だけど場合によっては、自転車側の過失が高くなることもあるんだ。
今回の記事では、自転車とバイクの交通事故における過失割合の決め方について、詳しく見ていこう。
自転車とバイクが交通事故に遭ったら、お互いの過失割合はどのくらいになって慰謝料や賠償金をどの程度支払ってもらえるのでしょうか?
自転車とバイクを比べると自転車が弱者となるので、基本的には自転車の過失割合が低くなります。
また自転車かバイクかにかかわらず、重傷を負ったら高額な賠償金を請求できます。
現実的には自転車が重傷を負うケースが多いでしょう。
今回は自転車とバイクの交通事故の過失割合基準や慰謝料の相場、適正な補償を受ける方法について解説します。
自転車とバイクの事故に遭って対応に迷っている方はぜひ参考にしてみてください。
目次
自転車とバイクの交通事故における過失割合のルール
自転車とバイクが接触事故を起こした場合、それぞれの過失割合はどの程度になるのでしょうか?
基本的に自転車側はバイクと比べて「弱者」となるため、自転車側の過失割合が抑えられます。
自転車は事故を避ける能力が低く、車体もか細いので衝突したときのダメージも大きくなるからです。
相手が自転車の場合、バイク側には事故を避けるための高い注意義務が認められます。
自転車とバイクが接触すると、バイク側の過失割合が自転車側に比べて高くなるのが一般的です。
ただし自転車側が両手離し運転や赤信号無視などの道路交通法違反をしていた場合など、事情によっては自転車側の過失が高くなるケースもあります。
バイクの種類によって過失割合は変わらない
ひとことで「バイク」といってもさまざまな種類があります。
「原付なら車体も小さいし自転車に近いので、過失割合が低くなるのでは?」と考える方もいるでしょう。
しかし過失割合の基準における「バイク」にはあらゆるタイプの「二輪車」が含まれます。
大型バイクでも原付でも、相手が自転車であれば同じ過失割合の基準が適用されます。
原付だから大型バイクより過失割合が低くなる、といった特別扱いはありません。
また法律上、自転車が相手の場合には四輪車とバイクの区別もありません。
「自動車と自転車が衝突した場合」も「バイクと自転車が衝突した場合」も同じ過失割合の基準が適用されます。
自転車とバイクの事故での過失割合の一例
右折車と直進車の事故の場合でも、信号無視をすると、その分過失が高くなってしまうよ。
信号があるケースと信号がないケースでは過失割合がどのくらい違うのか、チェックしてみよう。
実際に自転車とバイクが交通事故を起こした場合、どの程度の過失割合が認められるのか例を挙げてご説明します。
信号機がある交差点で出会い頭の事故のケース
信号機のある交差点上で、自転車とバイクが出会い頭で接触した事故では、お互いの信号機の色によって過失割合の基準値が変わります。
自転車の信号機の色 |
バイクの信号機の色 |
自転車の過失割合 |
バイクの過失割合 |
青 |
赤 |
0% |
100% |
赤 |
青 |
80% |
20% |
黄 |
赤 |
10% |
90% |
赤 |
黄 |
60% |
40% |
赤 |
赤 |
30% |
70% |
基本的には自転車側の過失割合が低くなりますが、自転車が信号無視をしていると過失割合が上がります。
赤信号だけではなく黄信号で直進した場合にも過失が認められるので、黄信号の場合には無理に交差点に進入しないよう注意しましょう。
信号がある交差点での直進車と右折車の接触事故
信号機のある交差点で、直進車と右折車が接触した場合の過失割合の基準を示します。
自転車直進、バイク右折
自転車が直進、バイクが右折する際の交通事故の過失割合を示します。
基本的に直進車が優先されるので、自転車側の過失割合が低くなります。
自転車の信号機の色 |
バイクの信号機の色 |
自転車の過失割合 |
バイクの過失割合 |
青 |
青 |
10% |
90% |
黄 |
青信号で進入して黄信号で右折 |
40% |
60% |
黄 |
黄 |
20% |
20% |
赤 |
赤 |
30% |
70% |
赤 |
青信号で進入して赤信号で右折 |
70% |
30% |
赤 |
黄信号で進入して赤信号で右折 |
50% |
50% |
赤 |
右折の青矢印信号 |
80% |
20% |
自転車右折、バイク直進
自転車が右折、バイクが直進していて事故が生じたケースにおける過失割合の基準です。
自転車の信号機の色 |
バイクの信号機の色 |
自転車の過失割合 |
バイクの過失割合 |
青 |
青 |
50% |
50% |
青信号で進入して黄信号で右折 |
黄 |
20% |
80% |
黄 |
黄 |
40% |
60% |
赤 |
赤 |
30% |
70% |
赤 |
右折の青矢印信号 |
80% |
20% |
信号機がない交差点での事故
信号機の設置されてない交差点で自転車とバイクの交通事故(出会い頭)が起こった場合の過失割合をみてみましょう。
道路の状況 |
自転車の過失割合 |
バイクの過失割合 |
同程度の幅 |
20% |
80% |
自転車狭路、バイク広路 |
30% |
70% |
自転車広路、バイク狭路 |
10% |
90% |
自転車に一時停止規制あり |
40% |
60% |
バイクに一時停止規制あり |
10% |
90% |
自転車が優先道路 |
10% |
90% |
バイクが優先道路 |
50% |
50% |
自転車が一方通行違反 |
50% |
50% |
バイクが一方通行違反 |
10% |
90% |
自転車とバイクの事故による過失割合の修正要素
その他にも、著しい過失や重過失が認められることで、過失割合は大きく変ってくるんだよ。
自転車とバイクが接触事故を起こした場合でも、一方が飲酒していたなどの特殊事情があれば基本の過失割合が修正されます。
このように過失割合を修正すべき事情を「修正要素」といいます。
以下では自転車とバイクの過失割合の修正要素をご紹介していきます。
事故時が夜間
事故が起こった時間が「夜間」の場合、自転車側の過失割合が高くなる可能性があります。
自転車はライトが小さくバイク側から認識しづらいからです。
単に夜間であれば自転車側の過失割合が5%程度高くなる可能性があり、自転車が無灯火で運転していた場合には過失割合が上がって10%程度加算される可能性があります。
自転車の運転者が子どもや高齢者
自転車には免許制度がないので、子どもが運転しているケースもあります。
高齢者でも自転車に乗ることがあるので、バイク側としては十分に注意しなければなりません。
自転車の運転者が子どもや高齢者の場合、バイク側の過失割合が5%~10程度加算されるケースがあります。
自転車が自転車横断帯を通行
自転車横断帯は自転車用の通路であり、バイクが通行すべきではありません。
それにもかかわらず自転車横断帯を通行していた自転車にバイクが接触すると、バイク側に高い過失が認められ、5~10%程度の過失割合が加算されます。
自転車が横断歩道を通行
横断歩道上で事故が起こった場合、自転車は歩行者ほどの保護は受けませんが一定の反故は受けられます。
バイク側に5%程度の過失割合が加算されます。
赤信号の直前に交差点へ進入
赤信号になる直前で交差点に入ると危険です。
バイクが赤信号になる直前になって無理に交差点に進入すると、15%程度の過失割合が加算される可能性があります。
著しい過失がある
バイクが時速15キロメートル以上オーバーしていた場合、酒気帯運転していた場合などには著しい過失があるとして、5~10%程度過失割合が加算されます。
自転車側も2人乗りや片手運転、酒気帯運転などをしていたら著しい過失が認められて5~10%程度過失割合が上がります。
重過失があった場合
重過失とは、故意にも匹敵するほど重大な過失です。
たとえば酩酊状態や薬物の影響により正常に運転できない状態で運転していた場合、バイクが無免許で運転していた場合、自転車が両手離し運転していた場合などには重過失となって10~20%程度、過失割合が加算される可能性があります。
過失割合が高いと慰謝料が減額される!
交通事故で相手に請求できる慰謝料や賠償金は、請求者の過失割合が高くなると減額されてしまいます。
賠償金を計算するときには「過失相殺」されるからです。
過失相殺とは、請求者の過失割合の分、受け取れる賠償金を減額するルールです。
たとえば賠償金が1,000万円の事案でも過失割合が50%とされれば半額の500万円しか請求できません。
過失割合がいくらになるかは被害者にとって極めて重大な事項といえるでしょう。
保険会社の提示する過失割合が必ずしも適正とはいえません。
そのまま承諾すると不必要に慰謝料を減額されて損をしてしまう可能性があるので、合意するかどうかは慎重に判断すべきです。
過失割合や慰謝料に納得できない場合の対処方法
保険会社から提示された過失割合が適正かどうかわからない場合や納得できない場合には、弁護士に相談してみましょう。
弁護士に事故の状況を説明すれば、法的な過失割合の基準にあてはめて適正な過失割合を算定してくれます。
自分で保険会社に連絡しても過失割合を訂正してもらえない場合、弁護士に示談交渉を依頼すれば過失割合が適正となる可能性が高くなります。
どうしても保険会社が承諾しない場合、訴訟を起こして裁判所に正しい過失割合をあてはめてもらうこともできます。
自転車とバイクの事故の注意点
その他にも、バイクや自転車では、任意保険に加入していない事が多く、示談交渉を本人と直接進めなければいけない事もあるため、トラブルに発展しないように注意する必要があるね。
自転車とバイクが事故に遭った場合、以下のような点に注意しましょう。
重大事故になりやすい
自転車もバイクも自動車とは違い、ライダーの体がむき出しになっている乗り物です。
転倒すると、大ケガをしてしまうケースが多々あります。
特に立場の弱い自転車が転倒して自転車の下敷きになると、重傷を負って後遺症が残るリスクも高まります。
ケガをしても完治しなければ、後遺障害等級認定を受けなければなりません。
高い等級の後遺障害等級認定を受けられれば、その分高額な慰謝料や逸失利益を請求できます。
ただ自分ひとりで対応するのは心細いでしょうし、適切な対応も難しいでしょう。
困ったときには弁護士へ相談してみてください。
保険会社がつかないケースも多い
自転車とバイクが接触した場合、バイク側は任意保険に入っていても自転車側は保険に入っていないケースがよくあります。
「自転車保険」に入っている場合でも、示談交渉の代行サービスがついているとは限りません。
すると自転車のライダーは、自分1人でバイク側の保険会社と交渉する必要があります。
また原付の場合、バイク側も任意保険に入っていないケースが珍しくありません。
すると当事者同士の交渉となってしまい、話を進めるのが極めて難しくなってしまいがちです。
自転車とバイクの事故に遭ったら弁護士へ相談を
弁護士に依頼しないと、弁護士基準で慰謝料を計算することができないから、弁護士に相談することで、大幅な賠償金アップが可能になるんだよ。
自転車事故やバイク事故で対応に困ったときには、弁護士へ相談しましょう。
過失割合だけではなく後遺障害等級認定のサポートや示談交渉の代行など、全般的なサービスを受けられます。
保険会社と弁護士では賠償金の計算基準が異なるので、弁護士に依頼すると大幅に賠償金額がアップするメリットもあります。
まずは一度、交通事故に積極的に取り組んでいる弁護士事務所を探して相談を申し込んでみてください。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。