弁護士が教える交通事故示談交渉テクニック

示談交渉

保険会社の示談交渉は弁護士法違反にあたる?

投稿日:2018年6月27日 更新日:

クマ

交通事故の示談交渉は保険会社に依頼すれば良いと思っていたんだけれど、弁護士法違反になってしまう事があるって聞いたんだ。

それって本当??

ウサギ

そうなんだ。

過失割合によっては、弁護士法違反となってしまう事もあるね。

クマ

弁護士法違反に該当するのはどんな場合なの?

ウサギ

よし!では早速、示談交渉による交通事故と弁護士法の関係について、詳しくみていこう。

交通事故で加害者や保険会社と「示談交渉」を進めるとき、自分が加入している保険会社が代理人となって、相手との話し合いを代行してくれるものです。

しかし、実は保険会社による「示談交渉の代行」は、弁護士法違反に該当する可能性もある行為です。

また、保険会社以外の示談交渉の代行は、弁護士にしか認められていません。

今回は、保険会社の示談交渉の代行サービスと弁護士法の関係について、解説します。

交通事故の示談交渉と弁護士法の関係

交通事故が起こったら、保険会社が示談交渉を代行する

交通事故で被害者が死傷したり車が壊れるなどの物損事故が発生したりすると、被害者は加害者や加害者の保険会社に対して損害賠償請求を行います。

このとき、通常は話合い(示談交渉)によって支払いを求めるものです。

示談交渉をするときには、被害者本人が相手と話し合うのが基本です。

しかし自動車事故やバイク事故の場合、多くは被害者側の「保険会社」が被害者の代わりに示談交渉を代行しています。

なぜ、保険会社が被害者の代わりに示談交渉をできるのでしょうか?

考えてみたことがあるでしょうか?

自動車保険には示談代行サービスがついている

それは、自動車保険には「示談代行サービス」がついているからです。

示談代行サービスとは、保険会社が保険契約者(被保険者)の代わりに事故の相手方との示談交渉を行うサービスです。

示談代行サービスがついているのは、自動車保険の中でも「対人賠償責任保険」と「対物賠償責任保険」の2種類です。

  • 対人賠償責任保険は、被保険者が交通事故を起こして相手を死傷させてしまった場合に、相手の「人身損害」を賠償するための保険です。
  • 対物賠償責任保険は、被保険者が交通事故を起こして相手の車を壊すなどの物損を与えてしまった場合に、その「物的損害」を補填するための保険です。

これらの保険に示談代行サービスがついているので、自動車保険に加入している人が事故を起こすと、加入している保険会社が相手方との示談交渉を行ってくれます。

相手も同じように対人賠償責任保険や対物賠償責任保険に加入している場合には、お互いに保険会社がつくので、示談交渉が「保険会社同士の話し合い」になります。

示談代行サービスは「弁護士法違反」になる可能性がある

しかし、上記のように、保険会社が被害者の代わりに示談交渉を進めると「弁護士法違反」になってしまうおそれがあります。

弁護士法は、弁護士のあり方について定めている法律で、弁護士の職務の遂行方法や、弁護士以外のものによる法律業務の禁止などを定めています。

その中で、以下のような規定があります。

【弁護士法72条】

弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。
ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

つまり、弁護士法は「弁護士や弁護士法人でないものが、報酬を得る目的で法律事務を行うこと」を認めていません。

法律事務の中には示談交渉の代理も含まれます。

保険会社は、もちろん弁護士ではありません。

また、保険契約者から保険料を支払ってもらう目的で示談交渉を行うのですから、「報酬を得る目的」もあると言えます。

そして事故の相手方との示談交渉は、「被保険者」という「他人の法律事務」です。

そこで、保険会社の示談交渉代行は、弁護士法72条違反になりそうです。

弁護士法72条に違反した場合には罰則もあり、2年以下の懲役または300万円以下の罰金刑となる可能性があります。

損保協会と弁護士会の覚書によって示談代行サービスが認められている

実際に、昭和40年代初め頃までは、保険会社による示談代行が認められておらず、示談代行を行って良いのは弁護士だけでした。

しかし、自動車保険の各社は、「保険会社が示談交渉を行える方が被害者にとっても便宜である」と被害者保護を主張して、弁護士会に対し、保険会社による示談交渉の代行を認めるように要求しました。

そして、保険会社は、交通事故の被害者が保険会社に直接賠償金を請求できる仕組みを作り、「示談交渉の結果、実際に賠償金を支払うのは保険会社である。そこで示談交渉は、被害者のために『代行』しているのではなく、『保険会社自身の法律事務』として行っている」として、弁護士法が適用されないという主張を始めました。

この主張には一理あったので、弁護士会としても保険会社による示談代行サービスを部分的に認めざるを得ず、昭和48年には、弁護士会と一般社団法人日本損害保険協会(保険会社の団体)との間で以下のような覚書が交わされました。

  1. 被害者が保険会社に賠償金を直接請求できることを保険約款に明記する
  2. 裁判基準に準じた任意保険の支払基準を定めて、賠償金が適正に支払われるようにする
  3. 被害者と交渉するのは保険会社の正規かつ常勤の職員に限定する
  4. 中立の立場の裁定委員会を設置して、その委員会によるあっせん案を尊重する
  5. 1つの交通事故にもとづく損害賠償金の限度を撤廃する

以上を条件に、保険会社による示談代行を認める。

この覚書により、保険会社による示談交渉の代行が堂々と認められるようになりました。

なお、上記の2.によって定められたのが、旧任意保険会社の統一基準です。

今は撤廃されており、各任意保険会社が独自に任意保険基準という基準によって示談金の計算をしていますが、今でも多くの任意保険会社は、その統一基準と同じか類似した基準によって示談金を計算しています。

上記の覚書で、任意保険基準は「裁判基準に準じた」ものとされていますが、実際の任意保険基準は裁判基準(弁護士基準)より大幅に低いものとなっていましたし、今の各社の任意保険基準もやはり裁判基準より低いです。

また、上記4.の「中立の裁定委員会」としては、交通事故紛争処理センターや日弁連交通事故相談センターなどの交通事故ADRがあります。

示談代行をしても弁護士法違反にならないケース

クマ

弁護士法に違反しないのは、誰が示談交渉をした場合となるの?

ウサギ

弁護士と、示談交渉サービスの契約をしている保険会社のみとなるよ。

以上より、交通事故の示談交渉を行っても弁護士法違反にならないのは、以下の2つのケースのみです。

弁護士が示談交渉を代行する

弁護士が示談交渉を代行するときには、当然弁護士法違反にはなりません。

自動車保険に加入していなくて、保険会社が示談交渉を代行してくれない場合にも、弁護士に依頼すると、合法的に示談交渉を代行してもらえます。

保険会社

自動車保険の「対人賠償責任保険」または「対物賠償責任保険」の損害賠償責任保険に加入している場合には保険会社が示談交渉を代行してくれますし、その場合弁護士法違反にはなりません。

ただし、次で説明する通り、被害者の過失割合が0の場合には、保険会社が示談交渉を代行することはできません。

弁護士法72条違反となってしまいます。

保険会社が示談交渉をできない場合

クマ

保険会社が示談交渉をしてくれない事もあるの?

ウサギ

事故責任がなく、自分の過失が0である場合には、保険会社が示談交渉をしてはいけない事になっているんだよ。

自動車保険の対人対物賠償責任保険に加入していると、保険会社が示談交渉を代行してくれますが、被害者の過失割合が0の場合には保険会社が示談交渉を代行することが許されません。

その理由は何なのでしょうか?

示談代行サービスは「加害者」のためのサービス

先ほど、示談代行サービスが適用されるのは、自動車保険のうちでも「対人賠償責任保険」と「対物賠償責任保険」であると説明しました。

これらの保険が適用されるのは、保険契約者が「加害者」の立場になったときです。

対人賠償責任保険は、被保険者が事故を起こして被害者を死傷させたときの賠償金を支払うための保険です。

対物賠償責任保険は、被保険者が事故を起こして被害者の車やその他の物を損壊したときの対物事故の物損を補償するための保険です。

つまり、被保険者が「完全な被害者」の場合には、対人賠償責任保険も対物賠償責任保険も適用されないので、示談代行サービスの出番がありません。

このことは、示談代行サービスの根拠を考えてみてもわかります。

示談代行サービスは、保険会社が事故の相手方に保険金を直接支払うからこそ認められるものです。

示談金のお支払いは、保険会社にとって「他人の法律事務」ではなく「自分の法律事務」となるので、弁護士法違反にならずに行うことができます。

これに対し、被害者の過失割合が0の場合、被害者は相手に賠償金を支払うことはなく、一方的に相手から賠償金を受け取るだけです。

相手から受けとった賠償金は全額被害者のものとなり、自分が加入している保険会社に一部渡すことなどもありません。

そうなると、保険会社にとって、被保険者(被害者)の示談交渉は、完全な「他人の法律事務」です。

「自分の法律事務」ではないのですから、弁護士法72条違反となってしまいます。

以上ことから、被害者の過失割合が0の場合には、被害者が自分で自動車保険に加入していたとしても、自動車保険が示談交渉を代行してくれません。

被害者は完全に「一人で」加害者や加害者の保険会社と示談を進めていかなければならないので、非常に不利になってしまいます。

保険会社が示談交渉してくれない場合の対処方法

クマ

自分の過失が0の場合には、どうしたら良いの?

ウサギ

自分自身で示談交渉をすると、示談金が少なくなってしまうから、弁護士に依頼するのがお勧めだよ。

被害者に過失割合がない場合、過失相殺による賠償金の減額をされないので、本来であれば被害者にとって大きなメリットがあるはずです。

しかし実際には保険会社が示談を代行してくれないので、以下のような不利益が及ぶ可能性があります。

保険会社が示談交渉してくれない場合の不利益の内容

保険会社が示談交渉を代行しない場合、被害者は一人で加害者側と対峙しなければなりません

相手が任意保険に加入している場合、相手には保険会社がつくので、被害者は加害者の保険会社に一人で立ち向かわなければなりません。

保険会社の示談担当員は、示談交渉専門の教育を受けており、交通事故賠償金計算に関する知識も豊富で、被害者に支払う賠償金を「値切る」ノウハウも備えています。

そこで、被害者が保険会社の担当者と直接交渉をすると、被害者は非常に不利になります。

たとえば、保険会社の担当員が賠償金計算の際に低額な任意保険基準をあてはめてきて、慰謝料の金額が、被害者が本来請求できるはずの金額の2分の1~3分の1程度にまで減額されてしまう可能性もあります。

過失相殺されないので賠償金の全額請求権があったとしても、もともとの賠償金の数字が減額されてしまうので、結果として少ない賠償金しか獲得できなくなってしまうのです。

対処方法は、弁護士に依頼すること

それでは、被害者の過失割合が0の場合に示談交渉で不利にならないためには、どのようにすれば良いのでしょうか?

もっとも効果的な方法は、弁護士に示談交渉を依頼することです。

弁護士が示談交渉を代行する場合、任意保険基準ではなく法的な「裁判基準(弁護士基準)」を使います。

裁判基準で計算すると、任意保険基準と比べて慰謝料が倍以上になることも少なくありません。

また、弁護士は法律のプロであり、加害者の保険会社の示談担当員よりも賠償金計算方法や判例についての知識がありますし、示談交渉のノウハウも心得ています。

そこで、弁護士に任せている限り、被害者が不利になることはありません。

被害者が自分で示談交渉をすると多大なストレスがかかりますが、弁護士に依頼していたらそのようなこともなく、治療や日常生活、仕事などに専念することができます。

弁護士費用がかかるので心配される方もおられますが、弁護士が対応すると、かかった費用以上に賠償金がアップすることが多数なので、恐れる必要はありません。

また、弁護士費用特約を利用できたら300万円までの弁護士費用を保険会社が出してくれるので、被害者の負担が非常に小さくなります。

被害者が自分で示談交渉するよりよほど良い結果を得られますから、もしも自分の過失割合が0や保険に加入していないなどの事情で、示談代行サービスが適用されない状況になったら、すぐに交通事故トラブルに注力している弁護士に相談しましょう。

非弁行為となってしまう場合とは

クマ

行政書士でも示談交渉って可能なんじゃないの?

ウサギ

間違われることが多いんだけれど、行政書士が示談交渉を行うのは非弁行為となってしまうんだ。

その他にも、示談屋や、保険代理店などが示談交渉を行うのも非弁行為となってしまうから注意しよう。

弁護士法72条は、弁護士以外のものが報酬を受け取って他人の法律事務を行うことを禁じていますが、こういた弁護士法72条違反の行為のことを「非弁行為」と言います。

実は、保険会社による示談交渉以外にも、交通事故で非弁行為が問題になるケースがあります。

代理店の示談交渉

1つは、自動車保険(損害保険)の代理店による示談交渉です。

自動車保険の示談代行サービスによって示談交渉を代行して良いのは「教育を受けた正規の保険会社の職員」のみです。

代理店の人はそもそも保険会社の職員ではないので、示談交渉を代行する権限がありません。

そこで、保険会社の代理店の人が示談交渉を行おうとしてきたら、決して依頼してはいけません

そのようなことをすると、依頼者も非弁行為を助長するものとして弁護士法違反になってしまいます。

行政書士の示談交渉                            

近年、代理店による示談交渉代行よりも大きな問題となっているのが「行政書士」による示談交渉の代行です。

行政書士は、「町の身近な法律家」などとして親しみやすいイメージもありますが、同じ法律家とは言っても弁護士とは全く権限の範囲が異なります。

行政書士ができるのは、法律文書の代理作成のみです。

本人の代わりに示談交渉を行ったり、裁判手続きを行ったりする権限はありません。

ところが、行政書士は交通事故被害者による相談を多く受けているケースがあり、そうした行政書士が示談交渉の場にも乗りだしてくることがあります。

被害者としても、行政書士と弁護士の違いや行政書士の権限の範囲などを知らずに行政書士に事故対応を任せてしまうのです。

そうなると、行政書士による示談交渉が弁護士法72条違反となり、摘発の対象となりますし、行政書士に違法な示談交渉を依頼していた本人もペナルティを受ける可能性があります。

行政書士に交通事故の相談をするとしても、文書作成以上の示談交渉などの行為を任せてはなりません。

示談屋の存在

弁護士法に関連して、「示談屋」という違法なビジネスにも注意が必要です。

示談屋とは、弁護士資格がないのに他人の示談交渉を代行して報酬をもらっている違法業者です。

交通事故の示談交渉の場面にも、ときどき示談屋が現れて示談交渉を代行しようとします。

保険会社が示談交渉をしてくれないケースで、関係者でもないのに、「私が代わりに交渉してあげる」「賠償金を増額できる」などと言って近づいてきて、着手金を請求してきたり、獲得した報酬の一部や全部をとろうとしたりするのです。

示談屋は明らかに弁護士法違反の行為者ですから絶対に利用してはなりません。

代理店や行政書士の事実上の交渉より悪質なケースも多いです。

交通事故後、自分に示談屋が近づいてきた場合だけではなく、相手に示談屋が関与している場合にも、すぐに弁護士か警察に相談をして、取り締まってもらいましょう。

まとめ

クマ

交通事故の示談交渉と弁護士法について、詳しく教えてくれてありがとう!

ウサギ

たとえ保険会社が示談交渉をしてくれる場合でも、弁護士に依頼する方が慰謝料の増額が可能となるし、被害者請求をする場合にもサポートをしてもらえるから、弁護士に依頼するのがお勧めだよ。

今回は、交通事故の示談交渉と弁護士法について解説しました。

弁護士法違反は罰則も適用される「犯罪行為」ですから、くれぐれも巻き込まれないよう注意しましょう。

自分に過失割合がなく保険会社に示談代行をしてもらえない場合には、早めに弁護士に示談交渉を依頼して、不利にならないように対応しましょう。

The following two tabs change content below.
福谷陽子

福谷陽子

京都大学在学中に司法試験に合格し、多重債務(債務整理)、離婚問題や交通事故、相続などの案件を担当し、自身で弁護士事務所を運営。その後体調不良により弁護士事務所を一時閉鎖し、現在は10年間の弁護士経験を元に執筆に専念。

慰謝料の増額が可能か無料診断

慰謝料の増額が可能か無料診断できます

現在交渉中、これから交渉する慰謝料が増額できるかどうかを無料診断しています。

また、ほとんどのケースで「弁護士特約」という保険が適用されますので、実際に弁護士を利用することになっても持ち出すお金はかからず、受け取る金額だけが増額されます。

まずは無料診断だけでも問い合わせしてみることをおすすめします。

交通事故トラブルに注力している弁護士事務所一覧(PR)

弁護士法人・響

  • 交通事故トラブルに強い関心を持っている
  • 24時間フリーダイアルで相談可能
  • 適正な賠償金かどうかを無料診断
  • 女性弁護士も在籍しており女性でも相談しやすい
  • 他の士業との強力なネットワーク
  • 即日対応可能
  • 全国展開

0120-540-053
【24時間無料受付中】

弁護士法人天音総合法律事務所

  • 交通事故示談の実績が豊富
  • 相談は何度でも無料
  • 24時間全国対応
  • 弁護士費用は後払い

0120-553-025
【24時間無料受付中】

弁護士法人ステラ

  • 後遺障害の認定実績が豊富
  • 後払い、弁護士特約対応
  • 相談料無料
  • 24時間365日対応

0120-544-030
【24時間無料受付中】

-示談交渉

【無料】交通事故の相談はこちら【弁護士法人響】

Copyright© 交通事故示談交渉の森 , 2019 AllRights Reserved Powered by AFFINGER4.