今回の記事では、交通事故後の自宅療養で受け取れる慰謝料について、詳しく見ていこう!
交通事故後、医師の指示で「自宅療養」が必要になるケースも少なくありません。
自宅療養中も慰謝料を払ってもらえるのでしょうか?
実は自主判断で自宅療養しても慰謝料を払ってもらえない可能性があるので注意が必要です。
正しい対処方法を押さえておきましょう。
今回は事故後に自宅療養するときに慰謝料を受け取る方法や相場について解説します。
自宅療養でも慰謝料請求できる
事故によって怪我をしたとき、医師の指示によって自宅療養が必要になった場合には慰謝料を請求できます。
慰謝料とは、事故の被害者が受ける精神的苦痛に対する賠償金です。
交通事故で怪我をすると被害者は恐怖や痛みなどの精神的苦痛を受けるので、苦痛を和らげるため慰謝料が払われます。
自宅療養であっても怪我で苦しんでいることに変わりありません。
きちんと医師の診断があり、自宅療養が必要な状態であれば療養した期間に応じた慰謝料を払ってもらえます。
休業損害も請求できる
有職者の方が医師の指示によって自宅療養する場合には、日数分の休業損害も請求できます。
会社員の方が自宅療養中の休業損害を請求する際には、会社に休業損害証明書を作成してもらいましょう。
自営業や主婦などの方は、医師に詳しい診断書を書いてもらうなどして自宅療養の必要性や日数を丁寧に証明する必要があります。
自宅療養で支払われる慰謝料の種類と金額の目安
弁護士に依頼する場合と、依頼しない場合、両方の慰謝料相場をチェックしてみよう。
自宅療養によって支払われる慰謝料には以下の2種類があります。
入通院慰謝料
交通事故で受傷した被害者に支払われる慰謝料です。
入通院日数に応じて計算され、治療日数が長くなると慰謝料額が上がります。
自賠責保険の基準と弁護士や裁判所が用いる基準とで金額が異なるので、それぞれの相場や計算方法をみてみましょう。
自賠責基準の場合
自賠責基準の場合、「治療期間に対応する日数×4300円」の入通院慰謝料が払われます。
ただし実通院日数が少ない場合、「実通院日数×2×4300円」となります。
骨折後、医師の指示によってギプスをつけて自宅療養した場合には、入通院していたのと同じように日数に入れて計算してもらえます。
たとえば病院に3ヶ月間(91日間)入院してその後2週間ギプスをつけて自宅療養をしたら、4300円×(91日+14日)=451,500円の入通院慰謝料が支払われます。
弁護士基準の場合
弁護士基準は、弁護士や裁判所が賠償金を計算するときに適用する基準です。
「軽傷」と「通常程度以上の怪我」で慰謝料の金額が変わります。
軽傷の場合の基準は以下の通りです。
1カ月 | 19万円 |
2カ月 | 36万円 |
3カ月 | 53万円 |
4カ月 | 67万円 |
5カ月 | 79万円 |
6カ月 | 89万円 |
7カ月 | 97万円 |
8カ月 | 103万円 |
9カ月 | 109万円 |
10カ月 | 113万円 |
通常程度以上の怪我の場合、以下が相場となります。
1カ月 | 53万円 |
2カ月 | 101万円 |
3カ月 | 145万円 |
4カ月 | 184万円 |
5カ月 | 217万円 |
6カ月 | 244万円 |
7カ月 | 266万円 |
8カ月 | 284万円 |
9カ月 | 297万円 |
10カ月 | 306万円 |
骨折後に医師の指示によってギプスを付けて自宅療養する場合には、上記より高額な慰謝料が支払われる可能性があります。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料は、交通事故の被害者に後遺症が残り、自賠責で後遺障害等級認定されたときに支払われる慰謝料です。
残った後遺障害の内容や程度に応じて金額が変わります。
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
なお後遺障害慰謝料は後遺障害等級認定を受けた場合にのみ支払われます。
自宅療養して怪我が「完治」した場合には受け取れません。
自宅療養で慰謝料を請求するときの注意点
その他にも、整骨院や接骨院ではなく、必ず、整形外科を受診すること、示談交渉がうまく進まない場合には、弁護士に依頼することなどが必要だし、通院日数が極端に少なくならないようにすることも大切だよ。
自宅療養期間中の慰謝料を請求する場合、以下のようなポイントに注意しなければなりません。
入通院しないと慰謝料が払われない
交通事故の慰謝料は、病院へ入通院しなければ支払われません。
事故後に1回も病院に行かず自己判断で自宅療養しても、慰謝料を請求できないので要注意です。
自宅療養によって慰謝料を払ってもらいたければ、事故後早い段階で病院へ行ってください。
入通院治療を続けた後、症状が落ち着いた段階で医師の指示によって自宅療養すれば、日数に応じた慰謝料が払われます。
自宅療養には医師の指示が必要
入通院後の自宅療養でも、必ずしも慰謝料の算定根拠としてもらえるとは限りません。
たとえば1ヶ月間通院し、その後は病院へ行くのが面倒になったので自己判断で2週間自宅療養しても、慰謝料を支払ってもらうのは困難です。
「治療のために自宅療養が必要」とする医学的な根拠がないからです。
医師の指示がないと自宅療養による慰謝料を請求するのは困難と考えましょう。
退院後、ギプスを付けて自宅療養すると高額になる
骨折すると、退院後にギプスを付けて自宅療養しなければならないケースが少なくありません。
その場合、弁護士に示談交渉を依頼すると「入院中」と同じ高額な基準で慰謝料を算定してもらえる可能性があります。
弁護士基準の場合、通院時と入院時で慰謝料算定基準が異なり、入院時の方が慰謝料額は上がります。
退院後にギプスをつけて自宅療養すると「入院」と同等の扱いとなり、通院時の慰謝料より高額な慰謝料を受け取れる可能性があるのです。
弁護士基準で高額な慰謝料を請求するには示談交渉を弁護士に依頼する必要があるので、自宅療養による治療が終了したら、弁護士に相談してみてください。
保険会社は自宅療養期間を含めてくれないこともある
自宅療養でも医師の指示を受けていれば、入通院慰謝料算定の根拠としてもらえるはずです。
しかし被害者が自分で保険会社と示談交渉すると、自宅療養日数を慰謝料計算に含めてもらえないケースが少なくありません。
保険会社から自宅療養の慰謝料を否定されたら、早めに弁護士に相談しましょう。
弁護士に示談交渉を任せると自宅療養の慰謝料が認められやすくなり、高額な弁護士基準で慰謝料を計算できるので、金額が大幅に増額される可能性が高くなります。
整骨院や接骨院ではなく病院に通う
自宅療養で慰謝料を払ってもらうには、事前に医師による指示を受けなければなりません。
このとき「整骨院」や「接骨院」に通っても慰謝料を払ってもらえないので注意が必要です。
整骨院や接骨院の先生は柔道整復師であり、医師ではありません。
診察や検査もできず診断書を作成する権限も認められていません。
整骨院や接骨院の先生から「自宅療養してください」といわれて自宅療養しても、慰謝料は払ってもらえないので、必ず「整形外科」などの病院に通いましょう。
整骨院への通院で慰謝料を払ってもらう方法
整骨院や接骨院へ通院する場合でも「医師の指示」があれば慰謝料を払ってもらえます。
まずは整形外科に通い、症状が落ち着いた段階で医師に相談をして、許可を受けてから整骨院や接骨院に通院しましょう。
そうすれば整骨院などに通ったときの治療費や休業損害、慰謝料などの賠償金を請求できます。
通院時の注意点
交通事故に遭って病院へ通うときの注意点を示します。
なるべく積極的な治療を受ける
通院期間が長引いてくると、積極的な治療が行われにくくなります。
たとえばシップをもらうだけ、マッサージを受けるだけなどの通院日が続くと、保険会社からは「もはや完治している」とみなされて通院日数に含めてもらえないケースが多々あります。
病院に通うなら、なるべく積極的な検査や治療を行ってもらいましょう。
通院日数が少なくなりすぎないようにする
通院するなら、できるだけ頻繁に通うようお勧めします。
通院日数が減ると、慰謝料を減額される可能性が高まるからです。
たとえば自賠責基準の場合、通院日数が少ないと「実通院日数×2」の日数分の慰謝料しか払われません。
弁護士基準でも、通院日数が少ないと「実通院日数×3または3.5」の日数を基準として入通院慰謝料が計算されて慰謝料を減額される可能性があります。
忙しくしていても、できるだけ頻繁に病院に通ってください。
また「通院が面倒」だからといって自己判断によって自宅で休んでも「自宅療養」の慰謝料は請求できません。
治療を終了する時期は?
交通事故後の入通院治療は、いずれ終了しなければなりません。
自宅療養期間を含め、いつ治療を終えるべきか解説します。
治療を終えるのは「完治」または「症状固定」となったとき
入通院するケースでも自宅療養するケースでも、治療を終えるのは医師が「完治」または「症状固定」と判断したときです。
完治は「怪我が完全に治って元通りになったタイミング」症状固定とは「これ以上治療をしても症状が改善しなくなったタイミング」です。
完治、症状固定後の対応
完治したら保険会社と示談交渉を開始しましょう。
症状固定した場合、後遺症が残っていたら自賠責保険へ後遺障害等級認定の申請を行う必要があります。
結果が出てから示談交渉を開始しましょう。
症状固定後に通院した場合
症状固定したら、その後に通院しても治療費や慰謝料を払ってもらえないのが原則です。
ただし現状維持のためにリハビリ通院が必要な場合や症状固定後に再手術が必要な場合などには、症状固定後の入通院であっても治療費や休業損害、慰謝料などを請求できます。
「治療打ち切り」とされた場合の対処方法
交通事故に遭うと、被害者が完治または症状固定する前に、保険会社の判断で治療費打ち切りを打診されるケースがよくあります。
その場合、医師に相談しましょう。
「継続治療が必要」と判断されれば打ち切り後の治療費も請求できます。
保険会社から一方的に治療費を打ち切られたら健康保険を適用して治療を継続し、後に清算を求めましょう。
保険会社の言いなりになって治療を打ち切ってはなりません。
なお通院日数が月に10回未満となったり1ヶ月以上通院せずに期間が空いたりすると、治療打ち切りにされやすい傾向があります。
トラブルを避けるためには、できるだけ頻繁に通院するのがよいでしょう。
まとめ
示談交渉に困ったときには、弁護士に相談する方が良いんだね!
自宅療養した場合でも弁護士に依頼すると大幅に慰謝料額が上がります。
交通事故で高額な慰謝料を獲得するには弁護士によるサポートが必要ですので、まずは交通事故に詳しい弁護士の無料相談を申し込んでみてください。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。