後遺障害

バレリュー症候群(バレーリュー症候群)とは?後遺障害の認定や慰謝料について解説

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クマ

交通事故の後、バレリュー症候群って診断を受けたんだけれど、バレリュー症候群って何?

ミミズク

バレリュー症候群は、全身に様々な症状が出てしまう自律神経の失調症の1つなんだ。

クマ

バレリュー症候群と診断を受けたら、後遺障害認定を受けられるのかな?

ミミズク

実はバレリュー症候群では後遺障害認定を受けることができないんだ。

今回はバレリュー症候群とはどんな病気なのか、後遺障害認定を受けるためにはどうしたら良いのか、詳しく見ていこう。

  • 交通事故後、めまいや耳鳴りが止まらない
  • 交通事故に遭ってから食欲がなくなり、全般的な体調不良が続いている
  • 病院では「バレリュー症候群」と診断されている
  • バレリュー症候群の場合、後遺障害認定を受けられる?

交通事故で首周辺を損傷すると「バレリュー症候群」となってしまうケースがあります。

その場合、どのような治療が有効なのか、また後遺障害認定を受けられる可能性はあるのでしょうか?

今回はバレリュー症候群の症状や治療法、後遺障害等級や慰謝料などの必要な知識をご紹介していきます。

バレリュー症候群とは

バレリュー症候群とは、頸椎に衝撃を受けたことがきっかけで自律神経(主に交感神経)が異常な状態となり、痛みやこり、めまいや耳鳴り、食欲不振や倦怠感などのさまざまな身体症状が起こる状態です。

いわゆる「自律神経失調症」の1種です。

1925年~1928年にフランスのバレとリューという神経学者が、頸椎を損傷した患者に起こる一連の症状を研究し、これが交感神経異常によるものであると発表しました。

その名を取って「バレリュー症候群」と呼ばれています。

交通事故では追突事故などで頸椎が歪み、いわゆる「むち打ち症」となったときにバレリュー症候群となる例が多数です。

バレリュー症候群が通常の頸椎捻挫と異なるのは、交感神経・自律神経に異常を来していることです。

自律神経は人間の全身の機能のバランスを保っている神経です。

これが異常な状態になることで、肩や背中のみならず、めまいや耳鳴り、全身の倦怠感、食欲不振、ときには排尿障害や下痢、嗅覚異常などのさまざまな症状が出る可能性があります。

バレリュー症候群の症状

クマ

バレリュー症候群はどんな症状が出ることが多いの?

ミミズク

人によって症状は様々だよ。

1つの症状に悩むよりも、全身の症状に悩む人が多いんだ。

全身にさまざまな症状が出る

バレリュー症候群の典型的な症状は、以下のようなものです。

目の症状 めまい、眼精疲労、涙が止まらない、目の調節障害
耳の症状 耳鳴り、難聴
頭の症状 頭重感、頭痛
肩や背中、腰の症状 肩こり、背中のこり、腰痛、しびれ
消化器系の症状 食欲不振、下痢、吐き気、胃重感、腹痛、排尿障害
全身の症状 倦怠感、動機、息切れ、手足の冷感、熱感、脱力感(力が入らない)

自律神経の働きは全身に及ぶので、いったんバレリュー症候群となると「全身にわたって」さまざまな症状が出ます。

常に上記のすべての症状がバレリュー症候群の患者に発現するとは限らず、どういった症状が現れるかはケースバイケースです。

バレリュー症候群の症状が出るタイミングは「遅い」

一般的な頸椎捻挫によるむち打ち症の場合でも、事故後症状が出るまでに数日かかることがありますが、バレリュー症候群の場合には発症時期がさらに遅くなることが多いので注意が必要です。

事故後23週間が経過してから異常を感じ始める方もおられます。

交通事故後、数か月の期間が経過していても、めまいや耳鳴り、全身の倦怠感などの症状が現れたら早めに病院を受診しましょう。

むち打ち症とバレリュー症候群

クマ

バレリュー症候群とむち打ちは違うの?

ミミズク

むち打ち症を分類すると、頸椎捻挫やバレリュー症候群などに分けることができるんだ。

頸椎捻挫の治療を受けても、バレリュー症候群が良くなることはないから注意が必要だよ。

一般に「むち打ち症=バレリュー症候群」と思われていることがありますが、この理解は不正確です。

そもそも「むち打ち症」は正式な診断名ではありません。

交通事故などで頸椎が歪み、損傷を受けたことによって発症するさまざまな症状の一般的な総称です。

むち打ち症を分類すると、頸椎捻挫型や神経根症型、脊髄損傷型、バレリュー症候群があり、バレリュー症候群はむち打ち症の1と言えます。

一般のむち打ち症では頸椎捻挫が多いのですが、頸椎捻挫とバレリュー症候群は原因も治療方法も異なります。

勘違いして頸椎捻挫の治療を受けても治りません。

「交通事故で頸椎を損傷した」という原因は同じでも、対処方法が全く違うので「バレリュー症候群は典型的なむち打ち(頸椎捻挫)とは異なる」と知っておきましょう。

バレリュー症候群の診断方法

クマ

バレリュー症候群はどうやって診断されるの?

ミミズク

自立神経失調症だから、レントゲンやMRでは症状を確認する事は出来ないんだ。

自覚症状のみでの診断となるから、診断結果を出すまでに時間がかかってしまう事が多いんだよ。

バレリュー症候群は、どのようにして診断されるのでしょうか?

バレリュー症候群の原因となる神経の異常は、MRIなどの画像撮影機器を使って把握できません。

客観的な他覚所見を得られない症状です。

そこで診断基準としては、患者の自覚症状が主となります。

以下のような条件が揃っていれば、バレリュー症候群が強く疑われる状態です。

  1. 交通事故で頸部を損傷した
  2. 自律神経失調症に典型的な自覚症状がある
  3. MRIやレントゲンなどでは他覚所見を得られない
  4. 交感神経節ブロック(星状神経節ブロック)注射で症状が改善する

通常、医師は①~③の要件がそろったら「バレリュー症候群ではないか?」と疑い、④の注射を試してみます。

この注射はバレリュー症候群に有効とされているもので、効果があればバレリュー症候群である可能性が濃厚になります。

バレリュー症候群の治療法

クマ

バレリュー症候群は治療すれば治るの?

ミミズク

適切な治療で2か月くらいで症状が落ち着いてくるよ。

バレリュー症候群になったとき、どのような治療方法が有効なのでしょうか?

バレリュー症候群に有効な「交感神経節ブロック注射」

通常のむち打ち症である「頸椎捻挫」は、頸椎を損傷することによって首回りの筋肉や軟部組織、末梢神経に異常を来すものですが、バレリュー症候群の場合、自律神経が異常になって症状が全身に及びます。

そこで一般の頸椎捻挫のように、頸椎部分の固定とリハビリによる治療法では治りません。

バレリュー症候群に有効とされるのは「交感神経節ブロック注射(星状神経節ブロック注射)」です。

この注射は交感神経節に働きかけ、昂った神経の緊張状態を和らげます。

このことで自律神経系が正常な状態に近づき、さまざまな症状が治まります。

だいたい2か月程度治療を継続すると、症状が緩解していきます

バレリュー症候群になったら「ペインクリニック、麻酔科」を受診する

クマ

バレリュー症候群は整形外科で治療可能なの?

ミミズク

バレリュー症候群では、交感神経節ブロック注射が効果的だから、神経内科やペインクリニックでの受診が必要になるよ。

バレリュー症候群になったら、かかる病院の診療科に注意が必要です。

交通事故でよくある一般的なむちうちや骨折などの症状の場合、「整形外科」に通院します。

しかしバレリュー症候群は自律神経に関する症状なので、整形外科では対応してもらえません。

麻酔科やペインクリニック、神経内科などの診療科が専門となります。

交通事故でむち打ち症になり整形外科に通っても、バレリュー症候群なら有効な治療を受けられません。

被害者はいつまでも正体不明の不快な症状に悩まされ、もやもやした思いを抱え続けることとなってしまいます。

医師にも、気づいて「ペインクリニックに行ってみてはどうですか?」と言ってくれる人もいれば、何も言ってくれない人もいます。

医師から勧めてもらえない場合、患者が自主的にペインクリニックや麻酔科、神経内科に通院を開始する必要があります。

そうでないといつまで頸椎捻挫のリハビリなどを続けても、バレリュー症候群が治りません。

バレリュー症候群で後遺障害認定を受けられる

クマ

バレリュー症候群で後遺障害認定を受けるにはどうしたら良いの?

ミミズク

バレリュー症候群は他覚所見を提示することができないから、後遺障害認定を受けることができないんだ。

だけど、症状が出ている事を証明できれば、その症状に合わせた後遺障害認定を受けることが可能だよ。

交通事故でバレリュー症候群となった場合、後遺障害認定を受けられるのでしょうか?

バレリュー症候群は、MRIやレントゲンで他覚所見を得られない症状です。

交通事故の後遺障害認定では画像による他覚所見が非常に重視されるので、MRIやレントゲンに写らないバレリュー症候群は非常に認定を受けにくいと言えます。

ただバレリュー症候群になった場合でも、以下のような症状で後遺障害認定される可能性があります。

自覚症状のみの神経症状

バレリュー症候群になったら頸椎捻挫を併発することが多いですし、肩や背中の痛みやしびれ、腕の痛みや温冷感などのさまざまな神経症状も起こります。

これらの症状があることを合理的に推認させることができれば神経症状として14級の認定を受けられる可能性があります。

耳鳴り

バレリュー症候群で耳鳴りが発生した場合にも後遺障害認定される可能性があります。

耳鳴りについては、耳鼻科で「オージオグラム検査」という検査を受けます。

30dB以上の難聴が確認できて「ピッチマッチ検査」「ラウドネスバランス検査」によって耳鳴りを立証できれば後遺障害12級が認められます。

また上記のような医学的な証明が困難なケースでも、交通事故後耳鳴りが持続していることを合理的に推認できる場合には後遺障害14級が認定される可能性があります。

排尿障害

バレリュー症候群となると、まれに排尿障害を引き起こす例もあります。

特に尿管カテーテルによる強制導尿が必要になった場合には、後遺障害認定される可能性が高まります。

排尿障害で後遺障害認定を受けるには、ウロダイナミクス検査を受けて「尿道括約筋(にょうどうかつやくきん)」に異常を来していることを証明します。

排尿障害で認定される可能性のある後遺障害等級は、1110号です。

嗅覚障害

バレリュー症候群により、臭いを感じられなくなったり感じにくくなったりするケースもみられます。

その場合、「嗅覚障害」として後遺障害認定を受けられる可能性があります。

嗅覚障害は、「T&Tオルファクトメータ」を使って証明します。

この検査で嗅覚が失われたと立証できたら12級に認定される可能性があり、嗅覚が減退したことを確認できたら14級に認定される可能性があります。

バレリュー症候群の慰謝料の相場

クマ

バレリュー症候群の場合には、どの位の慰謝料を受け取ることができるの?

ミミズク

入通院慰謝料と、後遺障害慰謝料の2つを合わせた賠償金を受け取ることが可能だよ。

通院期間が長ければ、その分慰謝料は高額になるんだ。

交通事故でバレリュー症候群になると、慰謝料はどのくらいになるのでしょうか?

交通事故の慰謝料には「入通院慰謝料」と「後遺障害慰謝料」があるので、それぞれみてみましょう。

入通院慰謝料

入通院慰謝料は、交通事故によって入通院治療を受けるほどのけがをしたことに対する慰謝料です。

入通院期間に応じて金額が変わります。

バレリュー症候群となって2か月通院した場合には36万円程度、3か月通院した場合には53万円程度となります。

通院期間が長引いて5か月になったら79万円程度です。

このように通院期間が延びるにつれて入通院慰謝料の金額は上がります。

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料は、交通事故で辛い後遺症が残ったことについての慰謝料です。

後遺障害の「等級」によって金額が異なります。

  • 排尿障害で11級となった場合…420万円程度
  • 耳鳴りや嗅覚障害で12級となった場合…290万円程度
  • 神経症状や医学的証明のできない耳鳴り、嗅覚の減退で14級となった場合…110万円程度

後遺障害が認定されると14級でも110万円の慰謝料が支払われますし、認定等級が上がるとさらに増額されます。

バレリュー症候群が完治しなかったら適切に後遺障害認定の手続きを受けて、認定してもらうことが非常に重要です。

バレリュー症候群でなるべく高額な慰謝料を支払ってもらう方法

クマ

少しでも賠償額をアップさせるにはどうしたら良いのかな?

ミミズク

弁護士に依頼するのがお勧めだよ。

弁護士基準で計算するだけで、任意保険基準に比べるとかなりの賠償額アップにつながるんだ。

高額な慰謝料を払ってもらうには弁護士に示談交渉を依頼する

バレリュー症候群となったら入通院慰謝料と後遺障害慰謝料を請求できますが、必ず上記の金額を払ってもらえるわけではありません。

多くの場合、任意保険会社は上記より低額な「任意保険会社独自の基準」で慰謝料を計算するので、大幅に減額されてしまいます。

入通院慰謝料は3分の2以下、後遺障害慰謝料は3分の1程度にまで減らされるケースも珍しくありません。

交通事故の被害者が適切な金額の後遺障害慰謝料を受けとるには、弁護士に示談交渉を依頼する必要があります。

弁護士が交渉を代理すると法的な基準が適用されるので、上記で紹介した相場の慰謝料を受けとることが可能です。

弁護士費用で足が出るケースもある

ただしバレリュー症候群でも、後遺障害が残らず通院期間も短く済んだ場合には、弁護士に依頼するとかえって弁護士費用がかさんで足が出る可能性もあります。

迷われたときには、一度交通事故案件を数多く取り扱っている弁護士の「無料相談」を利用して、弁護士に依頼したときに得になるか損になるのか聞いてみると良いでしょう。

辛いバレリュー症候群の症状を抱えて泣き寝入りする必要はないので、まずは気軽に専門家である弁護士の知恵を借りてみましょう。

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福谷陽子

福谷陽子

元弁護士・ライター。
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。

■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
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