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陥没道路での事故による責任の所在
陥没道路での事故は、誰に責任が生じる事になるの?
今回の記事では陥没道路で事故が起きてしまった場合の責任の所在や事故後の対応方法、損害賠償請求の方法について、詳しく見ていこう。
設置又は管理の瑕疵
道路が突然、陥没して事故に遭って損害を被った場合、誰に対して、どのように損害を請求すれば良いのでしょうか。
国家賠償法第2条1項は、次のとおり定めています。
第二条 「道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。」
簡単にいえば、国や自治体が設置又は管理している道路等について設置又は管理に瑕疵があり、損害を被った人がいる場合、国や自治体が被害者の損害を賠償するという内容です。
法律上、「設置又は管理に瑕疵」という文言が使われていますが、通常有すべき安全性が欠けているという意味で理解してください。
陥没した道路は、道路が通常有すべき安全性が欠けていると考えられますので、国家賠償法2条が問題となります。
しかしながら、道路が突然、陥没した場合、管理している国や自治体等も、通行止めの対応や修理のための工事を行う時間がないということもあり得ます。
そのような場合でも、国や自治体等は、被害者に対して賠償責任を負うのでしょうか。
例えば、平成26年6月20日福島地方裁判所郡山支部判決は、突然の道路の陥没について、通常有すべき安全性を欠いていると認定しながらも、当時の状況(東日本大震災発生から3週間程度後に発生した事故)も踏まえて、市ができる限りの道路の管理をしていたことを理由として、結論として市の責任を否定しました(市が被害者に賠償をしなくても良いという結論)。
また、昭和50年6月26日最高裁判決は、国や自治体等が、事故を避けるだけの措置を執る時間などがなかった場合(不可抗力など)には、国や自治体は責任を負わない旨、判示しています。
本件でも、事故発生の直前に道路が突然、陥没して、事故が発生したという場合には、国や自治体が通行止めや修理の工事をする時間がない(不可抗力)として、国や自治体の責任が否定される可能性が高いと考えられます。
逆に、道路を通行止めにしたり、修理の工事をする時間があったにもかかわらず、道路の陥没を放置していた場合は、国や自治体は、被害者の損害を賠償する義務を負う可能性が高いと考えられます。
天災との区別
道路の陥没などは、天災の影響で発生することも多いですが、天災そのものではありません。
上記のとおり、道路の陥没が発生してからの時間の経過によって、国や自治体等の賠償責任が肯定されるか否定されるかが変わってきます。
これは、国や自治体等が道路を適切に管理するという概念が入ってくるからであり、この点が天災による損害と大きく異なる点(天災で生じた損害は、多くの場合不可抗力と判断されます。)と考えられます。
なお、国や自治体等で道路の修理のための予算が組めなかったという事情は、考慮されません(予算がなくても、対応すべき期間が経過すれば、国や自治体等は責任を負うことになります。)。
陥没道路で事故が起きた場合の過失割合

陥没した道路での事故では、国や自治体等と被害者との間で、過失割合(過失相殺)が争われることがあります。
一般的に、陥没道路での事故における過失割合(過失相殺)を定めることは難しいのですが、過去の裁判例では、次のような事情を考慮したうえで、過失割合(過失相殺)を決めているようです。
- 陥没した場所、陥没の程度(サイズ)
- 陥没箇所の視認可能性(事故当時の天候、昼間か夜間か、街灯の有無、前方不注視があったか否か、見ればすぐに分かるか否か等)
- 被害者の走行速度(法定速度を超過しているか否か)
- 被害者の行動(交通法規に照らして通常の走行であったか否か等)
- 国や自治体の対応(コーンなどを置いて陥没箇所を分かりやすくしていたか否か等)
過去の裁判例では、国や自治体の責任が認められた事例でも、被害者の過失が0%、20%、30%、50%、70%など、判断は事例により様々です。
陥没道路で事故を起こしてしまった場合の対応

陥没事故の場合には、状況を写真や動画に収めておき、ドライブレコーダーで事故の状況を証明できるようにしておこう。
陥没した道路で事故を起こしてしまった場合でも、通常の事故対応と同様の対応をしましょう。
- 怪我人がいる場合には救急車を呼ぶ
- 警察に事故の発生を報告する
- 車両を安全な場所に移動させることができるのであれば移動させる
- 車両を動かすことができないのであれば三角停止板などを置いて後続車両に事故のことを知らせる
などの対応を執る必要があります。
また、今後の賠償請求のために、周囲の状況等の写真を撮影しておくと良いでしょう。
陥没箇所を確認できる状況であったのか、陥没している穴のサイズ(可能であれば、メジャーなどを当てて測ると良いです。)、車両の損傷状況なども撮影しておくと、後々、証拠とすることができる可能性があります。
ドライブレコーダーで事故の前後を撮影している場合には、その動画もきちんと保存しておきましょう。
道路の陥没箇所を視認することができたのかという点で証拠となる可能性があります。
さらに、道路の管理者が分かるのであれば、国や自治体に道路が陥没していることや事故の発生を連絡しておきましょう。
国道の場合には国土交通省の国道事務所・出張所、県道や市道の場合には各自治体の整備事務所などに連絡をしておくと良いでしょう。
道路管理者への損害賠償請求等

対応が長引くことが予想される場合には、自分の任意保険を利用したり、弁護士特約を利用して、交渉をお任せするのがオススメだよ。
国や自治体の窓口への請求
道路の管理者を特定し、損害賠償請求の対応窓口が分かった場合、道路管理者に対して、損害賠償請求をしましょう。
少なくとも、次の書類は必要となります。
- 交通事故証明書(事故の発生を警察に報告した場合、自動車安全運転センターから発行されます。)
- 治療費の分かる資料(治療費の領収書等)
- 自動車の修理費(損害の証拠)
また、国や自治体等が賠償請求のためのフォーマットを用意している場合、国や自治体等との交渉の段階では、そのフォーマットを使用した方が、手続きがスムーズに進むと考えられます。
任意保険の利用
国や自治体等との交渉を負担に感じる場合は、自分の契約している車両保険や人身傷害保険などの利用も検討しましょう。
陥没道路が原因で事故が発生し、損害を被った場合でも、車両保険や人身傷害保険を利用することは可能です。
被害者が車両保険や人身傷害保険の保険金を受け取った場合、保険金を支払った保険会社が必要に応じて国や自治体等に対して請求(求償請求といいます。)します。
弁護士費用特約の利用
国や自治体等との交渉を負担に感じる場合は、弁護士費用特約の利用も検討しても良いと思われます。
自動車に関する事故の場合、陥没道路での事故においても、弁護士費用特約を利用することができます。
弁護士に依頼して、国や自治体等との交渉を有利に進めることができる可能性があります。
最終的に、国や自治体等との交渉が決裂した場合でも、弁護士に委任していれば、損害賠償請求訴訟を提起して、裁判で解決を図ることができます。
なお、国や自治体等が相手の場合には、交通事故紛争処理センターは利用できませんので、ご注意ください。
阿部栄一郎
早稲田大学法学部、千葉大学大学院専門法務研究科(法科大学院)卒業。2006年司法試験合格、2007年東京弁護士会登録。
都内の法律事務所勤務、弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所を経て、2026年四季の風総合法律事務所にパートナー弁護士として参画。交通事故、不動産、離婚、相続など幅広い案件を担当するほか、顧問弁護士として企業法務も手がける。ソフトな人当たりと、的確なアドバイスで依頼者からの信頼も厚い。交通事故では、被害者加害者双方の案件の担当経験を持つ。(所属事務所プロフィールページ)
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故の加害者・被害者には、誰でもなり得るものです。しかしながら、誰もが適切に交通事故の示談交渉をできるわけではありません。一般の人は、主婦が休業損害を貰えることや適切な慰謝料額の算定方法が分からないかもしれません。ましてや、紛争処理センターや訴訟の対応などは経験のない人の方が多いと思います。保険会社との対応が精神的に辛いとおっしゃる方もいます。
不足している知識の補充、加害者側との対応や訴訟等の対応で頼りになるのが弁護士です。相談でもいいですし、ちょっとした疑問の解消のためでもいいです。事務対応や精神的負担の軽減のためでもいいですので、交通事故に遭ったら、一度、弁護士にご相談されることをお勧めします。
