交通事故で目に障害が残ってしまったんだけれど、慰謝料をもらう事は出来るのかな?
もちろん可能だよ!
目だけではなく、まぶたに障害が残ってしまった場合にも、慰謝料を受け取ることが出来るよ。
慰謝料をもらうためにはどうしたら良いのかな?
まずは後遺障害認定を取得することが必要だね。
今回の記事では、目に後遺症が残ってしまった場合の等級や損害賠償金について、詳しく見ていこう。
交通事故に遭って「失明」してしまったら精神的にも大変なショックを受けますし、日常生活もそれまでとはガラっと変わってしまいます。
仕事もできなくなってしまう方が多いでしょう。
また失明にまで至らなくても、眼球運動が制限されてものが見えにくくなったり視野が狭くなってしまったりすることが多々あります。
目に障害が残ったら、きちんと「後遺障害認定」を受けることによって、加害者から必要な慰謝料や逸失利益などの補償を受けるべきです。
今回は、交通事故で失明などの目の後遺障害が残った場合の判断のポイントについて、解説します。
目次
交通事故で「失明」する2つのパターン
「失明」とは、目がまったく見えなくなることです。
交通事故で失明するケースには、2つのパターンがあります。
眼球や「目」そのものにダメージが及ぶケース
事故の衝撃でダッシュボードなどに顔面を強く打ち付けたりメガネが目に突き刺さったりして眼球が物理的に損傷するなど、眼球や目の筋肉などの「目」そのものにダメージが及ぶケースです。
脳障害が視神経に影響を及ぼすケース
交通事故で頭に衝撃が及ぶと、高次脳機能障害により、脳に障害が発生する可能性があります。
脳内には視神経が通っているので、障害を受けた部位によっては、ものの見え方に影響したり見えなくなったりしてしまうことがあります。
失明したら「後遺障害認定」を受ける
後遺障害認定を受けると何が違うの?
慰謝料の金額が全然違うんだ。
だから症状に合わせて後遺障害認定の等級を取得することがとても大切になるんだよ。
交通事故で失明してしまったら、「後遺障害認定」を受けましょう。
後遺障害認定とは、交通事故を原因とするさまざまな後遺症について正式に「後遺障害」として認定し、14の等級に分類する手続きです。
自賠責保険会社で後遺障害認定されると、被害者は認定された等級に応じて「慰謝料」や「逸失利益」という補償を受けることができます。
ただ、後遺障害には後遺障害診断書の提出など厳格な「認定基準」があり、その要件を満たしていないと後遺障害といて認めてもらうことができません。
目に後遺症が残ったとき、自分の症状でどのような後遺障害認定を受けられるかを把握しておくことが大切です。
目の後遺障害の判断のポイント
目の後遺障害にはどんな種類があるの?
視力の低下、ピントを合わせる部分の低下、筋肉の低下、視野の低下など、症状によって等級が異なるんだよ。
症状と等級について詳しく見てみよう。
目の後遺障害を判断するには「目の後遺障害の種類」と「それぞれの認定基準」を把握しておくとわかりやすいです。
順番にご説明します。
目の後遺障害の種類
目の後遺障害には、以下の通り、4種類があります。
- 視力障害
- 調節機能障害
- 運動障害
- 視野障害
それぞれの障害の内容や判断基準は、以下の通りです。
視力障害
視力障害は、視力が低下する障害です。
失明も視力障害の1種で、眼球が物理的に失われたケースも含まれます。
視力障害が残ったかどうかについては、万国式試視力表によって判定します。
これは眼科などでもよく実施されている「C」のような形のどの方向が空いているかを示して、どのくらい見えているかを図る検査です。
視力障害を判定するときには「矯正視力」を対象とします。
メガネやコンタクトレンズで矯正したにもかかわらず「見えない」ときに後遺障害認定されるということです。
矯正可能なら後遺障害にはなりません。
視力障害で認定される可能性のある後遺障害の等級は、以下の後遺障害等級表通りです。
1級1号 | 両眼が失明したもの |
2級1号 | 1眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの |
2級2号 | 両眼の視力が0.02以下になったもの |
3級1号 | 1眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの |
4級1号 | 両眼の視力が0.06以下になったもの |
5級1号 | 1眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの |
6級1号 | 両眼の視力が0.1以下になったもの |
7級1号 | 1眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの |
8級1号 | 1眼が失明し、又は1眼の視力が0.02以下になったもの |
9級1号 | 両眼の視力が0.6以下になったもの |
9級2号 | 1眼の視力が0.06以下になったもの |
10級1号 | 1眼の視力が0.1以下になったもの |
13級1号 | 1眼の視力が0.6以下になったもの |
両眼が失明すると、もっとも高い等級である1級1号となります。
片眼が失明した場合には、もう片方の視力がどの程度残っているかによって、2級~8級の認定を受けられます。
調節機能障害
調節機能障害とは、目のピントを合わせる能力が低下する障害です。
調節障害が発生すると、近くを見るときや遠くを見るときのピントを調節できなくなり、ものを見にくくなります。
11級1号 | 両眼の眼球に著しい調節機能障害を残すもの |
12級1号 | 1眼の眼球に著しい調節機能障害を残すもの |
事故前と比べて両眼の調節機能が2分の1以下になってしまったら、「著しい調節機能障害」として後遺障害11級1号が認定されます。
片眼の調節機能が2分の1以下になった場合には、後遺障害12級1号が認定されます。
運動障害
運動障害とは、目の筋肉の働きが低下してしまう障害です。
運動機能障害により、「麻痺」が起こるので、斜視となってものをきちんと追って視覚で感知することができなくなります。
具体的な症状としては、視野が変わってしまったり複視(ものが二重に見える症状)になってしまったりします。
運動障害で認められる後遺障害は、以下の通りです。
10級2号 | 正面を見た場合に複視の症状を残すもの |
11級1号 | 両眼の眼球に著しい運動障害を残すもの |
12級1号 | 1眼の眼球に著しい運動障害を残すもの |
13級2号 | 正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの |
「複視の症状がある」というためには、本人が複視を自覚しており、複視の原因となる事情が明らかで、「ヘススクリーンテスト」という検査によって複視を確認できることが必要です。
正面を向いて複視があれば10級2号、正面以外を向いたときに複視があれば13級2号となります。
眼球に「著しい運動障害を残す」とは、事故前と比べて「注視野(頭を固定して眼球のみを動かすことによって見える範囲)」が2分の1以下になった場合です。
両眼に著しい運動障害が認められれば11級1号、片眼に著しい運動障害があれば12級1号の認定を受けられます。
視野障害
視野障害は、交通事故によって視神経がダメージを受けることにより、「視野」が狭くなった場合の後遺障害です。
「視野」とは、前方の1点を見つめる際に見える範囲のことで、視野が狭くなると視力があってもものがどんどん見えなくなり、最終的には失明に至ります。
視野障害には、半盲症、視野狭窄、視野変状の種類があります。
半盲症とは視野の右半分または左が失われる場合、視野狭窄は、同心円状などの形で視野が狭くなる症状であり、視野変状とは視野の中に点状に見えない範囲が広がる場合(暗点)や視野が一部欠損する場合(視野欠損)など、不規則的な視野の障害です。
後遺障害の判定をするときには「ゴールドマン型視野計」という検査器具によって計測します。
8つの方向の視野の角度を合計し、正常視野の60%以下になっていたら視野障害が認定されます。
視野障害で認定される可能性のある後遺障害の等級は、以下の通りです。
9級3号 | 両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの |
13級3号 | 1眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの |
両眼に視野障害があれば9級3号、片眼に視野障害があれば13級3号となります。
まぶたに障害が残ってしまった場合
まぶたの場合にも目と同じ後遺障害等級になるの?
まぶたも症状によって等級が変わってくるんだ。
まぶたの後遺障害等級についても説明するね。
以上が失明を始めとした目の後遺障害の後遺障害認定基準ですが、目にダメージを受けるときには「まぶた」に障害が残るケースもあります。
たとえばまぶたが開かなくなったり、反対に閉じられなくなったりする欠損障害のケースです。
その場合にも、状況に応じて後遺障害認定を受けられます。
認定される後遺障害は、以下の通りです。
9級4号 | 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの |
11級3号 | 1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの |
13級4号 | 両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの |
14級1号 | 1眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの |
「まぶたに著しい欠損を残すもの」は、まぶたを閉じても角膜を完全に覆うことができない状態です。
両眼に著しい欠損があれば9級4号、片眼なら11級3号が認定されます。
「まぶたの一部に欠損を残すもの」とは、まぶたを閉じたとき、角膜を完全に覆うことができても白目の部分が露出してしまう場合です。
両眼なら13級4号、片眼なら14級1号となります。
「まつげはげを残すもの」とは、まつげが2分の1以上にわたってはげてしまうケースです。
両眼なら13級4号、片眼なら14級1号となります。
その他の目の後遺障害
その他にも後遺障害認定を取得できる症状ってあるの?
瞳孔の異常や流涙症の場合にも、後遺障害認定を受けることができるよ。
交通事故には、後遺障害認定表には記載がありませんが、上記の4つ以外にも目の後遺障害があります。
瞳孔の異常
1つは、目の「瞳孔」に異常が発生したケースです。
瞳孔は、光に反応して収縮しますが、受傷の影響によって開いたままとなると、まぶしくて労働にも支障を来たすので、後遺障害認定されます。
瞳孔の対光反射が失われていたら、両眼のケースで11級相当、片眼では12級相当となります。
瞳孔の対光反射は残っていても不十分な場合、両眼なら12級、片眼なら14級相当となります。
流涙症
交通事故の外傷で「涙小管」が断裂し、常に涙が止まらない状態になるケースがあります。
このような流涙症となった場合、後遺障害は14級相当となります。
失明した場合の慰謝料の相場
等級によって、どの位慰謝料が変わってくるの?
等級ごとの慰謝料をグラフにしてみたよ。
等級に合わせてチェックしてみよう。
交通事故で失明すると、どのくらいの慰謝料が支払われるのかみてみましょう。
後遺障害の慰謝料は、認定された後遺障害の等級によって大きく異なり、等級が上がるとその分慰謝料が高額になります。
等級ごとの後遺障害慰謝料は、以下の通りです。
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
たとえば交通事故で両眼を失明したら1級が認定されるので、後遺障害慰謝料は2800万円程度となります。
なお実際に算定される慰謝料は、各ケースの事情によって増減される可能性があります。
また上記の後遺障害慰謝料は「弁護士基準」によって計算されたものです。
被害者が自分で加害者の保険会社と示談交渉をするときには、任意保険会社から、低額な「任意保険基準」を適用されてしまうので、上記の表より保険金額がかなり下げられます。
示談交渉を進めるとき、加害者の提示した慰謝料の金額が上記の表の金額を大幅に下回る場合には、弁護士に相談すると慰謝料が2倍や3倍程度に上がる可能性があります。
交通事故で失明すると「後遺障害逸失利益」も請求できます。
後遺障害逸失利益とは、後遺障害によって得られなくなってしまった将来の収入です。
目が見えなくなると働けなくなったり労働に支障が出たりして減収が発生するので、その減収分を損害として相手に請求できるのです。
後遺障害の程度によって、どのくらい働けなくなるかが異なるため、逸失利益は各等級の「労働能力喪失率」によって計算します。
各等級の労働能力喪失率は以下の通りです。
1級 | 100% |
2級 | 100% |
3級 | 100% |
4級 | 92% |
5級 | 79% |
6級 | 67% |
7級 | 56% |
8級 | 45% |
9級 | 35% |
10級 | 27% |
11級 | 20% |
12級 | 14% |
13級 | 9% |
14級 | 5% |
事故が原因で両眼を失明した場合や、片眼が失明してもう片方の視力が0.06以下になった場合には労働能力喪失率は100%となって、全額の逸失利益を請求できます。
また失明に至らなくても両眼の視力が0.02以下になったら2級となるので、やはり労働能力喪失率は100%となります。
労働能力喪失率が100%の場合、被害者の年収や年齢にもよりますが、逸失利益の金額が1億円を超えるケースも珍しくはありません。
等級が低くても高くても、逸失利益は慰謝料より高額になることも多いので、正確に算定して確実に支払いを受けることが大切です。
まとめ
目に後遺症が残ってしまった時の等級や慰謝料について良くわかったよ。
後遺障害等級認定を取得する事がポイントだね!
少しでも高い等級を獲得するためにも、交通事故に強い弁護士に依頼することが大切だよ。
交通事故で失明を始めとして目に後遺障害が残ってしまったら、介護が必要になってしまう事もありますし、その後の人生が大きく変わってしまう方も多いです。
まずはしっかり治療を受けて、残った症状については適切な補償を受けましょう。
より確実に高い等級の後遺障害認定を受けるためには、被害者請求の方がお勧めですから、交通事故に強い弁護士に相談し、弁護士回答を得ながら手続きを進めていくようにしましょう。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。