どうすれば良いの?
犯人を特定するためにも、防犯カメラやドライブレコーダーをチェックするのがおすすめだね。
今回の記事では、接触事故の後、相手が立ち去ってしまった場合の対処法について、詳しく見ていこう。
駐停車中や走行中、知らない車に接触されてそのまま逃げられるケースがあります。
いわゆる「当て逃げ」です。
当て逃げされたときには、必ず警察へ報告しましょう。
事故の報告は当事者の義務ですし、報告しないと加害者を逮捕してもらえません。
今回は当て逃げ・接触事故で警察を呼ぶ必要性や利用できる自動車保険、正しい対処方法を解説します。
車で当て逃げされた場合の対処法
当て逃げとは、車両を接触させて事故を起こしたにもかかわらず、事故対応をせず走り去る行為です。
もしも車を駐車場などに置いている間に当て逃げの被害に遭ったら、以下のように対応しましょう。
警察に連絡
車を停めた場所に戻ってきたときに車が傷ついていて「当てられた」と気づいたら、まずは警察へ報告しましょう。
道路交通法上、交通事故が発生したとき「車両の運転者や同乗者」は警察へ事故の報告をしなければならないと規定されています(道路交通法72条1項後段)。
つまり「加害者」だけではなく「被害者」にも事故の報告義務があります。
加害者がすでに走り去っていて不明な場合でも、基本的には事故を受け付けてもらえます。
110番するか、都道府県警察の電話番号を知っている場合にはそちらへ直接電話をかけてもかまいません。
交番が近くにあれば、直接行って報告する方法もあります。
警察が来たら事故の説明をする
警察がやってきたら、事故状況の説明をしましょう。
「〇時〇分頃から駐車場に車を停めていて、〇時〇分頃に戻ってきたら当てられて車をへこまされていた」などです。
周囲に防犯カメラがあるかチェックする
次に周辺に防犯カメラが設置されていないか、チェックしましょう。
駐車場の場合には高確率で防犯カメラが設置されています。
見つからない場合、管理者の連絡先を調べて問い合わせをしてみてください。
道路上でも監視カメラが設置されている場所があります。
近くのマンションや個人宅の防犯カメラに写っている可能性もあるので、近くにカメラがあったら所有者を訪ねて確認をお願いしてみましょう。
個人的に見せてもらうのが難しい場合、警察に依頼すると調べてもらえる可能性があります。
ここから犯人逮捕につながる可能性もあるので、相談してみましょう。
ドライブレコーダーをチェックする
自車にドライブレコーダーを搭載している場合、相手から衝突された際にカメラが起動して当て逃げの様子や加害車両の特徴を撮影している可能性があります。
ドライブレコーダーの動画を確認して、使えそうなものがあれば警察へ報告してみてください。
保険会社へ連絡する
当て逃げされて車両がへこんでしまった場合、自動車保険の「車両保険」を利用すると一定金額まで修理費用を出してもらえます。
そのため、事故を保険会社に報告しましょう。
ただ車両保険を利用して修理する場合「免責金額」が適用されるので、全額の費用が出るわけではありません。
多くの場合、5~10万円程度が免責されます。
たとえば免責額が5万円の場合、5万円までは自己負担しなければなりません。
また車両保険を利用すると、保険等級が3等級上がります。
次年度から3年間保険料が上がるので、差し引きすると使わない方が得になるケースも少なくありません。
車両保険を利用するかどうかについては、保険会社に金額のシミュレーションをしてもらい、得になるかどうか確認してから検討しましょう。
車の当て逃げを目撃していた場合
携帯電話で写メを撮るのもおすすめだよ。
車を運転中に当てられて加害者の車両を目撃していたら、以下のように対応しましょう。
相手のナンバーや車種を覚える
まずは相手の車の特徴をできるだけ詳しく把握すべきです。
車種、色、ナンバー、装飾などの特徴、型式(古いか新しいかというレベルでも可)、運転者の性別や背格好、年齢などを覚えましょう。
スマホで写真も撮影しておくようお勧めします。
ただしナンバーについてはブレてしまう可能性があるので、別途メモを取りましょう。
こうした情報は後で加害者を特定するのに役立ちます。
警察に相手の情報を伝える
次に警察を呼びます。
警察が到着したら、相手車両の特徴を可能な限り詳しく伝えましょう。
たとえば車のナンバーからは「所有者」が判明するので、加害者のナンバーを控えていれば警察を経由して犯人を簡単に見つけられる可能性があります。
ただし盗難車などで所有者と加害者が異なる場合、ナンバーから当然に加害者を特定できない可能性もあります。
そのあたりの捜査の必要も含め、しっかり相手の情報を報告しましょう。
警察に報告しなかったらどうなる?
当て逃げに遭ったとき警察に報告しなかったらどうなるのでしょうか?
犯人が見つからない
当て逃げに遭ったら、本来は加害者へ損害賠償請求が可能です。
しかし警察に報告しないと捜査をしてくれません。
自力で探すのは困難なので、そのまま泣き寝入りとなってしまうおそれが高まります。
犯人が出頭してくるケースもある
当て逃げの後、犯人が警察に出頭してくるケースもあります。
もし警察に報告していたら情報を照合してすぐに犯人特定となりますが、報告していなかったら被害者はそのことを知らないままです。
報告していたら適切に損害賠償を受けられるのに、報告していなかったために泣き寝入りとなってしまうリスクがあります。
事故証明書が発行されない
警察に事故を報告すると「交通事故証明書」が発行されます。
交通事故証明書があると、事故が発生した事実を証明できるので、保険金請求や裁判の際などに使えます。
警察に報告しなかったら交通事故証明書が発行されないので、いちいち事故があったことを詳細に説明しなければならず、なぜ事故証明書がないのかについても説明を求められて煩雑な思いをする可能性があります。
保険は使える可能性が高い
自動車保険については、警察に報告をしなくても使えるケースが多数です。
事故証明書がなくても保険を使えるので、保険会社と相談してみましょう。
加害者が見つかったら損害賠償請求を進める
相手が無保険の場合には、相手と直接示談交渉を進めなければいけないから、弁護士に依頼するのがお勧めだよ。
当て逃げされた場合でも、ナンバーなどの特徴がわかったら加害者が捕まる可能性があります。
相手が警察へ出頭してくるケースもあるでしょう。
加害者が見つかったら、以下のように対応しましょう。
加害者の保険会社へ賠償金を請求
加害者が任意保険に入っていたら、任意保険会社の「対物賠償責任保険」が適用されます。
相手の任意保険会社を聞いて、示談交渉を進めましょう。
対物賠償責任保険からは、以下のような賠償金が支払われます。
- 修理費用
- 買い換え費用(車が全損した場合、修理費用が時価より高くなる場合)
- 買い替え諸経費(車庫証明代、ディーラーの手数料、一部の税金など)
- 代車費用(修理や買い換えのために代車が必要になった場合)
なお物損事故の場合「慰謝料」は支払われません。
慰謝料は交通事故によって発生した精神的苦痛に対する賠償金ですが、物損事故では慰謝料が発生するほどの精神的苦痛を受けないと考えられているからです。
相手の保険会社に修理費用の見積もりを提出すると、保険会社と修理工場が金額を調整して最終的な賠償金額が決まります。
示談書へ署名押印すると、速やかに振り込まれるのが通常です。
加害者へ直接請求
加害者が自動車保険に入っていない場合には、加害者と直接示談交渉しなければなりません。
修理費用についても、自分たちで話し合って決定しなければならないので、意見が合わない可能性があります。
相手が無視して話を進められないケースもあるでしょう。
弁護士に相談する
もしも加害者の保険会社や加害者ともめてしまったら、弁護士に対応を相談してみてください。
弁護士が示談交渉に対応すると、保険会社や加害者の態度が変わるケースも少なくありません。
また自分で対応するストレスからも解放されます。
困ったときには交通事故に詳しい弁護士に依頼しましょう。
弁護士費用について
小さな物損事故の場合、弁護士に依頼すると弁護士費用の方が高額になって足が出てしまう可能性があります。
そんなときには「弁護士費用特約」を利用しましょう。
特約を適用できたら弁護士費用を保険会社が出してくれるので、被害者が自己負担する必要がありません。
最近では自動車保険に弁護士費用特約をつけている方が増えています。
火災保険や医療保険、個人賠償責任保険などに弁護士費用特約がついているケースも多いので、加入している保険の内容を確認してみてください。
自転車に接触された場合
自転車の場合には、車の任意保険や弁護士特約を利用することができないから注意が必要だよ。
最近では歩行者や自転車に接触して逃げてしまう悪質な自転車が増えています。
接触事故の加害者が自転車だった場合には、以下のように対応しましょう。
加害者を呼び止めて連絡先を確認
自転車に接触されたら、その場で呼び止めて停車させ、すぐに氏名や連絡先を聞きましょう。
電話番号、住所、電話番号、メールアドレス、勤務先、学校名などです。
嘘をつく可能性もあるので、免許証や学生証などで本当かどうかを確かめましょう。
未成年の場合、親を呼ぶように言うか、親の連絡先も確認しておきましょう。
車体やライダーの特徴を確認
呼び止める間もなく自転車が走り去ってしまった場合、できるだけ車体やライダーの特徴を覚えましょう。
自転車の色、種類、相手の背格好、性別、服装、できれば防犯登録番号まで特定できればかなり相手を探しやすくなります。
スマホカメラで撮影できるなら、撮影しておきましょう。
けが人がいる場合
自転車による接触事故であっても、けが人が出たら人身事故です。
重傷ならすぐに救急車を呼びましょう。
軽傷であれば応急処置をします。
自転車での事故でも損害賠償請求可能
自転車事故でも、物損や人身損害が発生したら加害者へ損害賠償請求できます。
ただしそのためには加害者を特定しなければなりません。
損害賠償の話し合いを進められるのは、相手が特定されて捕まった後になります。
賠償金の内訳や金額は、自動車の交通事故のケースと同じです。
人身損害
- 治療費
- 付添看護費用
- 交通費
- 休業損害
- 後遺障害慰謝料
- 後遺障害逸失利益
これらの賠償金をすべて請求できます。
ただし自転車の場合、相手の自動車保険を使えないので「対人賠償責任保険」「対物賠償責任保険」が適用されません。
相手が自転車保険に入っていない場合には、事故の相手に直接賠償金を請求しなければならず、示談がスムーズに進まない可能性が高くなります。
後遺障害認定の制度もないので、自分たちで後遺障害の程度をはかって慰謝料を決定しなければなりません。
そういったケースでは、弁護士に相談しましょう。
弁護士に示談交渉の代理を依頼すれば、交渉を有利に進められます。
後遺障害についても適正な判断をして賠償金を獲得してくれるでしょう。
弁護士保険特約について
自転車事故の場合、自動車保険の弁護士費用特約は適用できません。
火災保険や医療保険、個人賠償責任保険、自転車保険などの弁護士費用特約なら適用できる可能性があります。
あきらめずに各種保険の契約内容を確かめてみてください。
まとめ
できるだけ相手の車や自転車の特徴を記録しておくことで、犯人を見つけやすくなるんだね!
当て逃げされた時には、必ず警察に届け出るという事も忘れないようにしよう。
当て逃げの被害に遭ったら、犯人を特定して損害賠償請求を行うためにも警察へ報告する必要があります。
相手が見つかったら示談交渉を進めてきちんと賠償金を払ってもらいましょう。
示談交渉をスムーズに進められない場合、弁護士に相談すると解決できる可能性が高まります。
困ったときには交通事故に詳しい弁護士に相談してみてください。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。