慰謝料

示談金と慰謝料、賠償金って同じもの?違うもの?

投稿日:

シカ
交通事故に遭ってしまったんだけれど、示談金、慰謝料、賠償金って違う物なの?
それぞれ請求することができるのかな?
ミミズク
交通事故における、示談金、慰謝料、賠償金は、全て加害者から受け取れるお金の事を呼ぶんだ。
示談金と賠償金は同じ意味合いで、受け取れるお金の総称として使われる事が多いのだけれど、慰謝料は、示談金と賠償金の中の一部として支払われるお金なんだよ。
今回の記事では、示談金、賠償金、慰謝料、それぞれの違いについて、詳しくみていこう。

交通事故で相手から払われるお金には、「示談金」「賠償金」「慰謝料」などいくつかの種類があります。

「事故に遭ったら慰謝料を請求できる」と思っている方も多いのですが、事故で請求できるお金は慰謝料だけではありません。

適正な補償を受けるには「示談金」や「賠償金」「慰謝料」などの意味を正しく把握しておく必要があります。

今回は交通事故で相手から受け取れるお金の種類や意味、それぞれの違いについて解説します。

より多くの賠償金を受け取るための工夫についてもお伝えしますので、ぜひ参考にしてみてください。

示談金、慰謝料、賠償金とは

まずは「示談金」「賠償金」「慰謝料」それぞれの意味内容を理解しましょう。

示談金とは

示談金とは、被害者と加害者が示談を行い、合意が成立したときに加害者が被害者へ払うお金です。

示談によって払われるので「示談金」といいます。

交通事故の賠償問題を示談によって解決した場合、加害者は被害者へ損害賠償金として示談金を支払います。

賠償金とは

賠償金とは、不法行為などによって他人に与えた損害を補填するために加害者が被害者へ払うお金です。

示談で賠償問題を解決した場合だけではなく、調停や訴訟で解決した場合にも加害者が被害者へ払うお金は「賠償金」といいます。

示談金と賠償金はほとんど同じ

示談金と賠償金は、重なるケースが多々あります。

示談で賠償問題を解決した場合には加害者が被害者へ「示談金」を払いますが、この場合の示談金は「賠償金」とイコールです。

ただし調停や訴訟などの他の方法で解決した場合には、加害者が被害者へ払うお金を示談金といいません。

示談によって払われるお金ではないからです。

「賠償金」が正しい呼称となります。

慰謝料とは

慰謝料は、被害者が受けた精神的苦痛に対する賠償金です。

交通事故の中でも人身事故に遭ったら被害者は大きな精神的苦痛を受けるので、加害者へ慰謝料を請求できます。

慰謝料と示談金、賠償金の違い

慰謝料は、示談金や賠償金とは異なる次元のお金です。

示談金や賠償金は「損害全体」を補填するお金ですが、慰謝料は「一部の損害」のみしか補填しません。

示談金や賠償金には、以下のような多くの費用や損害が含まれます。

  • 治療費
  • 交通費
  • 付添看護費
  • 休業損害
  • 介護費用
  • 逸失利益
  • 葬儀費用
  • 物損(車の修理費用や買いかえ費用、代車費用など)

 つまり慰謝料は示談金や賠償金の「一部」にすぎません。

交通事故に遭ったときには、慰謝料だけではなく上記のようなすべての賠償費目を計算して、適正な金額の賠償金(示談金)を払ってもらう必要があります。

慰謝料の種類

交通事故の慰謝料には以下の3種類があります。

  • 入通院慰謝料(傷害慰謝料)
    入通院慰謝料は、被害者が交通事故でケガをしたときに請求できる慰謝料です。
    入通院した期間に応じて計算するので入通院慰謝料といいます。
    傷害慰謝料とも呼ばれます。
  • 後遺障害慰謝料
    後遺障害慰謝料は、事故のケガで後遺症が残り「後遺障害等級認定」を受けたときに支払われる慰謝です。
    自賠責で後遺障害として正式に認定されると、認定された等級に応じて後遺障害慰謝料が支払われます。
    後遺障害が認定されると入通院慰謝料にプラスして後遺障害慰謝料が支払われるので、慰謝料額が全体で大きくアップします。
  • 死亡慰謝料
    死亡慰謝料は、被害者が死亡してしまったときに支払われる慰謝料
    です。
    ご本人に扶養者がいたかどうかにより金額が変わります。

示談金、賠償金の内容

シカ
示談金や賠償金には、どんな物が含まれるの?
ミミズク
入通院にかかった費用や、交通費、付添費用や通信費、自宅の改修が必要になった場合には改修代や器具装置代、車の修理用や代車費用など、様々な物が含まれるよ。
その他、後遺症が残った場合や、死亡してしまった場合にも受け取れる賠償金があるよ。

次に示談金や賠償金の具体的な内容をみていきましょう。

一般的な傷害事故

一般的な人身事故では、「示談金」「賠償金」として以下のような損害を請求できます。

治療費

診察代、手術代、検査費用、入院費用など治療にかかった費用は必要かつ相当な範囲内で全額相手に請求できます。

処方箋代や薬代も賠償範囲に含まれます。

ただし整骨院に通う場合には、医師による同意がないと治療費を払ってもらえない可能性が高くなります。

漢方治療や温泉治療なども認められる可能性がありますが、医師が「必要」と認めたケースに限られます。

通院交通費

通院にかかった交通費も賠償金の内容に含まれます。

公共交通機関なら実費、自家用車を使った場合には1kmあたり15円のガソリン代を請求できます。

駐車場代や高速代も払ってもらえるので領収証をとっておきましょう。

通信費

郵便切手などの通信費用も請求可能です。

付添看護費

入院中に親族に付き添ってもらった場合、1日あたり6,500円程度の付添看護費を請求できます。

被害者が子どもなどで通院に親族の付添が必要な場合には、通院付添費用を請求できるケースもあります。

器具装具の購入費

後遺障害が残って義眼や義足、コンタクトレンズ、松葉杖、車椅子などの器具や装具が必要となった場合には、そうしたものの購入費用も請求できます。

家や車の改修費

後遺障害が残って自宅で介護をする場合、家をバリアフリーにしなければならない可能性があります。

その場合、必要な改修費用は賠償金の一部として相手へ請求できます。

身体障害者となって車を障害者ように改造する費用も請求可能です。

休業損害

交通事故後の通院のために仕事を休むと、休業損害を請求できます。

後遺障害が残った場合

後遺症が残り後遺障害認定を受けられたら、以下の賠償金を請求できます。

後遺障害慰謝料

認定された等級に応じて後遺障害慰謝料を請求できます。

後遺障害逸失利益

後遺障害逸失利益とは後遺障害で労働能力が低下したために得られなくなった将来の収入に対する補償金です。

認定された等級によって金額が変わり、等級が高くなると逸失利益も高額になります。

死亡事故

死亡事故の場合には以下の賠償金を請求できます。

葬儀費用

葬儀にかかった費用を実費で請求できます。

死亡逸失利益

被害者が死亡すると一切収入を得られなくなるので、減収分を逸失利益として請求できます。

死亡慰謝料

死亡すると遺族が死亡慰謝料を請求できます。

物損について

物損が発生すると、以下のような物損について請求できます。

修理費

車の修理費用です。

買いかえ費用、買いかえ諸費用

車を買い換える場合には時価を限度に買いかえ費用を請求できます。

買いかえにかかる諸費用(ディーラー手数料やリサイクル費用など)も請求可能です。

代車費用

代車を利用した場合には代車費用も請求可能です。

評価損害

車の価値が落ちた場合には評価損害を請求できる可能性もあります。

示談交渉を行う時期

シカ
示談交渉はいつ行うべきなのかな?
ミミズク
示談交渉は、完治、もしくは症状固定となってからだよ。
たとえ相手の保険会社から治療打ち切りと言われても、完治、もしくは症状固定まで継続して治療を行った上で示談交渉を進めるようにしよう。

加害者や保険会社と示談を開始する時期は、基本的に「治療が終わってから」です。

事故現場で相手と示談してはなりません。

治療が終わるのは、「完治」または「症状固定」したタイミングです。

完治とは、後遺症が残らず元の状態に戻ることをいいます。

その場合、治療を終えたらすぐに示談交渉を開始します。

一方、後遺症が残った場合には完治しないので「症状固定」となります。

症状固定とは「これ以上治療を続けても症状が改善しなくなった状態」をいいます。

症状固定したら治療は打ち切りますが、示談交渉の前提として後遺障害等級認定を受けなければなりません。

結果が出たら、その内容に応じて示談交渉を開始します。

被害者と加害者の両者が合意すると示談が成立し、相手から示談金を払ってもらえます。

示談交渉後にかかった費用は請求できるのか

いったん示談が成立すると、その後に発生した費用は別途請求できないのが基本です。

たとえば示談成立後に自主的にリハビリ通院をしても、治療費は払ってもらえません。

ただし示談時に将来治療費や将来明らかになった後遺障害について賠償金を払ってもらう約束をしていたら、支払いを受けられる可能性があります。

たとえば将来手術を受けなければならない予定がある場合や、示談時に予想し難い後遺症が発生する可能性のある場合には、示談条件として「示談後の支払い」についても約束しておくとよいでしょう。

示談書の書き方

シカ
示談書を自分で作成する場合には、どんな事を記載すれば良いのかな?
ミミズク
事故の発生日時や双方の氏名、車のナンバー、事故の状況、示談金額や振込口座、振り込み期日などを記載する必要があるよ。

示談金(賠償金)を受け取るには、示談書を作成しなければなりません。

以下のような方法で作成しましょう。

示談書に書くべき事項

タイトル

まずは「示談書」というタイトルを書きます。

示談書の内容

示談書には、以下のような内容を書きましょう。

  • 事故発生場所、発生日時
  • 事故車両のナンバー
  • 被害状況の概要
  • 払われる示談金(賠償金)の金額
  • 賠償金の支払い方法(一般的には銀行振込)
  • 振込先の口座
  • 支払い期日
  • 清算条項

作成年月日

示談書の作成年月日を記入します。

署名押印した日にちを書き入れましょう。

署名押印(記名捺印)

示談書には当事者双方の署名押印(記名捺印)が必要です。

なお相手が保険会社の場合、保険会社が示談書を作成して送ってくるのが一般的です。

間違いがないかチェックして、合っていれば銀行口座を記入して署名押印して返送しましょう。

通常、返送後12週間程度で示談金が入金されます。

一方、相手が本人の場合には自分たちで示談書を作成しなければなりません。

分割払いになる場合には公正証書にしておくと安心です。

高額な賠償金を受け取る方法

シカ
少しでも賠償金をアップしたい場合にはどうしたら良いのかな?
ミミズク
弁護士に依頼するのがおすすめだよ。
弁護士に依頼すると、弁護士基準で慰謝料を計算することができるから、より多くの賠償金を受け取ることができるんだ。

交通事故の賠償金は、治療費や休業損害、慰謝料や逸失利益を全額足したものです。

過失があれば過失相殺も適用され、賠償金額が調整されます。

複雑な専門知識が必要となるので、被害者が1人で正確に計算するのは簡単ではありません。

示談金の計算や相手との交渉は弁護士に任せるのが得策です。

また弁護士が示談交渉に対応すると高額な弁護士基準が適用されるので、被害者が自分で示談するよりも慰謝料をはじめとする賠償金額が大幅にアップする事例が多数となっています。

特に後遺障害が残ったケースや死亡事故などの重大事故では、弁護士に依頼した場合とご本人が対応した場合の差額が大きくなります。

高額で適正な賠償金を獲得するため、示談交渉は弁護士に依頼しましょう。

  • 示談金はどのくらい払ってもらえるのか?
  • 保険会社が提示した示談金額が適正かわからない
  • 慰謝料や休業損害の額に納得できない
  • 相手との交渉がストレスになっている

 上記のような疑問やお悩みを抱えた方は、お早めに交通事故へ積極的に取り組んでいる弁護士へ相談してみてください。

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福谷陽子

福谷陽子

元弁護士・ライター。
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。

■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。

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