後遺障害が残った時って、示談交渉までに時間がかかってしまうの?
そうだね。後遺障害認定の手続きはすぐにはできないんだ。
だからその分示談交渉を始めるまでの期間が長くなってしまうよ。
後遺障害認定の手続きってどの位の期間がかかるのが普通なの?
手続きの申請方法によっても変わってくるんだ。
今回の記事では、後遺障害認定の手続きにかかる期間について、詳しく見ていこう!
- 「交通事故で、後遺症が残ってしまった」
- 「後遺障害認定にはどのくらいの時間がかかるんだろう?」
- 「示談が成立して賠償金を受け取れるのはいつになるの?」
物損事故とは違い、人身事故に遭って後遺症が残ってしまった場合には、仕事も日常生活も以前と同じようにはできなくなって不安を感じます。
そんなとき、「示談成立までどのくらいの時間がかかるのか?」と不安に思うこともあるでしょう。
今回は、交通事故の後遺障害認定や示談成立までにかかる期間について、ご説明します。
目次
後遺障害認定までには時間がかかる!
交通事故で手足を動かしにくくなったり目や耳が不自由になったり、脳の認知機能が低下したりして、後遺症が残ってしまったら「後遺障害等級認定」を受ける必要があります。
後遺障害等級認定とは、加害者の自賠責保険や共済が被害者の後遺症の内容を精査して、正式に「後遺障害」と認め、1級から14級の「等級」をつける制度です。
きちんと等級認定してもらうことによって、被害者は後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益(失われた収入)を受け取れるようになります。
自賠責保険会社や共済に後遺障害認定の請求をすると、損害保険料率算出機構というところに資料がまわり「調査事務所」で調査が行われるので、結果が出るまでの時間がかかります。
認定にかかる時間は、後遺障害認定申請の方法によっても異なるので、以下で分けてみてみましょう。
後遺障害認定の2種類の方法
後遺障害認定の手続きには、どんな種類があるの?
自分で行う被害者請求と、相手の保険会社に任せてしまう事前認定があるよ。
後遺障害等級認定の方法には、事前認定と被害者請求の2種類があります。
事前認定とは、後遺障害等級認定の手続きを加害者の保険会社に任せてしまう方法です。
被害者請求は、被害者自身が加害者の自賠責保険や共済に対して後遺障害等級認定の申請をする方法です。
以下で、それぞれにおいてかかる期間を説明します。
事前認定の場合
事前認定の場合、申請方法はとても簡単です。
病院の医師に「後遺障害診断書」を書いてもらい、それを加害者の任意保険会社に提出するだけで済みます。
申請までにはほとんど期間がかかりません。
問題は、後遺障害診断書を加害者の保険会社に渡した後の期間です。
この場合、加害者の保険会社の担当者が申請用の資料を集めて、自賠責保険や共済に提出しますので、担当者がテキパキとした人かどうかにより、申請にかかる期間が変わってきます。
また、自賠責保険へ書類が提出された後にも1~3か月くらいは審査にかかります。
そこで、たとえば事前認定で、相手の保険会社の担当者が自賠責への書類提出までに1か月程度かけた場合、後遺障害認定申請から決定が出るまでだいたい2~4か月程度かかってしまうことになります。
相手の保険会社の担当者が作業を遅らせて申請までに3か月かかったら、被害者が後遺障害認定申請をしてから決定が出るまで4~6か月程度かかる計算です。
このように、事前認定の場合、加害者の保険会社の担当者の対応に大きく左右されます。
被害者請求の場合
被害者請求の場合には、被害者側が自分で自賠責への後遺障害等級申請用のさまざまな資料を揃えなければなりません。
たとえば交通事故証明書や事故発生状況報告書、診断書や診療報酬明細書などの書類が必要です。
これらの書類を揃えるのに時間がかかれば、その分後遺障害申請にかかる時間が長くなってしまいます。
自賠責保険へ書類を提出した後の期間は事前認定の場合と同じで、だいたい1~3か月程度です。
そこで、被害者請求の場合には、被害者自身が早く書類を揃えて提出すれば、その分期間を短縮できます。
事前認定と被害者請求、どっちが早く手続きできる?
それでは、事前認定と被害者請求のどちらが早く、後遺障害認定の手続きができるのでしょうか?
これについては、「どちらが早く自賠責への申請の準備をできるか」ということにかかってきます。
事前認定の場合には、加害者の任意保険の担当者の対応によって変わります。
相手が早く対応すれば早めに申請ができるので、より早く後遺障害認定を受けることができます。
これに対し、被害者請求の場合には、被害者がどれだけ早く自賠責への申請用の書類を用意できるかにかかってきます。
被害者請求をするときには、病院から診断書や診療報酬明細書を取り寄せる必要があり、この手続きにかなりの時間がかかってしまうケースが多いです。
また、被害者が自分で対応すると、何から手をつけて良いのかわからない状態になりやすく、手続きが停滞気味になります。
結果的に、テキパキと準備できて申請をできる方の場合には、事前認定に頼るよりも早く後遺障害認定を受けられるでしょう。
反対に、自分でやると手間取って全然申請までこぎつけられないという場合には、事前認定に任せた方が早めに後遺障害の認定を受けられる可能性が高くなります。
後遺障害認定の手続きを早める方法
少しでも早く後遺障害認定の手続きを進めるにはどうしたら良いの?
事前認定の場合には、保険会社に頻繁に連絡をしてみよう。
被害者請求の場合には、自分で書類集めをするわけだから、書類集めを早くすることで後遺障害認定までの期間を短縮できるよ。
後遺障害認定の手続きを早めるにはどのような点を工夫すれば良いのでしょうか?
事前認定の場合
事前認定の場合には、症状固定したらすぐに後遺障害診断書を取得することです。
後遺障害診断書がなかったら、後遺障害等級認定の申請すらできないからです。
保険会社や弁護士から後遺障害診断書用の書式をもらって早めに医師に渡し、書類を作成してもらいましょう。
また、相手の保険会社の担当者に提出した後は、状況にもよりますが時折電話などで確認してみると良いでしょう。
相手が手続きをせずにぐずぐずしている場合などには、被害者から直接問合せを受けることによってプレッシャーを感じ、急いでくれる場合もあります。
ただし、あまりしつこくするとかえって逆効果になることもあるので、加減が重要です。
事前認定の場合には、基本的に「待ちの姿勢」になるので、相手の保険会社に提出してしまってからはある程度任せてしまうしかありません。
被害者請求の場合
被害者請求の場合には、とにかく早めに申請用の書類を全部揃えることです。
被害者請求用の書類にはたくさんの種類があるので、どうしても面倒になってしまい、後回しにしてしまう方が多いです。
しかし、被害者請求の場合には、自分で自賠責保険に申請しない限り何も始まらないので、面倒でも早期に書類を揃えてしまいましょう。
また、病院に診断書や診療報酬明細書を照会したときに、1~2か月以上待たされるケースもあります。
このようなときには、ときおり病院に連絡を入れて状況を確認しても良いですが、あまり督促しても失礼になってしまったり迷惑がられたりすることがあるので、注意が必要です。
病院側の対応が遅くて申請が遅れることは、ある程度仕方がないと考えましょう。
また、被害者請求のケースで、自分で申請用の書類を集めるのが大変な場合には、弁護士に手続を依頼するとスピーディに進められます。
弁護士は普段から被害者請求による後遺障害認定の手続きを行っているので慣れていますし、事故状況についての取りまとめや、書類の作成、取り寄せも早くできるからです。
弁護士に依頼してしまったら、依頼者は弁護士の指示に従って最低限の書類集めだけすれば良く、後は任せてしまえるので手間が省けて気が楽になります。
弁護士に依頼すると、不備なく確実に手続きができるので、自分でうまくできる自信がない場合にも安心です。
後遺障害認定申請をするときに被害者請求をするならば、一度交通事故トラブルに注力している弁護士に相談してみると良いでしょう。
後遺障害認定の調査が長びくパターン
後遺障害認定の調査が長引いてしまうような事ってあるの?
交通事故と後遺障害の因果関係を証明するのが難しい場合には、調査が長引いてしまう事があるんだよ。
後遺障害認定にかかる期間を考えるとき、「自賠責保険での調査期間」も重要な要素です。
先に、だいたい1~3か月程度と言いましたが、どういったケースで長くなりやすいのでしょうか?
後遺障害認定の調査が長びくパターンとは
後遺障害認定の調査が長びくのは、後遺障害の症状が難しいものである場合、立証が充分にできていない場合、因果関係が争われる場合などです。
たとえば、医学的にはっきりしていない症状やまだあまり研究が進んでいない分野の後遺障害、画像などによってもはっきり症状が立証されない場合、症状が交通事故以前からあったのではないかと疑われる場合などです。
これらのケースでは詳しい調査が必要となり、手続きが長びいてしまいます。
後遺障害認定申請を早めたければ、なるべく症状をはっきり証明できる資料をたくさん揃えて、因果関係などについてもすっきり説明できるように準備を整えましょう。
なお、残った後遺症の症状が、そもそも医学的に難しいものや専門性の高いケースでは、いくら被害者ががんばって資料を揃えても期間を早められないこともあります。
そのような場合には、なるべく症状に詳しい専門医に頼ってしっかり後遺障害診断書を書いてもらい、必要な検査をしたら、後は待っているしかありません。
以上のように、後遺障害認定には、最低でも2~3か月くらいはかかります。
申請を出したらすぐに認定してもらえて示談交渉を開始できるというものではないので、焦らないことが大切です。
後遺障害認定後すぐに示談交渉できないケース
後遺障害認定が下りれば、すぐに示談交渉になるの?
後遺障害認定の等級に納得できない場合には、再申請をする事になるから、示談交渉を進める事ができないんだ。
事前認定や被害者請求によって後遺障害認定を受けたとしても、すぐに示談交渉を開始できるとは限りません。
後遺障害認定の結果に納得できない場合には、異議を申し立てる必要があるためです。
自賠責保険や共済に異議申立をする場合
後遺障害認定の結果に不満があるならば、再審査を要求することができます。
その手続のことを「異議申立」と言います。
異議申立とは、後遺障害が非該当(後遺障害がそもそもないと判断されたとき)になったときや思ったより等級が低かったときに、自賠責保険や共済に対して再度審査のやり直しを求める手続きです。
異議申立の方法としては「異議申立書」を作成して提出するだけです。
しかし実際には、それだけで判断を変更してもらうことは困難です。
等級を上げてもらったり後遺障害として認めてもらったりするには、改めて別の検査を行ったり医師に診断書を書き直してもらったりする必要があります。
その用意のために、1か月くらいはかかるでしょう。
また、異議申立をした後、自賠責保険や共済で審査をする期間も必要です。
やはり、1~2か月程度はかかることが一般的です。
自賠責保険・共済紛争処理機構を利用するケース
自賠責保険に異議申立をしても判断を変更してもらえないケースでは、「自賠責保険・共済紛争処理機構」を利用することにより、後遺障害認定をやり直してもらえる可能性があります。
自賠責保険・共済紛争処理機構とは、自賠責保険や共済による決定内容や保険金の支払いについての争いを解決するための機関です。
自賠責保険・共済紛争処理機構に後遺障害認定結果についての不服を申し立てると、機構が自賠責保険による決定内容を審査して、決定をしてくれます。
自賠責保険や共済は、自賠責紛争処理機構の決定内容に拘束されるので、機構が被害者の言い分を認めてくれたら、後遺障害が認められたり等級が上がったりする可能性があります。
自賠責保険・共済紛争処理機構で審査を申し立てると、結果が出るまで4~6か月程度かかるので、その間は示談交渉を進めることができません。
その分、解決までにかかる期間が延びることになります。
このように後遺障害認定結果を争うと、どうしても解決までの期間が長くなりますが、解決を急いで妥協すると受け取れる金額が低くなってしまいます。
納得できる解決を目指すためには、多少の期間がかかってもきちんと後遺障害を認めてもらうようにしましょう。
示談交渉にかかる期間
後遺障害認定の等級が確定となれば、すぐに損害賠償請求が可能なの?
後遺障害認定を受けている場合、示談交渉にも長い期間が必要となる事がほとんどだよ。
中には半年以上の期間がかかってしまう事もあるんだよ。
後遺障害認定を受けたら、加害者の保険会社と「示談交渉」を開始しますが、示談交渉を始めてもすぐに損害賠償金額を受け取れるわけではありません。
示談交渉自身にも時間がかかってしまうためです。
以下で、示談交渉にかかる期間がどのくらいになるのか、みてみましょう。
示談交渉にかかる平均的な期間
後遺障害が残った場合、そうでないケースよりも、示談交渉は比較的長びくことが多いです。
後遺障害が残ると、賠償金額も大きくなるので相手の保険会社も簡単には妥協しません。
また、後遺障害慰謝料や逸失利益など、決めなければならない要素がたくさんあって被害者と加害者が対立する可能性が高くなるからです。
早くても3か月、長びくときには6か月以上かかるケースもあります。
示談が早く成立するパターン
示談交渉が比較的早く成立するのは、事故内容や後遺障害の内容、被害者に発生した損害が比較的明らかで、被害者と保険会社の間に対立が発生しにくいケースです。
たとえば過失割合についても争いがなく、被害者がサラリーマンで休業損害額や逸失利益についても計算しやすく、慰謝料の金額についても両者が納得した場合などには示談が早く成立します。
示談交渉が長びくパターン
反対に示談交渉が長びくのは、被害者と保険会社との間に対立が起こった場合です。
後遺障害が残る事案では、示談交渉が長びくパターンの方が多いです。
たとえば、過失割合について両者の意見が対立することがありますし、通院治療費や入通院慰謝料などについて、相手の保険会社が「そんなに長い期間の通院は必要なかった」と主張して減額を要求してくることもあります。
慰謝料の金額についても、加害者の任意保険会社が低額な「任意保険基準」で計算してくるため、被害者が納得せずに争いになるケースが多いです。
そうなると、示談交渉がこじれてなかなか成立しなくなり、期間が長引いてしまいます。
慰謝料で妥協する危険性
示談交渉をするとき、相手と対立すると長い期間がかかります。
早く解決するためには、相手に譲って妥協するしかありません。
たとえば、過失割合に争いがあるときには相手の言う通りの過失割合を認めたら合意できますし、慰謝料についても任意保険基準の適用に同意したらすぐに示談が成立するでしょう。
実際に、示談交渉が長びくと精神的にも苦痛を感じるので、早く成立させるために妥協してしまう被害者の方もおられます。
しかし、このような安易な妥協は禁物です。
たとえば、慰謝料の計算基準で言うと、加害者側保険会社が採用している「任意保険基準」は法的な基準である「弁護士基準」を大きく下回ります。
後遺障害慰謝料を任意保険基準で計算すると、弁護士基準の2分の1~3分の1程度になってしまうのです。
示談を早く成立させたいからと言って、相手の提示額をそのまま受け入れると、被害者は大きく損をしてしまいます。
そうではなく、きちんと正当な金額の損害賠償額を支払ってほしい場合には、裁判で争ってでも弁護士基準で計算すべきです。
弁護士基準をあてはめてもらうためには、弁護士に示談交渉を依頼する必要があるので、後遺障害が残ったケースで相手の保険会社と示談交渉をするならば、弁護士に対応を依頼した方が絶対的に得です。
過失割合についても同じで、安易に妥協すると賠償金を大きく減額されてしまうので、弁護士に相談をして法的に適切な基準をあてはめてもらいましょう。
以下の記事も参考にして下さい。
まとめ
後遺障害認定にかかる期間って、意外に長くかかってしまうんだね。
少しでも早く賠償金を受け取りたいと思う気持ちはわかるけれど、焦ってしまうと適正な賠償金を受け取ることが出来なくなってしまう事が多いんだ。
交通事故案件に長けている弁護士に全てお任せしてしまうと安心だから、まずは無料相談などを利用して弁護士事務所へ出向いてみよう。
弁護士費用を心配に感じる人が多いんだけれど、弁護士に依頼すると慰謝料を増額できるから、相談者は負担を感じる必要はないんだよ。
交通事故で後遺障害が残ったら、この先どうなるのだろう?と不安に感じて焦る気持ちが強くなるものです。
そのようなときにも、焦らずじっくり構えてきちんと後遺障害認定を受けて、粘り強く相手と示談交渉を進めていく必要があります。
自分一人で対応するのが難しいと感じたら、交通事故トラブルに注力している弁護士に相談してみましょう。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。