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芸能人やスポーツ選手が事故に遭ったら休業損害請求できるのか
芸能人やスポーツ選手の場合、自営業者と同じ計算方法で休業損害を請求できるよ。
今回の記事では、芸能人やスポーツ選手の休業損害の計算方法について、詳しく見ていこう。
芸能人やスポーツ選手は、会社から給与をもらっている会社員などとは異なる収入形態であることが多いです。
では、芸能人やスポーツ選手が事故に遭った場合、加害者に対して、休業損害を請求することができるでしょうか。
芸能人やスポーツ選手も、その収入形態に従って休業損害を請求することができます。
芸能人やスポーツ選手は、自営業者と似たような収入形態であることが多いと思われますので、自営業者と同様に計算することとなります。
基礎収入及び固定経費の日額を算出し、その日額に実際に休業した日数を乗じて、休業損害を算定することとなります。
自営業者の休業損害の算定方法

では、具体的に、自営業者の休業損害はどのように算出するのでしょうか。
上記のとおり、自営業者は、基礎収入+固定経費を休業損害の対象とします。
自営業者の基礎収入は、売上から経費を控除した所得金額となります。
また、自営業者の場合、事業のために借りている事務所の家賃など、実際に事業をしていなくてもかかる経費があります。
このような経費を固定経費といい、これも休業損害の対象となります。
例えば、簡易な例を挙げてみると、次のような計算となります。
【参考例1】
- 1年間の売上:5000万円
- 1年間の経費:1350万円(家賃等の固定経費が730万円、変動経費が620万円)
上記のような収入を得ている芸能人Aが事故に遭い、1か月連続(6月1日から6月30日)で完全に休業した場合の休業損害を計算してみましょう。
【計算例】
(基礎収入)
(5000万円-1350万円)÷365日=10万円
売上から経費を控除して基礎収入を算出し、その日額を算出します。
(固定経費)
730万円÷365日=2万円
自営業者の場合、固定経費も休業損害の対象となりますので、固定経費の日額を算出します。
(休業損害)
(10万円+2万円)×30日=360万円
芸能人Aの場合、休業損害の日額は12万円となります。そして、休業期間は30日ですので、休業損害は360万円となります。
上記の例は、1か月連続で完全休業した場合の例ですが、怪我が回復するにつれて、少しずつ仕事に復帰するという場合も多いと思います。
その場合、労働能力の喪失率(働けない程度)を段々と減らしていくように計算することもあります。
【参考例2】
先ほどの芸能人Aを例にとり、休業期間のうち6月1日から6月15日までは完全休業、6月16日から6月30日までは半分程度働いたとした場合の休業損害を計算してみましょう。
【計算例】
休業損害の日額は、上記と同様12万円となります。
(休業損害)
12万円×15日+12万円×50%×15日=270万円
休業期間は完全休業(100%)が15日、半分休業(50%)が15日ですので、休業損害は270万円となります。
なお、もう少し細かく労働能力の喪失率を考えることもあります。
上記は、確定申告などで収入が明らかになっていることを前提にしています。
では、例えば、芸能人Bが働いているにもかかわらず、確定申告をしていない場合はどうでしょうか。
確定申告をしていないということは、納税もしていないということになります。
このような場合は、休業損害は認められない可能性が高いです。
普段、納税をしていないにもかかわらず、事故に遭ったときだけ、自身の収入を認めてもらうということはできないと考えられますし、裁判所も同様に考えることが多いです。
本来の経費よりも多く経費を計上し、所得を低額にしている場合も同様です。
必要に応じて、修正申告をしてきちんと納税すれば、適切な休業損害を認めてもらえる可能性はあります。
では、働き始めたばかりで、まだ確定申告をしていない場合はどうでしょうか。
その場合は、1年未満でも、働いた期間の収入から休業損害の日額を算出して、休業損害を算定します。
【参考例3】
- 働いた期間は、1月1日から6月30日まで
- 上記期間の売上:1000万円
- 上記期間の経費:270万円(家賃等の固定経費が182万5000円、変動経費が87万5000円)
上記のような収入を得ている芸能人Cが事故に遭い、1か月連続(7月1日から7月31日)で完全に休業した場合の休業損害を計算してみましょう。
【計算例】
(基礎収入)
(1000万円-270万円)÷6×12÷365日=2万円
売上から経費を控除して基礎収入を算出し、1年分に直したうえで、その日額を算出します。
(固定経費)
182万5000円÷6×12÷365日=1万円
自営業者の場合、固定経費も休業損害の対象となりますので、固定経費の日額を算出します。基礎収入のときと同様、1年分に直したうえで、その日額を算出します。
(休業損害)
(2万円+1万円)×31日=93万円
芸能人Cの場合、休業損害の日額は3万円となります。そして、休業期間は31日ですので、休業損害は93万円となります。
ちなみに、後遺障害が認定された場合の逸失利益については、若年労働者の場合で、かつ、将来、平均賃金を得られる蓋然性がある場合には、基礎収入を賃金センサスの金額で算定することがあります。
芸能人やプロスポーツ選手の休業期間はどうなるのか

そんな時には休業損害はどうやって計算されるのかな?
事故における休業損害の算定の場合、その職業や症状に応じて、休業期間が認定されることになります。
例えば、足の骨折を例にとって考えてみます。
ダンスなどのパフォーマンスをメインとする芸能人は足の骨折が完治するまでは仕事はできないでしょう。
プロスポーツ選手も同様に考えられます。
それに対し、スタジオでのトークなどを中心に活動している芸能人の場合は、一定程度の治療を経れば、完治せずとも仕事ができることもあるでしょう。
次に、鼻骨骨折を例にとって考えてみます。
モデルをしている芸能人の場合は、人に見られる職業ですし、人よりも容姿が優れていることを求められている職業ですから、鼻骨骨折が完治しなければ仕事はできないでしょう。
それに対し、プロスポーツ選手の場合、そのスポーツにもよりますが、鼻骨骨折部分を固定すれば、仕事ができるという場合もあるでしょう。
このように、その職業や症状に応じて、休業期間が認定されることになります。
この点は、会社員の場合も同様です。
芸能人やプロスポーツ選手が休業損害を請求する場合の注意点

その他にも、休業していてもギャラが支払われている場合には休業損害から控除されるため注意が必要だよ。
プロスポーツ選手の場合、プロとして稼働する期間(シーズン)が決まっていることが多いので、怪我の影響で休業せざるを得なかった期間を把握できることが多いと考えられます。
それに対し、芸能人の場合、会社員と異なり、稼働日と休業日が明確ではありません。
芸能人の場合、元々休業日だったのか、稼働日であったにもかかわらず、怪我の影響で休業せざるを得なかったのかが分かりにくい場合があります。
そのような場合、スケジュール表や出演契約などを提示して、稼働日であったにもかかわらず、怪我の影響で休業せざるを得なかったことを証明する必要があります。
また、芸能人の場合、休業していても、一定のギャラが支払われる仕事がある場合、その分が休業損害から控除されることがあります。
例えば、歌の曲や歌詞の印税、書籍の印税、所属事務所から定額で支払われるギャラがある場合などが挙げられます。
さらに、休業損害は、過去の収入を基に算出する関係上、急に仕事が増えて収入が上がった場合などは、実情に応じた正確な休業損害とならないことがあります。
阿部栄一郎
早稲田大学法学部、千葉大学大学院専門法務研究科(法科大学院)卒業。2006年司法試験合格、2007年東京弁護士会登録。
都内の法律事務所勤務、弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所を経て、2026年四季の風総合法律事務所にパートナー弁護士として参画。交通事故、不動産、離婚、相続など幅広い案件を担当するほか、顧問弁護士として企業法務も手がける。ソフトな人当たりと、的確なアドバイスで依頼者からの信頼も厚い。交通事故では、被害者加害者双方の案件の担当経験を持つ。(所属事務所プロフィールページ)
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故の加害者・被害者には、誰でもなり得るものです。しかしながら、誰もが適切に交通事故の示談交渉をできるわけではありません。一般の人は、主婦が休業損害を貰えることや適切な慰謝料額の算定方法が分からないかもしれません。ましてや、紛争処理センターや訴訟の対応などは経験のない人の方が多いと思います。保険会社との対応が精神的に辛いとおっしゃる方もいます。
不足している知識の補充、加害者側との対応や訴訟等の対応で頼りになるのが弁護士です。相談でもいいですし、ちょっとした疑問の解消のためでもいいです。事務対応や精神的負担の軽減のためでもいいですので、交通事故に遭ったら、一度、弁護士にご相談されることをお勧めします。
