慰謝料っていつ振り込まれるの?
今回の記事では、示談後に慰謝料が振り込まれない原因や、振り込まれない時の対処法について、詳しく見ていこう。
示談が成立したにもかかわらず慰謝料がなかなか振り込まれないと、被害者としては不安になってしまうものです。
そもそも慰謝料はいつ振り込まれるのでしょうか?
一般的な入金のタイミングや支払いが遅れる理由を把握しておきましょう。
またすべての交通事故で慰謝料が払われるわけではありません。
請求できないケースについても知っておくと対処方法を検討するのに役立ちます。
今回は慰謝料が払われないケースや入金が遅くなるパターン、困ったときの対処方法をお伝えします。
「慰謝料が振り込まれない」と不安になっている方はぜひ参考にしてみてください。
目次
交通事故後の慰謝料を受け取るタイミング
交通事故で慰謝料が支払われるタイミングは、一般的に「示談が成立してから1週間から2週間程度が経過したとき」です。
保険会社へ示談書を返送してから1~2週間が経過すると、被害者が指定した金融機関口座へ保険会社が慰謝料を含めた示談金を振り込んでくるのが一般的です。
被害者側としては、示談書を返送してから2週間程度は待ってみるとよいでしょう。
2週間経過しても入金を確認できない場合、一度保険会社へ問い合わせをしてみてください。
慰謝料の入金が遅れるパターン
交通事故で加害者側からの入金が遅れるケースもあります。
よくあるのは以下のようなパターンです。
保険会社の担当者の確認ミス
1つは相手の保険会社の担当者が示談書の確認ミスをしている場合です。
担当者が返送書類を見落としているため、いつまで経っても入金されません。
また保険会社の担当者が休みをとっていたり、忙しくて後回しにされたりする可能性もあります。
いずれにせよ被害者にとっては関係のない事情なので、こういった理由で入金が遅れているなら督促しましょう。
相手が加害者本人
交通事故で加害者が保険に入っていない場合には、加害者と直接やり取りしなければなりません。
ただ加害者本人は保険会社と異なり、約束を守るとは限りません。
示談しても支払いをしないケースがよくあります。
期日を定めなかった場合にはいつまでも放置されるリスクが高まりますし、期日を設定したとしても守られない可能性があります。
示談の相手が加害者本人の場合、示談締結の際に必ず「入金期日」を設定しましょう。
その上で、期日までに入金されるかどうか、しっかり確認すべきです。
1日でも遅れたらすぐに電話やメールなどで督促してみてください。
相手が故意に払わない場合の対処方法
相手が約束した慰謝料を故意に払わない場合、内容証明郵便で督促する方法が有効です。
内容証明郵便を利用すると、強いプレッシャーをかけることができます。
特に弁護士に依頼して弁護士名で内容証明郵便を出してもらったら、相手もことの重大性を理解して真摯に対応するケースが少なくありません。
相手方が慰謝料を払わないような悪質な加害者の場合には、早めに交通事故に詳しい弁護士に相談して対応を依頼するのがよいでしょう。
慰謝料が支払われないケース
その他にも、物損事故や、被害者側の過失が10割の時にも慰謝料は支払われないよ。
交通事故では以下のような場合、慰謝料が払われない可能性があります。
整骨院にしか通っていない
交通事故後、一度も病院に通わず整骨院や接骨院にしか通院していない場合、ケガの診断ができる診断書などの書類も作成できません。
治療費も休業損害も慰謝料も払われないリスクが発生します。
交通事故でケガをしたら、必ず整形外科などの「病院」へ行きましょう。
整骨院などへ通いたい場合には、医師の許可をとってからにすべきです。
そうすれば慰謝料も治療費も休業損害も払われます。
通院していない
交通事故の慰謝料は、入通院した期間に応じて計算されます。
つまり入通院期間が長くなればなるほど高額になり、入通院期間が0日なら金額も0円となるのです。
事故でケガをしても通院しなかったら慰謝料は払われません。
物損事故
物損事故の場合、基本的には慰謝料が発生しません。
気に入っている車が壊れたからといって、被害者には慰謝料が発生するほどの精神的苦痛を受けないと考えられているのです。
ただし大切にしているペットが重傷を負ったり死亡したりすると、少額な慰謝料が認められるケースもあります。
被害者側の過失が10割
交通事故では自分の過失割合が大きくなると「過失相殺」によって割合的に請求額が減額されます。
被害者の過失割合が10割になると、慰謝料を始めとした賠償金を一切請求できません。
時効が成立している
交通事故の損害賠償請求権には時効があります。
物損事故では交通事故から3年、一般の人身事故なら交通事故から5年、後遺障害が残った場合には症状固定時から5年、死亡事故では死亡時から5年で時効が成立します。
時効が成立すると慰謝料は払ってもらえなくなると考えましょう。
事故に遭ったら早めに示談交渉を進めて慰謝料などの賠償金を払ってもらう必要があります。
慰謝料が少なくなるパターン
交通事故では以下のような場合、支払われる慰謝料額が少額になる傾向があります。
治療期間が短い、通院回数が少ない
交通事故では入通院の期間に応じて慰謝料が計算されます。
入通院治療を被害者が自己判断で打ち切ってしまった場合など、途中で治療をやめて治療期間が短くなると慰謝料額は減額されると考えましょう。
また通院回数があまりに少ないと、慰謝料の計算方法が変わって減額される可能性もあります。
十分な慰謝料を受け取るには、多少忙しくても一定以上の頻度で通院を継続すべきです。
弁護士基準で計算していない
交通事故の慰謝料計算には、任意保険基準、自賠責基準、弁護士基準の3つがあり、弁護士基準がもっとも高額になります。
被害者本人が保険会社と交渉する場合には低額な任意保険基準が適用され、慰謝料額が減額されやすい傾向がみられます。
高額な弁護士基準で計算するには弁護士に示談交渉を依頼しましょう。
任意保険の上限を超えている
任意保険の対人賠償責任保険には「限度額」があります。
発生した損害額が大きく賠償金額が加害者側の任意保険の上限を超えてしまったら、保険会社からは十分な慰謝料などの賠償金が支払われません。
不足分は加害者本人へ直接請求する必要があります。
後遺障害認定を受けていない
交通事故で被害者に後遺症が残ったら、後遺障害等級認定を受けることによって高額な後遺障害慰謝料や逸失利益の支払いを受けられる仕組みになっています。
ところが
- 「完治した」
- 「後遺障害が証明されていない」
- 「因果関係がない」
などの事情で後遺障害が否定されるケースも少なくありません。
そのような場合、後遺障害がないことを前提に慰謝料や賠償金が計算されるので、減額されます。
被害者の過失割合が高い
被害者側の過失割合が高くなると「過失相殺」によって相手に請求できる金額を割合的に減額されてしまいます。
たとえば被害者の過失割合が4割なら請求できる慰謝料は4割減(受け取れる慰謝料が6割)になります。
被害者にとっては自分の側に不当に高い過失割合を割り当てられないよう注意すべきといえるでしょう。
相手が無保険で支払ってくれない場合の対処方法
加害者が保険に入っていない場合、お金がないなどの理由で慰謝料を払ってくれないケースがよくあります。
治療費や生活費などのお金に困ったときには以下のような方法で対応しましょう。
自賠責保険へ被害者請求する
加害者の自賠責保険へ被害者が直接請求する方法です。
たとえば仮渡金を請求すれば保険金の一部の先払いを受けられます。
また後遺障害等級認定で被害者請求をすると、自賠責保険の後遺障害慰謝料や逸失利益を先に払ってもらえます。
自分の保険を使う
自分の自動車保険で搭乗者傷害保険や人身傷害補償保険に入っている場合、そういった保険から支払いを受けられる可能性があります。
搭乗者傷害保険も人身傷害補償保険も、契約者や同乗者などが交通事故で死傷したときに支払いを受けられる保険です。
搭乗者傷害保険は定額計算となっているのに対し、人身傷害補償保険では実際に発生した損害をベースに計算します。
一般的には搭乗者傷害保険の方が、早く支払いを受けられる傾向にあるといえるでしょう。
いずれにせよ、早く受け取りたいときには自分の加入している自動車保険会社へ問い合わせをしてみるようおすすめします。
自賠責にも未加入の場合は政府保障事業を利用
加害者が自賠責保険に入っていない場合、仮渡金などの請求ができません。
また「ひき逃げ」された場合には、加害者の加入している自賠責保険すら不明となります。
こういった状況になったら「政府保障事業」を利用しましょう。
政府保障事業とは、自賠責保険からの最低限の補償すら受けられない交通事故の被害者を救済するための制度です。
申請すると、自賠責保険と同等の慰謝料を始めとした保険金を受け取れます。
民間保険会社の窓口で政府保障事業の申請を受け付けているので、一度相談してみてください。
示談後も慰謝料が払われない場合の対処法
無保険の場合や、任意保険会社との話がうまく進まない場合には、弁護士に依頼するのがおすすめだよ。
交通事故で示談が成立したにもかかわらず慰謝料が払われない場合、以下のように対応してみてください。
相手の任意保険会社に連絡
まずは相手の保険会社へ連絡しましょう。
返送した示談書は到着しているのか、入金処理の進捗状況などを確認してもらうべきです。
ミスが起こっていたら、早期に入金される可能性が高くなります。
相手の保険契約の上限額(限度額)についても問い合わせれば教えてもらえる可能性があります。
弁護士に相談
交通事故で入金漏れを防ぐには、弁護士に依頼する方法が有効です。
弁護士が対応すると示談締結や入金確認、清算などすべて弁護士が行ってくれるので、被害者が自分で入金チェックや督促を行う必要がありません。
また示談前から弁護士に依頼すれば高額な「弁護士基準」で慰謝料を計算でき、受け取れる金額も大きく上がる事例が多数です。
示談をすべて弁護士に任せれば労力や時間も節約できますし、相手が無保険でややこしい場合にも対応を任せるとスムーズに解決できる可能性が高まります。
慰謝料が振り込まれないので不安な方や、いつのタイミングで支払われるのか知りたい方は、まずは一度、交通事故に積極的に取り組んでいる弁護士の無料相談を申し込んでみましょう。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。