慰謝料

交通事故による骨折と打撲では慰謝料は同じなの?専門家が解説します!

投稿日:

クマ
交通事故に遭ってしまった時って、打撲と骨折では慰謝料は変わるの?
ウサギ
交通事故による慰謝料は、重症の方が多く支払われるんだ。
今回の記事では交通事故による打撲と骨折での賠償金の違いについてチェックしていこう。

交通事故に遭ったら、打撲で済むケースもありますが骨折してしまうケースも少なくありません。

打撲の場合と骨折の場合では慰謝料の金額が異なるのでしょうか?

実際、どちらのケースでどのくらいの賠償金を払ってもらえるのか、相場を把握しておきましょう。

今回は交通事故の骨折と打撲で慰謝料を始めとする賠償金額がどのくらい違うのか、解説します。

交通事故でけがをしたときに支払われる賠償金

交通事故で打撲や骨折などのけがをすると、事故の相手(加害者)から損害賠償金が支払われます。

加害者が任意保険に入っていれば、通常は保険会社から賠償金(保険金)を受け取れます。

具体的にどういった賠償金を請求できるのか、費目ごとにみていきましょう。

加害者へ請求できる損害賠償金の内訳

交通事故の被害者が受傷したときに加害者や加害者の保険会社に請求できる損害賠償金には以下のようなものがあります。

  • 治療費
    必要かつ相当な範囲で実費請求できます。
  • 付添看護費用
    入院中に親族に付き添ってもらった場合、日額6,500円程度の付添看護費用を請求できます。
  • 雑費
    入院すると、日額1,500円程度の雑費を請求できます。
  • 交通費
    公共交通機関を使った場合、実費を請求できます。
    自家用車で病院に通った場合には1キロメートル15円のガソリン代や駐車場代等を請求可能です。
  • 器具・装具の費用
    コンタクトレンズや義手義足等が必要になった場合、そういった器具装具の費用も請求できます。
  • 介護費用
    介護を要した場合、介護費用を請求できます。
  • 休業損害
    けがの影響で仕事ができなくなったら、休んだ日数分の休業損害を請求できます。
  • 慰謝料
    交通事故でけがをすると被害者は大きな精神的苦痛を受けるので慰謝料を請求できます。
  • 逸失利益
    後遺障害が残ると労働能力が低下して、将来得られるはずの収入が低下してしまいます。
    その失われた収入を「逸失利益」として相手に請求可能です。

 打撲や骨折で受けられる慰謝料の相場とは

クマ
打撲と骨折では慰謝料はどの位違うの?
ウサギ
症状によって慰謝料は変わるから、一概には言えないんだけれど、打撲の場合には10万円から30万円程度、骨折の場合には、100万円を超える慰謝料を受け取ることができる場合もあるよ。

打撲や骨折した場合、慰謝料はどのくらいになるのかそれぞれの相場をみてみましょう。

打撲のケース

打撲で済んだ場合、通常入院は不要ですし通院期間も12か月程度で済むでしょう。

その場合、慰謝料の相場は10万~30万円程度となります。

このように「けがをしたときに支払われる慰謝料」を「入通院慰謝料」といいます。

骨折のケース

骨折の場合には入院を要するケースも多く、その後の通院期間も含めて治療日数が長くなりがちです。

その分被害者が受ける精神的苦痛も大きくなるので、慰謝料は打撲のケースより高額になり、相場としては100万円以上となるケースが多くなります。

入院すると、通院だけのケースよりも入通院慰謝料が高額になります。

また次の項目で詳しく説明しますが「後遺症」が残って後遺障害認定を受けると、後遺障害に対する慰謝料も支払われるのでより慰謝料はより高額になります。

後遺症が残ってしまったときの慰謝料

クマ
後遺症の有無によっても慰謝料は変わってくるの?
ウサギ
後遺障害認定の等級が高ければ高いほど、慰謝料は高額になるんだ。
だけど、後遺症が残っていても、後遺障害等級の認定を受けなければ慰謝料が増える事はないから注意しよう。

交通事故で骨折すると完治せずに後遺症が残る可能性があります。

当初は打撲と診断されても実は筋肉や腱の断裂が起こっていたり骨折が発覚したりして後遺症が残るケースもあります。

打撲や骨折で後遺症が残ったら、どのくらいの慰謝料が支払われるのかみてみましょう。

後遺障害等級の認定を受ける

交通事故では後遺症が残っても、何もしなければ慰謝料は支払われません。

後遺症に関する慰謝料を受け取るには「後遺障害等級認定」を受ける必要があります。

後遺障害等級認定とはさまざまな後遺障害を分類し、程度に応じて「等級」というランクをつけて認定する制度です。

後遺障害等級認定請求を受け付けて審査や認定をするのは「加害者の自賠責保険」です。

交通事故で後遺症が残ったときには、相手の自賠責保険で正式に「後遺障害」として認定されて始めて高額な後遺障害慰謝料が支払われます。

 被害者に何らかの自覚症状があっても、「後遺障害」認定を受けられなかったら後遺障害慰謝料は支払われず、入通院慰謝料しかもらえません。

 後遺障害の等級は1級から14級までの14段階となっており、1級がもっとも重くなっています。

たとえば高次脳機能障害や脊髄損傷、遷延性意識障害(植物状態)などで日常生活において完全介護が必要になった場合や両腕が根元から失われた場合、両眼を完全に失明した場合などには1級が認定されます。

一方自覚症状しかないむちうちなどの軽度なケースでは14級となります。

 骨折の場合でも、腕や脚を欠損した場合や関節が動かなくなった場合、変形した場合や右脚と左脚の長さが変わってしまった場合、痛みやしびれなどの神経症状が残った場合などには程度に応じて後遺障害認定を受けられます。

後遺障害等級によって異なる慰謝料

後遺障害慰謝料の金額は、認定された等級によって大きく異なります。

等級が重くなればなるほど高額な慰謝料が支払われます。

実際に後遺障害の認定等級によって後遺障害慰謝料の相場がどのくらい変わるのか、みてみましょう。

等級 弁護士・裁判基準 自賠責基準
1級 2800万円 1100万円(要介護の場合1600万円※)
2級 2370万円 958万円(要介護の場合1163万円※)
3級 1990万円 829万円
4級 1670万円 712万円
5級 1400万円 599万円
6級 1180万円 498万円
7級 1000万円 409万円
8級 830万円 324万円
9級 690万円 245万円
10級 550万円 187万円
11級 420万円 135万円
12級 290万円 93万円
13級 180万円 57万円
14級 110万円 32万円

※要介護(介護を要する後遺障害)についての内訳

等級

介護を要する後遺障害

第一級

  1. 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
  2. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

第二級

  1. 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
  2. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

参照:https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/04relief/jibai/payment_pop.html

 弁護士・裁判基準とは、弁護士が示談交渉するときや裁判所が賠償金を算定するときに利用する計算基準です。

法的に適正な基準で金額的にも高額になります。

 自賠責基準は自賠責保険が保険金を計算するときに利用する基準です。

自賠責保険は被害者への最低限の救済をするための保険なので、自賠責基準によって計算される慰謝料は低額になります。

任意保険会社は上記とは別に、独自の基準をもうけています。

各社によって内容がばらばらなので一概には言えませんが、だいたい自賠責基準よりも「多少高額」な程度です。

法的な弁護士・裁判基準には遠く及びません。

 これらの「計算基準による慰謝料額の違い」は、後遺障害慰謝料だけではなく上記の「入通院による慰謝料」でも同じことがいえます。

被害者が適正な金額の慰謝料を受け取るには、法的な弁護士・裁判基準で計算する必要があります。

骨折・打撲のケースで慰謝料を増額させるには

クマ
骨折や打撲で少しでも多く慰謝料をもらうにはどうしたら良いのかな?
ウサギ
症状固定、もしくは完治と言われるまでしっかりと通院する、弁護士に相談して弁護士基準で計算してもらう、後遺障害認定を受けるなどの方法があるよ。

交通事故で骨折や打撲のけがをしたときに慰謝料を増額させるには、以下のように対応しましょう。

きちんと完治・症状固定するまで通院する

交通事故で打撲や骨折した場合、当初はきちんと通院しても途中で病院に行かなくなってしまう方がおられます。

しかし入通院慰謝料は「治療期間(日数)」に応じて計算されるので、治療途中で通院を辞めてしまったら慰謝料が減らされてしまいます。

仕事や日常生活に忙しくても、必ず「完治」または「症状固定」といわれるまで通院を継続しましょう。

完治とは症状が完全に治ること、症状固定とは症状がそれ以上緩和せずに固まってしまうことです。

症状固定したときに残っている症状が「後遺症」であり、症状固定したら自賠責保険へ後遺障害等級認定の請求を行う必要があります。

治療打ち切りと言われても通院する

交通事故後、通院期間がある程度長くなってくると、保険会社から「そろそろ治療は終わりましょう」「これ以上通院するなら治療費の支給は打ち切ります」などを言われるケースが少なくありません。

そのようなとき、相手の言いなりに治療をやめてしまうと慰謝料が減額される可能性が高くなります。

治療は「完治」または「症状固定」まで続ける必要がありますが、保険会社は完治や症状固定前に治療費支給を打ち切るケースが多いからです。

保険会社から「治療を終了しましょう」と言われたときには、まずは医師に相談をして、本当にけがが完治あるいは症状固定しているのか意見を聞いてみましょう。

医師が「まだ治療の継続が必要」と判断するのであれば、その旨診断書に記載してもらって保険会社に提出します。

そうすれば治療費の支払いが継続する可能性があります。

それでも強制的に治療費を打ち切られたら、健康保険適用に切り替えて自己負担額を支払いながらでも「完治」または「症状固定」まで通院を続けましょう。

このように工夫して最後まできちんと通院することにより、適正で高額な入通院慰謝料を支払ってもらえます。

定期的に通院する

通院時には「通院頻度」も重要です。

あまりに通院頻度が少ないと入通院慰謝料を減額されてしまうからです。

弁護士・裁判基準でも、通院日数が少ない場合には通院期間ではなく「実通院日数の3倍」が基準とされて入通院慰謝料が計算されます。

たとえば3か月間通院治療を受けたとしても、その間に20日しか通院していなければ「60日分(2か月分)」の入通院慰謝料しか支払われない可能性があります。

自賠責基準の場合、もっと極端に慰謝料を減らされます。

自賠責基準の入通院慰謝料は以下のどちらか少ない方の金額になるからです。

  • 入通院期間×4,200
  • 実通院日数×2×4,200

つまり通院期間の半数以上の日数は通院しないと入通院慰謝料が減額されます。

以上より、骨折や打撲で充分な慰謝料を受け取りたいなら、通院時にできるだけ週に3~4回以上通院するようお勧めします。

少しでも高い後遺障害等級を取得する

骨折等のケースで後遺症が残ったら、後遺障害認定を受けることが何より重要です。

後遺障害慰謝料の相場の金額は最低等級である14級でも110万円程度となり、認定を受けないケースと比べて慰謝料額が大きく跳ね上がるからです。

後遺障害認定の方法には「被害者請求」と「事前認定」の2種類があります。

被害者請求は被害者が自分で自賠責保険に書類を提出して後遺障害認定請求を行う方法、事前認定は相手の保険会社に後遺障害等級認定の手続きを任せる方法です。

お勧めは被害者請求です。

被害者が自分に有利な資料を積極的に提出できますし、どのような方法で手続きが進められたのかがわかりやすくなって手続きの透明性が担保されるからです。

事前認定は必要書類がほとんどなくて楽ですが、相手の保険会社に任せてしまうのでどういった方法で手続きが行われたのかわからず不安が残ります。

高額な慰謝料を受け取りたければ、被害者請求の方法でより高い等級の行為障害認定を目指しましょう。

弁護士に示談交渉を依頼する

後遺障害が残ったケースでも残らなかったケースでも、交通事故の被害者が高額な慰謝料を獲得するには「弁護士・裁判基準」で計算することが重要です。

弁護士・裁判基準を適用すると、任意保険会社の基準や自賠責基準と比べて大幅に慰謝料額が増額されるからです。

後遺障害慰謝料は23倍程度となりますし、入通院慰謝料は1.51.8倍程度となります。

被害者が自分で任意保険会社と示談交渉をすると、低額な任意保険基準を適用されてしまいます。

適正な慰謝料を受け取りたければ弁護士に示談交渉を依頼して「弁護士・裁判基準」で金額を計算してもらいましょう。

弁護士に依頼しただけで慰謝料額が3倍以上になるケースも少なくないので、一度交通事故に詳しい弁護士に相談してみてください。

交通事故で打撲や骨折した場合、治療期間や後遺障害の有無、内容によって支払われる慰謝料額が大きく変わってきます。

まずは適正な金額を知るため、交通事故に積極的に取り組んでいる弁護士に相談してみてはいかがでしょうか?

 

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福谷陽子

福谷陽子

元弁護士・ライター。
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。

■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。

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