交通事故に遭ってしまった時って保険会社が間に入ってくれるんでしょ?
そうだね。
相手の保険会社や自分の保険会社が間に入ってくれることになる場合が多いね。
じゃあ、事故後は保険会社から連絡がくるのを待っていれば良いの?
それが、保険会社によっては、加害者側の保険会社だけではなく、自分の保険会社も連絡してこない事があるんだ。
え?!自分の保険会社まで連絡してこない場合があるの?
連絡がこない場合にはどうしたら良いの?
何か対策を取った方が良いの?
よし!では早速、保険会社から連絡がこない場合の対応について、詳しく見ていこう。
交通事故に遭ったら、警察を呼び、事故を記録してもらった後、双方の保険会社に連絡をする事になります。
その後、一般的なケースでは、加害者の保険会社と示談交渉を進めていくことになります。
被害者が自動車保険に加入していたら、自分の自動車保険の担当者が間に入って相手との話を進めてくれます。
しかし、いつまで経っても加害者や自分の保険会社から連絡が来ないので、被害者の方が不安を感じるケースが多々あります。
加害者の保険会社だけではなく、自分の保険会社の担当者まで、連絡をくれないというのは、いったいどうしてなのでしょうか?
今回は、交通事故に遭ったとき、加害者や自分の保険会社からの連絡が来ない理由と、その場合の対処方法を解説します。
目次
交通事故後保険会社から連絡が来ない場合の2種類について
交通事故後、「保険会社と連絡がとれない」という被害者の方はたくさんいらっしゃるのですが、実は、その内容には2種類があります。
1つは、被害者自身の保険会社と連絡が取れないという問題です。
被害者が任意保険の対人対物賠償責任保険に加入している場合に交通事故に遭うと、被害者の保険会社の担当者が被害者の代理として、加害者の保険会社と示談交渉を進めます。
このとき、代理人であるはずの保険会社がきちんと報告をしてこないので、被害者の方が不満を感じるのです。
もう1つは、加害者の保険会社と連絡が取れないという問題です。
交通事故の加害者が保険会社に加入している場合、加害者の保険会社が加害者本人の代理人となって被害者と示談交渉を進めますが、このとき、加害者の保険会社が被害者に連絡してこなかったり、被害者が連絡を入れても誠実に対応しなかったりするので、被害者が強い不満を感じます。
以下では、それぞれのケースにおける対処方法を、順番に確認していきましょう。
自分の保険会社から連絡が来ない場合とその理由
自分の保険会社から連絡が来ない場合には、何か理由があるの?
ほとんどの場合、示談担当者の仕事が雑であるという事が考えられるね。
まずは、被害者自身の保険会社から報告がない場合はどのようなケースがあるのか、またその理由はどういうものか、見てみましょう。
被害者の保険会社の対応に不満を感じるケースとは
被害者の保険会社は、契約者である被害者の代理人となって加害者と示談交渉をすべき立場です。
しかし、実際には交通事故被害者自身が、保険会社の対応に不満を感じることは多いです。
たとえば、以下のような例があります。
- 対応が遅い、連絡が遅い、連絡が来ない
- 担当者が変わっても、きちんと引き継ぎが行われていない
- 書類を送っても放置されている
- 見下したような話し方をされる
- 加害者の味方か?と思われるような発言をする
上記のように、単に連絡がないというだけではなく、被害者の味方になってくれていない、という不満が多いです。
被害者の保険会社がきちんと連絡しない理由
被害者の保険会社は、被害者の代理人として加害者と示談交渉をしているはずです。
その被害者の保険会社が、どうしてきちんと被害者に連絡やその他の望ましい対応をしないのでしょうか?
いくつか理由がありますが、被害者の保険会社の担当者が、単なるサラリーマン意識で仕事をしていることが大きいです。
担当者にとって、被害者に親身になって感謝してもらってもそうならなくても、もらえる給料には変わりありません。
また、日頃からたくさんの仕事を任せられて疲れているケースなどもあるでしょう。
そこで、どうしても1件1件への対処がおざなりになります。
なお、被害者の保険会社がきちんと対応しないのは、担当者レベルによる事情が大きいので、良い担当者に当たればきちんと親身になってくれることもありますし、そうでない担当者に当たると非常に不快な思いをする、ということにもなりやすいです。
被害者の保険会社に不満がある場合の対処方法
自分の保険会社の担当者がちゃんと仕事をしてくれないんじゃ今後の示談が心配だよ。
何か対処する方法はないの?
担当者側に不満に思っている事を伝えてみよう。
それでもだめならお客様サービスセンターに連絡を入れたり、そんぽADRセンターに連絡を入れてみよう。
では、被害者の保険会社から連絡が来なくて不満を感じる場合、どのように対応したら良いのでしょうか?
こちらから連絡して、苦情を述べる
まずは、自分から保険会社に連絡をしましょう。
担当者からの連絡がない場合、いつまで待っていても無駄である可能性があるからです。
そして、今示談の状況がどのようになっているのか、確認しましょう。
また、どうして連絡をくれないのか理由を尋ね、率直に、連絡がないことに不満を感じていることも伝えましょう。
そして、もっと頻繁に連絡を入れてくれるように、希望を述べると良いです。
これによって、担当者の意識が変わり、状況が改善する可能性があります。
損保会社の相談窓口に苦情相談する
自分で担当者に苦情を述べても状況が改善しないときには、保険会社の「お客様センター」や「お問い合わせ窓口」「ご相談窓口」などの苦情受付窓口に連絡をして、相談をしましょう。
すると、保険会社の内部で担当者に対する改善指導が行われたり、担当者を変えてもらえたりする可能性があります。
そんぽADRセンターに相談する
保険会社の相談窓口に苦情を言っても改善されない場合には、外部機関に頼るしかありません。
このとき「そんぽADRセンター」という機関を利用することができます。
そんぽADRセンターとは、損害保険会社が設置している交通事故問題解決のためのADR(裁判外の紛争解決機関)です。
自動車保険の円滑な運用や、利用者と損害保険会社とのトラブル解決を目的として設立された機関ですので、保険の利用者からの苦情相談も受け付けています。
苦情があると、対象の損保会社に連絡をして、苦情の内容を伝えてくれるので、保険会社が担当者に指導改善を求めたり、担当者を変更したりして、状況が改善される可能性があります。
そんぽADRセンターの苦情受付先の電話番号
0570-022808
弁護士に相談する
そんぽADRに苦情を申し立てて、担当者が変わったとしても、その人もやはりきちんと仕事をしてくれず、不満が解消されないケースもあるでしょう。
そのようなときには、弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士は、損保会社と違い、完全に被害者の味方です。
法律に詳しく、プロ意識を持って仕事をしていますから、依頼者である被害者を放置することはほとんどありません。
また、被害者が得られる示談金の金額がアップすると弁護士の報酬も上がりますので、給与制の保険会社の担当者とは異なり、熱意を持って仕事に取り組みます。
弁護士に示談交渉を依頼すると、裁判基準が適用されるので、得られる賠償額が大きくアップする点でも、弁護士に依頼するメリットが大きいです。
弁護士は、無料相談をしていることも多いので、保険会社の担当者に不満があるならば、すぐに弁護士に相談して弁護士回答を求めるのも良いでしょう。
加害者の保険会社から連絡が来ない場合とその理由
加害者側の保険会社から連絡がこないのは、よくある事なの?
そうなんだ。
相手側の保険会社は、被害者に対してあまり良い対応をしてこない場合が多いんだ。
だけど、中には、損害賠償責任がないと考えている場合もあるから、注意が必要だよ
次に、加害者の保険会社からの連絡が来ないケースについて、ご説明します。
交通事故の被害者は、加害者の保険会社と連絡を取り合いながら、示談交渉を進めていかねばなりません。
このとき、加害者の保険会社の担当者に不満を感じる被害者の方は、被害者自身の保険会社に不満を感じる方よりさらに多いです。
被害者の保険会社はまがりなりにも被害者の代理人ですが、加害者の保険会社は加害者の代理人であり、被害者とは敵対する立場ですから、当然と言えば、当然かも知れません。
たとえば、以下のようなことで、被害者は加害者の保険会社に強い不満を持ちます。
- まったく連絡がない
- こちらから連絡しても、折り返してくれない
- 高圧的な態度をとられる
- 賠償金の金額の理由の説明がない
- やたらと高い過失割合を押しつけてくる
- 強制的に治療費を打ち切ると言ってくる
加害者の保険会社が連絡してこない理由
加害者の保険会社は、被害者に対して賠償金の支払をしなければならない立場です。
本来なら、きちんと被害者に連絡をして、賠償金支払いを提示しなければなりません。
それにもかかわらず、どうして被害者に連絡してこないのでしょうか?
これには、いくつかの理由が考えられます。
単純に忙しい
1つには、単純に担当者がたくさんの案件を抱えていて忙しいということがあります。
たくさんの事故対応に追われているため、1つ1つの案件に割く時間がなくなり、結果として事故が放置されます。
賠償義務を果たしても保険会社に得にならない
2つ目の理由は、加害者の保険会社が被害者への賠償義務をきちんと果たしても、保険会社の利益にはつながらないということがあります。
加害者の保険会社は、示談交渉によって定まった示談金を被害者に支払わなければなりません。
示談金が高額になればなるほど加害者の保険会社の負担額が上がり、収益を圧迫します。
加害者の保険会社の本音としては、できるだけ請求額を減額したいというところにあります。
そこで、どうしても示談には積極的でなく、連絡をしてこないケースがあると考えられます。
物損のみの場合など、修理代をこちらから連絡しなければ、そのまま放置されてしまう事もあります。
賠償義務がないと考えている
3つ目は、加害者の保険会社が「賠償義務がない」と考えているパターンです。
たとえば、被害者が悪質なクレーマーであるケース、保険金詐欺が疑われるケース、被害者の過失割合が高すぎるケースなどでは、任意保険会社は被害者に賠償義務がないと考えて、当初から治療費も払いませんし、示談交渉も行われないことがあります。
加害者の保険会社から連絡が来ない場合の対処法
加害者側の保険会社から連絡がこない場合にはどうしたら良いの?
保険会社側にまずは問い合わせてみよう。
でも被害者側の保険会社ってなんだか連絡しにくいんだ・・・
そんな時には、弁護士に依頼したり、そんぽADRセンターや金融庁への連絡を検討してみるのもお勧めだよ。
連絡がないからといって、直接加害者請求をしてはいけないよ。
それでは、加害者の保険会社から連絡が来ない場合、被害者としてはどのように対応したら良いのでしょうか?
加害者の保険会社に連絡して、連絡がこない理由を確認する
まずは、こちらから加害者の保険会社に連絡を入れましょう。
そして、相手に対し、「なぜ連絡してこないのか」、後回しになっている理由を確認します。
相手が単純に忙しいからなどの事情で連絡できていないなら、このように苦情を入れることにより、相手の意識が改善されて、今後は連絡してくるようになる可能性があります。
一方、クレーマーや保険金詐欺だと思われているのであれば、いくら待っても連絡は来ませんから、訴訟等の手段を検討すべきです。
このような適切な判断をするためにも、まずは連絡が来ない理由を明らかにしておく必要があります。
相手方の保険会社のお客様センターに苦情を入れる
相手が忙しいなどの事情で連絡をしてこず、督促しても改善されない場合、相手の保険会社のお客様センターに苦情連絡を入れるのも1つの方法です。
損保会社は被害者にきちんと賠償金を支払うべき義務を負っていますから、担当者がきちんと対応していないなら、保険会社の責任問題となってしまう可能性があります。
そこで、お客様センターなどの苦情受付窓口に連絡をすると、担当者への指導勧告が行われて、対応が改善する可能性があります。
そんぽADRセンター 苦情受付窓口に連絡する
相手の保険会社の内部対応では問題を解決できない場合、被害者の保険会社の時と同様に、そんぽADRセンターを利用する方法があります。
そんぽADRセンターは、被害者と被害者の加入している保険会社だけではなく、加害者の保険会社とのトラブル解決も支援してくれるからです。
苦情受付窓口に連絡をすると、そんぽADRから相手の保険会社に連絡してくれて、相手が改善対応する可能性があります。
また、そんぽADRでは、紛争解決のための和解あっせんも行っています。
紛争対応を申し立てると、専門知識を持った弁護士などの紛争解決委員が、公正中立の立場から、解決案を提示してくれるので、問題を解決できることもあります。
金融庁へ連絡する
損害保険会社は、金融庁の監督下に置かれているので、違法行為や不当な行為を行っている損保会社があれば、金融庁から指導を受けたり行政処分を受けたりする可能性があります。
そこで、保険会社の担当者の対応が悪い場合、金融庁に連絡を入れることも1つの方法です。
金融庁には、「金融サービス利用者相談室」という相談窓口が設けられていて、損害保険にまつわる質問や相談、苦情などを受け付けています。
個別の担当者に関する問題について、保険会社に指導するわけではありませんが、監督官庁である金融庁に苦情を申し立てること自体が、損保会社に対するプレッシャーとなります。
たとえば、相手の担当者と話をするとき「そのような態度であれば、金融庁に通報します」などと言うことで、相手の対応が変わることもあるので、覚えておくと良いでしょう。
金融庁の金融サービス利用者相談室の利用方法は、以下の通りです。
【電話】
受付時間:平日10時00分~17時00分
電話番号:0570-016811(IP電話の場合、03-5251-6811)
【ファックス】
受付時間:24時間
ファックス番号:03-3506-6699
【ウェブサイト】
受付時間:24時間
http://www.fsa.go.jp/receipt/soudansitu/index.html
【文書(郵便)】
〒100-8967 東京都千代田区霞が関3-2-1 中央合同庁舎第7号館
金融庁 金融サービス利用者相談室
調停を起こす
以上の方法でも解決ができなければ、示談による解決が難しくなるため、裁判所や他の機関の利用を検討すべきです。
まず考えられるのが、裁判所の調停手続きです。
調停を申し立てると、裁判所の調停委員が間に入って話し合いをすすめてくれます。
裁判所から損保会社へ呼出状が送られるので、相手も無視することはありません。
調停委員から和解案が提示されることも多く、双方が受諾すれば、その内容で問題を解決することができます。
交通事故紛争処理センターを利用する
保険会社と示談を進められない場合、交通事故紛争処理センターを利用する方法も検討可能です。
交通事故紛争処理センターは、そんぽADRと同じ、交通事故ADRの1種です。
当事者同士がトラブルになっているとき、交通事故紛争処理センターに申請をすると示談あっせんをしてもらうことができます。
そのときには、ADRから保険会社に呼び出しが行われ、ADRの交通事故に詳しい弁護士が間に入って話を進めてくれるので、保険会社が無視することはありません。
また、お互いに意見が合わないときには、審査請求をすると、交通事故紛争処理センターにおいて、妥当な解決方法を決定してくれます。
損保会社はその内容に拘束されることが多いので、被害者さえ納得できれば、その内容で賠償問題を解決することができます。
訴訟を起こす
以上の方法でも解決が難しい場合には、訴訟によって解決するしかありません。
訴訟を起こしたときには裁判所から相手の保険会社に呼出状が送られます。
もし相手が無視したら、こちらが勝訴して全面的な支払い命令が下されるので、保険会社は必ず対応します。
また、裁判をすると、裁判基準が適用されるので、示談交渉で解決するよりも高額な賠償金を獲得できます。
ただし、適切に法律的な主張と立証活動をするためには、法律のプロである弁護士に対応を依頼する必要性が高いです。
素人が1人で裁判をすると不利になる可能性が高いので、注意しましょう。
弁護士に依頼する
以上、加害者の保険会社が連絡してこないときの方法をいろいろとご紹介しましたが、中でも効果的な方法は、弁護士に依頼することです。
被害者本人が連絡して無視される場合でも、弁護士に対応を依頼すると、相手が誠実に対応するようになることが多いです。
弁護士からの連絡を無視していると、訴訟をされる可能性が高くなるからです。
弁護士に依頼すると、示談交渉の際に獲得できる慰謝料もアップしますし、調停や交通事故紛争処理センターでの手続き、被害者請求の手続き、訴訟等も依頼できるので、どのような場面にも柔軟に対応できて、非常に利便性が高いです。
もしも交通事故で加害者の保険会社の対応が悪くて困っているなら、まずは弁護士に相談してみることをお勧めします。
まとめ
保険会社の担当者から連絡がこない時には、何らかの理由がある場合もあるんだね。
どんな理由により連絡がこないのかわからない場合には、まずは問い合わせてみよう。
保険会社によっては、威圧的な態度をとってきたり、良い対応をされない事もあるから、保険会社との話に不安を感じる場合には、初めから弁護士などの専門家に依頼するのがお勧めだよ。
今回は、保険会社の担当者からの連絡がないときの対処方法をご紹介しました。
被害者の保険会社からの連絡がない場合、加害者の保険会社からの連絡がない場合、どちらのケースでも、弁護士に対応を相談する方法が有効です。
示談交渉を有利に進めるための参考にしてみてください。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。