相手が動物なら、そのまま走り去ってしまっても問題ないの?
今回の記事では、野生動物とぶつかってしまった時にはどのように対処すべきか、動物とぶつかった場合に利用できる保険の種類についても、詳しく見ていこう。
車を運転していて野生動物をひいてしまった場合、どのように対応すれば良いのでしょうか?
相手が動物であっても放置して走り去ってはなりません。
警察を呼んで適切な対応をとる必要があります。
走り去ると「当て逃げ」となってしまうリスクも発生します。
今回は野生動物と車で接触した場合の交通事故について解説します。
車を運転していると動物をひいてしまうこともあるので、今後の参考のために覚えておきましょう。
目次
野生動物と衝突した場合の対処方法
車を運転していて野生動物をひいてしまった場合、どのような扱いを受けるのでしょうか?
基本的に動物との事故であっても、取扱いは通常の交通事故とほとんど同じです。
ケガ人がいなければ「物損事故」扱いとなりますし、運転者以外に巻き込まれた人がいなければ「単独事故」として扱われます。
以下で事故現場においてどういった対応が必要になるのか、みていきましょう。
警察を呼ぶ
動物と衝突した場合でも物損事故として交通事故の一種です。
必ずすぐに警察を呼びましょう。
事故現場で警察を呼んでおかないと、事故証明書が発行されません。
交通事故で事故証明書が出ないと後で保険を利用するときに別途書類が必要になったりして手間がかかるので、警察は必ず呼んでおくべきです。
また飼主がいる動物をはねた事案では、飼主が被害者となります。
警察を呼ばずに立ち去ると「当て逃げ」となって罰則も適用されてしまいます。
応急処置をする
事故現場にケガ人がいれば、応急処置をしなければなりません。
たとえば動物をはねた衝撃で同乗者がケガをしてしまう可能性もあります。
そんなときには同乗者に応急処置を施し、必要に応じて救急車を呼びましょう。
保険会社へ連絡をする
動物をはねた事故でも、保険を使えます。
たとえば車が壊れた場合にはレッカー車を出してもらえますし、車両保険に入っていれば車の修理費用も出してもらえる可能性があります。
動物をはねた場合でも、保険会社への連絡は忘れず行いましょう。
なお車両保険の適用範囲や免責金額などは保険の契約内容によって異なります。
必ず利用した方が得になるとは限らないので、適用するかどうかは慎重に判断しましょう。
衝突した動物への対応
はねてしまった動物については、以下のように対応しましょう。
生きているのに動けなくなってしまっている場合
動物については、警察を呼んだらかけつけた警察官によって適切な処理が行われるのが通常です。
たとえば自治体や道路関係者などへ連絡が行われて、動物は動物病院や保護施設に運ばれ治療を受けるなどです。
なお動物が倒れていても、素手では触ってはなりません。
病気に感染する危険があります。
死んでしまっている場合
動物が死んでしまっている場合も対応は基本的に同じです。
駆けつけた警察官へ対応を任せましょう。
触ってはいけないことも生きている場合と同様です。
高速道路上などの場合
高速道路上で動物と接触してしまった場合、早めに車を脇によせて発煙筒をたいたり三角表示版を置いたりして後続車へ事故を知らせましょう。
動物が交通通行の妨げになっている場合、#9910の「道路緊急ダイヤル」へ連絡して対応を仰いでください。
素手で動物に触れると危険なので、勝手に動物に触れて脇へ寄せるなどの対応は控えましょう。
動物とぶつかってしまった時の注意点
はねた動物が原因で周囲の物を壊してしまっている場合には、損害賠償請求が発生することもあるよ。
警察に連絡せずに放置してしまうと、当て逃げになってしまう可能性もあるから注意しよう。
車を運転していて動物とぶつかった場合の注意点をお知らせします。
警察に連絡する
まずは警察へ連絡することが極めて重要です。
確かに接触した相手が野生動物の場合、そのまま走り去ってしまう人も少なくありません。
しかし単独事故であっても道路交通法上、警察への通報義務が課されます。
警察を呼ばないと道路交通法違反となります。
一方、単独の物損事故できちんと警察を呼んだら、免許の点数は加算されませんし罰則も適用されません。
きちんと対応すれば行政罰や刑事罰をおそれなくて良いので、面倒でも必ず警察を呼びましょう。
被害が発生する場合もある
動物と接触した場合でも、被害が生じるケースはよくあります。
たとえば動物をはねた衝撃でガードレールや電柱に傷をつけてしまった場合、損害賠償金を払わねばなりません。
こういったケースで警察を呼ばないで走り去ると「当て逃げ」になってしまいます。
当て逃げになると免許の点数も加算されますし、刑事罰が科される可能性も高くなります。
動物以外のものを破損してしまった場合にはなおさら、警察を呼ぶ必要性が高くなると言えるでしょう。
飼主がいる場合がある
ドライバーとしては「野生動物とぶつかっただけ」と思っていても、動物に飼主がいるケースもあります。
飼主がいる場合、飼主が被害者になります。
走り去ると当然当て逃げになりますし、罰則が適用されるリスクも高まります。
飼主がいる可能性を考えても、動物をはねたら必ず警察へ連絡を入れて適切に対応すべきです。
車両保険を適用する場合の注意点
動物をはねて自分の車が壊れたとき、車両保険に入っていたら通常車両保険を適用して車を修理できます。
ただし車両保険を利用する際には注意点もあるので、みてみましょう。
免責金額がある
一般的な車両保険には、免責金額があります。
免責金額とは「その金額までは保険会社が支払いをしない」という金額です。
たとえば車両保険の免責金額が5万円の場合に15万円の修理費用がかかったら、5万円までは自分で払わねばなりません。
保険会社から払われるのは10万円のみとなります。
免責金額が高額で修理費用が低額な場合、車両保険を使ってもあまりメリットを受けられない可能性があるので、注意しましょう。
等級ダウンに要注意
車両保険を適用すると、次年度からの保険等級が下がってしまいます。
一般的には3等級下がるので、もとに戻るためには3年が経過しなければなりません。
保険等級が下がると次年度からの保険料が高くなってしまいます。
免責金額と等級ダウンのため、車両保険を適用するとかえって損になる可能性があるのです。
車両保険の適用を検討する際には、実際にどの程度保険料があがっていくらの補償を受けられるのか、事前のシミュレーションが必須といえるでしょう。
買い替えた方が得になることも
動物と衝突して車が壊れた場合、修理費用を払って修理するより買い替えた方が得になるケースもあります。
特に古くて買い替えを検討していたような車であれば、あえて高額な修理費を負担して修理するより新しい車に買い替える方がメリットは大きくなるでしょう。
車を買い替えるかどうか悩んだら、修理費用の見積もりを出してもらって修理費と買い替えにかかる費用の比較をしてみてください。
総合的に考えて買い替えた方が得であれば、無理に修理せずに買い替えをするようおすすめします。
動物との衝突で利用できる保険
任意保険の契約内容をチェックして、利用できる保険がないか、確認してみよう。
動物と接触してしまった場合に利用できる保険には、以下のようなものがあります。
車両保険
代表的な保険が車両保険です。
車両保険を利用すると、自車に発生した損害を補償してもらえます。
ただし車両保険には、
- 「限定補償」
- 「エコノミー補償」
と呼ばれるミニマムな保険と
- 「一般型」
の2種類があり、適用範囲が異なります。
一般型の場合には広くさまざまな原因による事故が補償対象になりますが、エコノミータイプの場合には適用範囲が狭まります。
保険会社にもよりますが、エコノミータイプの場合には単独事故や当て逃げ事案には対応してもらえないケースが多数です。
車両保険の適用を検討する場合、まずは自分の加入している車両保険のタイプを確認しましょう。
なお地震や津波などの天変地異によって事故が発生した場合には、一般型でも保証の対象外になります。
対物賠償責任保険
動物と接触した場合、被害者がいれば「対物賠償責任保険」を適用できます。
対物賠償責任保険は、相手に与えてしまった損害を補償してくれる保険です。
たとえばガードレールを破損してしまった場合には、ガードレールの修理費用を出してもらえます。
対物賠償責任保険には車両保険と異なり、限度額はありません。
以下のような場合には、必ず対物賠償責任保険を適用しましょう。
- ガードレールや電柱などの設備や施設を破損してしまった
- 動物に飼主がいた
搭乗者傷害保険
搭乗者傷害保険は、保険加入者側の運転者や同乗者がケガをしてしまった場合や死亡した場合に利用できる保険です。
ケガの治療費などをカバーしてもらえます。
「入院1日○○円」などといった固定計算で費用を出してもらえるので、ケガをした場合には大変助かるでしょう。
搭乗者傷害保険に入っていたら、忘れずに必ず適用してください。
人身傷害補償保険
人身傷害補償保険は搭乗者傷害保険と同様に、保険加入者側の運転者や同乗者がケガをしたり死亡したりした場合に適用される保険です。
ケガの治療費や休業損害、慰謝料などを払ってもらえます。
動物にぶつかって自分や同乗者がケガをした場合に補償を受けられるので、加入していれば必ず保険金を請求しましょう。
まとめ~困ったときには弁護士へ相談~
はねてしまった動物の対応に関しても警察にお任せできるってわかって安心したよ。
万が一、飼い主がいる動物だったことが後で判明した場合には、弁護士に依頼すれば相手との交渉を弁護士が進めてくれるから便利だよ。
車を運転中に動物に接触した場合でも、警察への報告義務はあります。
ガードレールを壊したり動物に飼主がいたりすると、走り去った場合に当て逃げとなってしまいます。
事故の相手が動物であっても軽く考えず、必ずその場で停車して警察を呼びましょう。
車両保険で車を修理する際には等級ダウンなどの問題もあるので「本当に得になるのか」を検討する必要があります。
もしも事故対応でわからないことがあれば、交通事故に詳しい弁護士に相談するのも1つです。
特に事故の相手方(被害者)がいて示談交渉する場合には、弁護士がついていると心強いでしょう。
弁護士費用特約をつけていたら、弁護士に依頼する費用はかかりません。
車で野生動物をはねてしまった場合には、今回の記事を参考に、適切に対応しましょう。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。