取得するのに期限ってあるのかな?
今回の記事では、交通事故証明書はどんな時に利用するのか、申請期限も合わせてチェックしていこう。
目次
交通事故証明書はなぜ必要?
交通事故証明書
交通事故証明書は、その名のとおり、交通事故の発生を証明する書面です。
そして、交通事故証明書には、
- 発生日時
- 発生場所
- 交通事故の当事者の特定事項
(氏名、住所、生年月日、車種、車両番号、自賠責保険、自賠責保険証明書番号、事故時の状況) - 事故類型
- 物件事故・人身事故の別
といった事項が記載されています。
交通事故訴訟においては、交通事故の存在を証明するための基本的な証拠としてほぼ必ず提出されるものといえます。
仮に、交通事故証明書が存在しない場合には、交通事故の存在から立証しなければならないこともあり、加害者側が交通事故の存在を争ってきた場合(派生日時や発生場所も含めて)、非常に苦労することになります。
また、交通事故証明書は、運転者などが交通事故の発生等を警察に届け出たことによって、発行され、実際の交通事故証明書は、自動車安全運転センター発行します(自動車安全運転センター法29条1項5号)。
※交通事故証明書のひな型(自動車安全運転センター法施行規則)
任意保険を利用するときに必要?
ここでいう任意保険は、加害者が付保している対人賠償責任保険のことをさしますが、加害者の対人賠償責任保険から保険金を支払ってもらうために、交通事故証明書が必要でしょうか。
交通事故証明書は、交通事故の存在、発生日時、発生場所、当事者といった交通事故の特定のために必要な情報が記載された書面です。
当然、加害者の対人賠償責任保険も、交通事故証明書があれば、保険契約者が交通事故の当事者であることが分かります。
ですので、加害者の対人賠償責任保険から保険金を支払ってもらうために、交通事故証明書がある方が良いのは間違いありません。
ただし、加害者(対人賠償責任保険の保険契約者)が交通事故の発生を認めているときなどは、加害者の対人賠償責任保険も保険金の支払対応をしてくれることもありますので、交通事故がなければ、加害者の対人賠償責任保険が保険金を全く支払わないというわけではありません。
後遺障害等級認定を受けるときに必要?
被害者が被害者請求(自賠法16条)によって後遺障害等級認定手続をする際、一般的に、必要書類として、交通事故証明書が要求されます。
私も、実務で扱った中で、交通事故証明書がない事案で後遺障害等級認定手続を行った事案はありません。
なお、交通事故証明書がない人身事故事案を扱ったことはあります。
しかしながら、交通事故証明書がない場合に、後遺障害等級認定手続ができないかというとそうではありません。
交通事故証明書は、道交法の適用のある場所でしか発行してもらえませんので、例えば、純粋な私有地で発生した交通事故の場合には、交通事故証明書が発行されない場合あります。
また、当事者が警察に交通事故の届出をしなかった(本来、運転者などは、道交法72条1項後段で交通事故の発生等を警察に届け出る義務があります。)場合などは、交通事故証明書が発行されません。
そのような場合に備えて、人身事故証明書入手不能理由書というものがあります。
人身事故証明書入手不能理由書には、
- 当事者
- 氏名・住所・生年月日・車両番号・自賠責保険番号・事故時の状況
- 事故の発生日時
- 事故の発生場所
- 届出警察署・届出
- 人身事故扱いの交通事故証明書を入手できない理由
といったものを記入して保険会社に提出して交通事故証明書に代えてもらうことができます。
つまり、交通事故証明書がない場合においては、人身事故証明書入手不能理由書を交通事故証明書に代えて保険会社に提出し、後遺障害等級認定手続を受けることができます。
ただし、上記⑥の人身事故扱いの交通事故証明書を入手できない理由として、受傷が軽微であることなどに〇をつけてしまうと、そういった事情も加味されて、後遺障害等級が付きにくくなってしまう可能性がありますので、その点は注意してください。
※人身事故証明書入手不能理由書のひな型(ソニー損保のHP)
交通事故証明書の申請方法
交通事故証明書の申請者
運転者などが交通事故の発生等を警察に届け出て、警察が自動車安全運転センターに交通事故の情報を提供し、同情報に基づいて、自動車安全運転センターが交通事故証明書を発行します。
交通事故証明書の申請者については、自動車運転安全センター法29条1項5号が、「当該事故における加害者、被害者その他当該書面の交付を受けることについて正当な利益を有すると認められる者」と定めています。
実務的には、申請者は
- 加害者
- 被害者
- 加害者又は被害者から委任を受けた者(親族や代理人弁護士)
- 遺族
- 保険会社
が交通事故証明書を申請しています。
交通事故証明書の申請方法
交通事故証明書の申込用紙は、自動車安全運転センターや交番に備えてありますので、最寄りの自動車安全運転センターや交番に行き、申込用紙を受領してください。
交通事故証明書の申請方法は、
- ゆうちょ銀行・郵便局での払込
- 自動車安全運転センターでの申し込み
- インターネットでの申し込み
の3つの方法があります。
交付手数料は600円で、各方法によって交付手数料に加えて手数料がかかります。
また、交通事故証明書の発行の申し込みから発行までは、7日から10日程度のようです。
なお、インターネットによる申し込みは、交通事故の当事者しか行えないようです。
※交通事故証明書の申込用紙のひな型(自動車安全運転センターのHP)
交通事故証明書の申請期限
交通事故証明書は、物件事故については交通事故発生から3年、人身事故については交通事故発生から5年で、原則として申請できなくなります。
なお、交通事故証明書は、警察署に交通事故の発生を届け出ていないと発行してもらえませんので、その点は注意してください。
まとめ
申請方法についても良くわかったよ!
- 交通事故証明書は、交通事故存在を証明し、また、交通事故の発生場所、発生日時、当事者といった基本的な事項が記載された非常に重要な書類
- 交通事故証明書が存在している方が損害保険会社から保険金を支払ってもらいやすいが、交通事故証明書がないからといって、損害保険会社が絶対に保険金を支払わないというわけではない。
交通事故証明書に代えて、人身事故証明書入手不能理由書を提出することで手続をすることもできる。 - 交通事故証明書は交通事故の当事者、交通事故の当事者から委任を受けた者、正当な利益を有する者であれば、発行申し込みをすることができる。
費用も発行手数料600円及び各種手数料程度で負担もなく、申請自体もそれほど難しいものでもない。
ただし、発行期限(物件事故については3年、人身事故については5年)がある点と警察に届け出ていないと発行してもらえない点には注意。
阿部栄一郎
早稲田大学法学部、千葉大学大学院専門法務研究科(法科大学院)卒業。2006年司法試験合格、2007年東京弁護士会登録。
交通事故、不動産、離婚、相続など幅広い案件を担当するほか、顧問弁護士として企業法務も手がける。ソフトな人当たりと、的確なアドバイスで依頼者からの信頼も厚い。交通事故では、被害者加害者双方の案件の担当経験を持つ。(所属事務所プロフィールページ)
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故の加害者・被害者には、誰でもなり得るものです。しかしながら、誰もが適切に交通事故の示談交渉をできるわけではありません。一般の人は、主婦が休業損害を貰えることや適切な慰謝料額の算定方法が分からないかもしれません。ましてや、紛争処理センターや訴訟の対応などは経験のない人の方が多いと思います。保険会社との対応が精神的に辛いとおっしゃる方もいます。
不足している知識の補充、加害者側との対応や訴訟等の対応で頼りになるのが弁護士です。相談でもいいですし、ちょっとした疑問の解消のためでもいいです。事務対応や精神的負担の軽減のためでもいいですので、交通事故に遭ったら、一度、弁護士にご相談されることをお勧めします。