慰謝料はどのくらいもらえるのかな?
今回の記事では、半身不随になってしまった場合の慰謝料相場について、詳しく見ていこう。
まずは半身不随の症状や治療方法について、チェックしていくよ!
交通事故で重傷を負うと「半身不随」になってしまうケースがあります。
半身不随となって体の片側を動かせなくなってしまったら日常生活でも仕事上でも大きな不利益と精神的苦痛を受けるでしょう。
どのくらいの慰謝料を請求できるのでしょうか?
今回は交通事故で半身不随の後遺症が残りやすいケースやその際に請求できる慰謝料の相場について解説します。
事故で脊髄損傷などの重大な傷害を負ってしまった方、ご家族の方はぜひ参考にしてみてください。
交通事故による半身不随とは
半身不随の原因
半身不随とは、体の片側が麻痺してしまう障害です。
右半分または左半分が動かなくなるもので、「片麻痺」ともいわれます。
交通事故で半身不随になりやすいのは、脊椎や脳を損傷したケースです。
たとえば脊椎を骨折して中の脊髄が損傷した場合、脳が強く圧迫されたり揺さぶられたりして脳損傷を起こした場合などに半身不随になる可能性があります。
半身不随になって体の片側に麻痺が生じると、腕や足を完全に動かせなくなる方もおられますし、ある程度は動かせても動きが鈍くなったり、あるいは感覚が失われたりする方も少なくありません。
半身不随の症状
交通事故で半身不随になった場合の典型的な症状は、以下のようなものです。
- 麻痺している側の腕や脚を動かせない
- 麻痺している側の腕や脚を動かしにくい
- 麻痺している側の感覚がなくなる、感覚が薄くなる
- 麻痺している側の筋力が失われる
- 腸や膀胱の機能が失われて排便や排泄の障害が生じる
- 性機能が失われる
- 体温調節ができない
- 発汗調節ができない
- 脳損傷の場合、言語機能が失われて読み書きや話すなどの能力が低下する
半身不随といっても、必ずしも上記のすべての症状が出るわけではありません。
症状の程度や内容は個別のケースによって異なります。
詳細は病院で医師に診てもらい、状況に応じた治療を進めていきましょう。
半身不随の治療方法
半身不随となった場合の治療方法は、主にリハビリです。
筋力を強化したり、入浴や排泄などの日常に必要な動作をできるようにしたりするため、訓練を行います。
すぐには効果が出なくても徐々に回復していくケースもあるので、医師や理学療法士の指導のもと、辛抱強く作業療法や理学療法を継続しましょう。
完治はしなくても、麻痺が緩和されて日常生活を送れるようになる例はたくさんあるので、あきらめる必要はありません。
半身不随が完治する可能性は?
脳損傷や脊髄損傷して半身不随になった場合、完治する可能性はあるのでしょうか?
人によっては回復するケースもあります。
たとえば損傷の程度が軽く患者の年齢が若い場合などで、受傷後1週間程度で改善がみられるようであれば、完治する可能性もあると考えられるでしょう。
一方、リハビリを継続して半年程度が経過しても症状が全く改善しないなら、完治は困難となる可能性が高くなります。
その場合でもリハビリによって日常生活を楽に送れるようになるケースは多いので、症状固定するまで辛抱強くリハビリを継続しましょう。
半身不随になった場合に受けるべき検査
交通事故で半身不随となって、相手に治療費を請求したり後遺障害認定を受けたりするには、さまざまな検査によって症状を証明しなければなりません。
脊髄損傷や脳障害で特に重視されるのは、画像検査です。
事故直後から継続的にCTやMRI、レントゲン撮影を行い、損傷部位や程度を把握しましょう。
脊髄損傷については整形外科や脳神経外科、脳障害については脳神経外科で診察を受ける必要があります。
重症の場合には、脊髄や脳障害の専門科がある大きめの病院で検査や治療を受けましょう。
画像検査にプラスして「神経学的検査」を行うケースもあります。
神経学的検査とは、反射機能や感覚機能などの神経機能を確認するさまざまな検査です。
どういった検査が必要かは、個別のケースによって異なります。
専門の医師や、交通事故の後遺障害認定に詳しい弁護士からアドバイスを受けながら対応していきましょう。
片麻痺、四肢麻痺、対麻痺、単麻痺の違い
脳損傷や脊髄損傷した場合の麻痺には以下の4種類があります。
- 片麻痺…右半分または左半分に麻痺が残る場合です。
いわゆる「半身不随」はこちらに該当します。 - 四肢麻痺…両腕と両足すべてに麻痺が残る場合です。
もっとも重症です。 - 対麻痺…両腕または両足に麻痺が残るケースです。
両足に対麻痺が残ると「下半身不随」といわれます。 - 単麻痺…片方の腕または片方の脚に麻痺が残るケースです。
上記のどのタイプの麻痺になるかで認定される後遺障害等級や慰謝料の金額が変わってきます。
半身不随となったときの慰謝料は?計算基準によって賠償金額が違う!
それぞれの違いをチェックしてみよう。
交通事故で半身不随になったら、どのくらいの慰謝料を請求できるのでしょうか?
半身不随になったときの2種類の慰謝料
交通事故で半身不随となり後遺障害が残ると、以下の2種類の慰謝料を請求できます。
入通院慰謝料
事故で受傷したことに対する慰謝料です。
入通院した期間に応じて計算されるので、入通院慰謝料といいます。
入通院の期間が長くなるほど慰謝料額が上がります。
リハビリ期間も慰謝料計算の基礎に含めてもらえます。
途中でリハビリを打ち切ると慰謝料を減額されてしまうので注意しましょう。
症状固定するまでは治療を辞めずに我慢強く病院に通い続けてください。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料は、自賠責保険で後遺障害認定を受けたときに支払われる慰謝料です。
認定された等級によって慰謝料額が変わります。
脊髄損傷の場合、最高等級の1級が認定される可能性もあり、その場合の後遺障害慰謝料は2,800万円程度にもなります。
なるべく高い等級の認定を受けられるよう、しっかり証拠を揃えて後遺障害等級認定の手続きを行いましょう。
3種類の慰謝料の計算基準
実は交通事故の慰謝料計算方法には3つの種類があり、どれを適用するかで金額が大きく変わってきます。
- 自賠責基準…自賠責保険が保険金を計算するときの基準です。
一般的に3つの基準の中でもっとも低額になります。 - 任意保険基準…各任意保険会社が独自に定めている基準です。
保険会社によって金額が変わりますが、一般的には自賠責基準より多少高くなる程度に設定されている例が多数です。 - 弁護士基準…弁護士や裁判所が採用する法的な計算基準です。
法的な根拠を持つ正当な基準といえるでしょう。
金額的にも3つの基準の中でもっとも高額になります。
同じ半身不随であっても、上記のどの基準を適用するかで受け取れる金額が大きく変わります。
重症のケースになると、1,000万円以上の開きが出るケースも少なくありません。
慰謝料や賠償金を計算するときには、必ず弁護士基準をあてはめるべきといえるでしょう。
半身不随になったときの慰謝料はいくら?
2級と認定された場合には2,370万円、3級の場合には1,990万円と、等級によって後遺障害等級は大きく変ってくるんだ。
交通事故で半身不随となったとき、具体的にはどのくらいの慰謝料を払ってもらえるのでしょうか?
半身不随の慰謝料は認定された後遺障害等級によって大きく変わります。
以下では等級ごとの認定基準や後遺障害慰謝料の金額をみていきましょう。
1級に認定される条件と慰謝料
後遺障害1級に認定されるのは、高度の四肢麻痺や高度の対麻痺、高度の片麻痺で日常生活に常時介護を要する場合などです。
片麻痺(半身不随)の場合、片側の腕や脚を「まったく動かせない」か「ほとんど動かせなくなった」場合に高度の麻痺となって1級が認定される可能性があります。
自分ではほとんど何もできず、日常生活において常に介護が必要な状態になったら1級になると考えましょう。
弁護士基準による後遺障害慰謝料は2,800万円程度です。
2級に認定される条件と慰謝料
2級が認定されるのは高度な片麻痺や中程度の対麻痺などのケースで日常生活に随時介護を要する場合です。
常には介護が必要でないけれど、随時の介護が必要となったら2級になります。
後遺障害慰謝料の金額は弁護士基準の場合で2,370万円程度です。
3級に認定される条件と慰謝料
中等度の対麻痺や軽度の四肢麻痺などの場合、3級が認定される可能性があります。
この場合の後遺障害慰謝料は、弁護士基準で1,990万円程度です。
5級が認定される条件と慰謝料
中程度の片麻痺や軽度の対麻痺(下半身不随)、高度の単麻痺(片足が動かないなど)の場合には5級が認定される可能性があります。
半身不随の場合、中程度であれば5級となります。
中程度の麻痺とは、完全には硬直していないけれども動きが相当程度制限される場合などです。
5級の場合の後遺障害慰謝料は、弁護士基準で1,400万円程度となります。
7級が認定される条件と慰謝料
軽度の片麻痺や中等度の単麻痺などの場合、7級が認定される可能性があります。
半身不随の場合、「軽度の麻痺」の症状があれば7級になります。
軽度の麻痺とは、腕や脚を動かす機能が多少失われていて、基本的な動作はできても細かい動作はできない場合などです。
7級に認定された場合の後遺障害慰謝料は、弁護士基準で1,000万円程度となります。
9級に認定される条件と慰謝料
軽度の「単麻痺」が残った場合には9級が認定される可能性があります。
たとえば片足に軽い麻痺症状が残った場合などです。
9級に認定された場合の後遺障害慰謝料の金額は、弁護士基準で690万円程度となります。
12級に認定される条件と症状
生活に支障がない程度の軽度の麻痺が残った場合や感覚障害が残った程度であれば、12級が認定される可能性があります。
この場合の後遺障害慰謝料の金額は、弁護士基準で290万円程度となります。
半身不随になったら弁護士に相談を
交通事故で半身不随になってしまった場合、一般的には7級以上の後遺障害等級が認定されるケースが多数です。
このとき、弁護士に依頼するかどうかで後遺障害慰謝料の金額が大きく変わってくるので、注意してください。
たとえば後遺障害7級の場合、弁護士基準なら慰謝料額は1,000万円程度ですが任意保険基準なら500万円程度に下げられてしまうケースも少なくありません。
後遺障害1級となった場合、弁護士基準なら2,800万円程度ですが任意保険基準なら1,300万円程度に減らされる可能性があります。
適正な賠償金を獲得するには、弁護士に示談交渉を依頼する必要があるといえるでしょう。
半身不随になったら自分ではいろいろなことができなくなり、日常生活や仕事にも支障が生じるものです。
大きなストレスも感じているでしょう。
そんな中、あなたの強い味方となって保険会社との示談交渉をしてくれるのが弁護士の役割となります。
交通事故で半身不随になったなら、まずは一度弁護士に状況を話してアドバイスを受けてみてください。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。