目次
河川氾濫は自然災害
今回の記事では、河川が氾濫してしまった場合の保険の補償内容や、河川氾濫により事故が起きてしまった場合の賠償責任について詳しくみていこう。
自動車保険の中心的な商品は、対人賠償保険と対物賠償保険です。
交通事故を例にとると、前者は、交通事故によって相手を怪我させてしまった場合の治療費、休業損害、慰謝料等を賠償するための保険です。
後者は、交通事故によって相手の車両等の物を損傷してしまった場合の損害を賠償するための保険です。
これに対し、河川の氾濫は、自然災害です。
自然災害については、対人賠償保険や対物賠償保険は適用がありません。
自然災害による損害についても、適用のある保険契約をしていないと、保険金を受け取ることはできません。
利用できる保険は車両保険
保険会社の約款によって異なる可能性はありますが、一般的に、車両保険の対象は、台風、洪水、高潮が入っています。
これは、車両保険のタイプがいわゆる一般型でもエコノミー型でも対象となっています。
河川の氾濫については、台風、洪水、高潮といったことが原因であると考えられますので、車両保険の適用の対象となると考えられます。
地震、噴火、津波は特約がないと対象外
これに対し、河川の氾濫ではなく、地震、噴火、津波が原因で車両が損傷した場合はどうでしょうか。
一般的に、車両保険の免責事由には、地震、噴火、津波を挙げていることが多いようです。
ですので、地震、噴火、津波が原因となって、車両が損傷する、流されるといった場合は、車両保険の適用外となります。
ただし、地震、噴火、津波を対象とする特約も存在します。
この特約は、地震、噴火、津波を原因として車両等が損傷した場合において、
- 一時金を支払うタイプ
- 車両保険のように車両の損傷に応じて支払うタイプ
があるようです。
また、この特約は、上記①②いずれも、地震、噴火、津波が直接の原因となった車両の損傷のみならず、地震、噴火、津波に伴う秩序の混乱によって生じた車両の損傷も対象としています。
自宅保管の場合が対象外となる可能性も
水害にあった場所によっても、車両保険の適用対象外となることがあります。
保険契約の内容によっては、自宅の車庫が車両保険の対象に組み込まれていないことがあります。
この場合、台風等が原因で自宅保管中の車両が水没したとしても、車両保険の適用はありません。
なお、この種の契約の場合、自宅の車庫で車両を擦ったといった車両の損傷も車両保険の対象となりません。
水害で車両保険を使った場合の等級変更等
水害で車両保険を使用した場合1等級下がる
自動車保険は、ノンフリート等級制度が採用されています。
等級は1級から20級までの20段階あり、等級の数字が大きいほど保険料が安く、等級の数字が小さいほど保険料が高くなります。
初めて自動車保険を契約する場合は、6等級から始まり、その後、保険を使用せずに保険契約を更新する(1年経過する)と、等級が1つ上がり(数字が増え)ます。
保険を使用すると、その内容に応じて等級が下がり(数字が減り)ます。
当然ですが、保険契約者としては、できる限り等級が下がらないことを望んでいます。
では、水害で車両保険を使用した場合、等級はどの程度下がるのでしょうか。
水害による車両保険の使用は1等級下がるというのが大方の保険会社の運用のようです。
なお、交通事故を起こし、対人賠償保険や対物賠償保険を使用した場合、一般的には3等級下がります。
事故有係数適用期間
事故有係数適用期間は、事故有係数を適用する期間のことをいいます。
事故有係数は、事故を起こした人(保険を使用した人)は事故リスクが高いということを前提として、保険料を割り増しする制度のことということができます。
例えば、事故を起こして保険を使用した15等級の人と事故を起こさずにいる15等級の人とでは、同じ等級ではありますが、前者の方が、保険料が高いということになります。
そして、事故有係数適用期間は、割増保険料が適用される期間のことですので、保険契約者としては気になるところです。
水害で車両保険を使用した場合の事故有係数適用期間は1年とされていることが多いようです。
なお、交通事故を起こし、対人賠償保険や対物賠償保険を使用した場合、事故有係数適用期間は3年とされていることが多いようです。
水害で自分の車両が流されて他車に衝突した場合
水害によって自分の車両が流されて、他車に衝突して、他車が損傷した場合、保険の適用はあるのでしょうか。
この場合、対物賠償責任保険の適用はありません。
また、通常、水害によって自己の車両が流された場合、不可抗力と判断されると考えられるため、自分の車両を他車に衝突させてしまった人は、他車の損害につき、賠償責任を負いません。
なお、衝突されて車両が損傷した人が車両保険を契約していた場合、車両保険の適用があれば、車両保険によって修理費等の保険金が出る可能性はあります。
水害対策の特約
その他にも、車の時価額までの補償ではなく、時価額にプラスして補償を受けることができる、新価特約を付けておくのもオススメだよ。
水害により起こった事故は、たとえ賠償責任を負う必要はないけれど、中には修理代を請求してくるような人もいるから、困った時には早めに弁護士に相談しよう。
既に話に出ていますが、地震、噴火、津波に係る特約があります。
この特約は、通常の車両保険では対象とならない地震、噴火、津波による車両の損傷を対象とすることができます。
その内容としては、
- 一時金が支払われるタイプ
- 通常の車両保険と同様、修理費等が支払われるタイプ
があります。
次に、保険会社によっては、新価特約という特約もあります。
通常の車両保険では、車両保険を使用する際に、車両の時価額を認定し、修理費が時価額を上回る場合、時価額までしか保険金が出ません。
また、全損の場合も、時価額までしか保険金が出ません。
それに対し、新価特約を契約しておくと、保険会社との間で契約している協定価格を基に、保険金を支払ってもらうことができます。
つまり、本来の車両の時価額よりも多くの修理費がかかる場合でも協定価格まで支払ってもらうことができますし、全損の場合は協定価格まで支払ってもらうことができます。
必要に応じて、特約を契約しておくということも考えられます。
最後に、車両修理費の超過分を保証する特約があります。
既に話をしたとおり、通常の車両保険では、修理費は車両の時価額が限度となります。
しかし、この特約を契約しておくと、保険契約で定めた上乗せ分(例えば、30万円や50万円)を保険金と支払ってもらうことができます。
車両を修理したいと思ったものの、時価額が壁になってしまうといった場合に役に立つ特約だろうと思われます。
阿部栄一郎
早稲田大学法学部、千葉大学大学院専門法務研究科(法科大学院)卒業。2006年司法試験合格、2007年東京弁護士会登録。
交通事故、不動産、離婚、相続など幅広い案件を担当するほか、顧問弁護士として企業法務も手がける。ソフトな人当たりと、的確なアドバイスで依頼者からの信頼も厚い。交通事故では、被害者加害者双方の案件の担当経験を持つ。(所属事務所プロフィールページ)
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故の加害者・被害者には、誰でもなり得るものです。しかしながら、誰もが適切に交通事故の示談交渉をできるわけではありません。一般の人は、主婦が休業損害を貰えることや適切な慰謝料額の算定方法が分からないかもしれません。ましてや、紛争処理センターや訴訟の対応などは経験のない人の方が多いと思います。保険会社との対応が精神的に辛いとおっしゃる方もいます。
不足している知識の補充、加害者側との対応や訴訟等の対応で頼りになるのが弁護士です。相談でもいいですし、ちょっとした疑問の解消のためでもいいです。事務対応や精神的負担の軽減のためでもいいですので、交通事故に遭ったら、一度、弁護士にご相談されることをお勧めします。