慰謝料っていくら請求できるの?
今回の記事では、交通事故の加害者が無免許だった場合の対処法について、詳しく見ていこう。
まずは、無免許運転とは何か?加害者に請求できる賠償金の種類について、チェックしていこう。
交通事故に遭ったとき、「相手が無免許」のケースではどのように対処すればよいのでしょうか?
無免許運転でも保険が適用されるのか、誰にどのくらいの慰謝料を請求できるのかなど、正しい知識を持って対応しましょう。
今回は無免許ドライバーと交通事故に遭ったときのリスク、慰謝料や賠償金を請求できる相手や請求の手順を解説します。
無免許運転のドライバーと事故に遭ってしまった方はぜひ参考にしてみてください。
目次
相手が無免許運転の事故で受け取れる慰謝料、賠償金
無免許運転の相手と交通事故に遭ったらどのくらいの慰謝料や賠償金が払われるのでしょうか?
そもそも無免許運転とは
無免許運転とは、有効な免許を取得していない人が車やバイクを運転することです。
運転免許を一度も取得したことのない人だけではなく、いったん免許を取得しても更新せずに期限が切れている人、免許取り消しとなった人や免許停止中の人も「無免許」となります。
無免許運転は非常に危険なので道路交通法違反となり、厳しく処罰されます。
刑罰は「3年以下の懲役または50万円以下の罰金刑」です。
一方で、免許を取得しているけれども携帯していなかっただけであれば無免許ではありません。
ただし免許証不携帯も道路交通法違反となるので処罰対象となります。
刑罰は「2万円以下の罰金または科料」ですが、反則金制度も適用されます。
反則金の金額は3000円です。
無免許運転事故で発生する慰謝料
交通事故で被害者が負傷したり死亡したりすると、被害者は加害者へ慰謝料を請求できます。
慰謝料の種類については相手が無免許であっても免許取得者であっても変わりません。
以下の3種類となります。
入通院慰謝料
入通院慰謝料は、被害者が怪我をして入通院治療を余儀なくされたときに請求できる慰謝料です。
治療期間が長くなると慰謝料額は高額になります。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料は、被害者に後遺症が残って「後遺障害等級認定」を受けたときに支払われる慰謝料です。
重度な後遺症が残り高い等級の後遺障害認定を受けられたら慰謝料は高額になります。
死亡慰謝料
死亡慰謝料は被害者が死亡したときに遺族が請求できる慰謝料です。
被害者に扶養されていた人がいると慰謝料額は高額になります。
物損事故の場合
物損事故では慰謝料が発生しません。
相手が無免許でも、こちらが無傷であれば慰謝料は基本的に請求できないと考えましょう。
無免許運転事故で支払われる慰謝料以外の賠償金
事故の相手が無免許ドライバーの場合、慰謝料以外にも以下のような賠償金を請求できる可能性があります。
治療関係費
- 病院に支払う治療費
- 投薬費用
- 通院にかかる交通費
- 親族に付き添ってもらったときの付添費用
- 入院したときの入院雑費
- 器具や装具の費用
上記のような費用は交通事故によって発生した損害なので、相手に請求できます。
介護費用、自宅や車の改装費用
後遺障害が残って介護が必要になったら、生涯にわたる介護費用を請求できます。
自宅介護のために自宅を改装する場合には自宅改装費用を請求できますし、車を身体障害者用に改造する場合には車の改造費用も請求できます。
休業損害
治療のために仕事を休んだら、休業した日数分の休業損害を請求できます。
逸失利益
後遺障害が残ったら、労働能力が低下するので将来にわたる減収が発生します。
そこで将来の減収分を「逸失利益」として請求できます。
死亡した場合には一切収入を得られなくなるので逸失利益が発生します。
ただし被害者が死亡すると生活費がかからなくなるため、生活費が控除されます。
無免許運転の相手と事故に遭ったら、上記の損害項目をすべて合計した賠償金を請求しましょう。
無免許運転の場合、過失割合が上がる
相手が無免許運転をしていると、相手方の過失割合が高くなるケースが多数です。
無免許運転は「重過失」となるからです。
一般の交通事故に適用される基本の過失割合に対し、10~20%くらい相手方の過失割合が加算されて被害者側の過失割合が減算されるため、受け取れる賠償金が全体としてアップするでしょう。
無免許運転と通常の交通事故の違い、注意点
重大事故になると、その分多額の慰謝料が発生しがちだね。
その他にも、事故後、無免許の発覚を恐れてひき逃げをしてしまったり、無保険車であったりすることも多いんだよ。
相手が無免許の場合、どういった点が通常の交通事故と異なるのでしょうか?
注意点も含めてみてみましょう。
重大事故につながりやすい
無免許ドライバーが事故を起こすと、重大事故につながりやすい傾向があります。
無免許運転するような人は平気で無謀な運転をしたり、飲酒した状態で運転したりするケースが多いためです。
未成年が無免許運転するケースも少なくありません。
被害者に後遺障害が残ったり、最悪の場合には死亡したりしてしまう事故が数多く発生しています。
ひき逃げが多い
無免許状態で交通事故を起こすと、加害者は発覚をおそれるものです。
そのまま逃げて「ひき逃げ事故」となるケースが多々あります。
相手の刑事罰が重くなる
無免許運転は、それ自体が道路交通法違反の重大な違法行為ですので、交通事故を起こさなくても刑事罰が適用されます。
そこへもってきて交通事故を起こしたら、通常の過失運転致死傷罪だけではなく「無免許の加重」が行われるため、さらに適用される刑罰が重くなります。
保険に入っていないケースも多い
無免許で運転するような人はそもそも規範意識が低いため、きちんと保険に入っていないケースも少なくありません。
保険が適用されなかったら、加害者へ直接慰謝料や賠償金を請求する必要があります。
無免許運転の場合には誰に慰謝料を請求できる?
無免許運転の相手と事故に遭ったとき、誰に慰謝料などの賠償金を請求できるのでしょうか?
保険会社へ請求する
無免許であっても相手が保険に入っていたら、保険が適用されます。
無免許運転は加害者側の悪質な違法行為であり、その責任を被害者に負わせる理由はありません。
被害者は保護されるので自賠責保険はもちろんのこと、任意保険の対物対人賠償保険も適用対象となります。
相手が保険に入っていたり、相手の運転する車に保険がかけられていたりしたら、保険会社へ慰謝料や賠償金を請求しましょう。
車の所有者へ請求する
保険が適用されない場合であっても、車の所有者へ賠償請求できる可能性があります。
車の所有者には「運行供用者責任」が発生するためです。
たとえば相手が未成年の無免許ドライバーで親の車を運転していた場合、親へ慰謝料や賠償金を請求できます。親に資力があれば、賠償金を支払ってもらいやすくなるでしょう。
雇用主へ請求する
相手が会社名義の車を運転していた場合や仕事中に車を運転していた場合などには、相手の雇用主へ賠償金を請求できる可能性があります。
雇用主には「使用者責任」が発生するからです。
相手が会社名義の車に乗っていたら「運行供用者責任」が発生する可能性もあります。
会社に資力があれば賠償金の支払いを受けやすくなるでしょう。
加害者本人へ請求する
もちろん無免許運転ドライバー本人にも慰謝料や賠償金を請求できます。
相手に資力があるようなら、直接請求して支払いを求めましょう。
同乗者の責任
無免許ドライバーの車に同乗者がいた場合、同乗者へも損害賠償請求できるのでしょうか?
基本的には、同乗者には損害賠償義務は発生しないケースが多いと考えられます。
ただし同乗者があえて無免許の人に運転するように強く申し向けて運転をさせた場合などには同乗者に「共同不法行為」が成立する可能性があります。
たとえば同乗者が無免許の人を脅して無理に運転させた場合、優越的な立場を利用して半ば運転を強要した場合などには同乗者へ賠償請求できるでしょう。
また同乗者には刑事罰が適用されますし、同乗者が免許を持っている場合には免許の点数が加算される可能性もあります。
無免許事故の相手が保険に入っていない場合の対処方法
相手に資力がない場合には、政府保障事業を活用するのも良いし、自分が加入している任意保険の中で補償として活用できる物がないかどうかをチェックしてみることも必要だね。
無免許運転のドライバーと交通事故に遭い、相手が無保険のために賠償金が十分に支払われない場合、どう対処すればよいのでしょうか?
以下で効果的と考えられる方法を3つ、ご紹介します。
弁護士に示談交渉を依頼する
相手が無保険の場合、賠償金を請求できる可能性のある相手は以下のような人です。
- 車の所有者
- 相手の親
- 雇用主
- 加害者本人
上記のうち、資力の高い人へ請求しましょう。
相手と合意できたら必ず「賠償金支払いに関する合意書」を作成してください。
合意書は公正証書にすると、将来の不払いリスクを最小限度に抑えられます。
自分で交渉すると交渉が難航してしまうなら、弁護士に任せましょう。
スムーズかつ有利な条件で示談できる可能性が高くなります。
自分の任意保険を利用する
任意保険に入っている方は、自分の任意保険から以下のような保険金を受け取れる可能性があります。
- 搭乗者傷害保険
被保険者や契約自動車の搭乗者が受傷、死亡したときに支払われる保険金です。
定額計算で早期に支払われる特徴があります。 - 人身傷害補償保険
被保険者や契約自動車の搭乗者が受傷、死亡したときに支払われる保険金です。
現実に発生した損害をもとに賠償金額が計算されます。 - 無保険車傷害保険
相手が無保険の事故で被害者に後遺障害が残ったり死亡したりしたときに補償される保険です。 - 車両保険
車が壊れたら、自分の加入している車両保険を利用して修理できるケースがあります。
政府保障事業を利用する
相手が自賠責保険にも加入していない場合には、政府保障事業を利用しましょう。
政府保障事業とは、被害者を救済するために政府が行っている補償制度です。
自賠責保険・共済と同水準の補償を受けられるので慰謝料も支払われますし、後遺障害や死亡に対する補償もあります。
ただし同一生計の親族間の事故は対象外となり、労災保険や健康保険などから給付を受けた場合、その金額は控除されます。
また低額な自賠責基準でてん補金が計算されるため、重大事故の場合には全額の賠償を受けられない可能性が高くなります。
不足分は加害者へ請求したり人身傷害補償保険から填補を受けたりする必要があるでしょう。
相手が無免許の交通事故では一般の事故とは異なる対処を要求されるケースが少なくありません。
不利益を避けるため、早めに弁護士に相談してみてください。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。