今回の記事では交通事故の加害者と連絡が取れない場合にはどうしたら良いのか、相手の連絡先が分からない場合の対処法や、相手にペナルティを与える方法についても、詳しく見ていこう。
交通事故後、加害者と連絡を取れなくなってしまうケースが少なくありません。
特に相手が保険に入っていない場合には要注意。
そのまま逃げられてしまっては治療費も慰謝料も払ってもらえないリスクが高まります。
今回は交通事故の加害者と連絡が取れないときの対処方法をお伝えしますので、事故で泣き寝入りをしないため、ぜひ参考にしてみてください。
目次
事故で加害者と連絡が取れなくなるパターン
交通事故後に加害者と連絡を取れなくなってしまうのはどういったケースが多いのでしょうか?
よくあるパターンをみてみましょう。
加害者が任意保険に加入していないと連絡を取れないリスクが高くなる
交通事故後、加害者と連絡を取れないケースで非常に多いのは、相手が「任意保険未加入」の場合です。
相手が無保険の場合、保険会社が示談交渉を代行しないので相手と直接交渉しなければなりません。
加害者がこちらからの連絡を無視したり逃げてしまったりすると、連絡をとれずに賠償金を払ってもらえないリスクが発生します。
当て逃げ、ひき逃げの場合
当て逃げやひき逃げされた場合、加害者が発見されるまでは連絡の取りようがありません。
加入している保険会社もわからないでしょう。
もしも当て逃げやひき逃げの被害に遭ったら加害者の発見を容易にするために、相手の車のナンバーや色、車種などの特徴を控えて警察へできるだけ正確に申告しましょう。
加害者と連絡不能にならないため、事故現場における対処方法
事故後、どんなにちょっとした事故であっても、警察に届け出ることも大切だよ。
交通事故後に相手と連絡を取れない状態にならないため、事故現場でとるべき対応方法をお伝えします。
相手との連絡先を交換
交通事故後、加害者との連絡を確保するには、事故現場で相手の氏名や住所などの情報を聞いておく必要があります。
その場で確認して控えておかないと、相手がどこの誰かわからず連絡を取れないままになってしまうリスクも発生します。
氏名と住所はもちろんのこと、連絡を取りやすい携帯電話番号やメールアドレス、LINEアカウントなどを聞いてメモしたり、スマホに情報登録したりしましょう。
相手の加入している保険会社についての情報も聞いておいてください。
警察に報告する
交通事故を警察に報告することも重要です。
警察への報告は事故当事者の義務ですが、それ以上の意味合いがあります。
警察に届け出ると、「交通事故証明書」が発行されるようになるからです。
交通事故証明書には事故当事者の氏名や住所、電話番号、加入している保険会社(任意保険と自賠責保険)等の情報が記載されるので、自分で相手の連絡先を控えていなくても後から調べられます。
交通事故に遭ったら、被害者の立場であっても必ず警察へ通報しましょう。
加害者と連絡が取れない場合の対処方法
だけど、無保険車の場合には、交通事故紛争処理センターを利用したり、弁護士に依頼したりしながら、交渉を進める必要があるね。
交通事故後、相手と連絡をとれない場合の対応手順をパターン別に示します。
相手が任意保険に加入している場合
相手が任意保険に加入しているなら、加害者本人と直接連絡をとる必要はありません。
対人対物賠償責任保険には示談代行サービスがついているので、相手の加入している保険会社と示談交渉を進めることになります。
こちらも任意保険に加入していれば、保険会社同士で交渉を進めてもらえるので、自分で対応する必要はありません。
ただしこちらの過失割合が0の場合には保険会社が示談を代行してくれないので、自分で相手の保険会社と話し合いを進める必要があります。
1人で対応するのが不安であれば、弁護士に依頼しましょう。
交通事故証明書を取得して連絡先を把握する
相手がどこの任意保険に加入しているかわからないときや、相手の直接の連絡先を知りたいときなどには、交通事故証明書を取得してみてください。
交通事故証明書には相手の氏名、住所や電話番号、加入している保険会社名の記載があるので、相手の連絡先を把握できます。
交通事故証明書は郵便局でも申請できますし、お近くの自動車安全運転センターの窓口でも交付してもらえるので、都合の良い方法で申請してみてください。
相手が無視する場合
相手の居場所はわかっているけれど、無視されて連絡をとれない場合には以下のように対応しましょう。
ADRや調停を利用する
1つ目は交通事故紛争処理センターや日弁連交通事故相談センターなどの「交通事故ADR」を利用する方法です。
ADRとは裁判外の紛争解決機関をいいます。
ADRを利用するとADRから相手を呼び出してくれるので、話し合いを進めやすいでしょう。
また裁判所の調停も利用できます。
調停を申し立てると裁判所から相手を呼び出してもらえますし、調停委員を交えて話し合いを進めるので相手と直接やり取りする必要はありません。
訴訟を提起する
相手が不誠実で話し合いの余地がない場合などには、訴訟を起こすのも対処方法の1つとなります。
訴訟を提起すると裁判所から相手に呼出状が送られ、相手が反論も出頭もしなければこちらの言い分が全面的に認められて支払い命令の判決が下されます。
ただし訴訟を1人で起こすのは難しいので、交通事故に詳しい弁護士に依頼しましょう。
弁護士に依頼する
相手の連絡先が不明な場合でも相手が不誠実で困った場合でも、弁護士は強い味方となってくれます。
交通事故証明書を入手したり住民票をとったりして相手の居場所を調べてもらえますし、示談交渉を任せれば有利に交渉を進めてもらえます。
ADRや調停のアドバイスももらえますし、不誠実な加害者へ訴訟を起こす場合にも代行してもらえて安心です。
弁護士に依頼すれば、事故の加害者と直接やり取りする必要がありません。
相手と連絡をとれなくて困ってしまったら、交通事故に詳しい弁護士に相談してみてください。
無保険の加害者と連絡を取れない!示談交渉の進め方
どうしたら賠償金を払ってもらえるのかな?
示談が完了したら、面倒でも、示談書は公正証書にしておくようにしよう。
加害者が無保険で連絡を取れない場合、以下の手順で示談交渉を進めましょう。
内容証明郵便で請求書を送る
相手が不誠実で電話やメールを無視する場合「内容証明郵便」を使って請求書を送ってみてください。
請求金額や支払期限、無視した場合には訴訟を起こす可能性があることなどを記載すると、相手に強いプレッシャーをかけられます。
それまでは連絡を無視していた加害者でも、内容証明郵便が届いたら話し合いに対応するケースが少なくありません。
合意書を作成する
相手と話し合って賠償金額や支払い方法について合意できたら、合意書を作成しましょう。
口約束では払われない可能性があるので、必ず書面化すべきです。
公正証書にする
相手が無保険の場合、示談書は公正証書にしましょう。
公正証書を作成しておけば、相手が支払わないときに給料や預金、不動産や車などを差し押さえられます。
相手と連絡を取れないときにお金を受け取る方法
加害者がわからない場合には、政府保障事業を利用しよう。
相手と連絡を取れず賠償金が支払われなくて困ったとき、以下の方法で保険金などのお金を受け取れます。
自賠責保険へ被害者請求する
加害者が無保険でも、自賠責保険には加入しているのが一般的です。
その場合、加害者の自賠責保険へ被害者請求を行い、人身損害に対する保障を受けましょう。
自賠責基準なので低額ではありますが、治療費、休業損害、慰謝料などの支払いを受けられます。
後遺障害が残ったら後遺障害に対する慰謝料や逸失利益も払われます。
政府保障事業を活用する
ひき逃げされた場合や相手が自賠責保険にも入っていない場合「政府保障事業」から「てん補金」というお金を受け取れます。
てん補金の支払基準は自賠責保険と同等です。
高くはありませんが、治療費や休業損害、慰謝料、後遺障害に対する保障も受けられます。
お近くの損害保険会社が申請窓口となっているので、まずは相談してみてください。
なお政府保障事業から支払いを受けた場合、政府は加害者へ「求償」します。
加害者が逃げ得になるわけではないので安心しましょう。
自分が加入している任意保険から保険金を受け取る
自分の加入している任意保険会社から保険金を受け取れるケースもよくあります。
たとえば人身損害に対しては、人身傷害補償保険や搭乗者傷害保険が適用されて保険金が支払われます。
人身傷害補償保険は「実際に発生した損害」を基準に保険金が計算され、搭乗者障害保険は「入院1日○○円」など定額で払われます。
自分が契約者や被保険者になっていなくても、配偶者や親子などの家族の保険を使える可能性があります。
自転車に乗っているときや歩行中の事故にも適用される保険が多いので、まずは保険会社に問い合わせてみましょう。
連絡を無視する不誠実な加害者にペナルティを与える方法
どうにかしてペナルティを与えることはできないの??
加害者に連絡をしても無視されて不誠実な態度をとられるようであれば、以下のような方法でペナルティを与えられます。
訴訟を起こす
相手が不誠実なら、損害賠償請求訴訟を起こしましょう。
訴訟で支払い命令の判決が出たら、相手の財産を差し押さえて賠償金を回収できます。
給料や預貯金、自宅などを差し押さえると、相手に対するペナルティにもなるでしょう。
訴訟を起こすと実費と弁護士費用がかかりますが、判決が出ると弁護士費用の一部について支払い命令を出してもらえます。
弁護士費用として認められるのは「賠償金額の1割」です。
途中で和解した場合には弁護士費用は支払われません。
なお請求金額が60万円以下であれば少額訴訟を利用できます。
手続きが簡単なので、弁護士に依頼せず自分で取り組まれる方が多数です。
刑事告訴する
人身事故や当て逃げの加害者が不誠実なら、刑事告訴を検討してみてください。
被害者が刑事告訴すると、加害者に対する刑事処分が重くなる効果があります。
加害者の方から「賠償金を払うので刑事告訴を取り下げて示談してほしい」と頼んでくるケースも少なくありません。
刑事告訴を受理してもらうには、自分で対応するより弁護士に依頼する方がスムーズです。
一度交通事故に積極的に取り組んでいる弁護士に相談してみましょう。
まとめ
示談交渉が上手く進まない時には、弁護士に相談する方が良いんだね!
加害者側が賠償金を支払ってくれないからといって、諦めるのではなく、出来るだけ早く弁護士に相談しよう!
交通事故の加害者と連絡が取れないからといって、泣き寝入りする必要はありません。
困ったときには弁護士に相談してみると、状況に応じたアドバイスを受けられます。まずは無料相談を利用してみましょう。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。