この交通事故では、山口達也さんはどんな罰を受ける事になるの?
では早速、山口達也さんの交通事故がどんな物だったのか、過失割合やどんな刑罰が予想されるのか、チェックしていこう。
元ジャニーズ事務所「TOKIO」メンバーの山口達也さんが、2020年9月に「飲酒運転」で逮捕されました。
飲酒した状態でバイクを運転し、前方の車両に衝突したのです。
山口さんといえば、以前に未成年者への強制わいせつが原因で、ジャニーズ事務所を退所したニュースがセンセーショナルでした。
記憶に残っている方も多いでしょう。
今後、山口さんはどのような処分を受けるのでしょうか?
事故の詳細や成立する犯罪、飲酒運転の責任について、専門家視点から考察してみました。
目次
山口達也被告の交通事故はどのような事故だったのか
まずは山口達也さんの起こした事故がどういったものだったのか、みてみましょう。
酒気帯び運転による追突事故
事故発生日時
2020年9月22日です。
事故発生場所
事故は東京都練馬区桜台2丁目の区道で発生しました。
事故の態様
バイク対車の物損事故。
山口達也さんが運転していたバイクが、信号待ちで停止線上に停車していた乗用車へ後方から追突しました。
当時、山口さんは飲酒しており、呼気からは道路交通法が定める基準値の約4.6倍のアルコール量(1リットル中0.7㎎)が検出されたと報道されています。
追突された乗用車を運転していたのは警察官で、山口さんは現行犯逮捕されました。
被害者となった警察官にけがはなく、物損事故扱いとなったようです。
物損扱いのため、慰謝料は発生せず、賠償金として、修理にかかった費用や、修理の期間に必要な代車費用などが賠償金と支払われる事になります。
山口達也さんの交通事故、過失割合は?
被害者となった乗用車は信号待ちで停車していたので、過失はありません。
一方的に酒に酔った山口達也さんが追突しているので、山口さんの過失割合が100%となります。
山口達也さんへはどのような刑事罰が下されるのか
今回の交通事故で、山口達也さんはどのような処分を受けるのでしょうか?
交通事故による処罰はない
山口さんは前方車両へ一方的に追突していますが、被害者はけがをしていません。
物損事故は犯罪にならないので、交通事故そのものによって罰される可能性はありません。
当て逃げをすれば道路交通法違反となりますが、現場で逮捕されておりそういった事情もありません。
道路交通法違反(飲酒運転)
今回、山口さんが逮捕された罪名は「道路交通法違反(飲酒運転)」です。
道路交通法は、酒に酔って状態で車やバイクなどの車両を運転する行為を禁止しています。
そして飲酒運転の罪には、以下の2種類があります。
- 酒気帯び運転
酒気帯び運転とは、呼気中に一定以上の濃度のアルコールが含まれる状態で運転することです。
道路交通法の基準により「呼気1リットル中に0.15㎎以上のアルコールが含まれている状態」で運転すると、酒気帯び運転となります。
山口さんの場合、呼気1リットル中に0.7㎎のアルコールが検出されたようなので、基準値の4.6倍程度の飲酒をしていたといえるでしょう。 - 酒酔い運転
酒酔い運転は、酩酊状態で運転することです。
お酒を飲んだ量や呼気中のアルコール量とは関係がありません。
呼気中のアルコールが少なくても、ろれつがまわらない、まともにまっすぐ歩けないなどの酩酊状態になっていたら酒酔い運転となります。
山口さんの場合には「酒気帯び運転」が成立
山口達也さんの呼気からは、道路交通法が定める基準値の約4.6倍、0.7㎎ものアルコール量が検出されています。
飲酒運転の中でも悪質な部類といえるでしょう。
結論的に、逮捕罪名は「酒気帯び運転」とされました。
つまり山口さんは、多量の酒を飲んでいたけれども「酩酊状態」ではなかったようです。
お酒を飲んでふらふら運転していたけれども、一応はっきり話ができてまっすぐに歩けたのでしょう。
酒気帯び運転に与えられる刑罰は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金刑です。
今後、山口さんには数十万円の罰金刑が適用される可能性が高いといえるでしょう。
山口達也さんの運転免許はどうなるのか?
山口達也さんは、今回の事故によって運転免許を取り消される見込みが高いといえます。
日本では運転免許に点数制度が導入されており、交通違反や交通事故を起こすと違反内容に応じて「加点」される方式となっています。
点数が一定以上になると、免許停止や取消処分が適用される仕組みです。
飲酒運転の場合、以下のとおりの点数が加算されます。
- 酒気帯び運転(呼気1リットル中のアルコール濃度が0.15mg以上0.25㎎未満)…13点加算
- 酒気帯び運転(呼気1リットル中のアルコール濃度が0.25mg以上)…25点加算
- 酒酔い運転…35点加算
山口さんの場合、呼気1リットル中のアルコール濃度は0.7mgだったので、25点が加算されます。
よって免許は取り消しとなり、欠格期間が2年とされるでしょう。
つまり山口さんは、今後2年間は免許の再取得もできなくなってしまいます。
山口達也さんはなぜ家宅捜索されたのか
飲酒運転で家宅捜索が行われるのはよくある事なの?
今回の事故の後、山口達也さんの自宅で家宅捜索が行われました。
いったいなぜ飲酒運転の物損事故で家宅捜索まで行われたのでしょうか?
飲酒状況を把握するため
推測になりますが、飲酒の正確な状況を把握する目的と考えられます。
今回、山口さんの呼気から検出されたアルコール量は0.7mgと非常に多量です。
酒気帯び運転で逮捕・送検されていますが、本来なら「酒酔い運転」とされても仕方なかったといえる量でしょう。
ただ山口さんは捜査において「事故を起こした前夜、自宅で飲酒をしていた」と供述しています。
それだけで本当に呼気アルコール量が0.7mgにもなるのか、疑問をもたれたのかもしれません。
「酒気帯び運転」の罪名のままで良いのか判断するためにも、実際のところどの程度飲酒していたのか調査する必要があると考えられたのでしょう。
なお一般的には、飲酒運転で自宅の捜索差押えまで行われるケースは少数です。
今回は、呼気中のアルコール濃度が高かったことと山口さんによる説明が不十分だったことから、異例の捜索が行われたものと考えられます。
飲酒運転の刑罰と免許の点数まとめ
だけど、酩酊状態となっている場合には、呼気に含まれるアルコール濃度は関係なく、加算点数も多く、刑事罰も重い物になるんだよ。
飲酒運転をした場合の刑罰と免許の加算点数の考え方は、複雑です。
以下でまとめますので、今後の参考にしてみてください。
酒気帯び運転と酒酔い運転
飲酒運転は犯罪(道路交通法違反)ですが、「飲酒運転罪」という罪はありません。
先ほども述べましたが、飲酒運転には、「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の2種類があります。
酒気帯び運転とは
酒気帯び運転は、呼気中に一定以上のアルコールが含まれている状態で運転することです。
今回、山口達也さんも酒気帯び運転で送検されています。
刑事罰
酒気帯び運転に与えられる刑事罰は、「3年以下の懲役または50万円以下の罰金刑」です。
呼気1リットル中のアルコール濃度が増えても、刑罰が上がることはありません。
運転免許の点数と処分
酒気帯び運転をしたときに加算される免許の点数は、呼気1リットル中に含まれるアルコール量によって異なります。
具体的には以下の2段階が設定されているので、みてみましょう。
- 呼気1リットル中のアルコール濃度が0.15mgから0.25mgまで
呼気1リットル中のアルコール濃度が0.25mgまでであれば、運転免許の加算点数は13点です。
この場合、免許は取り消されず、90日間の免許停止となります。
ただし「前歴」があれば、13点でも免許取消となる可能性があります。 - 呼気1リットル中のアルコール濃度が0.25mg以上
呼気1リットル中のアルコール濃度が0.25mg以上になると、運転免許の加算点数が25点となります。
この場合、免許取消となって欠格期間が2年とされます。
前歴のある方の場合、さらに欠格期間が長くなる可能性があります。
酒気帯び運転の場合、刑事罰と免許の取扱いで基準が異なるので、混乱しないようにしましょう。
刑事罰では基準が1つですが、運転免許の加点においては2段階に分けられます。
酒酔い運転とは
酒酔い運転は、飲酒運転の中でも悪質なケースです。
具体的には「酩酊状態」であったかどうかで判定されます。
呼気中のアルコール濃度とは関係ありません。
- 千鳥足になってまっすぐ歩けない
- ろれつが回らない
- 酒の影響で、普通の話ができない
こういった事情があると、酒酔い運転として処分されます。
たとえ呼気1リットル中のアルコール濃度が「0.15㎎」を下回っていても、酒に弱くて酩酊状態になっていたら「酒酔い運転」が成立してしまうので、注意しましょう。
刑事罰
酒酔い運転に与えられる刑事罰は、5年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金です。
非常に重いといえるでしょう。
運転免許の点数と処分
運転免許については35点が加算され、免許取消になります。
欠格期間は3年ですが、前歴がある場合にはもっと長くなります。
交通事故を起こした場合の責任
今回、山口達也さんは交通事故を起こしましたが、幸いにもけが人が出なかったので交通事故による処罰は受けずに済みます。
もしも飲酒運転で人身事故を起こしてしまったら、非常に重い処罰を受ける可能性が高いので、注意しましょう。
人身事故によって成立する犯罪は、以下の2種類です。
過失運転致死傷罪
前方不注視、スピード違反、スマホをみながらの運転など一般的な過失によって人身事故を起こした場合に成立する犯罪です。
刑事罰は7年以下の懲役または禁固、あるいは100万円以下の罰金刑となります。
危険運転致死傷罪
酩酊状態や著しいスピード違反など、非常に危険な方法で運転をして人身事故を起こした場合に成立する犯罪です。
刑事罰は、被害者が死亡したかどうかで異なります。
被害者がケガをした場合には15年以下の懲役刑、死亡した場合には1年以上20年以下の懲役刑となります。
飲酒運転で危険な人身事故を起こしたら、危険運転致死傷罪が成立する可能性も高くなります。
また情状が悪くなるので、適用される刑罰も重くされるでしょう。
飲酒運転をきっかけに人生をフイにしてしまう方も少なくないので、絶対に酒に酔った状態で運転してはなりません。
同乗者や酒を勧めた人の責任
飲酒運転で処罰されるのは、運転者だけではありません。
同乗者や酒を勧めた人も処罰を受ける可能性があるので、正しく理解しておきましょう。
同乗者
ドライバーが飲酒していると知りながら同乗した人には、以下の刑罰が科されます。
- 酒気帯び運転…2年以下の懲役または30万円以下の罰金
- 酒酔い運転…3年以下の懲役または50万円以下の罰金
酒を提供した人
今後運転するとわかっているのに、あえてドライバーへ酒を提供した人には以下の刑罰が科されます。
- 酒気帯び運転…2年以下の懲役または30万円以下の罰金
- 酒酔い運転…3年以下の懲役または50万円以下の罰金
車両を提供した人
飲酒した人に車を提供すると、運転者と同じだけの刑罰が科されます。
- 酒気帯び運転…3年以下の懲役または50万円以下の罰金
- 酒酔い運転…5年以下の懲役または50万円以下の罰金
酒が抜けるまでにかかる時間は?
飲酒したら、自分では酒が抜けたと思っていても呼気中にアルコールが残っているケースが多々あります。
一般的に、ビール中瓶1本あるいは日本酒1合飲酒した場合、アルコールが抜けるまで4時間かかるといわれています。
多量のアルコールを摂取すると、10時間以上が経過しても抜けないケースもあります。
お酒を飲んだら充分に時間をおき、完全にアルコールが消えるまで運転しないように注意しましょう。
まとめ
お酒を飲んでしまったら、決して運転をしては行けないという事が良くわかったよ。
飲酒運転をすると、非常に大きな交通事故を起こしてしまう可能性があります。
事故を起こさなくても道路交通法違反で処罰されたり免許を取り消されたりするケースも少なくありません。
お酒を飲んだら絶対に運転しないこと、また同乗したり酒や車を提供したりしないよう、注意しましょう。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。