過失割合

歩行者が赤信号を無視して起きた事故。過失割合や慰謝料はどうなる?

投稿日:2021年3月23日 更新日:

クマ
歩行者が信号無視したことで、交通事故が発生したんだ。
歩行者の過失割合はどの位になるの?
ミミズク
歩行者は、車に比べて弱者としての扱いとなるから、たとえ歩行者が信号無視をしたとしても、歩行者の過失が10割になることは少ないんだ。
今回の記事では、歩行者の信号無視で起きた交通事故の過失割合について、詳しく見ていこう。

歩行者が赤信号で横断歩道を横断している際に起きた交通事故における車の運転手の過失割合は

歩行者が赤信号を無視しても車の運転手にも過失が認められる

赤信号であるにもかかわらず交差点に進入して交差点を渡りきる。

車の運転手としては、最もやってはいけない交通違反です。

信号無視で交通事故を起こした場合、当然、信号無視をした車の運転手の過失は、非常に大きいものとなります。

では、歩行者が赤信号を無視した場合はどうでしょうか。

日弁連交通事故相談センター東京支部が発行している民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準(いわゆる赤い本。以下「赤い本」といいます。)や別冊判例タイムズNO.38(以下「判例タイムズ」といいます。)には、交通事故における過失割合の目安が記載されていますので、確認をしてみましょう。

歩行者が赤信号で横断歩道を渡り、車が青信号で交差点に進入している際に交通事故が起きた場合の基本的な過失割合は、いずれの本でも、歩行者70%、車の運転者30%となっています。

少し意外に思うかもしれませんが、歩行者が赤信号を無視しして横断歩道を渡っているという状況でも、車の運転手には30%の過失が認められる可能性が高いのです。

日本の道路交通法では、基本的に、歩行者は交通弱者として捉えられており、過失割合においても保護されています。

児童・高齢者、幼児・身体障害者等の歩行者はさらに保護される

上記の歩行者70%、車の運転者30%という過失割合は、あくまで基本的な過失割合であって、交通事故における様々な事情で修正されることがあります。

ここでは、歩行者が、児童・高齢者、幼児・身体障害者等であった場合を見てみましょう。

まず、児童は、6歳以上13歳未満の者をいいます。

高齢者は、概ね65歳以上の者をいいます。

幼児は、6歳未満の者をいいます。

身体障害者等は、

  1. 身体障害者用の車いすを通行させている者
  2. つえを携え、又は盲導犬を連れている目の見えない者
  3. つえを携えている耳が聞こえない者
  4. 道路の通行に著しい支障のある程度の肢体不自由、視覚障害、聴覚障害又は平衡機能障害のある者でつえを携えている者

をいいます。

児童・高齢者、幼児・身体障害者も赤信号を無視した場合、一般の歩行者と比べて、その行為が批難されるべきことに変わりません。

しかしながら、道路を通行するに際して、判断能力や行動能力が低いとされている者については、歩行者の中でも特に保護する必要性が高いことから、一般の歩行者の赤信号無視に比べて、保護されることになります。

例えば、赤い本や判例タイムズにおいては、歩行者による赤信号無視の事案において、歩行者が児童・高齢者であった場合には、過失割合が10%のマイナス、歩行者が幼児・身体障害者等であった場合には20%のマイナスとしています。

つまりは、上記の基本的な過失割合から修正されて、過失割合が、歩行者60%、車の運転手40%となったり、歩行者50%、車の運転手50%となる可能性があるのです。

ただ、このような過失割合の修正の程度は、あくまで目安であり、個別具体的な事情によって修正の割合も異なります。

歩行者の過失が重くなるケースもある

上記では、歩行者の過失が軽くなる(歩行者が保護される)ケースを紹介しましたが、交通事故発生において、歩行者に過失があった場合、当然、歩行者の過失が重くなるケースもあります。

赤信号無視は、それ自体が非常に重い過失であるため、赤信号無視以外にも過失があった場合に、当該過失を取り出して歩行者の過失が重くなるかは、個別具体的な事情によります。

歩行者に過失があるからといって、必ず歩行者の過失が重くなる方向で修正されるとは限りません。

例えば、赤い本や判例タイムズでは、歩行者の過失が重くなる一般的な修正要素として、直前直後横断・佇立・後退といった事情を挙げています。

しかしながら、歩行者が赤信号を無視して横断歩道を渡った際に交通事故が発生した場合においては、直前直後横断・佇立・後退は、歩行者の過失が重くなる修正要素としては挙げられていません。

その他、現代で問題となり得る過失としては、ながらスマホ(スマートフォンを見ながら歩ていること)も歩行者の過失として評価されると考えられます。

歩行者が歩道ではなく、車道を歩いているといった事情も歩行者の過失として評価され得る事情でしょう。

いずれにせよ、歩行者の行動は、それが交通事故の引き金となったり、損害を拡大させるような行為であった場合には、過失として評価され得るということになります。

赤信号を無視して横断歩道を横断した場合には刑事罰を受ける可能性も

クマ
歩行者が信号無視した場合、罰せられる事ってあるの?
ミミズク
そうだね。
信号無視をすると罰金を支払うだけではなく、前科がついてしまう可能性もあるんだよ。

罰金又は科料が科される可能性がある

道路交通法第7条は、「道路を通行する歩行者又は車両等は、信号機の表示する信号又は警察官等の手信号等(前条第一項後段の場合においては、当該手信号等)に従わなければならない」と定めています。

つまり、歩行者も赤信号を無視して横断歩道を渡ってはいけないということを定めているわけです。

この条文に違反した場合には罰則も定められており、道路交通法第121条第1項第1号は、同法第7条に違反した歩行者に対し、2万円以下の罰金又は科料を科すことを定めています。

もちろん、違反の程度等の事情によると考えられますが、歩行者についても、赤信号を無視して横断歩道を渡った場合には、罰金が科される可能性があります。

なお、罰金は、もちろん、刑事罰ですし、前科になります。

過失傷害や重過失傷害となり得ることもある

歩行者が赤信号を無視して横断歩道を渡っている場合、当該歩行者を避けるために車やバイクがハンドルを切って、交通事故を起こしてしまうということがあり得ます。

特に、バイクの場合、バランスが悪いため、急ブレーキを掛けたり、急ハンドルを切ったりして転倒するということがあります。

このように歩行者が赤信号を無視して横断歩道を渡ったがために交通事故を発生させ、人が怪我をした場合、赤信号を無視した歩行者は、事情によっては、過失傷害罪や重過失傷害罪に問われる可能性があります。

ちなみに、過失傷害罪の法定刑は30万円以下の罰金又は科料で、重過失傷害罪の法定刑は5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金となっています。

もちろん、歩行者が過失傷害罪や重過失傷害罪に問われるケースは少ないですが、全く何の罪にも問われないということではないので、その点は注意をしましょう。

過失割合によっては歩行者が賠償しなければならないことも

クマ
車の修理費用を歩行者が支払わなければいけない事ってあるの?
ミミズク
歩行者の過失割合が高ければ、車の修理費用を賠償しなければいけない事ももちろんあるよ。

歩行者が赤信号無視といった重大な過失によって交通事故を起こした場合、歩行者と車との間の交通事故においても、歩行者が加害者、車の運転手が被害者となることがあり得ます。

歩行者の過失が大きい場合、車の運転手から車の修理費等を請求され、歩行者が賠償しなければならないということもあり得ます。

当職も、歩行者と車との間の交通事故において、歩行者が加害者となり、車の運転手に賠償をしたという事案を経験したことがあります。

その事案では、歩行者が赤信号を無視して横断歩道を渡っている際に、車が歩行者を避けるためにハンドルを切り、車をガードレースに接触させた(歩行者に怪我等はありませんでした。)といった事案でした。

数は少ないものの、歩行者が車の運転手に対して、車の修理費等を賠償する事案は少なからず存在しますので、注意をしてください。

まとめ

クマ
歩行者でも車でも、信号無視をすると、過失割合が高くなってしまうんだね。
道路交通法を守ることは非常に大切だって事が良くわかったよ。
ミミズク
過失割合に納得できない場合には、弁護士に相談してみよう。
弁護士に相談すると、過去の状況に応じて適正な過失割合を当てはめてもらう事ができるよ。

以上のとおり、今回は、歩行者が赤信号を無視して横断歩道を渡っている際に起きた交通事故のことについて述べてきました。

このことをまとめてみますと、

  • 歩行者は、道交法上保護されており、赤信号を無視して横断歩道を渡ったというだけでは、100%の過失ということにはならない。
    車の運転手にも30%の過失が認められる可能性がある。
  • 歩行者が、児童・高齢者、幼児・障害者等の場合には、歩行者がさらに保護される可能性がある。
  • 歩行者に交通事故発生の引き金となるような過失がある場合には、歩行者の過失が重くなるということもあり得る
  • 歩行者が赤信号を無視して横断歩道を渡った場合には、刑事罰を受ける可能性もある
  • 歩行者の過失割合が大きい場合には、歩行者が車の運転手に車の修理代等を賠償しなければならないこともある。

といったことになるかと思います。

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阿部栄一郎

阿部栄一郎

弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所所属。

早稲田大学法学部、千葉大学大学院専門法務研究科(法科大学院)卒業。2006年司法試験合格、2007年東京弁護士会登録。
交通事故、不動産、離婚、相続など幅広い案件を担当するほか、顧問弁護士として企業法務も手がける。ソフトな人当たりと、的確なアドバイスで依頼者からの信頼も厚い。交通事故では、被害者加害者双方の案件の担当経験を持つ。

■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故の加害者・被害者には、誰でもなり得るものです。しかしながら、誰もが適切に交通事故の示談交渉をできるわけではありません。一般の人は、主婦が休業損害を貰えることや適切な慰謝料額の算定方法が分からないかもしれません。ましてや、紛争処理センターや訴訟の対応などは経験のない人の方が多いと思います。保険会社との対応が精神的に辛いとおっしゃる方もいます。
不足している知識の補充、加害者側との対応や訴訟等の対応で頼りになるのが弁護士です。相談でもいいですし、ちょっとした疑問の解消のためでもいいです。事務対応や精神的負担の軽減のためでもいいですので、交通事故に遭ったら、一度、弁護士にご相談されることをお勧めします。

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