交通事故に遭ってしまった時には、慰謝料はどの位もらえるのかな?
交通事故慰謝料は、通院期間や後遺症が残ったかどうかなど、様々な条件で変わってくるんだ。
交通事故慰謝料の慰謝料はどうやって決められているの?
計算式はあるのかな??
よし!では早速、交通事故慰謝料の計算方法について、詳しくチェックしていこう!
交通事故でけがをしたら、加害者に「入通院慰謝料」を請求できます。
入通院慰謝料とは、けがをして入通院が必要になったときに、治療期間に応じて計算される慰謝料です。
入通院慰謝料の計算方法には複数の種類があり、高額になるのは「弁護士基準」という法的な基準です。
示談交渉の際、相手から不当に慰謝料を減額されないため、正しい知識をもっておきましょう。
今回は、人身事故の被害者にとって重要な「入通院慰謝料」について解説していきます。
目次
交通事故における慰謝料とは
交通事故に遭うと、慰謝料は必ずもらえるの??
交通事故に遭ってしまったことでもらえるお金は損害賠償金と呼ばれる物なんだ。
慰謝料は、損害賠償金の中の1つで、損害賠償金には、慰謝料の他にも、かかった治療費や休業損害なども含まれているんだよ。
そもそも慰謝料とは何なのか正しく理解されていないケースがあるので、まずは確認しましょう。
慰謝料は、被害者に支払われる賠償金の一部
交通事故に遭ったら、被害者は加害者に慰謝料を請求できるので、慰謝料が「損害賠償金のすべて」だと思っている方がおられます。
しかし慰謝料は交通事故によって発生する「損害賠償金の一部」に過ぎません。
慰謝料は「精神的苦痛」に対する賠償金です。
交通事故でけがをすると、被害者は「痛い」「怖い」「苦しい」などさまざまな精神的苦痛を受けるので、そのような苦痛を和らげるために慰謝料が支払われます。
交通事故で発生する賠償金には慰謝料の他にも
- 治療費
- 交通費
- 休業損害
などいろいろな項目があり、慰謝料がすべてではありません。
まずは「慰謝料は発生する損害の一部に過ぎない」ことを正しく理解しましょう。
交通事故の被害者になった際に、加害者に請求できる慰謝料の種類
慰謝料として請求できるのはどんなケースなの?
後遺障害が残った場合や、入通院をした時、死亡した時などに支払われる事になるよ。
交通事故の被害者が加害者へ請求できる慰謝料にはいくつかの種類があります。
後遺障害に対して支払われる慰謝料
交通事故でひどいけがをすると、被害者に後遺症が残ってしまうケースがあります。
そのような場合には、自賠責保険で「後遺障害」として認定を受けることにより、相手に「後遺障害慰謝料」を請求できます。
後遺障害には1~14までの「等級」があり、級が上がるほど程度が重度となっていきます。後遺障害慰謝料の金額も、等級が上がるほど高額になります。
被害者が死亡した場合に支払われる慰謝料
被害者が死亡した場合には「死亡慰謝料」が発生します。
被害者は死亡すると同時に強い精神的苦痛を受けて慰謝料が発生すると考えられるためです。
慰謝料は相続人に相続されるので、現実には相続人が死者に代わって相手に慰謝料請求を行います。
被害者が入院したり通院したりした場合に支払われる慰謝料
被害者がけがをして入通院すると入通院慰謝料が発生します。
入通院慰謝料は、後遺障害が残らない事案でも発生します。
人身事故に遭って数日間でも入通院したら入通院慰謝料が発生すると考えましょう。
もちろん後遺障害が残る事案でも入通院をしたら請求できますし、死亡事故でも入通院慰謝料が発生する可能性はあります。
即死事故でなければ、死亡前に数か月入通院するので、その分入通院慰謝料が発生するのです。
入通院慰謝料は、多くの人身事故で発生する「基本の慰謝料」とでもいうべき慰謝料です。
入通院慰謝料の計算方法
入通院慰謝料はどうやって計算するの?
慰謝料の計算方法は、弁護士基準になるのか、自賠責基準になるのかで計算方法が変わってくるんだ。
この2つの計算方法を詳しく説明するね。
慰謝料の計算方法には複数あり、自賠責基準と弁護士基準とでは計算結果が異なります。
自賠責基準は自賠責保険で保険金を計算するときに利用する基準、弁護士基準は弁護士や裁判所が損害賠償金を計算するときに利用する基準です。
以下では入院した場合と通院した場合にわけて、それぞれの慰謝料の金額をみていきましょう。
入院した場合
入院した場合の入通院慰謝料の金額は、以下の通りです。
自賠責基準
自賠責基準の場合、1日4,200円として計算されます。
たとえば30日の入院であれば126,000円、60日の入院なら252,000円です。
弁護士基準
弁護士基準の場合には、けがの程度によって異なります。軽傷の場合には通常のケガの3分の2程度に減額されます。
- 通常程度のケガの場合
1ヶ月 | 2ヶ月 | 3ヶ月 | 4ヶ月 | 5ヶ月 | 6ヶ月 | 7ヶ月 | 8ヶ月 | 9ヶ月 | 10ヶ月 |
53万円 | 101万円 | 145万円 | 184万円 | 217万円 | 244万円 | 266万円 | 284万円 | 297万円 | 306万円 |
- 軽傷の場合
1ヶ月 | 2ヶ月 | 3ヶ月 | 4ヶ月 | 5ヶ月 | 6ヶ月 | 7ヶ月 | 8ヶ月 | 9ヶ月 | 10ヶ月 |
35万円 | 66万円 | 92万円 | 116万円 | 135万円 | 152万円 | 165万円 | 176万円 | 186万円 | 195万円 |
通院のみの場合
自賠責基準
自賠責基準の場合、入院期間も通院期間も慰謝料の計算方法は基本的に同じです。
「治療期間×4,200円」が基準となります。
ただし通院日数が少ない場合には「実通院日数×2×4,200円」になります。
たとえば90日間の治療期間がかかり、45日以上通院した場合には90日×4,200円=378,000円となります。
一方90日間の治療期間でも、40日しか通院しなかった場合には40日×2×4,200円=336,000円に減額されます。
弁護士基準
弁護士基準の場合には、通院だけの場合入院したケースよりも慰謝料が低くなります(ただしそれでも自賠責基準よりは高額になります)。
また軽傷のケースでは通常程度のけがのケースの3分の2程度に慰謝料が下がります。具体的には以下のような数字になります。
- 通常程度のケガの場合
1ヶ月 | 2ヶ月 | 3ヶ月 | 4ヶ月 | 5ヶ月 | 6ヶ月 | 7ヶ月 | 8ヶ月 | 9ヶ月 | 10ヶ月 |
28万円 | 52万円 | 73万円 | 90万円 | 105万円 | 116万円 | 124万円 | 132万円 | 139万円 | 145万円 |
- 軽傷の場合
1ヶ月 | 2ヶ月 | 3ヶ月 | 4ヶ月 | 5ヶ月 | 6ヶ月 | 7ヶ月 | 8ヶ月 | 9ヶ月 | 10ヶ月 |
19万円 | 36万円 | 53万円 | 67万円 | 79万円 | 89万円 | 97万円 | 103万円 | 109万円 | 113万円 |
入院も通院もした場合
交通事故では入院か通院のどちらか一方だけというよりも、しばらく入院してその後通院をするケースが多数です。
その場合、自賠責基準と弁護士基準ではそれぞれどうなるのか、みてみましょう。
自賠責基準の場合
自賠責基準では入院期間と通院期間を区別せず、基本的に一律で1日4,200円として治療期間分を計算します。
ただし通院期間の場合、実治療日数が少なくなると治療日数が「実治療日数×2」に減らされます。
たとえば1か月(30日)入院した後4か月(120日)通院した場合、通院日数が60日以上であれば150日×4,200円=630,000円です。
通院日数が50日であれば、130日(100日+50日×2)×4,200円=546,000円となります。
弁護士基準の場合
弁護士基準の場合には、入院期間と通院期間の組み合わせによって慰謝料の金額が変わるので、以下のような表で計算されます。
・通常程度のけがの場合
入院 |
|
1ヶ月 |
2ヶ月 |
3ヶ月 |
4ヶ月 |
5ヶ月 |
6ヶ月 |
7ヶ月 |
8ヶ月 |
9ヶ月 |
10ヶ月 |
|
通院 |
53 |
101 |
145 |
184 |
217 |
244 |
266 |
284 |
297 |
306 |
||
1ヶ月 |
28 |
77 |
122 |
162 |
199 |
228 |
252 |
274 |
291 |
303 |
311 |
|
2ヶ月 |
52 |
98 |
139 |
177 |
210 |
236 |
260 |
281 |
297 |
308 |
315 |
|
3ヶ月 |
73 |
115 |
154 |
188 |
218 |
244 |
267 |
287 |
302 |
312 |
319 |
|
4ヶ月 |
90 |
130 |
165 |
196 |
226 |
251 |
273 |
292 |
306 |
326 |
323 |
|
5ヶ月 |
105 |
141 |
173 |
204 |
233 |
257 |
278 |
296 |
310 |
320 |
325 |
|
6ヶ月 |
116 |
149 |
181 |
211 |
239 |
262 |
282 |
300 |
314 |
322 |
327 |
|
7ヶ月 |
124 |
157 |
188 |
217 |
244 |
266 |
286 |
301 |
316 |
324 |
329 |
|
8ヶ月 |
132 |
164 |
194 |
222 |
248 |
270 |
290 |
306 |
318 |
326 |
331 |
|
9ヶ月 |
139 |
170 |
199 |
226 |
252 |
274 |
292 |
308 |
320 |
328 |
333 |
|
10ヶ月 |
145 |
175 |
203 |
230 |
256 |
276 |
294 |
310 |
322 |
330 |
335 |
- 軽傷の場合
入院 |
|
1ヶ月 |
2ヶ月 |
3ヶ月 |
4ヶ月 |
5ヶ月 |
6ヶ月 |
7ヶ月 |
8ヶ月 |
9ヶ月 |
10ヶ月 |
通院 |
35 |
66 |
92 |
116 |
135 |
152 |
165 |
176 |
186 |
195 |
|
1ヶ月 |
19 |
52 |
83 |
106 |
128 |
145 |
160 |
171 |
182 |
190 |
199 |
2ヶ月 |
36 |
69 |
97 |
118 |
138 |
153 |
166 |
177 |
186 |
194 |
201 |
3ヶ月 |
53 |
83 |
109 |
128 |
146 |
159 |
172 |
181 |
190 |
196 |
202 |
4ヶ月 |
67 |
955 |
119 |
136 |
152 |
165 |
176 |
185 |
192 |
197 |
203 |
5ヶ月 |
79 |
105 |
127 |
142 |
158 |
169 |
180 |
187 |
193 |
198 |
204 |
6ヶ月 |
89 |
113 |
133 |
148 |
162 |
173 |
182 |
188 |
194 |
199 |
205 |
7ヶ月 |
97 |
119 |
139 |
152 |
166 |
175 |
183 |
189 |
195 |
200 |
206 |
8ヶ月 |
103 |
125 |
143 |
156 |
168 |
176 |
184 |
190 |
196 |
201 |
207 |
9ヶ月 |
109 |
129 |
147 |
158 |
169 |
177 |
185 |
191 |
197 |
202 |
208 |
10ヶ月 |
113 |
133 |
149 |
159 |
170 |
178 |
186 |
192 |
198 |
203 |
209 |
入通院慰謝料の金額は、弁護士基準で計算すると自賠責基準よりも大幅に増額されます。
軽傷で通院しかしていないケースであっても弁護士基準の方が高額になります。
入通院慰謝料の金額は過失割合によって変わるのか
計算した額よりも、慰謝料が減額されてしまうことってあるの?
被害者であっても、過失がある場合には、慰謝料が減額されてしまうんだよ。
交通事故では、被害者の「過失割合」にも注意が必要です。
被害者側の過失割合が高くなると、相手に請求できる賠償金が減額されてしまうからです。
過失割合とは
過失割合とは、交通事故によって発生した損害に対し、被害者とかのそれぞれにどのくらいの責任が認められるかという割合です。
たとえば加害者と被害者の過失割合が8:2、7:3などというように決められます。
被害者にも過失割合がある場合には、その分被害者が請求できる賠償金を全体的に減額されます。
被害者にも損害発生に対する責任がある以上、全額の賠償を認めるのは不公平だからです。
このように、被害者に過失割合がある場合に請求できる賠償金が全体的に減額されることを「過失相殺」と言います。
過失相殺によって減額される賠償金の中には慰謝料も含まれるので、被害者に過失割合があれば、入通院慰謝料も減額されます。
過失相殺によって入通院慰謝料はどのくらい減額されるのか
過失がある場合には、どの位の額が減額になるの?
加害者の過失割合が大きければ、その分減額も多くなってしまうんだ。
では、過失相殺が行われると入通院慰謝料はどの程度減額されるのでしょうか?
この場合、過失割合の数字に応じて賠償金が割合的に減額されます。
たとえば被害者の過失割合が2割であれば、賠償金が2割減になるということです。
計算の具体例
入院1か月、通院3か月の事案(通常程度のけが)であれば、弁護士基準なら115万円程度の入通院慰謝料が発生します。
しかし被害者の過失割合が2割なら2割減の92万円程度に下がります。
過失割合が3割なら805,000円となります。
自賠責基準には過失相殺が適用されない
自賠責基準には、過失相殺が適用されません。
被害者に7割以上の過失があれば「重過失減額」と言って2~5割の減額が適用されますが、過失割合に応じた減額は行われません。
被害者の過失割合が高い場合には、自賠責から受け取れる保険金の方が弁護士基準より高額になる「逆転現象」が生じる可能性もあります。
正当な金額の入通院慰謝料を受け取るために
入通院慰謝料を少しでも多く受け取るにはどうしたら良いのかな?
弁護士に相談するのがお勧めだよ。
弁護士に相談しないと、弁護士基準での計算方法にならないし、過失割合も、適正な物にならない可能性があるんだ。
専門家に相談しよう
交通事故に遭って正当な金額の賠償金を受け取るには、弁護士基準で計算をしてもらう必要があります。
そのためには、弁護士に示談交渉を依頼するべきです。
被害者が自分で示談交渉をすると、任意保険会社は自賠責基準に近い低額な入通院慰謝料しか支払おうとしないからです。
また被害者が自分で示談交渉をすると、過大な過失割合をあてはめられてしまうケースが多々あります。
被害者が過失割合の適切な相場を知らないまま相手の提案通りに合意してしまったら、大幅な減額を受け入れることになってしまいます。
過失割合について疑問や不満がある場合にも、弁護士に相談をしたら適切な割合を教えてくれますし、示談交渉を依頼したら法的に正しい数値をあてはめて計算してくれます。
通院慰謝料を増額するためには
交通事故後、入通院慰謝料を増額するためには、可能な限り早く弁護士に相談すべきです。
なぜなら、適切な知識の有無により、後に請求できる慰謝料の金額が変わってくる可能性があるからです。
たとえば弁護士基準であっても、あまりに通院日数が少ないと入通院慰謝料が減額される可能性があります。
また、けがをしていても実際に通院をしないと入通院慰謝料を受け取れません。
入通院慰謝料は入通院した期間に応じて支払われるので、被害者の判断で早期に治療を打ち切ってしまったら慰謝料が減額されてしまいます。
このような知識がなかったら、被害者は痛いのを我慢して通院をしないかもしれません。
入通院慰謝料が減額されて良いことは1つもありません。
早期に弁護士に相談し、「入通院期間に応じて慰謝料が発生するので治療はしっかり受けるのが良い」と理解できていたら、十分な治療を受けた上で高額な入通院慰謝料を請求できます。
まとめ
適正な慰謝料を受け取るためには、弁護士に相談するのが大切なんだね!
弁護士に依頼することで、慰謝料を増額できたり、示談を有利に進める事が出来るから、少しでも早く弁護士に相談するのがお勧めだよ。
交通事故被害者にとって、入通院慰謝料は基本の慰謝料です。
不当に減額されて損をしないように、正しい知識を身に付けましょう。
一人ではよくわからないとき、相手の言い分に納得できないときには、一度交通事故に積極的に取り組んでいる弁護士に相談してみることをお勧めします。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。