあるので、事故が起こったらすぐにMRI撮影することが重要です。
またMRI機器の中でも「精度」の高いものの方が細かい症状を捉えやすくなります。
なるべく最新の医療機器を備えている施設で検査を受けるようお勧めします。
むち打ちの後遺障害の立証では、MRIなどの画像診断以外に「神経学的検査」も役立ちます。
神経学的検査とは、筋力テストや反射テスト、ジャクソンテストやスパークリングテストなどの検査です。
専門医に相談しながら進めてもらいましょう。
自分ではどのような検査を受ければよいかわからないときには、交通事故の経験豊富な弁護士に相談すると過去の事例から参考となる情報を教えてもらえるものです。
後遺障害の等級によって異なる慰謝料
むち打ちや脳障害で認定される後遺障害の等級
むち打ちや脳障害で認定される後遺障害の等級は、後遺障害の程度によって異なります。
軽症なら低くなりますが重症になるほど高い等級が認定されます。
むち打ちの場合
むち打ちの場合には、12級または14級となるケースが多数です。
MRIやレントゲン、CTなどの画像検査で症状を把握できる場合には12級、画像では異常がわからないけれど症状があることを合理的に推認できる場合には14級となります。
バレ・リュー症候群の場合には後遺障害認定されないケースも多数ありますが、認定されるとしても14級となるのが通常です。
またむち打ちでも、脊髄にまで損傷が及んでいるような重症のケースでは9級などのより高い等級の認定を受けられる可能性があります。
脳障害の場合
脳障害で認定される後遺障害の等級は、むち打ち以上にケースバイケースです。
脳脊髄液減少症の場合には、9級、12級、14級のいずれかに認定される可能性があります。
9級となるのは「神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限される」場合です。
つまり症状のせいで、できる仕事が相当程度限定されてしまう場合に9級となります。
脳挫傷の場合には、意識障害の程度やその他の症状の程度によって認定等級が異なります。
重症の「高次脳機能障害」となったケースでは、7級や5級、それ以上の後遺障害認定が行われる可能性もあります。
等級によって異なる慰謝料
【後遺障害慰謝料の金額】
- 脳障害で7級に認定されると1,000万円
- 脳障害で9級に認定されると550万円
- 脳障害やむち打ちで12級に認定されると290万円
- 脳障害やむち打ちで14級に認定されると110万円
なお上記とは別に入通院期間に応じて「入通院慰謝料」も支払われます。
また認定等級に応じて「逸失利益」も払ってもらえるので、全体的な賠償金は上記よりもかなり高額になります。
少しでも高い等級認定を目指す方法
頭痛、めまい、吐き気がおさまらず後遺障害認定を受けたいなら、交通事故に詳しい弁護士に相談するようお勧めします。
素人では適切に対応できず「非該当(後遺障害がない)」とされたり低い等級になったりするリスクが高まるからです。
また後遺障害認定されるかどうか微妙なケースでは、相手の保険会社に手続きを任せる「事前認定」ではなく被害者が自主的に対応する「被害者請求」を利用しましょう。
交通事故の被害者が不利益を受けないように適切な賠償金を払ってもらうには、弁護士によるサポートが必須です。
事故後の頭痛やめまい、吐き気に悩まされているなら、まずは交通事故に詳しい弁護士に相談してみて下さい。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。