道路交通法に違反していると、たとえ自転車でもその分過失割合が高くなりやすいんだ。
今回の記事では、自転車による罰則や過失割合への影響について、詳しく見ていこう。
自転車に乗っているときには自動車ほど注意を払わない方が多く、ついつい違反行為をしてしまいがちです。
しかし近年では道路交通法が改正されて自転車に対する規制が強まっており、違反しないように注意しなければなりません。
道路交通法違反の行為をしていると、講習を受けさせられたり罰則を科されたりする可能性もあります。
この記事では自転車でついついやりがちな法律違反の行為や罰則について解説します。
普段からよく自転車に乗る方や近年の自転車への法規制が気になっている方はぜひ参考にしてみてください。
目次
自転車乗車時に違反行為をするリスク
自転車にも道路交通法が適用される
自転車にも道路交通法による規制が適用されます。
自転車は「軽車両」に分類されるので、単なる歩行者とは取り扱いが異なるのです。
法律違反の危険な運転をするとペナルティも適用されるので、違反行為を軽く考えてはなりません。
自転車乗車時に違反行為をすると、以下のようなリスクが発生します。
講習を受けさせられる
3年以内に違反切符による取り締まりを受けた場合や交通事故を2回以上繰り返したりした場合には、自転車運転者講習を受けなければなりません。
講習を受けなければならないのに受講を拒否する場合、5万円以下の罰金の罰則も適用されてしまいます。
罰則が適用される
自転車に関する違法行為には、それぞれ罰則が規定されています。
たとえば酩酊状態で運転する「酒酔い運転」に該当すると、「5年以下の懲役または100万円以下の罰金刑」が適用されてしまいます。
なお罰則の内容は違反行為によって異なり、次の項目で詳しくご説明します。
交通事故で過失割合が高くなる
自転車で危険な違法行為をしていると、事故を発生させる危険性も高くなってしまうでしょう。
違法行為をしていると、自転車側の過失割合が上がって相手に請求できる賠償金額が少なくなります。
自転車による道路交通法違反の種類
自転車に適用される道路交通法違反の違法行為には、以下の14種類があります。
- 信号無視
信号機による指示や警察官の手信号を無視する行為です。 - 通行禁止違反
通行止めのエリアや車両進入禁止のエリアを通行する違反行為です。 - 歩道用道路における徐行義務違反
自転車が歩道を通行するときは歩行者に注意して徐行しなければなりません。
それにもかかわらず注意を払わず運転すると違法行為になります。 - 通行区分違反
自転車には定められた場所を通行すべき義務が課されます。
例えば原則として車道を走らねばなりません。
通行区分を無視して間違った場所を走行すると通行区分違反になります。 - 路側帯通行時に歩行者を妨害
自転車が路側帯を走行する際には歩行者を妨害してはなりません。
妨害すると違反行為となります。 - 遮断踏切立ち入り
踏切で、遮断機が閉じようとしていたりすでに閉じていたりして警報がなっているのに内部に立ち入ると違反行為となります。 - 交差点安全進行義務違反
交差点を通行する際に違反行為をすると安全進行義務違反となります。 - 交差点優先車妨害
自転車が交差点を右折する場合、直進車や左折車を優先させなければなりません。
守らないと違法行為になります。 - 環状交差点安全進行義務違反
環状交差点では車両は右回りしなければなりません。
左回りに走行すると違反行為になります。 - 指定場所一時不停止
標識や道路標示によって一時停止義務のある場所で一時停止しなかった場合の違反行為です。 - 歩道通行時の通行方法違反
自転車が歩道を通行する際には歩行者を妨げてはいけません。
妨害すると違反行為となります。 - ブレーキ不良
自転車のブレーキが壊れていると極めて危険です。
そこでブレーキ不良の自転車を走らせていると違法行為となります。
ブレーキだけではなく反射板や尾灯も備えねばなりません。 - 酒酔い運転
酒酔い運転とは、酒によって酩酊状態で運転することです。
酒量にかからわず「まともに運転できない酩酊状態」であれば酒酔い運転になります。
お酒に弱い方は少量でも酒酔い運転になる可能性があるので、お酒を飲んだら絶対に運転してはなりません。 - 安全運転義務違反
自転車は常に安全運転しなければなりません。
ハンドルやブレーキ操作が不適切、他人に迷惑をかけるような速度違反などがあると安全運転義務違反として違法行為とされる可能性があります。
上記の自転車による違法行為にはそれぞれ罰則が規定されています。
軽いものは2万円以下の罰金または科料ですが、もっとも重い酒酔い運転の場合には5年以下の懲役または100万円以下の罰金刑となります。
罰則が適用されると一生消えない前科がつくので、いろいろと不利益が生じるでしょう。
自転車に乗っているときに違反行為をすべきではありません。
交通事故の過失割合で賠償金が減額?典型的な自転車の違反行為
自転車で違反行為をしているときに交通事故に巻き込まれると、自転車側の過失割合が上がって相手に請求できる賠償金が減らされる可能性が高くなります。
過失割合とは、損害の発生に対する当事者それぞれの責任割合です。
被害者であっても損害発生について責任があれば、損害を分担すべきなので賠償金が減額される法的なルールがあります。
以下では過失割合に影響することの多い、自転車の典型的な違反行為をみてみましょう。
道路交通法違反の場合
自転車が上記でご紹介した道路交通法違反の行為をしていると、基本的に過失割合が上がると考えましょう。
たとえば信号無視、歩行者への配慮違反、歩行妨害や交差点での通行妨害、通行区分違反などです。
ついついやってしまいがちなものも多いので、決してやらないよう注意してください。
以下ではより具体的にどういった行為をすると過失割合の加算要素となるのかご説明します。
高速で交差点へ進入
自転車が概ね時速20キロを超えて交差点へ侵入すると、危険なので過失割合が上がります。
手放し運転
自転車が傘差し運転などをして片手を離していると危険なので著しい過失として過失割合が加算されるケースが多数です。
両手を離して運転しているとより危険なので重過失とみなされ、過失割合がさらに加算されます。
夜間での無灯火
夜間に自転車を運転する際には必ずライトを付けなければなりません。
夜間にもかかわらずライトをつけず無灯火で運転していると、過失割合が加算されます。
ながら運転
たとえばスマホを操作しながら、犬を散歩させながら、飲み物を飲みながら、ヘッドホンをつけながらなど、いわゆる「ながら運転」で交通事故を起こした場合にも危険なので自転車側の過失割合が加算されます。
自転車の取締方法~黄色い紙と赤切符の違いとは~
黄色切符は注意を促すための物で、赤切符をもらうと講習を受けなければいけないよ。
自動車の反則切符として見かける青切符は、自転車では存在しないんだ。
黄色い紙と赤切符の違い
自転車が取り締まられる場合「黄色い紙」を渡される場合と「赤切符」を切られる場合があります。
黄色い紙は「自転車指導警告カード」であり、運転者に注意をうながすためのものです。
警告カードを渡されても、いきなり罰則を適用されるわけではなく、講習を受ける必要もありません。
赤い紙はいわゆる「赤切符」とよばれるもので、罰則の対象となります。
赤切符を渡されたら自転車運転者講習を受けなければなりません。
義務があるのに講習を受けないと罰則が適用されます。
自転車には反則金制度がない
自動車の場合には軽い違反の場合に青切符、重大な違反の場合に赤切符を切られますが、自転車には青切符(交通反則通告制度)が適用されません。
自転車には反則金制度がないので、切符を切られると必ず赤切符となってペナルティが適用されます(黄色い紙はいわゆる切符ではありません)。
自動車との取り扱いの違いを押さえておきましょう。
講習に関する罰則
自転車で交通違反をして赤切符を切られると、自転車運転者講習を受けなければなりません。
講習の内容は以下のようなものです。
- 交通ルールの理解を確認
- 自転車が犯しやすい違反行為を事例で紹介し、危険を疑似体験させる
- 事故時の自転車運転者の責任を確認
- 自転車に適用されるルールを確認
- 危険行為の知識を確認
時間は3時間程度、受講料が5,700円かかります。
講習は罰則ではありませんが、講習を受けなければならないのに受けないと「5万円以下の罰金刑」が適用されます。
個別の違反行為に対する罰則
違反行為によって異なる罰則を詳しく見てみよう。
道路交通法違反の行為をすると、個別に罰則が適用される可能性があります。
以下で違反行為ごとの罰則を示します。
違反名 |
罰則等 |
酒酔い運転 |
5年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
信号無視 |
3月以下の懲役または又は 5万円以下の罰金 |
一時不停止違反 |
3月以下の懲役または5万円以下の罰金 |
夜間に無灯火 |
5万円以下の罰金 |
二人乗りなど |
2万円以下の罰金または科料 |
通行禁止区域 |
3月以下の懲役または5万円以下の罰金 |
左側通行義務違反 |
3月以下の懲役または5万円以下の罰金 |
軽車両の並進の禁止 |
2万円以下の罰金または科料 |
普通自転車が歩道を通行 |
2万円以下の罰金または科料 |
自転車横断帯による交差点通行 |
2万円以下の罰金または科料 |
講習を受けても上記のような罰則が適用される可能性があるので、自転車の違反を軽く考えてはなりません。
自転車で交通事故に巻き込まれた場合の対処方法
自転車の交通事故を弁護士に依頼する事で、過失割合を適正にしてもらう事ができるし、弁護士基準で慰謝料を計算できるから、賠償金のアップが期待できるんだ。
自転車で交通事故に巻き込まれると、相手の保険会社からさまざまな理由で「過失割合」を高く主張されるケースがあります。
たとえば違反行為をしていないのに違反があったと言われたり、違反行為を過大に評価して大きく過失相殺されたりする事案などです。
正しく過失割合を適用しないと受け取れる賠償金が減ってしまい、不利益を受けてしまうでしょう。
自転車で交通事故に巻き込まれたら、弁護士へ相談してみてください。
本当に道路交通法違反に該当するのか、する場合にはどの程度過失割合に影響するのかなど解説してもらえます。
弁護士に示談交渉を依頼すると、大きく賠償金がアップするケースも多々あります。
自転車事故にも弁護士費用特約を適用できるので、まずは一度保険の加入状況を調べてみるのも良いでしょう。
当サイトでも交通事故に詳しい弁護士を紹介しているので、よければご利用ください。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。