だけど場合によっては、バイクの過失割合が高くなることもあるんだ。
今回の記事では、バイクと車の交通事故による過失割合や、受け取れる慰謝料などの賠償金について、詳しく見ていこう。
バイクに乗車していて車と接触してしまったら、お互いの過失割合はどのくらいになるのでしょうか?
バイク事故ではバイク側のライダーが大けがをしてしまうケースも多いので、慰謝料も高額になる可能性が高くなります。
今回はバイクと車の交通事故の過失割合を解説します。
バイク事故に遭ってしまった方はぜひ、参考にしてみてください。
目次
バイクと車の過失割合はバイクが低くなりやすい
バイクが赤信号で車が青信号の場合には、バイクの過失が10割になることもあるんだよ。
バイクと車(四輪車)が接触した場合、基本的にはバイク側の過失割合が低くなります。
車のドライバーは鉄の塊である車に守られていますが、バイクのライダーの身体はむきだしてダメージが大きくなりやすいためです。
またバイクは車ほど事故を避ける能力が高くありません。
つまりバイクは車よりも「弱者」となるため、過失割合算定の際にも有利に考慮されるのです。
これを「単車修正」といいます。
ただし信号無視をしていた場合などにはバイクの過失割合も高くなる可能性があります。
以下でケースごとのバイクと車の交通事故の過失割合をみていきましょう。
車の過失が高くなる場合
左折による巻き込み事故
車が左折するときにバイクを巻き込むと、車側の過失割合が高くなります。
- 前方の車が後方から走ってきたバイクを巻き込んだ場合の過失割合は、車:バイク=80%:20
- 後方の車が前方のバイクを追い越し際に巻き込んだ場合の過失割合は、車:バイク=90%:10%
信号機のない交差点で車が減速しなかった
信号機のない交差点での直進者同士の事故で車が減速しなかったら、車側の過失割合が上がります。
- バイクが左方、車が右方の場合には車:バイク=85%:15
- バイクが右方、車が左方の場合には車:バイク=65%:35%
車が赤信号
信号機のある交差点で直進車同士の衝突事故が起こったとき車が赤信号で進入していたら車の過失割合が上がります。
- 車が赤信号、バイクが青信号なら車:バイク=100%:0%
- 車が赤信号、バイクが黄信号なら車:バイク=90%:10
- どちらも赤信号なら車:バイク=60%:40%
バイク側の過失が高くなる場合
次にバイク側の過失割合が高くなるケースをみていきましょう。
バイクが信号無視
- 車が青信号、バイクが赤信号の場合、車:バイク=0%:100%
- 車が黄信号、バイクが赤信号の場合、車:バイク=30%:70%
四輪車が優先道路走行、バイク側に一方通行義務違反
- 信号機のない交差点での直進車同士の事故で四輪車が優先道路を走行していたら、車:バイク=30%:70%
- バイク側に一方通行義務違反があった場合、車:バイク=30%:70%
左折バイクが車を巻き込んだ事故
左折するバイクが四輪車を巻き込んで交通事故が発生した場合にもバイクの過失割合が上がります。
- 先方を走行していたバイクが後ろから走ってきた車を巻き込んだ場合、車:バイク=40%:60%
- 後方を走行していたバイクが先方を走行していた四輪車を追い越し際に左折して接触した場合には、車:バイク=20%:80%
高速道路の合流地点上の事故
高速道路の合流地点において、バイクが合流する側だった場合にはバイク側の過失割合が高くなります。
- 車:バイク=40%:60%
バイクの過失割合が上がるのは、バイクが信号無視などの道路交通法違反をしたケースです。
特に赤信号で交差点に進入すると、バイク側の過失割合が100%になってしまう可能性もあるので注意しましょう。
過失割合の決まり方
提示された過失割合に納得いかない場合には、自分自身で過去の判例を用いて再提案することができるよ。
自分自身での交渉が不安な場合には弁護士に相談してみよう。
交通事故が起こったとき、双方の過失割合はどのようにして決まるのでしょうか?
過失割合は被害者が受け取れる賠償金の金額へ非常に大きな影響を及ぼす要素となり、被害者の過失割合の分、相手に請求できる賠償金額を減額されてしまいます。
たとえば重大な後遺障害が残って5,000万円の損害が発生していても、20%の過失割合が認められれば請求できるのは2割減の4,000万円になってしまいます。
過失割合の正しい決め方を知っておくことは被害者にとって極めて重要といえるでしょう。
基本的には加害者側の任意保険会社が提示
被害者が任意保険会社と示談交渉するときには、一般的に加害者側の保険会社が過失割合を提示してきます。
被害者側には交通事故についての知識がないことがほとんどだからです。
ただこれはあくまで「提案」なので、被害者側に疑問や不満があるなら受け入れる必要はありません。
まずは保険会社の提示する過失割合が法的に適正といえるのか、チェックしましょう。
法的な基準を確認する方法
交通事故の適正な過失割合には「法的な基準」があります。
保険会社が提示した過失割合に疑問があるなら、それが法的な基準に合致するのか調べてみてください。
実際に、保険会社は法的な基準よりも被害者側の過失割合を高めに見積もって提示するケースが少なくありません。
法的な基準は、過去の交通事故に関する裁判例の集積によって作られています。
自分で調べるには「判例タイムズ」という雑誌を取り寄せてみる方法が有効と考えられます。
「判例タイムズ」とは、法律雑誌の1種で「判例タイムズ社」が出版しており、一般人でも通信販売やメルカリなどで購入できます。
「別冊判例タイムズ38 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」という本を探して購入してみてください。
そこで自分の交通事故のケースに当てはまる図面をみて、適正な過失割合を確かめてみましょう。
保険会社による提示額と違っていたら、「調べてみたら基準値が違います」と告げて判例タイムズを掲示しながら再提案してみてください。
加害者が嘘をついている場合
交通事故の過失割合についてもめてしまうパターンに「加害者が嘘をつくケース」があります。
加害者は自分の刑事事件を有利に進めるため、事故の状況について嘘をつくことが少なくありません。
たとえば被害者が信号無視をしていないのに「被害者が赤信号にもかかわらず高スピードでつっこんできた」と言ったり「自分は徐行していた」などと嘘をついたりします。
加害者が嘘をつくと、間違った状況を前提に過失割合を計算されてしまうので歪んだ数字が適用されるリスクが高まります。
この場合には、事故の正確な状況を把握して証明なければなりません。
事故当時に警察が作成した実況見分調書を取得したり、ドライブレコーダーの画像を分析したり目撃者を探したりして、相手の嘘を明らかにする努力をしましょう。
弁護士に依頼する
相手方の保険会社と過失割合についての意見が合わないとき、自分で対応するには限界を感じる方も多いでしょう。
その場合、弁護士に相談してみてください。
弁護士に実況見分調書の取得分析やドライブレコーダーの画像分析を任せたら、被害者には手間がかかりません。
自分で判例タイムズを買って調べなくても弁護士が正しい過失割合を算定して保険会社へ訂正を申し入れてくれます。
また弁護士が示談交渉に対応すると高額な「弁護士基準」が適用されるので、それだけで慰謝料が2~3倍までアップするケースも少なくありません。
日本全国に、無料相談を受け付けている弁護士事務所がたくさんあります。
交通事故で弁護士に依頼するとメリットが大きくなるので、困ったときには一度相談してみましょう。
バイク事故の注意点
バイクの任意保険加入率は4割と言われているから、任意保険未加入の場合には、自分自身で交渉を進める事になるね。
日本では四輪車の任意保険加入率は80%程度と高いのに比べ、バイクの任意保険加入率はわずか40%と低位です。
任意保険に入っていないバイクで事故に遭うと保険会社が代理交渉してくれないので、被害者が自分で交渉しなければなりません。
1人で交渉するとどうしても不利になりやすいですし、ストレスも溜まるでしょう。
過失割合だけではなく治療費や慰謝料、休業損害などについてもトラブルが起こるケースも多々あります。
バイク事故で任意保険に入っていないときには、早めに弁護士に代理交渉を依頼しましょう。
バイク事故で受け取れる賠償金とは
バイク事故に遭ったとき、受け取れる賠償金は以下のようなものです。
修理費
バイクが壊れたら修理費用を請求できます。
バイクが全損して修復不可能な場合や修理費用の方が高額になるケースでは、バイクの時価額が支払われます。
買い替える際には買い替えにかかる諸費用も請求できます。
治療費
バイク事故でケガをすると、病院で治療を受けなければなりません。
その際、以下のような治療関係費を請求できます。
- 完治または症状固定までにかかった診察代、検査費用、手術代、投薬費用など
- 通院交通費
- 親族に付き添ってもらったときの付添看護費用
- 入院雑費
- 器具装具の費用
介護費用
後遺障害が残って介護が必要になった場合には将来に必要となる介護費用も請求できます。
ただしプロの介護士に依頼するか親族が介護するかで金額が異なります。
休業損害
交通事故の治療のために仕事を休んだら、休業損害を請求できます。
休業損害の金額は、事故前の年収に応じて算定されます。
逸失利益
バイク事故で後遺障害が残ったら、事故前よりも労働能力が低下してしまうでしょう。
将来得られるはずだった収入が低下するので「逸失利益」を請求できます。
逸失利益の金額は認定された後遺障害の等級によって異なります。
バイク事故で高次脳機能障害となったり内臓機能を消失して日常生活が困難になったり脊髄損傷したりすると、極めて高額な逸失利益が発生する可能性があります。
慰謝料
慰謝料は被害者が受けた精神的損害に対する賠償金です。
入通院慰謝料と後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の3種類があります。
後遺障害が残らなくても入通院慰謝料は請求できますし、後遺障害等級認定を受けられれば後遺障害慰謝料もプラスして請求できます。
不幸にも被害者が死亡してしまった場合、遺族が死亡慰謝料を請求します。
まとめ
怪我をしたり、車体が壊れてしまった時には、賠償金を請求できるんだね!
バイク事故に遭ってしまった時には、交渉を全てお任せして治療に専念するためにも、弁護士に相談するのがおすすめだよ。
バイク事故では被害者が重大なケガをしてしまうケースが少なくありません。
後遺障害が残ったり死亡したりすると、賠償金額は数千万円、1億円を超える可能性もあります。
自分で対応すると、保険会社から言いくるめられて充分な補償を受けられないリスクが高くなってしまうでしょう。
バイク事故の被害者の権利を守ってくれるのは弁護士です。
過失割合や慰謝料の金額に疑問や不安がある場合、自己判断で示談してしまう前に弁護士に相談してみてください。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。