TFCC損傷ってどんな症状なの?
交通事故の場合には、転倒した時に手をついたり、ハンドルを握っている時に後ろから追突される事でTFCC損傷と診断されることが多いね。
今回の記事では、TFCC損傷の症状やもらえる慰謝料について、詳しく見ていこう。
交通事故で手にけがをすると「TFCC損傷」と診断されるケースがあります。
後遺障害が残る可能性もある傷病なので、まずはしっかり治療を受け、どうしても治らない場合には後遺障害認定の手続きを進めていきましょう。
今回はTFCC損傷の症状や治療方法、後遺障害認定を受けた場合の慰謝料などについて、わかりやすく解説します。
交通事故で手をひねって痛みが続いている方やTFCC損傷と診断されている方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
TFCC損傷とは
そもそもTFCC損傷とは何か?
TFCC損傷とは、手首の組織である「三角線維軟骨複合体(Triangular Fibrocartilage Complex)」が損傷する傷病です。
日本語では「三角線維軟骨複合体損傷」であり、わかりやすく「手関節捻挫」といわれるケースもあります。
原因は、強く手をついたりひねったりしたときに「三角線維軟骨複合体」という手首の組織がダメージを受けてしまうことです。
一般にはバトミントンやテニス、野球など、激しく手首をひねる動作を伴うスポーツにおいて、選手がTFCC損傷になるケースが多くなっています。
交通事故の場合、転倒して地面に強く手をついたり、ハンドルを握ったまま後ろから強い衝撃を受けたりした場合にTFCC損傷になる方が多数です。
TFCCの症状
TFCCになると、以下のような症状があらわれます。
- 手首を外側に動かすと痛い
- 握力が低下する
- 手首を返す動作がうまくできなくなる
安静時には痛みを感じず、ドアノブを回したり鍵を差し込んだりして「回す動き」をするときに痛みが発生するケースが多くなっています。
手首の中でも、特に「尺骨茎状突起」という「小指側」の場所に集中して痛みが生じる特徴があります。
交通事故後、手首をひねる動きをしにくくなった場合、痛みを感じるようになった場合にはTFCC損傷となっている可能性があるといえるでしょう。
TFCC損傷の診断方法や主な検査
TFCCかどうかを診断するとき、どういった検査を行うのかみてみましょう。
まずは医師の診察において、どういった状況で痛みが誘発されるかを調べます。
診察によってTFCC損傷が疑われる場合、「MRI」や「間接造影検査」といった精密検査により、詳細を調べていきます。
TFCCは軟部組織なので、通常のレントゲン検査だけでは発見できないのが通常です。
病院でレントゲン撮影だけ行って「異常なし」と言われていて違和感があるなら、MRI撮影などをしてもらうと良いでしょう。
TFCC損傷の主な治療方法
TFCCでは、基本的に手術なしで保存療法を行います。
ギプス、テーピング、サポーターなどによって患部を固定し、なるべく動かさないようにします。
痛みが酷い場合、消炎鎮痛剤などの薬を投与するケースもあります。
炎症や痛みを抑えているとだんだんと症状が沈静化してくるケースが多く、様子を見る期間はだいたい「3か月くらい」です。
重症で3か月程度固定しても症状が良くならない場合、外科手術を行います。
TFCC損傷の場合、全身麻酔をした上で内視鏡を使ってTFCC の部分切除術、TFCC 縫合術・再建術や関節滑膜部分切除術を施します。
「尺骨突き上げ症候群」がある場合「尺骨短縮術」という手術を実施します。
これは、尺骨を切り取ってプレートとボルトにより固定する手術です。
手術後、骨がついて落ち着くまで5~6か月程度かかるケースが多数です。
年齢的な要因などで手術が難しい場合には、手関節へのステロイド注射によって対応する可能性もあります。
ただし関節内へステロイド注射をすると軟骨が傷むなどのリスクを伴うので、慎重に選択されます。
長期間固定し続けた場合や手術した場合、リハビリも必要となります。
TFCC損傷の治療にかかる期間
症状の程度やどこまでの治療が必要になったのかで治療期間が変わりますが、完治または症状固定するまでの期間としては、だいたい半年~1年程度をみておくと良いでしょう。
交通事故でTFCC損傷と診断された場合の慰謝料
交通事故でTFCC損傷になった場合、どの程度の慰謝料を払ってもらえるのでしょうか?
TFCC損傷と診断された場合に受け取れる慰謝料の種類
交通事故で受傷すると、以下の2種類の慰謝料を支払ってもらえる可能性があります。
- 入通院慰謝料
交通事故でけがをしたら、基本的に「入通院慰謝料」という慰謝料が支払われます。
入通院慰謝料はけがをしたことによって被害者が受ける精神的苦痛に対する慰謝料です。
受傷すると当然に支払われるので、後遺障害認定を受ける必要はありません。 - 後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料は、後遺障害が残った場合に支払われる慰謝料です。
後遺障害が残ると生活や仕事に支障が出て被害者が受ける精神的苦痛も大きくなるので、入通院慰謝料にプラスして高額な慰謝料が支払われます。
ただし交通事故で後遺障害慰謝料を受け取るには、加害者の自賠責保険で「後遺障害等級認定」を受ける必要があります。
以下でそれぞれの慰謝料の標準的な金額をみていきましょう。
入通院慰謝料の金額
入通院慰謝料の金額は、治療期間に応じて変化します。
基本的に治療期間が長引くと苦痛も大きくなると考えられるので、慰謝料は高額になります。
また入院した場合、通院よりも慰謝料は高くなります。
リハビリ期間も治療期間に含めて計算します。
TFCC損傷の場合、手術が必要になって入院したり、長期間のリハビリが必要となったりすると、入通院慰謝料が高額になります。
法的基準による入通院慰謝料の相場を示しますので、参考にしてみてください。
【入通院慰謝料の相場】
入院 |
|
1ヶ月 |
2ヶ月 |
3ヶ月 |
4ヶ月 |
5ヶ月 |
6ヶ月 |
7ヶ月 |
8ヶ月 |
9ヶ月 |
10ヶ月 |
|
通院 |
53 |
101 |
145 |
184 |
217 |
244 |
266 |
284 |
297 |
306 |
||
1ヶ月 |
28 |
77 |
122 |
162 |
199 |
228 |
252 |
274 |
291 |
303 |
311 |
|
2ヶ月 |
52 |
98 |
139 |
177 |
210 |
236 |
260 |
281 |
297 |
308 |
315 |
|
3ヶ月 |
73 |
115 |
154 |
188 |
218 |
244 |
267 |
287 |
302 |
312 |
319 |
|
4ヶ月 |
90 |
130 |
165 |
196 |
226 |
251 |
273 |
292 |
306 |
326 |
323 |
|
5ヶ月 |
105 |
141 |
173 |
204 |
233 |
257 |
278 |
296 |
310 |
320 |
325 |
|
6ヶ月 |
116 |
149 |
181 |
211 |
239 |
262 |
282 |
300 |
314 |
322 |
327 |
|
7ヶ月 |
124 |
157 |
188 |
217 |
244 |
266 |
286 |
301 |
316 |
324 |
329 |
|
8ヶ月 |
132 |
164 |
194 |
222 |
248 |
270 |
290 |
306 |
318 |
326 |
331 |
|
9ヶ月 |
139 |
170 |
199 |
226 |
252 |
274 |
292 |
308 |
320 |
328 |
333 |
|
10ヶ月 |
145 |
175 |
203 |
230 |
256 |
276 |
294 |
310 |
322 |
330 |
335 |
後遺障害慰謝料の金額
TFCCの後遺障害慰謝料の金額は、認定された後遺障害の等級によって異なります。
認定される可能性のある後遺障害は、以下の2種類です。
- 上肢の機能障害
上肢の機能障害とは、手首や前腕の運動機能に制限が残る場合です。
TFCC損傷が原因で手首を自由に動かせなくなった場合に認定されます。
等級は以下の2種類です。
10級10号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
12級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
- 末梢神経障害
末梢神経障害とは、関節を動かせないなどの機能制限には至っていないけれども痛みやしびれなどの症状が残った状態です。
認定される可能性のある等級は、以下の2種類です。
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
現実には「上肢の機能制限」の認定を受けられるケースは少数です。
「治療を受けたけれども痛みがとれない」レベルでは、認定を受けられるとしても末梢神経障害の12級または14級となるでしょう。
「重症で手術を行い、手首の関節を動かせなくなってしまった!」という場合に限り、上肢の機能制限でより高い等級認定を受けられる可能性があります。
少しでも多くの慰謝料を受け取るためには
TFCC損傷となった場合により高額な慰謝料を受け取るには、以下のような工夫をしてみてください。
MRIなどの画像によりしっかり症状の証明をする
交通事故の慰謝料は、後遺障害認定を受けられると大きくアップします。
また後遺障害の認定等級が上がると、その分後遺障害慰謝料が増額されます。
TFCC損傷では12級または14級となるケースが多数ですが、2つの等級の違いは「画像によって症状を証明できるか」です。
MRIなどの画像によってはっきりTFCC損傷を証明できれば12級の認定を受けられる可能性が高まります。
一方、画像による立証が不十分で「症状があるらしい」と思わせる程度であれば14級になります。
そこでまずは、しっかりMRIや造影検査を行い、TFCC損傷の症状を立証するよう努めましょう。
医師と綿密にコミュニケーションをとって適切な検査をしてもらい、症状を証明できる資料を用意することが重要です。
適切な後遺障害診断書を作成してもらう
後遺障害認定を受ける際「後遺障害診断書」の内容が極めて重要となります。
後遺障害診断書とは、後遺障害認定のため、特別に医師に作成してもらう診断書です。
後遺障害診断書に書いてある内容次第で認定を受けられるかどうかや等級が変わってくるケースも多々あります。
交通事故に詳しくない医師に適当に後遺障害診断書を書いてもらうと、等級認定されるべきケースでも非該当にされてしまう可能性があります。
後遺障害認定の請求をする際には、医師に後遺障害診断書の重要性を伝えて適切な内容の書面を作成してもらいましょう。
そのためには、日頃から医師としっかりコミュニケーションを取り合うことが大切です。
通院の経過にも注意が必要
後遺障害認定の際、通院経過が重要視される可能性があります。
たとえば診察の際に「症状が和らぎました」「最近は痛くないです」などと言うと、その時点で症状が「完治した」と思われるでしょう。
後に後遺障害等級認定の申請をしても「この時点完治しているので後遺障害は残っていない」と判断されるおそれが高まります。
また通院頻度があまりに低い場合にも「病院に通う必要がないなら、完治したのだろう」と思われる可能性があります。
治療中は、完治と受け止められるような発言をせず、症状固定するまで定期的に通院を継続しましょう。
特にTFCC損傷は、手首を動かさない限り痛みがない方が多数です。
「今痛くない」からといって完治したわけではないので、安易な言動によって誤解を生まないように注意してください。
弁護士に相談する
交通事故でなるべく高額な慰謝料を獲得するには、弁護士によるサポートが必要です。
特にTFCC損傷の場合、入通院期間も長くなりがちですし、後遺障害が残る可能性も十分にあります。
後遺障害認定を受けるには、医師としっかりコミュニケーションをとりあって適切な資料を揃え、積極的な証明活動が必要となるでしょう。
素人である被害者が自分1人で対応すると、本来なら後遺障害認定されるケースでも認定されなくなってしまうおそれがあります。
また被害者が自分で示談交渉する場合と弁護士が代理する場合では、慰謝料の計算基準が異なります。
被害者が示談交渉すると、低額な「保険会社基準」によって慰謝料額が計算されて減額されてしまいます。
保険会社基準と弁護士が利用する弁護士基準とでは、2分の1~3分の1程度の開きがあります。
つまり、弁護士に依頼するだけで慰謝料が2倍~3倍程度になる可能性があるのです。
参考までに後遺障害12級、14級の後遺障害慰謝料の差額を示します。
【後遺障害慰謝料の相場】
|
弁護士基準 |
保険会社基準(相場) |
12級 |
290万 |
100万 |
14級 |
110万 |
40万 |
交通事故では自分で示談交渉をすると、手間もかかりストレスも強くなるのに慰謝料を減額されるので、「弁護士に依頼しないと損をする」といっても過言ではありません。
高額な慰謝料獲得のため、必ず交通事故に詳しい弁護士に依頼しましょう。
まとめ
弁護士に依頼するとこんなにも慰謝料に違いが出るなんて知らなかったよ!
TFCC損傷となった場合、入通院慰謝料だけではなく後遺障害慰謝料を請求できる可能性があります。
なるべく高額な支払いを受けるため、より高い等級の後遺障害認定を受けましょう。
適切な等級の後遺障害認定を受け、弁護士基準で高額な慰謝料を払ってもらうため、交通事故に積極的に取り組んでいる弁護士へ相談してみてください。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。