交通事故を起こしてしまった時って、事故証明は必要なの?
交通事故証明は、交通事故を起こしてしまったことを証明するための書類だから、とても大切なんだよ。
交通事故証明は何に使うの?
よし!では早速、交通事故証明は何に使うのか、どこで申請するのかを詳しくチェックしていこう!
- 交通事故証明書とは一体何か?
- 交通事故証明書はどうやって入手すればいいの?
- 交通事故証明書がなかったらどのような不都合が起こるのか?
交通事故に遭ったら、事故の内容を証明するために「交通事故証明書」が重要な資料となります。
ただ交通事故証明書は日常生活ではかかわりのない書類なので、何が書いてあるのか、どうやって入手すれば良いのか、何に使うのかなど、わからないこともたくさんあるでしょう。
今回は交通事故証明書を入手する必要性と受け取る方法などについて、解説します。
目次
交通事故証明書とは
そもそも交通事故証明書って何?
その事故がどんな事故だったのかが記載されている書類だよ。
警察が事故の現場で詳細を記録することで、発行できるようになるんだ。
交通事故証明書とは、交通事故の内容を大まかに記した書類です。
中には交通事故の発生場所や時刻、当事者、加入している保険会社名などが書いてあり、交通事故が発生したことを証明する目的で利用されます。
交通事故証明書を発行するのは「自動車安全運転センター」という機関です。
センターは警察と連動しているので、警察に交通事故の届出をしない限り交通事故証明書は作成されませんし、入手もできません。
警察への届出は法律上の義務
警察を呼ばなきゃ事故証明は作成されないんでしょ?
なんだか面倒だから届け出なくてもいいかなぁ?
交通事故を起こしてしまったら、加害者でも被害者でも警察に届け出る義務があるから、事故証明は必要ないと思っても、必ず警察に届け出ることが大切だよ。
交通事故証明書を入手するには、必ず事故が発生したことを警察に届け出る必要がありますが、警察への事故報告は事故当事者の義務です。
事故が起こったら加害者にも被害者にも警察への報告義務がある
道路交通法72条1項後段には、「交通事故を起こした当事者(車両の運転者や同乗者)は事故後速やかに警察に報告をしなければならない」と定められています。
つまり自動車やバイクなどで事故を起こした人は、必ず警察に事故の場所や時間、被害状況などを報告しなければならないのです。
加害者だけではなく被害者にも報告義務が課されるので注意が必要です。
一般には「加害者が警察に報告すべき」と思われていますが、車両に乗っている限りは被害者であっても報告義務があります。
報告義務がないのは歩行者だけです。
人身事故でも物損事故でも報告が必要
警察への報告義務に関してもう1つ重要なポイントがあります。
それは、人身事故だけではなく物損事故でも報告義務があることです。
相手の車に自分の車をぶつけて傷つけてしまったら、すぐに警察に連絡して到着を待ちましょう。
報告しないで走り去ると「当て逃げ」となってしまいます。
報告義務違反の場合に課される罰則
事故が起こったのに警察に報告をしなかったら、道路交通法によって処罰されます。
罰則の内容は「3か月以下の懲役または5万円以下の罰金刑」です(道路交通法119条1項10号)。
交通事故証明書は何に使うのか?
交通事故証明書は、どんな時に必要になるの?
保険の手続きをする時や、休業損害を申請する時、労災の手続きを進める時などに必要になるんだ。
交通事故が起こったとき、すぐに警察を呼んで事故現場を確認してもらったら、その後交通事故証明書が発行されるようになります。
交通事故証明書の利用目的は、主に「交通事故が発生した事実を証明するため」です。
交通事故証明書を見れば、いつどこで誰が当事者となっていてどのような事故が発生したのか、一見してわかるからです。
具体的にはどのような場面で必要になるのか、用途を確認しましょう。
相手の任意保険(対人賠償責任保険)の適用
相手の任意保険会社から対人賠償責任保険による保険金の支払いを受けるときには、基本的に交通事故証明書が必要です。
ない場合には「人身事故証明書入手不能理由書」などの書類の提出が必要です。
自分の自動車保険の適用
交通事故の被害者が自動車保険に加入している場合、自分が加入している保険会社から人身傷害補償保険や搭乗者傷害保険などの保険金を受け取れるケースがあります。
これらの保険金も、交通事故証明書が発行されないと支払われないおそれがあります。
自賠責保険の適用
自賠責保険の適用を受けるためにも交通事故証明書が必要です。
たとえば被害者請求で自賠責保険に直接後遺障害認定の請求をするとき、必要書類として交通事故証明書を添付する必要があります。
労災保険の適用
仕事中や通勤途中に交通事故に遭った場合、労災保険を適用できますが、労災保険の申請時にも交通事故証明書の提出を要求されます。
会社を休むときなど
交通事故に遭ったら、けがの治療のために会社を休まねばならないケースがあります。
その際、会社に交通事故証明書を提出すると、事故に巻き込まれたことがすぐにわかるので欠勤や休暇を認めてもらいやすくなるでしょう。
調停やADR、訴訟などの資料
裁判所で調停をしたり交通事故紛争処理センターでADRなどの手続きをしたりするとき、どのような交通事故が起こったか確かめるために交通事故証明書を要求されます。
訴訟でも交通事故証明書を「証拠」として提出します。
交通事故証明書には何が書いてあるのか
交通事故証明書には、どんなことが書いてあるの?
事故が起きた日時や場所、事故を起こした当事者の情報や、事故発生時の状況などが記載されるんだよ。
交通事故証明書には、以下のようなことが書いてあります。
- 事故照合番号
事故が警察に受け付けられた際の照合番号(受付番号)です。 - 事故発生日時
事故が発生した日時(〇〇年〇月〇日〇時〇分頃)が記載されます。 - 事故発生場所
住所を特定して、交通事故が発生した場所が記載されます。 - 事故当事者
甲欄と乙欄に事故当事者名や個人情報が書かれます。
具体的には住所、氏名、生年月日、車種(自家用普通乗用自動車など)、ナンバー、自賠責保険会社の名称、証明書番号などの情報です。
一般には「甲欄に加害者、乙欄に被害者の情報が記載される」と言われますが、必ずしもそうとは限りません。
現実の過失割合は事故証明書の甲乙にかかわらず算定されます。
なお自損事故の場合、乙欄には「ガードレール」など壊れた物が記載されます。 - 事故発生時の状態
「運転」「同乗」「歩行」「その他」のうちいずれかが記載されます。 - 事故類型
「人対車両」「車両相互(車対車)」「車両単独(自損事故)」「踏切」「不明・調査中」のいずれかに分類されて記載されます。 - 人身事故か物件事故か
交通事故証明書には人身事故か物損事故が書かれています。
人身事故の保険金を受け取るためには、基本的に事故証明書に「人身事故」と書かれている必要があります。
交通事故証明を受け取らない場合に想定されるリスク
交通事故証明書が発行できないとどうなるの?
任意保険や自賠責などの保険金を受け取れなくなってしまうんだ。
その他にも、労災手続きを進められなかったり、裁判になっても事故を証明することができなくなってしまうんだよ。
もしも交通事故が発生したのに交通事故証明書をもらっておかないと、以下のようなリスクが発生する可能性があります。
自賠責保険への被害者請求ができないおそれ
人身事故に遭ったとき、相手が任意保険に入っていなくても最低限自賠責保険からは保険金を受け取れるものです。
しかし交通事故証明書を提出しなかったら、自賠責保険に保険金の申請ができないのでお金を受け取れない可能性があります。
後遺障害認定の際に「被害者請求」をして自分から積極的に保険金を請求することもできません。
政府保障事業を適用されないおそれ
ひき逃げのケースや相手が自賠責保険に加入していない場合、自賠責保険が適用されません。
その場合、政府保障事業を利用して最低限のお金(てん補金)を受け取ることが可能です。
政府保障事業へ申請をする際にも交通事故証明書が必要なので、なかったら、最低限の補償も受けられない可能性が発生します。
労災申請ができないおそれ
労災申請のためにも交通事故証明書が必要なので、提出しなければ基本的に労災保険が適用されません。
労災に遭ったのに補償を受け取れないリスクが発生します。
任意保険の場合
任意保険会社は、被害者が提出しなくても交通事故証明書を自主的にとりつけてくれる例が多数です。
被害者が入手して提出する事はありません。
ただし警察に届け出ていなかったらそもそも交通事故証明書が発行されないので、保険会社の方で取り寄せることもできません。
以上のように、交通事故証明書がないといろいろなリスクが発生します。
後日きちんと交通事故証明書を発行してもらうためにも、交通事故が起こったら、必ずすぐに警察に事故の報告を行いましょう。
その場で警察に届け出なかったら後日の届出も可能な場合がある
交通事故の後、警察に連絡しなかったんだけれど、後から申請する事も出来るの?
事故後、日数があまり経過していなければ、警察に届け出ることが可能だよ。
交通事故現場で警察に届出をしなかったら、基本的には交通事故証明書が発行されません。
ただし日にちが近い場合には、すぐに警察に報告に行ったら事故の届出を受け付けてもらえて交通事故証明書が発行されるようになるケースもあります。
時間が空くと受け付けてもらえるので、何らかの事情でその場で報告できなかった場合、すぐに警察に行って事故の届出をしましょう。
交通事故証明書が発行されない場合どうすれば良いのか
日数が経ってしまって交通事故証明書を発行できない場合にはどうしたら良いの?
人身事故証明書入手不能理由書っていうのを保険会社に提出すれば、保険金を受け取ることが可能だよ。
交通事故現場で届出をせず時間も経ってしまったら交通事故証明書が発行されません。
また事故現場が駐車場などの私有地である場合にも事故証明書は発行されないことになっています。
このような場合でも、保険会社に「人身事故証明書入手不能理由書」を提出すると人身事故に関する保険金の支払いを受けられます。
保険会社に連絡を入れて「人身事故証明書入手不能理由書」のひな形を送ってもらい、必要事項を記入して返送しましょう。
そうすれば、対人賠償責任保険などの適用を受けられるようになります。
交通事故証明書の取得方法
自分自身で交通事故証明書を発行するにはどうすれば良いの?
ネットから申し込みをする方法や、郵便局や窓口で申請する方法もあるよ。
実際に交通事故証明書を入手する際にはどのようにすれば良いのか、取得方法をご説明します。
インターネットで申し込む
事故の当事者(加害者や被害者)本人は、自動車安全運転センターのサイトで交通事故証明書の申請ができます。
自動車安全運転センターのサイトから申請すると、だいたい1週間以内に自宅宛に交通事故証明書が送られてきます。
代金は540円+手数料130円で、金融機関や全国のコンビニで払込ができます。
ただし送られてくるのは事故当時の住所地宛てに限られます。
全国の郵便局で申し込む
ネットを使わない場合や代理人が申請する場合には、全国の郵便局で交通事故証明書の申請ができます。
事故当時の住所から引っ越している場合にも、郵便局から申請しましょう。
郵便局に行って交通事故証明書の申請用紙をもらい、必要事項を記入してATMなどで払込を行います。
料金は540円+払込手数料がかかります。
払込後10日程度で指定した住所へ交通事故証明書が郵送されてきます。
自動車安全運転センターで申し込む
代理人が取得する場合や事故当時と住所が変わっている場合、直接自動車安全運転センターに行って窓口で交付を受けることも可能です。
全国に自動車安全運転センターの支部がありますが、どこで申請をしてもかまいません。
窓口で申請用紙をもらい、必要事項を記入して手数料540円を添えて申込むと、基本的にその日中に交通事故証明書を交付してもらえます。
ただし交通事故からの日にちが浅く、警察から交通事故に関する資料が届いていない場合、後日の郵送になります。
また他府県の交通事故の証明書についても、即日交付できず後日の郵送となります。
交通事故証明書の申請期限
事故証明の申請には、期限はあるの?
人身事故の場合には5年、物損事故の場合には3年という期限があるから、注意しよう。
交通事故証明書には、申請期限があります。
人身事故証明書の場合には事故発生後5年、物損事故証明書の場合には事故発生後3年です。
期限内なら何度でも発行してもらえるので、原本をどこかへ提出したら再度入手して、常に手元には原本を1通おいておくと良いでしょう。
交通事故後、さまざまな手続きを行うために交通事故証明書が必要です。
そのためにも、事故に遭ったらすぐに警察に報告しましょう。
どうしても取得できない場合には代替策をとれるケースもあります。
事故証明書を取得できない事情があるのに提出が必要となって困っているなら、一度対応方法を弁護士に相談してみてくださいね。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。