交通事故の慰謝料って、症状によって違ってくるの?
症状によっても、慰謝料は変わってくるんだけれど、通院日数や入院期間、そして後遺症の有無によっても慰謝料の額は大きく変わるんだよ。
症状による金額の違いについて、詳しく知りたいな!
よし!
では早速、交通事故に遭ってしまった時の慰謝料の金額や後遺障害等級認定について、詳しく見ていこう。
人身事故の被害に遭うと、加害者に対してさまざまな損害賠償ができます。
ただ、ひと言で人身事故といってもいろいろなパターンがあります。
打撲程度で済む場合、骨折する場合、捻挫した場合、脳障害が残る場合など、すべて人身事故です。
今回は、このようなさまざまな人身事故において、それぞれどのくらいの損害賠償金を請求できるのか、相場をご紹介します。
目次
人身事故の内容や程度について
人身事故とは、交通事故の中でも、被害者が怪我をしたり死亡したりしたものです。
怪我の内容や程度はさまざまなので、人身事故の範囲はとても広いです。
たとえば、以下のようなものはすべて「人身事故」となります。
- 軽い切り傷を負った
- 腕を打撲した
- 脚を捻挫した
- 肋骨を骨折した
- 脳障害が起こり、以前より記憶力が低下した
- 麻痺が残って手足を自由に動かせなくなった
- 脳障害で、意識が回復しなくなった(植物状態)
- 両手がなくなった
- 目が見えなくなった
- 耳が聞こえなくなった
人身事故の怪我は、1か月で完治することもあれば、一生治らずに後遺障害が残ってしまうこともあります。
当然、慰謝料は軽い怪我の場合よりも重傷のケースの方が高額になりますし、後遺障害が残らないケースより残ったケースの方が高額になります。
交通事故の被害者が死亡者の場合には、慰謝料は遺族に支払われる事になります。
以下の記事も参考にして下さい。
人身事故で請求できる慰謝料の種類
人身事故の場合には、どんな慰謝料を受け取ることができるの?
入通院慰謝料と、後遺障害慰謝料の2種類の慰謝料となるよ。
後遺障害が残ると、慰謝料は高額になるんだ。
人身事故では具体的にどのくらいの慰謝料を請求できるのでしょうか?
実は交通事故の慰謝料には「種類」があり、それぞれ計算方法が異なるので、まずは人身事故で請求できる慰謝料がどのようなものか、理解しておきましょう。
入通院慰謝料
人身事故の慰謝料として、「入通院慰謝料」があります。
入通院慰謝料は、交通事故で怪我をしたときに発生する慰謝料となり、治療費とは異なります。
入通院をした期間の長さに応じて金額が変わるので、治療期間が長い方が入通院慰謝料は高額になります。
また、通院していた期間よりも入院していた期間の方が、金額が上がるので、軽傷よりも重傷の方が慰謝料は高額になります。
後遺障害慰謝料
人身事故では、後遺症が残ってしまうことも多いです。
その場合には、後遺障害慰謝料が発生します。
被害者に後遺障害が残ると、今までできていなかったことができなくなり、仕事も辞めなければならなくなったりして、被害者は大きな精神的苦痛を受けるので、後遺障害慰謝料は高額です。
ただし、後遺障害にもいろいろなものがあり、症状の程度もケースによって異なります。
当然、慰謝料の金額も後遺障害の内容や程度によって変わります。
重い症状が残ると、その分後遺障害慰謝料は高額になります。
後遺障害が残ると、全体として慰謝料が高額になる
人身事故の慰謝料は、上記の入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の合算の金額となります。
そこで、後遺障害がない場合、慰謝料は入通院慰謝料のみになるので、全体として低額になります。
高額な慰謝料を獲得したい場合には、後遺障害の等級認定を受けることが重要となってきます。
ケースごとの慰謝料の相場
どんな症状でも慰謝料って受け取ることができるの?
軽症でも重症でも、通院をしなければ、慰謝料を受け取ることはできないんだ。
症状によって異なる慰謝料について、詳しく説明するね。
以下では、人身事故のケースごとの慰謝料の相場をみていきましょう。
打撲の場合
交通事故で軽い打撲の傷害を負うことがあります。
そのような場合にも慰謝料が発生するのでしょうか?
打撲で慰謝料が支払われない場合
人身事故で慰謝料を請求するには病院に通院している必要があります。
そこで、打撲があまりに軽くて病院に行っていなければ、慰謝料は支払われません。
また、病院に行っても1日だけなどの場合にも、やはり慰謝料は支払われないことが多いです。
打撲で慰謝料が支払われる場合
軽い打撲でも、きちんと通院をしたら通院期間に応じた慰謝料が支払われます。
たとえば2か月間通院した場合には、入通院慰謝料は36万円程度となります。
3ヶ月なら53万円程度です。
打撲で慰謝料が減額される場合
打撲でも、怪我の内容からして不必要に長く通院した場合には、期間に対応した慰謝料全額が支払われないこともあります。
たとえば軽い打撲で8か月通院したとしても、8か月分の通院慰謝料である103万円の入通院慰謝料は認められにくいです。
その場合、実際に通院した日数の3倍程度に減額されたり、通院の必要性がないと判断されて通院期間を短くした前提で計算されたりする可能性があります。
打撲でも多くの慰謝料が支払われるケース
人身事故で打撲した場合でも多くの慰謝料が支払われるのは、どのようなケースでしょうか?
それは、怪我が予想外に重かった場合です。
たとえば交通事故当初は打撲と診断されたとしても、実際に治療を進めていくと、骨折していることが判明する場合もあります。
また、当初は全治1週間などと診断されていても、実際に治療をしていくとなかなか回復せず、完治まで4か月、5か月とかかってしまうこともあります。
このように、打撲によっても治療の必要性が高く、治療期間が長引くと慰謝料は高額になります。
捻挫の場合
人身事故で捻挫をした場合の慰謝料はどのくらいになるのでしょうか?
一般的な軽い捻挫の場合
まず、一般的な足首などの軽い捻挫の場合、慰謝料はあまり高額にならないことが多いです。
捻挫は比較的早く完治してしまうからです。
たとえば1か月で完治したら、慰謝料は19万円程度です。
重い捻挫の場合
これに対し、捻挫の程度が酷い場合には慰謝料が上がります。
たとえば同じ足首の捻挫でも、組織に病変が発生していて通院が半年に及んだら慰謝料は116万円程度になります。
捻挫で後遺障害が残った場合
捻挫が予想外に酷く、足関節の可動域に制限が残って自由に動かせなくなってしまったら、後遺障害が認定されて後遺障害慰謝料も支払われます。
たとえば足関節の機能障害として後遺障害10級が認定されると、後遺障害慰謝料は550万円となります。
この場合、後遺障害慰謝料だけではなく入通院慰謝料との合計が支払われるので、入通院期間に応じて慰謝料が増額されます。
たとえば入院1か月、通院5か月だった場合の入通院慰謝料は141万円です。後遺障害10級の慰謝料と合計すると、550万円+141万円=691万円程度となります。
頸椎捻挫
頸椎捻挫とは「むちうち」のこと
捻挫というと、足首などの捻挫を思い浮かべる方が多いと思われますが、人身事故の場合、捻挫は足首以外の部位に起こることも多いです。
非常によくあるのが、「頸椎捻挫」です。
頸椎とは、首の骨です。
追突事故などに遭うと、頸椎が一瞬強くしなり、ダメージを受けてしまうので頸椎捻挫となります。
一般的に「むちうち」といわれる症状です。
頸椎捻挫になると、肩や背中、腕などに痛みやしびれなどの症状が出ます。
めまいや耳鳴り、吐き気などの症状が出るケースもあります。
頸椎捻挫になると、リハビリが必要となるので通院期間が長引くことが多く、入通院慰謝料が高額になりやすいです。
MRIなどで異常が確認できるかどうかで慰謝料が異なる
頸椎捻挫の場合、MRIなどに異常所見が確認できるか確認できないかによって、入通院慰謝料の基準が異なってきます。
これらの検査で異常所見を確認できない場合には、慰謝料が下がります。
たとえば6か月通院した場合、異常所見を確認できなければ89万円ですが、異常所見を確認できる場合には116万円となります。
入院した場合には慰謝料が上がる
頸椎捻挫でも、入院が必要となった場合には慰謝料が高額になります。
たとえば手術が必要になって入院1か月、通院5か月になった場合には、入通院慰謝料は141万円程度となります。
後遺障害が残った場合
頸椎捻挫になったときにも後遺障害が残るケースがあります。
頸椎捻挫で認められる可能性のある後遺障害の等級は12級または14級です。
12級になるのは、MRIなどで異常が確認できる場合で、14級になるのはそういった他覚所見がなく、痛みやしびれなどの自覚症状しかないケースです。
12級の場合の後遺障害慰謝料は290万円程度、14級の場合の後遺障害慰謝料の相場は110万円程度です。
これらの後遺障害慰謝料は、入通院慰謝料とは別に支払われます。
たとえば、通院8か月で後遺障害14級になった場合、入通院慰謝料が89万円+110万円=199万円程度となります。
また、入院1か月、通院7か月、後遺障害12級が認定された場合には、入通院慰謝料が157万円、後遺障害慰謝料が290万円で、慰謝料の合計は447万円程度となります。
胸椎捻挫
捻挫の種類として「胸椎捻挫」という傷病もあります。
胸椎とは、頸椎の下につながる背中の骨です。
頸椎捻挫と同じように、追突事故などで一瞬背骨がしなると、胸椎が損傷を受けて捻挫の症状が出ます。
胸椎捻挫になると、筋肉の張りを感じたり、身体を前方向に曲げると痛みを感じたり、後ろに反ったときに痛みを感じたりします。
胸椎捻挫の場合にも、慰謝料の相場は頸椎捻挫のケースと同じです。
入通院慰謝料は、MRIなどで他覚所見が認められると上がりますが、そうでない場合には下がります。
認定される可能性のある後遺障害の等級は12級または14級で、12級になったら後遺障害慰謝料は290万円程度ですが、14級になったら後遺障害慰謝料は110万円程度となります。
腰椎捻挫
捻挫の種類として「腰椎捻挫」もあります。
腰椎とは、胸椎のさらに下につながる背中の骨です。
腰のあたりにあるので、腰椎と呼ばれます。
腰椎捻挫は、一般的に「ぎっくり腰」と呼ばれている傷病です。
症状としては、腰に強い痛みを感じることが多いです。
交通事故で腰椎捻挫になった場合の慰謝料も、頸椎捻挫や胸椎捻挫の場合と同じ考え方です。
入通院慰謝料は入通院期間に応じて支払われますが、自覚症状しかない場合には減額されますし、MRIなどで異常を確認できる場合には上がります。
認定される後遺障害の等級は12級または14級であり、14級の場合の後遺障害慰謝料は110万円、12級の場合には290万円程度となります。
骨折の場合
交通事故に遭うと、骨折するケースも非常に多いです。
骨折が完治した場合の慰謝料相場
骨折した場合、治療によって完治することもありますが、その場合には入通院慰謝料のみ請求できます。
たとえば入院2か月、通院7か月の場合の入通院慰謝料は188万円です。
骨折で後遺障害が残った場合
骨折した場合には、さまざまな後遺障害が残ることがあり、その場合には後遺障害慰謝料が認められるので、慰謝料の金額が全体として高額になります。
骨折の後遺障害には、腕や脚の欠損障害、可動域制限の障害、足の短縮傷害、変形障害などさまざまな種類があります。
内容や程度によって、認定される後遺障害等級が大きく変わってきます。
たとえば、人身事故で腕を骨折し、肘関節より上の部分で腕を失ってしまった場合には、後遺障害4級が認定されます。
この場合、後遺障害慰謝料は1670万円となります。
骨折して、間接ではない部分が関節のように不自然な動きをするようになったときには「偽関節」となった場合には、後遺障害7級の認定を受けられる可能性があります。
後遺障害7級の後遺障害慰謝料は1000万円程度です。
骨折後、痛みやしびれなどの神経症状が残った場合には、後遺障害の等級は12級または14級となります。
脳障害の場合
人身事故に遭うと、脳に障害が残ってしまうことも多いです。
脳障害も、内容と程度に応じて慰謝料が大きく異なってきます。
たとえば脳障害で、被害者が植物状態となってしまった場合や、高次脳機能障害となって本人が自分一人では何もできなくなった場合には、後遺障害1級が認められます。
その場合、後遺障害慰謝料は2800万円程度となります。
もしも入院6か月で後遺障害1級が認定された場合、入通院慰謝料が116万円程度、後遺障害慰謝料が2800万円程度となるので、慰謝料は合計で2916万円です。
入院8か月、通院10か月の後に後遺障害1級が認定された場合には、入通院慰謝料が322万円、後遺障害慰謝料は2800万円なので、合計3122万円程度の慰謝料が支払われます。
脳障害でも、必ずしも高い等級の後遺障害が認められるとは限らず、9級やそれ以下になる場合もあります。
9級の後遺障害慰謝料は690万円なので、その場合の慰謝料は、入通院期間に応じた入通院慰謝料に690万円を足した金額となります。
人身事故で慰謝料が増額されるケース
慰謝料って増額することは可能なの?
交通事故により、精神的苦痛が大きくなってしまうような場合には、増額が可能だよ。
精神的苦痛がどのような物を示すのか、チェックしてみよう。
以上のように、人身事故の慰謝料は、症状によって大きく異なりますが、相場よりも慰謝料が増額されることもあります。
それは、以下のようなケースです。
- 被害者が交通事故によって流産・中絶した場合
- 被害者が、交通事故が原因で留年したり入学や留学できなくなったりした場合
- 交通事故が原因で被害者が離婚した場合、結婚できなくなった場合
- 交通事故が原因で被害者が退職したり失業したりした場合
上記のような場合、被害者の精神的苦痛が特に強くなると考えられるので、慰謝料が増額されます。
- 交通事故で被害者が外貌醜状などになり、後遺障害逸失利益が減額されたり認められなかったりした場合
被害者が外貌醜状や嗅覚障害、味覚障害や軽度の足の短縮傷害などになったとき、相手から「労働能力が低下していない」と主張されて逸失利益(後遺障害が残った事によって発生する減収)が認められなかったり減額されたりすることがあります。
そのようなときには、慰謝料によって逸失利益を補完するために、慰謝料が増額されることがあります。
このような場合、ケースに応じて数十万円~数百万円程度、慰謝料が増額されることが多いです。
慰謝料が減額されるケース
慰謝料が減額されてしまうような事もあるの?
そうだね。
持病があることで、症状が悪化した場合や、飲酒していた場合には、慰謝料が減額されてしまうんだ。
反対に、慰謝料が減額されるケースもあります。
それは、以下のような場合です。
過失相殺
被害者に過失があると、その過失割合の分は慰謝料から減額されます。
素因減額
被害者に既往症や持病などがあって、そのせいで症状の回復が遅れた場合や症状が悪化した場合などには、被害者側に責任を帰するべきなので、慰謝料が減額されます。
また、被害者が治療に積極的に取り組まなかったせいで治療期間が長びいたケースでも、やはり被害者に責任があるので慰謝料が下がります。
同乗していた場合の減額
運転者が飲酒していると知りながら、あえてその車に同乗して受傷した被害者や、運転者に危険な行為をあおったり(たとえば暴走など)身を乗り出して危険な方法で乗車していたりして事故に遭った場合には、被害者にも責任を負わせるべきなので、慰謝料が減額されます。
損益相殺
被害者が交通事故を理由としてお金を受け取った場合には、受け取った金額分、損害賠償額から差し引かれます。
たとえば、交通事故を原因として被害者が自動車保険会社から人身傷害補償保険などの保険金を受け取った場合、労災給付の休業補償を受けた場合、健康保険からの傷病手当金などを受け取った場合には、それらの金額が慰謝料から差し引かれる可能性があります。
まとめ
交通事故の慰謝料って、症状によってかなり金額が違うんだね!
適正な慰謝料を受け取るためには、自賠責基準や任意保険基準ではなく、弁護士に依頼して、弁護士基準で計算しないといけないという事を忘れないようにしよう。
人身事故によって発生する慰謝料は、症状やケースによってさまざまです。
適正な金額の慰謝料を受け取るためには、自賠責保険へ後遺障害認定請求を行い、後遺障害認定をきちんと受けること、弁護士に依頼して弁護士基準や裁判基準を適用してもらうことが重要です。
任意保険基準と自賠責保険基準での計算基準は低額となってしまいますから、裁判所基準額となるよう、弁護士に依頼しましょう。
弁護士に依頼すると、弁護士費用が掛かってしまう事を不安に感じる人が多いのですが、増額した慰謝料で、弁護士費用は支払う事ができる場合がほとんどです。
任意保険会社の言いなりになってしまうと、後悔してしまう事になりますから、人身事故で、相手との示談交渉や示談金に不安を感じている場合には、一度交通事故トラブルに注力している弁護士に相談してみましょう。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。