今回の記事ではスピード違反車と事故に遭ってしまった場合の過失割合や慰謝料の決め方について、詳しく見ていこう。
スピード違反している車と交通事故に遭ってしまったら、どのくらいの慰謝料を請求できるのでしょうか?
相手の交通違反があるので当然、相手の過失割合が上がります。
比較的高額な慰謝料を獲得できる可能性が高いパターンです。
今回はスピード違反している車と事故に遭った場合の過失割合や慰謝料、相手が嘘をついたときにスピード違反を証明する方法などをお伝えします。
交通事故に遭ってお困りの方はぜひ、参考にしてみてください。
スピード違反車との交通事故による過失割合とは
事故の相手がスピード違反していた場合、相手の過失割合が通常より高くなる可能性があります。
スピード違反とは
道路交通法上、車両を運転するときには道路標識や政令によって定められる最高速度を超えてはならないと規定されています。
道路交通法22条1項
車両は、道路標識等によりその最高速度が指定されている道路においてはその最高速度を、その他の道路においては政令で定める最高速度をこえる速度で進行してはならない。
それにもかかわらず制限速度を超えて車を走らせると、高い危険を発生させてしまうため、過失割合が上がります。
制限速度を時速1キロメートルでも上回ると「速度超過違反(スピード違反)」となります。
ただし過失割合が加算されるのは、通常「時速15キロメートル以上の速度違反」をした場合です。
また、どのくらい制限速度を超過したかにより、加算される過失割合の数字が異なります。
時速15キロメートルから30キロメートル未満のスピード違反
制限速度を超過した速度が「時速15~30キロメートル未満」であれば「著しい過失」とされ、過失割合が5~10%程度加算されるケースが多数です。
たとえば制限速度が30キロメートルの道路を40キロメートルの速度を出して走行して事故を起こすと、著しい過失となって過失割合が5~10%程度加算される可能性があります。
時速30キロメートル以上のスピード違反
時速30キロ以上のスピード違反で事故と起こすと「重過失」となり、過失割合が10%から20%程度加算されるケースが多数です。
たとえば制限速度が30キロメートルの一般道で70キロメートルの速度で走行していたら、重過失が認定されて過失割合が10~20%程度加算される可能性が高くなります。
双方がスピード違反をしていた場合
双方とも時速15キロメートル以上のスピード違反していた場合には、双方の過失割合が加算されます。
スピード違反の程度が大きい方に、より高い過失が割り当てられると考えられます。
スピード違反を立証する方法
加害者が事故直後にスピード違反を認めていた場合には、実況見分調書をチェックする事でも、スピード違反を証明することが可能だよ。
スピード違反していても、示談交渉や訴訟になると認めない加害者が少なくありません。
そんなときには被害者側が相手のスピード違反を証明する必要があります。
以下でスピード違反を立証する方法をみていきましょう。
ドライブレコーダーを利用する
車にドライブレコーダーを搭載していたら、スピード違反を立証しやすくなります。
ドライブレコーダーにはっきり「相手が高速で運転していた画像」が映っていたら、スピード違反の動かぬ証拠となるからです。
自分がドライブレコーダーを持っている場合
こちらがドライブレコーダーを搭載しており、相手が高速で突っ込んできた画像が映っていたら、編集などをせずにそのまま証拠として提出しましょう。
相手の車にドライブレコーダーがついている場合
相手の車にドライブレコーダーがついている場合、相手が提出を拒否する可能性があります。
その場合、裁判を起こして提出させる方法があります。
訴訟において「文書提出命令」を申し立てると、裁判所から相手に対してドライブレコーダーの提出命令を出してもらえます。
相手が提出に従わない場合には、こちらの主張が真実であると認めてもらえます。
つまり相手が裁判所の命令に従わない場合、ドライブレコーダーの証拠がなくてもこちらの主張する「相手のスピード違反」を真実と認めてもらえるので、スピード違反を立証したのと同じ効果を得られます。
事故現場の防犯カメラをチェックする
相手のスピード違反を証明する方法として、防犯カメラも役立ちます。
事故現場付近に防犯カメラが設置されていたら、事故の様子が映っているケースも多いからです。
カメラの管理者に連絡し、事情を話して内容をチェックさせてもらいましょう。
相手の事件が刑事事件になれば、警察から調べてもらえる可能性もあります。
車両の損傷状況を確認する
事故後の車の損傷状況によっても相手のスピード違反を証明できる可能性があります。
相手が高速で突っ込んできたら、こちらの車の損傷度が通常より大きくなりやすいからです。
ただし素人では「どのくらいのスピードでぶつかられたらどういった損傷が生じるか」を判断するのが困難なので、専門家の助けが必要となるでしょう。
裁判になった場合、鑑定が必要になる可能性もあります。
実況見分調書や供述調書を入手する
交通事故後、警察が到着すると実況見分が行われ、結果が「実況見分調書」という書類にまとめられます。
また当事者双方から事情を聞いて「供述調書」も作成されます。
実況見分調書には、事故直後の現場の状況や車の破損状況などが詳しく書かれているため、見ればどういった事故が発生したのかがわかります。
供述調書には、事故直後の当事者の説明内容が記載されています。
事故の加害者は現場では過失を認めていても、示談交渉や裁判の段になると否定するケースが少なくありません。
そんなとき、供述調書に「スピード違反していました」と認める記載があれば、相手のスピード違反の事実を証明する資料となります。
実況見分調書や供述調書は検察庁へ申請して入手する必要があります。
自分で対応するのが難しい場合、弁護士に任せましょう。
悪質なスピード違反で慰謝料が増額される
スピード違反は危険な行為です。
特に住宅地や歩行者の多い場所、歩行者が優先される場所などで大幅な速度超過をすると、極めて高い危険を発生させてしまいます。
悪質なスピード違反があると、慰謝料が増額される可能性があります。
たとえば一般道で時速100キロメートル以上のスピードを出して走行するなどの悪質なスピード違反のケースでは、加害者が支払う慰謝料が相場より高額になる可能性が高いでしょう。
過失割合と慰謝料の関係
加害者の過失割合が高くなると、被害者が加害者へ請求できる慰謝料の金額が上がります。
交通事故の賠償金計算では「自分の過失割合の分、請求できる金額が減額される」仕組みになっているからです。
これを「過失相殺」といいます。
相手の過失割合が高くなると自分の過失割合はその分下がるので、その分多めに賠償金を支払ってもらえるのです。
たとえば賠償金の総額が800万円のケースで相手の過失割合が60%の場合、請求できる金額は480万円です。
相手がスピード違反をしていて過失割合が70%になると、請求できる金額は560万円となります。
相手が大幅なスピード違反をしていて過失割合が80%になれば、請求できる賠償金額は640万円まで上がります。
過失割合によって影響を受けるのは、慰謝料だけではありません。
過失相殺は「賠償金全体」に適用されます。
適切な補償を受けるには、相手のスピード違反をしっかり立証して正しい過失割合をあてはめてもらう必要があります。
法的に正しい過失割合の基準
交通事故の過失割合には、法的に一定の基準がもうけられています。
交差点での事故、一方通行違反があった場合、優先関係のある場所、信号機のある場所、ない場所、車同士の事故、車と歩行者の事故など、あらゆる類型ごとに法的な過失割合の基準があります。
これまでの裁判例の蓄積により、適正な数値を基準化したものです。
法的な過失割合の基準は「別冊判例タイムズ38 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」という本にまとめられているので、関心のある方は購入してみてみるとよいでしょう。
保険会社の提示する過失割合が正しいとは限らない
示談交渉を行う場合、相手の保険会社が「本件の過失割合はこのくらいです」と数値を提示してくるケースが多数です。
ただ保険会社の提示する過失割合の数字は必ずしも正しくありません。
加害者本人の間違った説明が前提となっているケースもありますし、保険会社が被害者に高めの過失割合を割り当てようとするケースもあります。
保険会社の提示額を鵜呑みにすると、賠償金を減らされて損をしてしまうリスクがあるので、そのまま受け入れるのはおすすめしません。
示談書に署名押印する前に、相手の提示する過失割合が適正か、確認しましょう。
納得できないなら、はっきりと断って「希望する過失割合の数字」を伝えるべきです。
過失割合に納得できない場合の対処方法
相手が嘘をついている場合や保険会社の提示する過失割合の数字が不適正で納得できない場合には、弁護士に相談しましょう。
弁護士であれば、スピード違反を証明する方法をよく知っています。
ドライブレコーダーの画像を解析したり実況見分調書を取り寄せて分析したりして、相手のスピード違反を効果的に立証してくれるでしょう。
また交通事故の適正な過失割合の数字も把握しています。
相手の保険会社の言い分が間違っていたら指摘して、訂正を促してもらえます。
さらに弁護士が対応すると、高額な「弁護士基準」が適用されるので、慰謝料額が大幅にアップします。
入通院慰謝料は1.5~1.8倍程度に上がるケースが多く、後遺障害慰謝料は2~3倍にまで増額されるのが一般的です。
過失割合の修正と慰謝料の増額の相乗効果により、自分で対応する場合と比べて賠償金額が5倍以上になる例も少なくありません。
特に事故後の通院が半年以上になった場合や後遺障害が残った場合には、必ず弁護士に依頼しましょう。
まとめ
過失割合に納得できない場合や、相手のスピード違反を立証したい場合には、弁護士に相談する方が良いって事が良くわかったよ。
相手がスピード違反していた場合、一定以上の速度超過であれば相手の過失割合が上がります。
極めて悪質な場合、慰謝料も増額される可能性があります。
正しい過失割合をあてはめてもらい、弁護士基準で高額な慰謝料を請求するには弁護士によるサポートが必要です。
スピード違反の相手と事故に遭ったら、まずは交通事故に詳しい弁護士へ相談してみてください。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。