弁護士基準で計算する場合、たくさん通院したからといって、慰謝料が増額する事はないんだよ。
今回の記事では、少しでも多く入通院慰謝料を多く受け取るための通院回数について、詳しく見ていこう。
交通事故の慰謝料は、「通院回数」が少ないと減額されてしまう可能性があります。
今回は通院回数や頻度と慰謝料額の関係を説明し、できるだけ高額な賠償金を獲得するにはどうすればよいのかご紹介します。
事故でけがをしてしまった方はぜひ参考にしてみてください。
目次
事故でけがをしたときは「入通院慰謝料」を請求できる
交通事故でけがをしたら、加害者や保険会社へ「入通院慰謝料」を請求できます。
「入通院慰謝料」とは、けがによって被害者が受ける精神的苦痛に対する賠償金です。
事故後に病院に通ったり入院したりすると、治療期間に応じて慰謝料が計算されます。
入通院慰謝料は「治療期間が長くなるほど」高額になります。
通常は「治療に時間がかかるなら重傷」と考えられ、被害者が受ける精神的な苦痛も大きくなるためです。
たとえば事故でむちうちとなって自覚症状しかない場合の入通院慰謝料額は、弁護士基準で計算すると1ヶ月の通院なら19万円、2ヶ月なら36万円、3ヶ月なら53万円。
なお交通事故でけがをしたとき、途中で通院をやめたら通院期間が短くなるので慰謝料が減額されてしまいます。
高額な慰謝料を受け取るため、必ず「完治」または「症状固定」するまで病院に通い続けましょう。
通院日数が足りず通院慰謝料が減額されてしまうケースは?
通院期間が長くても極端に通院日数が少ないと、入通院慰謝料が減額される可能性があります。
1ヶ月の通院日数が10日未満
通院期間が長期に及ぶと、どうしても通院頻度が下がってしまいがちです。
そんなとき1ヶ月の通院日数が10日未満になると慰謝料が通常より減額されるケースが多いので、注意しましょう。
通院するなら、忙しくても月10日以上は病院に通うようお勧めします。
1ヶ月以上通院しないで期間をあけてしまう
1ヶ月以上通院しないで通院日と通院日の間の日数をあけてしまうと、保険会社は「もう完治したのだろう、通院は必要ない」と考えるケースが多数です。
治療費を打ち切られ、それ以降の通院日数を慰謝料算定期間に含めてもらえなくなるでしょう。
慰謝料や治療費を払ってもらいたいなら「毎月10日以上」を基準に、期間をあけず継続して病院へ通い続ける必要があります。
入通院慰謝料の計算方法
交通事故における入通院慰謝料はどのように計算されるのでしょうか?
「自賠責基準」と「弁護士基準」による計算方法や相場を詳しくお伝えします。
自賠責基準
自賠責基準は、自賠責保険や共済が保険金を計算するための基準です。
入通院慰謝料の場合、基本的には「通院期間に対応する日数×4300円」として計算します。
ただし通院日数が少ないと「実通院日数×2×4300円」になります。
そこで自賠責基準では、「1ヶ月に通院日数が15日未満」になると慰謝料が減額されます。
たとえば月の日数が31日の場合、16日以上通院したら慰謝料額は133,300円です(4300円×31日)。
一方、月14日しか通院しなかったら慰謝料額は120,400円(14日×2×4300円)になってしまいます。
弁護士基準
弁護士基準は、弁護士や裁判所が適用する賠償金計算基準です。
弁護士基準の場合には「打撲などの軽傷や自覚症状しかないむち打ち」の場合とそれ以外の「通常程度のけが」とで慰謝料計算方法が異なります。
【軽傷や自覚症状しかないむちうちの場合の通院慰謝料の相場】
1カ月 | 19万円 |
2カ月 | 36万円 |
3カ月 | 53万円 |
4カ月 | 67万円 |
5カ月 | 79万円 |
6カ月 | 89万円 |
7カ月 | 97万円 |
8カ月 | 103万円 |
9カ月 | 109万円 |
10カ月 | 113万円 |
ただし治療期間が長引いて通院日数があまりに少なくなると「通院日数×3」を基準に慰謝料額が計算される可能性があります。
たとえば1ヶ月に5日しか通院しなかった場合、仮に1日あたり6,333円として計算すると慰謝料額は94,995円にしかなりません(6333円×5×3)。
【通常程度以上のけがの場合の通院慰謝料の相場】
1カ月 | 28万円 |
2カ月 | 52万円 |
3カ月 | 73万円 |
4カ月 | 90万円 |
5カ月 | 105万円 |
6カ月 | 116万円 |
7カ月 | 124万円 |
8カ月 | 132万円 |
9カ月 | 139万円 |
10カ月 | 145万円 |
通常程度以上のけがの場合、治療期間が長引いて通院日数が少なくなると「通院日数×3.5」を基準に慰謝料額が計算されるケースがよくあります。
たとえば1ヶ月に5日しか通院しなかった場合、1日あたり9,333円として計算すると慰謝料額は163,327円となります(9333円×5×3.5)。
以上のように、自賠責基準でも弁護士基準でも通院日数が少なくなると慰謝料を減額されてしまいます。
事故後に治療を受けるときには、一定以上の頻度で通院を継続すべきといえるでしょう。
高額な慰謝料を請求するための「通院日数」
弁護士基準で計算する場合には、極端に通院回数が少なくならないよう、月に10日程度を目安に通院するようにしよう。
可能な限り高額な通院慰謝料を請求するには、どのくらいの通院日数を確保すればよいのでしょうか?
自賠責基準と弁護士基準に分けて解説します。
自賠責保険の場合
自賠責基準の場合、「2日に1度以上」通院すると慰謝料は減額されません。
月の日数分、満額の慰謝料を受け取れます。
通院頻度がそれを下回ると「実通院日数×2」を基準とされるので、慰謝料額が減額されてしまうので、できるだけ2日に1回以上通院しましょう。
なお2日連続で通院して2日休む、などでもかまいません。
「月の半分以上」通院すれば慰謝料を確保できます。
弁護士基準の場合には
弁護士基準の場合、必ずしも通院回数による影響を受けません。
特に通院初期の段階では、通院回数が少なくなっても慰謝料は減額されにくいでしょう。
しかし通院期間が長期に及んでくると、通院日数によって慰謝料が減額される可能性があります。
軽傷や自覚症状のないむちうちの場合には「実通院日数×3」、通常程度以上のけがの場合には「実通院日数×3.5」による計算になるためです。
弁護士基準を適用する場合でも、通院期間が長期に及んだときに通院日数を減らすと予想外に慰謝料が少なくなるリスクが高まります。
目安として、最低でも月10日以上は通院しましょう。
通院日には休業損害も払ってもらえる
「あまりに頻繁に通院すると、仕事を休まなければならないので困る」方もおられます。
交通事故後の通院日には「休業損害」を払ってもらえるので過剰に心配する必要はありません。
会社員の場合、休業損害額は「事故前3ヶ月分の平均給与」を基準に算定され、有給休暇を取得した場合にも請求できます。
自営業やアルバイト、主婦の方であっても休業損害を請求できます。
自賠責基準の場合には1日あたり19,000円が上限となりますが、弁護士基準なら給料の高い方でも全額の休業損害が支払われるので、通院を躊躇する必要はありません。
慰謝料を増額させる方法
交通事故の慰謝料を最大限増額させるにはどうすればよいのでしょうか?
3日に1度は通院する
1ヶ月の通院日数が10日未満となったり通院期間を1ヶ月以上空けたりすると、慰謝料が減額されるリスクが高まります。
高額な慰謝料を受け取りたいなら最低限1ヶ月に10日以上、可能な限り3日に1回以上のペースで継続して定期的に通院しましょう。
途中で通院をやめない
通院期間が長引いてくると、被害者にとっても通院が面倒になってくるケースが少なくありません。
しかし完治や症状固定していないのに通院をやめてしまったら、慰謝料が減額されてしまいます。
一方、被害者自身はまじめに通院していても、保険会社側から治療の終了を打診されるケースがあります。
保険会社から「そろそろ治療を終わって示談交渉を開始しましょう」などといわれても、必ずしも完治や症状固定しているとは限りません。
症状固定前に治療をやめてしまったら慰謝料が減額されるので要注意です。
保険会社から治療の打ち切りを打診されたら、まずは医師に相談しましょう。
まだ治療を必要とする状態であれば保険会社にその旨伝えて治療を継続すべきです。
一方的に治療費を打ち切られた場合、健康保険や労災保険を適用して通院を続けてください。
後遺障害等級認定を受ける
交通事故でむち打ちや骨折などのけがをすると、治療を受けても完治しないケースが多々あります。
しびれや痛み、関節の可動域制限などの後遺症が残ったら、必ず自賠責で後遺障害等級認定を受けましょう。
後遺障害が認定されると、高額な後遺障害慰謝料が支払われます。
たとえばむち打ちの場合は110万円または290万円、骨折ならもっと高額な慰謝料が支払われる可能性があります。
後遺障害認定されると慰謝料の金額が数倍に跳ね上がるケースも多いので、専門家に相談しながら適正な方法で後遺障害認定の手続きを進めましょう。
過失割合を適正にしてもらう
事故の慰謝料を高額にするには、過失割合も重要です。
慰謝料の金額そのものが高額でも、被害者の過失割合が高いと大幅に減額されてしまうからです。
過失割合には交通事故の類型ごとに法的な基準があり、保険会社の提示する割合が正しいとは限りません。
示談を成立させる前に弁護士に相談して、過失割合が適正になっているか確認しましょう。
示談交渉を弁護士に依頼する
示談交渉を弁護士に依頼すると、高額な弁護士基準で慰謝料が計算されます。
入通院慰謝料はもちろんのこと、後遺障害慰謝料も休業損害も増額され過失割合も適正になって多くのケースで大幅に慰謝料が増額されます。
後遺障害等級認定も受けやすくなって、結果的に10倍以上の慰謝料を受け取れる被害者の方も少なくありません。
交通事故で高額な慰謝料を受け取りたければ、弁護士に対応を依頼しましょう。
まとめ
交通事故に遭ってしまったら、弁護士に相談する必要があるって事が良くわかったよ!
交通事故に遭ってしまった時には、出来るだけ早く弁護士に相談して、トータルでサポートしてもらうのがおすすめだよ!
弁護士に依頼せずに自分で示談を成立させてしまうと、本来よりも大幅に低額な賠償金しか受け取れない可能性が大きく高まります。
保険会社から慰謝料や過失割合についての提示を受けたらまずは弁護士に相談して、適正な内容になっているか確認しましょう。
自分で交渉しても保険会社は法的な基準を適用してくれないので、高額な慰謝料を受け取るためには弁護士に依頼するのが得策です。
通院日数と慰謝料の関係がわからないときにも弁護士からアドバイスを受けられるので、まずは無料相談を利用してみるとよいでしょう。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。