交通事故に遭ってけがをすると「後遺障害14級」に認定されるケースがあるって聞いたけど、これって何?
「後遺障害14級」というのは交通事故の後遺症が残って「14級」という「等級」に認定された状態だよ。
よくわからないなあ。「後遺障害14級」に認定されるとどうなるの?
じゃあ、「後遺障害14級」に認定されるのはどういった症状がある場合なのか、
また後遺障害14級になったらどの程度の慰謝料が支払われるのかなど、必要な知識を解説していくよ。
目次
後遺障害14級とは?
そもそも後遺障害14級とは何のことなのでしょうか?
後遺障害14級は「もっとも軽い後遺障害」
後遺障害14級は、交通事故のけがで後遺症が残り「14級」に認定された状態です。交通事故で後遺症が残ったときには、自賠責保険を通じて正式に「後遺障害」として認定を受ける必要がありますが、後遺障害の程度はケースによっていろいろなので、段階分けが行われます。そのために使われるのが「等級」です。
交通事故の後遺障害の等級には1級から14級までの14段階があり、1級がもっとも重く14級がもっとも軽くなっています。
そこで「後遺障害14級」は、交通事故の後遺障害の中でももっとも軽い等級ということになります。
後遺障害14級に認定されたら慰謝料や逸失利益を請求できる
交通事故で後遺障害が残ったら、被害者は大きな精神的苦痛を受けます。そこで、通常認められる「入通院慰謝料」にプラスして「後遺障害慰謝料」という慰謝料が別途支払われます。
後遺障害慰謝料の金額は等級によって異なり、1級の場合にもっとも高く、14級の場合にはもっとも低くなります。
また交通事故前に働いていた方は、後遺障害が残ることによって仕事の効率が落ちて生涯収入が減少すると考えられています。
そこでその減収分を「逸失利益」として請求できます。逸失利益の金額もやはり等級によって大きく異なり、1級の場合には非常に高額になりますが、14級の場合には低額です。
後遺障害14級に認定された場合にも、もちろん「後遺障害慰謝料」や「逸失利益」は発生します。
もっとも軽い等級とはいえ、後遺障害がまったく認められない事案と比べると、慰謝料や逸失利益が加算される分、多額の賠償金を請求可能です。
交通事故で軽い後遺症が残った場合でも、後遺障害14級の認定基準に合致しているなら必ず後遺障害等級認定の申請をして、14級の認定を受けよう。
後遺障害14級に認められるための条件、症状の一覧
具体的に後遺障害14級に認定されるのはどういった症状が発生した場合なのでしょうか?
まずは一覧でみてみましょう。
認定される 等級の番号 |
認定される症状 |
1号 | 眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの |
2号 | 三歯以上に対し歯科補綴を加えたもの |
3号 | 一耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの |
4号 | 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの |
5号 | 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの |
6号 | 一手のおや指以外の手指の指骨の一部を失つたもの |
7号 | 一手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの |
8号 | 一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの |
9号 | 局部に神経症状を残すもの |
一口に「後遺障害14級」と言っても、認定される等級は異なるんだね。
交通事故の後遺障害の症状には、それぞれ「番号」がついています。14級に認定されるのは、上記の9つの症状です。
それぞれについて簡単にご説明します。
- 14級1号
1号の「まぶたの一部に欠損が残る」とは、まぶたが欠けて完全に目を覆えなくなった状態です。まつげの一部がはげてしまった「まつげはげ」のケースでも14級1号になります。 - 14級2号
2つ以上の歯が欠けたりして歯科治療(ブリッジやクラウン、入れ歯など)が必要となった場合には14級2号となります。 - 14級3号
片耳の聴力について、1メートル離れた場所から人の小声を理解できない程度に低下すると3号が認定されます。 - 14級4号、5号
腕や脚に手のひら大(指の部分は含まない)のあざなどの跡が残ったらそれぞれ4号(腕の場合)、5号(脚の場合)となります。 - 14級6号
片手の親指以外の指の骨の一部がなくなったら6号です。 - 14級7号
片手の親指以外の指の先の方の関節を曲げられなくなったら7号が認定されます。 - 14級8号
片脚の中指、薬指、小指の関節が動かなくなったら8号が認定されます。 - 14級9号
9号が認定される「神経症状」とは、首や肩、背中や腕、脚や腰などの身体の一部に痛みやしびれなどの症状が残った状態です。
後遺障害14級に認定されやすい症例
むちうちや腰椎捻挫になった場合や、骨折したあとにうずきなどの症状が残った場合などに認定されるんだね。
中でもよくあるのが「頸椎捻挫」です。頸椎捻挫とは、いわゆる「むち打ち症」です。追突事故などで首の骨が一瞬ぐにゃりとしなると、その際に頸椎が損傷を受けます。頸椎の中には神経が通っているので、損傷の程度が大きくなると、後に治療やリハビリを続けても完全に回復せずに神経症状が残ってしまいます。
たとえば以下のような症状があるならむちうちの疑いがあります。
- 肩や背中がこる、痛む
- 肩や背中、腕などにしびれがある
- 倦怠感
- 頭重感
- 頭痛
損傷が交感神経に及んでいる場合には、全身のだるさやめまい、耳鳴り、吐き気や食欲不振などの症状が起こるケースもあります。
交通事故後、上記のような症状が出ているなら我慢せずに病院で診察を受けて治療を施してもらいましょう。
交通事故で後遺障害に該当する症状が残っていても、実際に治療を受けて資料を揃えて後遺障害認定請求をしないと、後遺障害として認めてもらうことはできませんし、慰謝料も逸失利益も払ってもらえないのです。
神経症状でも14級はもっとも軽い等級
後遺障害14球に認定されるのはむちうちの神経症状が多いと説明しましたが、実は「神経症状」にもいろいろな「段階」があります。たとえば脊髄損傷となって身体の一部が動かなくなった場合や排尿障害などの重篤な症状も「神経症状」の1種です。
14級となるのは、神経症状の中でももっとも症状が軽いケースです。より深刻な症状が出たら、同じ神経症状でももっと高い等級が認定されます。たとえばむちうちになった場合でも、より損傷の程度が酷く「MRI」などの画像検査によって明確に組織の異常を証明できる場合などには、1段階上の後遺障害12級が認定されます。
むちうちで14級になるのは、MRIなどでは症状を医学的に証明できない場合です。「証明」はできなくでも、交通事故後の治療経緯やさまざまなテストなどにより「症状があることを合理的に推認」できる場合に後遺障害14級が認定されます。
後遺障害14級となった場合の慰謝料と逸失利益の相場
実際に後遺障害14級が認定されたら、どのくらいの慰謝料や逸失利益を請求できるのかな?
交通事故の後遺障害慰謝料には、認定された等級ごとの相場があるんだよ。それぞれ詳しく見ていこう。
後遺障害慰謝料
裁判基準で計算すると、他の基準の3倍程度までアップすることもあるんだよ。
14級の後遺障害慰謝料の相場は、法的な基準である裁判基準では110万円です。
ただし自賠責基準の場合には32万円程度となり、任意保険会社の基準でも40万円程度にしかなりません。
裁判基準は裁判所や弁護士が利用している法的な基準です。
自賠責基準は自賠責保険が保険金を計算する際に適用する基準、任意保険会社の基準は各任意保険会社が被害者個人と示談するときに適用する基準です。
参考:交通事故を起こした時に慰謝料を裁判基準で請求するための方法
後遺障害逸失利益
後遺障害逸失利益は、被害者の事故前の年収をもとにして「就労可能年数」分の計算をします。そこで事故前の年収が高かった人、若い人の場合に逸失利益が高額になります。
14級では「労働能力喪失率」が5%として計算されます。人にもよりますが、逸失利益は200~500万円程度になるケースが多いでしょう。
後遺障害14級の認定を受ける方法
交通事故で後遺障害の認定を受けるには、相手の「自賠責保険」に後遺障害等級認定の申請をしなければなりません。その方法として「事前認定」と「被害者請求」の2種類があります。
事前認定とは、相手の任意保険会社に後遺障害認定の手続きを任せる方法です。
相手の保険の担当者宛に「後遺障害診断書」さえ送れば手続きが完了するのでとても簡単です。
ただ、認定されるかどうか微妙な案件などでは被害者が積極的に後遺障害を立証できないので問題があります。
被害者請求とは、被害者が自分で相手の自賠責保険へ後遺障害認定の請求をする方法です。
たくさんの書類などが必要になって手間がかかりますが、必要な立証や意見陳述などをしやすいので、むちうちで明確な証明が困難なケースなどではこちらの方が良いでしょう。
後遺障害14級と認定された場合、より多くの慰謝料をもらうための方法
後遺障害14級と診断されたら、できるだけ多く慰謝料を払ってもらいたいなあ。
後遺障害14級でより多くの慰謝料を払ってもらうには、以下のようなポイントに注意しよう。
裁判基準で計算する
先にもご紹介しましたが、後遺障害慰謝料の計算基準には「裁判基準(弁護士基準)」、「自賠責基準」「任意保険会社の基準」の3種類があります。
この中でもっとも高額になるのが「裁判基準」です。14級の後遺障害慰謝料は、裁判基準なら110万円が相場ですが自賠責基準なら32万円、任意保険基準でも40万円程度にまで下げられてしまいます。
単にどの基準を当てはめるかだけの違いにより、これほどの差が発生します。
同じようにむちうちやまぶたの欠損、聴覚障害などに苦しんでいるのに、計算基準だけの問題で慰謝料を3分の1に減額されるのは不当です。
そこで、後遺障害14級に認定されたら、必ず裁判基準によって慰謝料を計算して請求しましょう。
弁護士に示談交渉を依頼する
裁判基準で慰謝料を請求するにはどうしたら良いんだろう?
方法は3つあります。
1つは交通事故紛争処理センターなどのADRを利用する方法です。この場合、裁判基準に近い基準で判断されるので、14級の後遺障害慰謝料の金額も110万円に近くなります。ただしADRでは必ずしも被害者の有利に話を進めてくれるとは限りませんし、必ず裁判基準通りになるとも限りません。
2つ目は訴訟を起こす方法です。訴訟では裁判基準が適用されるので、110万円程度の支払命令が下ります。ただ被害者が1人で訴訟を起こすのは大変ですし、立証などに失敗してかえって不利になってしまうケースもあります。
3つ目の方法が、弁護士に示談交渉を依頼する方法です。弁護士が示談をするときには法的な基準である裁判基準が適用されます。弁護士に任せると、被害者自身がADRの支所や裁判所に出掛けたり書類を集めたり作成したりする必要もなく、労力もかかりません。精神的な負担もなくなり、日常生活を取り戻しやすくなります。
慰謝料の金額以外にも、逸失利益や休業損害、治療関係費用などもきちんと請求してもらえて過失割合も適切に算定されるので、より大きく賠償金全体がアップする可能性が高まります。
交通事故で後遺障害14級が認定されたら、できるだけ早めに弁護士に依頼するのが得策なんだね。
まとめ
交通事故に遭ってむちうちになると、後遺障害14級の認定を受けるか受けないかで大きく慰謝料の金額が変わってきます。
良い専門医(整形外科)にかかり、早い段階で弁護士に相談をして適切な方法で後遺障害認定を受けることが大切です。
示談交渉も弁護士に任せて高額な慰謝料を獲得しましょう。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。