背中の痛みが残っている場合にはどのくらい慰謝料をもらうことができるのかな?
今回の記事では、事故後の背部挫傷で受け取れる慰謝料について、詳しく見ていこう。
交通事故に遭うと、背中に痛みが出るケースが多々あります。
背中のケガを「背部挫傷」「背部外傷」といいます。
事故後に背中が痛くなったらどのくらいの慰謝料が払われるのか、後遺障害として認定される可能性があるのか理解しておけば、示談交渉を有利に進めやすくなります。
今回は交通事故で背中が痛い場合の「背部挫傷」に関する慰謝料や対処方法をお伝えします。
目次
背部挫傷とは
背部挫傷(はいぶざしょう)とは、交通事故やスポーツなどの衝撃で背中に大きな力が加わりケガをしてしまった状態です。
「挫傷」という場合、皮膚表面には損傷がなく主に皮下組織が損傷した状態をいいます。
表層部にとどまらず骨や腱、内臓や神経の損傷をともなう可能性もあります。
症状としては皮下出血やむくみ、痛みなどが出るケースが多数となっています。
事故後、背中に痛みが出た場合、直接背中に傷口が見当たらなくても背部挫傷してしまった可能性があります。
脊髄に達する背部挫傷は重傷
背部挫傷が表面にとどまっていれば比較的軽傷ですが、脊髄に達していると重傷です。
脊髄は、脳からの司令を全身に伝える神経です。
脊髄を損傷すると、手足や内臓などに脳からの司令が伝わらず、各種の障害が発生します。
よくあるのが手足の麻痺、しびれ、運動障害、損傷した部位の疼痛などです。
事故後、背中が痛いときの原因
これって事故の影響って言えるのかな?
交通事故後、背中が痛い原因としてよくある例を示します。
- 事故の衝撃で背中や腰、骨盤部位などの部位に圧がかかったり無理に引っ張られたりして筋繊維が損傷した
- 追突された衝撃で頸椎や胸椎、腰椎などに圧がかかって神経を損傷した
骨折を伴うケースもありますし、骨折までしなくても骨に歪みが生じて痛む場合もあります。
事故時に背中を直接ぶつけなくても、むちうちで神経を損傷すると背中に痛みが出る可能性があります。
事故後に病院に行っていない場合、すぐに整形外科へ行って診察や検査を受けましょう。
背中が痛い場合の治療方法
事故後に背中が痛い場合の治療方法を示します。
検査を受けて痛みの原因を明らかにする
まずはすぐに整形外科へ行き、検査を受けて痛みの原因を明らかにしましょう。
背中の痛みの原因や程度を明らかにしなければ、適切な治療方法を決定できないからです。
医師の問診を受けて、MRIやレントゲンの撮影を行い、骨折がないか、神経損傷がないかなど確認してもらいましょう。
痛みの原因に応じた治療を受ける
検査によって背中の痛みの原因が明らかになって診断名がついたら、症状に応じた治療を受けましょう。
治療方法はケガの内容によって異なりますが、以下では一例を示します。
- 投薬…痛みが強い場合、痛み止めを処方して抑えます。
- 電気治療…患部に電気刺激を与える治療方法です。
- 温熱治療…患部を温めて痛みを緩和する治療方法です。
- マッサージ…急性の痛みが落ち着いてきたら、マッサージ治療が有効なケースもあります。
- リハビリ…症状が落ち着いてきたら、体の機能を回復させるためにリハビリを行うケースもあります。
- 外科手術…骨折した場合など、重傷の場合には外科手術が必要となる可能性もあります。
ひとことで「背中の痛み」といっても、原因や程度はさまざまです。
放置すると症状が悪化したり後遺症が残ったりする可能性もあるので、早めに医師にみてもらいましょう。
背部挫傷と後遺障害
脊髄損傷を併発している場合には、どの位体を動かすことができるのかによって、後遺障害等級は変わってくるんだ。
交通事故で後遺障害認定されたら、高額な後遺障害慰謝料や逸失利益を受け取れるので一気に賠償金額が上がります。
背部挫傷となった場合、後遺障害認定される可能性はあるのでしょうか?
むちうちや脊髄損傷になると後遺障害認定される可能性がある
背部挫傷単体で後遺障害認定される可能性は高くありませんが、「むちうち」になったケースや「脊髄損傷」したケースでは後遺障害として認定される可能性があります。
特に背部挫傷とむちうちは併発する事例も多いので、まずはむちうちとなった場合の後遺障害等級をみてみましょう。
12級13号
むちうちとは、頚椎に強い衝撃を受けて内部の頸髄が損傷してしまう外傷です。
むちうちになると、神経が損傷するので痛みやしびれなどの症状が出る可能性があり、背中にも痛みやしびれ、コリなどが生じるケースも多々あります。
むちうちになった場合、MRIなどの画像検査で異常を医学的に証明できれば、12級13号の後遺障害認定を受けられます。
12級となった場合の後遺障害慰謝料は290万円程度です。
有職者や主婦などの方が12級となった場合、逸失利益も請求できます。
14級9号
MRIなどで異常を証明できない場合でも、症状があることを合理的に説明できれば14級9号と認定される可能性があります。
14級の後遺障害慰謝料の相場金額は110万円程度です。
有職者や主婦などの方が被害を受けた場合、逸失利益も請求できます。
脊髄損傷の後遺障害
背部挫傷の程度が重く脊髄損傷してしまった場合には、より高い等級の後遺障害が認められる可能性があります。
たとえば麻痺の部位が広く程度も重度で一生仕事ができないような状態であれば3級となりますし、特に簡単な仕事しかできない状態であれば5級になります。
そこまで重傷でなくても「できる仕事が制限される場合」7級や9級が認められる可能性があります。
脊髄損傷で後遺障害認定を受けるには、CTやレントゲンで骨折を証明したり、日常生活でどの程度の不便が生じているのか説明したりしなければなりません。
被害者が1人で後遺障害認定の手続きを進めると適切な認定を受けられない可能性もあるので、交通事故に積極的に取り組んでいる弁護士に依頼するのが得策です。
背部挫傷で受け取れる慰謝料
交通事故後に背中に痛みが発生し「背部挫傷」となった場合、一般的にどの程度の慰謝料が払われるのかみてみましょう。
入通院慰謝料
入通院慰謝料は、入通院期間に応じて支払われる慰謝料です。
金額は、治療日数が長ければ長いほど高額になります。
弁護士基準の場合、通院期間よりも入院期間の方が金額は上がります。
後遺障害認定を受けられなくても、入通院治療を受ければ入通院慰謝料を請求できます。
途中で通院をやめてしまったら、入通院慰謝料を減らされてしまう可能性があるので、背部挫傷となったら完治または症状固定するまで通院を継続しましょう。
後遺障害慰謝料
背部挫傷であってもむちうちや脊髄損傷を併発していれば、後遺障害認定を受けられる可能性があります。
むちうちの場合、認定される等級は12級または14級です。
12級の場合、弁護士基準の後遺障害慰謝料は290万円程度、14級の場合、弁護士基準の後遺障害慰謝料は110万円程度となります。
脊髄損傷となって9級となったら後遺障害慰謝料の金額は690万円程度、7級になったら後遺障害慰謝料の相場は1000万円程度に上がります。
ただし「背中が痛い」というだけで後遺障害認定されるわけではありません。
後遺障害に関しては細かい認定基準がもうけられているので、該当するかどうか知りたい場合には弁護士へ相談してみてください。
事故後、背中が痛いときに適正な慰謝料・賠償金を受け取る方法
弁護士に依頼すれば、過失割合が適正かどうかもチェックしてもらうことが可能だよ。
交通事故で背部挫傷となったら、適正な金額の慰謝料や賠償金を受けとるべきです。
しかし被害者が自分で保険会社と示談交渉すると、知らず知らずの間に法的な基準より賠償金額を切り下げられてしまうケースが多いので、注意しなければなりません。
適正な金額の慰謝料を受け取る方法をお伝えします。
弁護士に示談交渉を依頼する
保険会社との示談交渉は弁護士に依頼すべきです。
弁護士と保険会社とでは、慰謝料の計算基準が異なるからです。
慰謝料をはじめとする賠償金の計算方法には、自賠責基準と任意保険基準、弁護士基準の3通りがあります。
弁護士に依頼せず被害者が自分で保険会社と交渉すると、任意保険基準を適用されます。
任意保険基準は保険会社が独自に定める基準で、法的な弁護士基準より大幅に低くなっています。
たとえば背部挫傷とむちうちを併発して14級が認定された場合、弁護士基準の後遺障害慰謝料は110万円ですが、任意保険基準なら40万円程度にしかならないケースが多数です。
入通院慰謝料も、任意保険基準は弁護士基準より下がります。
自分で示談交渉を行って任意保険基準を適用されている場合、弁護士に依頼するだけで慰謝料が2~3倍以上になるケースも少なくありません。
事故の過失割合が争いになっている場合にも弁護士に依頼すると有利になります。
弁護士が法的な過失割合の基準をあてはめてくれて適正となるので、過失相殺率が変わって賠償金が大きく増額されるケースが多々あります。
後遺障害認定を受ける
背部挫傷した場合でも、むちうちや脊髄損傷の症状があれば後遺障害認定を受けられる可能性があります。
しかし、被害者が自分で後遺障害認定の手続きを進めると、適正に等級認定されないケースが少なくありません。
多くの方は、保険会社の担当者に後遺障害認定の手続きを任せる「事前認定」を利用します。
事前認定では、被害者自身が詳しい説明をしたり資料を提出したりしにくいので、結果的に後遺障害「非該当」とされるケースが多いのです。
非該当とは「後遺障害に該当しない」という決定であり、後遺障害慰謝料や逸失利益は全く支払われません。
後遺障害認定を受けるには、診断書や検査資料、意見書などの資料をしっかり集めて被害者自身が積極的に立証を行う「被害者請求」を利用するのが得策です。
1人で資料集めや手続き申請を進めるのは難しいので、後遺障害認定手続きの際には弁護士にサポートしてもらいましょう。
まとめ
そんな時は、治療に専念できるように、示談交渉は全て弁護士に依頼しよう。
交通事故で背中が痛い原因は、背部挫傷やむちうち、脊髄損傷などが考えられます。
いずれにしても早期に原因を明らかにして、適正な治療を進めるべきです。
示談交渉や後遺障害認定は弁護士に任せると獲得できる慰謝料や賠償金がアップしやすくなります。
交通事故に積極的に取り組んでいる弁護士は、無料相談を実施しているケースが多いので、ぜひ一度利用してみましょう。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。