過失割合

地震が起きたから路肩に止めようとしたら追突された!普通の事故と同じ扱いで問題無い?

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災害が原因で事故が起きた場合の損害賠償責任

災害が原因の事故でも損害賠償責任が発生する可能性がある

クマ
災害が原因で事故が発生した時って、損害賠償責任は誰が負うことになるの?

ミミズク
災害が原因となった事故の場合、その事故を回避できる状態であったか、回避できない状態であったか否かで損害賠償責任を負うかどうかが決まるんだ。
今回の記事では、災害時における交通事故の過失について、詳しくみていこう。

災害が原因で事故が発生するといっても、状況は様々です。

例えば、降雪で道路に雪が積もり、道路が凍ってしまった場合を想定してみましょう。

運転している車両にチェーンやスタッドレスタイヤを装着せずに走行し、ブレーキで停止できずに、前の車両に追突した場合、追突した車両の運転者は損害賠償責任を負うでしょうか。

降雪という災害が原因で事故が発生したといえなくもないですが、事故の原因は、やはり、降雪によって道路が凍っているにもかかわらず、チェーンやスタッドレスタイヤを装着せずに走行し、さらには、ブレーキで停止できなかった速度を出していた追突者の運転者にあるでしょう。

この場合、過失割合は、追突した運転者に100%認められ、通常の事故と異なるところはないでしょう。

また、次に、例えば、豪雨で視界が悪い中、速度を出して前の車両に追突した場合はどうでしょうか。

これも、豪雨という災害が原因で事故が発生したといえなくもないですが、豪雨で視界が悪い場合には、速度を落とす、前方車両との車間距離を広めにとるなどして、視界や車間距離を確保すべきです。

そのような運転をせずに、速度を出していたという場合、過失割合は、追突した運転者に100%認められ、通常の事故と異なるところはないでしょう。

これらに共通するのは、災害が発生しているものの、運転者には、その状況や影響を予測でき、当該予測に従って運転をして事故を回避できるであろうという点だと考えられます。

災害が発生しているといっても、その状況や影響を予測でき、事故を回避できたと考えられる場合、通常の過失割合と同様に認定されるものと考えられます。

損害賠償責任が発生しないケースとは

上記では、災害が発生していても、その状況や影響を予測できた場合の事故についてお話しました。

では、災害でも、その状況や影響を予測できない場合はどうでしょうか。

例えば、大きな地震が起き、それによって車体が傾き、前方の車両に衝突してしまった場合、車両を衝突させてしまった運転者は損害賠償責任を負うでしょうか。

この場合、車体が傾いてしまったことについて、運転者には過失がないと考えられ、不可抗力として、損害賠償責任は発生しないものと考えられます。

また、例えば、台風や豪雨によって、急に道路が冠水し、エンジンが停止してしまって急停止したところに、後続車両が追突した場合はどうでしょうか。

通常の状況では、前方車両は、危険を防止するためやむを得ない場合を除いて急停止等をしてはいけません(道路交通法24条違反となります。)。

そして、道路交通法24条違反の急停止は、前方車両の過失として評価される可能性があり、事情によりますが、30%~50%程度の過失が認められる可能性があります。

しかしながら、急な道路の冠水、エンジン停止による停車であれば、通常の事故とは異なり、前方車両の運転者の過失が問われる可能性は極めて低いと考えられます。

また、同様に、後続車両の運転者についても、前方車両の停車が予測できない状況であれば、過失を問われず、損害賠償責任を負わない可能性があると考えられます。

なお、双方運転者ともに過失がない事故の場合、自分の車両に生じた損傷等は、自分で修理する必要があります(お互いに損害賠償請求ができないので、結果として、自分で自分の車両を修理するしかなくなります。)。

損害賠償責任が発生するか否かの判断

災害が原因で事故が発生した場合において、運転者に損害賠償責任が発生するか否かの判断は、その状況や影響を予測できたか否か、そして、その予測に基づいて事故を回避できたか否かという点にあると考えられます。

法律的な用語では、結果の予見可能性と回避可能性などといい、事故という結果を予測することができたか、また、仮に、事故という結果を予測することができたとしても、その結果を回避することができたかといった形で検討されます。

また、上記では、損害賠償責任が発生するケースと発生しないケース(不可抗力)で分けましたが、事故の状況によっては、一部について災害が影響したと評価されるケースもあるかもしれません。

一部について、災害が影響したと評価される場合、損害の一部については損害賠償責任を問われない(災害で発生した損害が明確な場合等。因果関係がないという評価になる可能性もありそうです。)というようなこともありそうです。

地震による事故での過失割合

クマ
地震で路肩に停めようとしたら追突された場合、誰が損害賠償責任を負うことになるの?

ミミズク
ちょっとした揺れの場合には、追突した側の責任になる事が多いね。
だけど、大地震で道路が傾き、事故が起きたような場合には、追突した側に責任は追及されないよ。

地震が起きたから路肩に止めようとしたら追突されたケースを検討

ここで、タイトルとなっている地震が起きたから路肩に止めようとしたら追突されたというケースを検討してみましょう。

地震が起きたとしても、それほど大きな地震ではなく、念のため、路肩に寄せて停止しようとしたところ、後続車に追突されたという場合は、通常の状況と変わらず、追突車両の運転者が100%の過失となる可能性が高いように思われます。

地震で多少、揺れているにしても、それほど大きな地震でなければ、運転には支障はなく、過失割合において考慮する必要がないと考えられるからです。

それに対し、地震が非常に大きく、路肩に寄せた車両に追突した理由が、地震によって自分の運転している車両が傾いたり、大きく動いたりしたといった場合には、不可抗力により、追突車両の運手者の過失は問われず、結果として、損害賠償責任も問われない可能性が高いように思われます。

一口に、災害といっても、その事故発生の状況等を具体的に検討する必要があります。

信号機のある交差点における事故

通常の状況において、信号機のある交差点で事故が発生した場合、対面している信号機の色によって、大きく過失割合が変わります。

例えば、青信号に従って交差点を通行した車両と赤信号を無視して交差点を通行した車両が出会い頭に衝突した場合、赤信号を無視して交差点を通行した車両の運転者の過失が100%となります。

黄信号や全赤の状態など、その状況によって、信号の色は様々ですが、運転者の対面の信号の色が過失割合を決めるうえでの非常に大きな要素となります。

しかしながら、災害が発生し、停電等で、信号機が作動していない場合はどうでしょうか。

その場合、信号機はないものとして扱われます。

信号機がないとなると、どんなに大きな交差点でも、信号機の設置されていない交差点と同じように評価されます

その場合、交差する道路が同幅員の道路か、一方が明らかに大きな道路か、双方の速度はどうかなどといった事情で過失割合を決めることとなります。

例えば、交差する道路が同幅員程度の場合、左方優先が原則とされます。

その場合において、出会い頭で衝突したとすると、左方を走っていた車両の運転者の過失が40%、他方の車両の運転者が60%というのが原則となります。

なお、信号機が作動していない場合、警察官が代わりに交通整理を行うこともあります。

災害時に警察が出動できないこともある

クマ
大きな災害が発生した時って、警察を呼んでも来てくれないことがあるんでしょ?

ミミズク
そうなんだ。
大地震や津波など、あちこちで被害が発生しているような場合には、警察を呼んでも来てもらえないことがあるよ。
そんな時は、後々のトラブルを避けるために、ドライブレコーダーを搭載しておくと便利だね。

通常の状況では、事故が発生した場合、運転者は、警察に事故を報告する義務があります。

これに従い、事故が発生すると、運転者等が警察に連絡を入れ、警察官が事故現場に来て、事故の存在等を確認する作業をします。

警察官が事故を確認したことによって、後日、自動車安全運転センターから交通事故証明書が発行されるということになります。

しかしながら、大きな災害が発生した場合、警察官が出動できないこともあると思われます。

その場合、事故の存在について、警察官に確認してもらうことができず、後々、トラブルとなる可能性があります。

仮に、警察官に事故を確認してもらえない場合、ドライブレコーダー等の客観的な証拠が、事故の存在や過失割合を決める際に大きな意味を持つものと思われます。

ただし、大きな災害の場合、上記の不可抗力に該当し、そもそも、運転者双方に損害賠償責任が発生しないということも多そうです。

地震発生による事故は原則として損害保険が使えないために注意

クマ
災害での事故は、保険が使えないって本当??

ミミズク
通常の保険の場合、災害での事故は対象外となっていることが多いんだ。
災害での事故も補償してもらうためには、災害特約をつけておくと安心だよ。

一般的に、損害保険会社の約款において、対人賠償保険、対物賠償保険、車両保険の免責事由として、地震、噴火、津波を挙げていることが多いようです。

ですので、地震、噴火、津波が原因となって、事故が発生した場合、保険の適用外となります。

ただし、地震、噴火、津波を対象とする車両保険に関する特約も存在します。

この特約は、地震、噴火、津波を原因として車両等が損傷した場合において、

  1. 一時金を支払うタイプ
  2. 車両保険のように車両の損傷に応じて支払うタイプ

があるようです。

また、この特約は、上記①②いずれも、地震、噴火、津波が直接の原因となった車両の損傷のみならず、地震、噴火、津波に伴う秩序の混乱によって生じた車両の損傷も対象としています。

保険内容の確認をするとともに、必要であれば、特約としてつけておくのも良いかもしれません。

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阿部栄一郎

阿部栄一郎

弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所所属。

早稲田大学法学部、千葉大学大学院専門法務研究科(法科大学院)卒業。2006年司法試験合格、2007年東京弁護士会登録。
交通事故、不動産、離婚、相続など幅広い案件を担当するほか、顧問弁護士として企業法務も手がける。ソフトな人当たりと、的確なアドバイスで依頼者からの信頼も厚い。交通事故では、被害者加害者双方の案件の担当経験を持つ。(所属事務所プロフィールページ

■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故の加害者・被害者には、誰でもなり得るものです。しかしながら、誰もが適切に交通事故の示談交渉をできるわけではありません。一般の人は、主婦が休業損害を貰えることや適切な慰謝料額の算定方法が分からないかもしれません。ましてや、紛争処理センターや訴訟の対応などは経験のない人の方が多いと思います。保険会社との対応が精神的に辛いとおっしゃる方もいます。
不足している知識の補充、加害者側との対応や訴訟等の対応で頼りになるのが弁護士です。相談でもいいですし、ちょっとした疑問の解消のためでもいいです。事務対応や精神的負担の軽減のためでもいいですので、交通事故に遭ったら、一度、弁護士にご相談されることをお勧めします。

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