後遺障害6級に認定されると、どの位の慰謝料を受け取ることができるの?
今回の記事では後遺障害6級と認定された場合の慰謝料の相場や計算方法、より慰謝料を多く受け取る方法について、詳しく解説するね。
交通事故の後遺障害の中でも「後遺障害6級」はかなりの重症です。
日常生活にも仕事にも大きな支障が発生するでしょう。
そこでこの記事では後遺障害6級に認定されるのはどういった症状なのか、慰謝料の相場や増額する方法について解説します。
交通事故で重傷を負い、重い後遺症が残ってしまった方はぜひ参考にしてみてください。
目次
後遺障害6級の主な症状
その他の症状についてもチェックしていこう。
交通事故の後遺障害とは、事故の影響で心身に後遺症が残り完治しないときに認定される各種の症状です。
後遺障害認定を受けられたら「後遺障害慰謝料」という高額な慰謝料が支払われるほか「後遺障害逸失利益」も請求できて、賠償金が大きくアップします。
後遺障害には1級から14級までの等級がもうけられており、1級がもっとも高い(重症)の等級です。
6級は上から6番目に重い等級なので、交通事故の後遺障害の中ではかなり「重症」の部類といえるでしょう。
後遺障害6級に認定される症状
後遺障害6級に認定されるのは、以下の8種類の症状です。
- 1号 両眼の視力が0.1以下になったもの
両眼の視力が0.1以下になると6級が認定されます。
メガネやコンタクトを使って矯正しても0.1以下になる場合であり、矯正可能であれば後遺障害になりません。 - 2号 咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの
咀嚼機能とはものを噛み砕いて飲み込む力です。
言語機能とは発音する能力です。
おかゆや豆腐などの柔らかいものしか食べられなくなった場合(咀嚼機能の著しい障害)、または4種類の発音方法のうち2種類の発音ができなくなったとき(言語機能の著しい障害)に6級が認定されます。 - 3号 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
両耳の聴力が低下して、耳に接しないと人の大声も理解できなくなった場合には6級となります。
聴力は、純音聴力検査と明瞭度検査によって測定します。 - 4号 片耳の聴力を全く失い、他方の耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
片方の耳が完全に聞こえなくなり、他方の耳の聴力も40センチメートル離れると人の普通の話し声を理解できなくなったら後遺障害6級が認定されます。 - 5号 脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの
脊柱とは背骨のことです。
事故の衝撃で手術などが必要になり、背骨が一定以上変形して可動域に制限が発生すると、6級が認定されます。 - 6号 片腕の3大関節中の2関節の用を廃したもの
腕の3大関節とは、肩関節、肘関節、手関節(手首の関節)です。
片腕について、これらの2つ以上の関節の機能が失われると6級が認定されます。
機能を失ったといえるのは、ほとんどまったく関節を動かせなくなったケースなどです。 - 7号 片脚の3大関節中の2関節の用を廃したもの
脚の3大関節とは、股関節、膝関節、足関節(足首の関節)です。
片脚について、これらのうち2つ以上の関節の機能が失われると6級が認定されます。 - 8号 片手の5の手指又はおや指を含み4の手指を失ったもの
片手について、5本の指すべて失った場合や親指を含む4本の指を失った場合です。
上記のいずれかに該当する場合、加害者の自賠責保険へ申請すると後遺障害6級の認定を受けられます。
まずは症状の内容と照らし合わせてチェックしてみてください。
後遺障害6級に認定してもらうためには
交通事故で何らかの後遺症が残ったとしても、必ず後遺障害認定されるとは限りません。
後遺障害認定は加害者の自賠責保険が行いますが、きちんと資料を提出して症状を証明しないと正式な認定は受けられないからです。
自分で対応すると、本当は後遺障害6級相当の症状が残っているのに認定してもらなかったり等級を下げられたりする可能性があり、注意が必要です。
後遺障害認定を受けるには、以下のように対応しましょう。
- 必要な検査を実施してもらう
後遺障害認定の審査では、「検査結果」の資料が非常に重視されます。
検査が足りていないと、それだけで非該当となる可能性が高くなります。
症状によっても必要な検査が異なりますので、まずはどういった検査が必要か確認しましょう。
そのうえで、医師に伝達して確実に実施してもらってください。 - 医師と密接なコミュニケーションをとる
後遺障害認定を受けるには、医師の協力が不可欠です。
治療中、医師と密接にコミュニケーションをとって症状を正確に理解してもらいましょう。
症状を誤解されるとカルテに間違った記載を残されて不利益を受ける可能性があります。 - 通院は症状固定時までしっかり行う
手術等を受けてしばらく経つと、リハビリなどの通院治療を開始するケースがあります。
通院時には「症状固定」するまで一定以上の頻度で真面目に病院に通うことが大切です。
途中で通院を放棄したり頻度があまりに少なかったりすると後遺障害認定を受けにくくなるので、注意しましょう。
弁護士に依頼する
後遺障害認定の手続きは、一般の方にはなじみのないものです。
うまく対応できなくて認定を受けられない方も少なくありません。
より確実に後遺障害認定してもらうには、弁護士に依頼するのがおすすめです。
弁護士が対応する場合、医師と連絡を取り合って後遺障害認定を受けやすい後遺障害診断書の書き方を伝えたり、必要な検査について被害者へアドバイスしたりしてくれます。
効果的な対処ができるので、結果的に高い等級の後遺障害認定を受けやすくなるでしょう。
自分でうまく手続きを進める自信がないなら、一度交通事故に詳しい弁護士に相談してみてください。
後遺障害6級で受け取れる慰謝料とは
交通事故で後遺障害6級が認定されると、以下のような慰謝料を受け取れます。
入通院慰謝料
入通院慰謝料は、被害者がけがをしたことによって受ける精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。
後遺障害が残らなくても受け取れます。
入通院した期間に応じて計算されるので、入通院治療にかかった期間が長くなると慰謝料額が増額されます。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料は、被害者に後遺障害が残ったことによる精神的苦痛に対し支払われる慰謝料です。
後遺障害認定の申請を行い「等級認定」を受けられたときにのみ受け取れます。
金額は認定された後遺障害の等級によって異なります。
後遺障害6級の場合、弁護士基準で1,180万円程度、自賠責基準の場合には498万円となります。
- 弁護士基準とは
弁護士基準とは、弁護士や裁判所が利用する法的な賠償金計算基準です。
交通事故には複数の賠償金計算基準がありますが、中でも弁護士基準はもっとも高額になります。 - 自賠責基準とは
自賠責基準とは、自賠責保険が賠償金を算定するときに使われる基準です。
自賠責から保険金を受け取るときには自賠責基準に沿った金額となります。
交通事故の賠償金計算基準の中で、自賠責基準がもっとも低額です。
慰謝料を増額するには
後遺障害6級になったとき、なるべく高額な慰謝料を受け取るためにはどう対応すれば良いのでしょうか?
弁護士基準で計算する
慰謝料を増額したいなら、必ず示談交渉を弁護士に依頼しましょう。
弁護士が対応する場合には、高額な「弁護士基準」で慰謝料が計算されるからです。
被害者が自分で交渉すると、弁護士基準よりずっと低い「任意保険基準」で計算されてしまいます。
任意保険基準の場合、弁護士基準の2分の1以下になってしまうケースも少なくありません。
後遺障害6級の場合、弁護士基準なら後遺障害慰謝料は1,180万円程度が相場ですが、任意保険基準の場合には600万円程度にしかならないのが標準です。
つまり自分で示談交渉をして保険会社から600万円程度の後遺障害慰謝料を提示されたとき、弁護士に依頼するだけで1,180万円程度にまで増額してもらえるのです。
後遺障害慰謝料だけではなく入通院慰謝料も1.8倍程度に増額される例が多々あります。
自分で交渉すると損になるといっても過言ではないので、必ず弁護士に依頼しましょう。
慰謝料額は計算基準によって異なる
【後遺障害6級の後遺障害慰謝料】
- 自賠責基準…498万円
- 任意保険基準…600万円程度
- 弁護士基準…1,180万円程度
【入通院慰謝料】
- 自賠責基準
治療日数×4,200円
たとえば6か月180日治療を受けた場合には756,000円となります。
ただし通院日数が少ない場合「実通院日数×2×4,200円」とされます。 - 任意保険基準
自賠責基準より多少高い程度に設定されている例が多数です。 - 弁護士基準
以下の表を使って算定します。
入院 |
|
1ヶ月 |
2ヶ月 |
3ヶ月 |
4ヶ月 |
5ヶ月 |
6ヶ月 |
7ヶ月 |
8ヶ月 |
9ヶ月 |
10ヶ月 |
|
通院 |
53 |
101 |
145 |
184 |
217 |
244 |
266 |
284 |
297 |
306 |
||
1ヶ月 |
28 |
77 |
122 |
162 |
199 |
228 |
252 |
274 |
291 |
303 |
311 |
|
2ヶ月 |
52 |
98 |
139 |
177 |
210 |
236 |
260 |
281 |
297 |
308 |
315 |
|
3ヶ月 |
73 |
115 |
154 |
188 |
218 |
244 |
267 |
287 |
302 |
312 |
319 |
|
4ヶ月 |
90 |
130 |
165 |
196 |
226 |
251 |
273 |
292 |
306 |
326 |
323 |
|
5ヶ月 |
105 |
141 |
173 |
204 |
233 |
257 |
278 |
296 |
310 |
320 |
325 |
|
6ヶ月 |
116 |
149 |
181 |
211 |
239 |
262 |
282 |
300 |
314 |
322 |
327 |
|
7ヶ月 |
124 |
157 |
188 |
217 |
244 |
266 |
286 |
301 |
316 |
324 |
329 |
|
8ヶ月 |
132 |
164 |
194 |
222 |
248 |
270 |
290 |
306 |
318 |
326 |
331 |
|
9ヶ月 |
139 |
170 |
199 |
226 |
252 |
274 |
292 |
308 |
320 |
328 |
333 |
|
10ヶ月 |
145 |
175 |
203 |
230 |
256 |
276 |
294 |
310 |
322 |
330 |
335 |
通院6か月(180日)であれば116万円、1か月入院・5か月通院なら141万円、2か月入院・4か月通院なら165万円となります。
後遺障害慰謝料も入通院慰謝料も弁護士基準をあてはめると大きく増額されるので、まずは弁護士に示談交渉を依頼しましょう。
適正な過失割合を当てはめてもらう
交通事故の慰謝料算定の際「過失割合」が非常に重要です。
被害者の過失割合を大きくされると、その分慰謝料を減額されてしまうからです。
示談交渉の場面では、加害者の任意保険会社が過失割合を提示してくるケースが多数です。
そんなとき、言いなりになってしまうのではなく、過去の判例などを参照して適正な過失割合を主張して当てはめてもらいましょう。
自分で対応するのが難しければ、弁護士に依頼すると適正な過失割合を算定して任意保険会社と交渉してくれます。
過失割合を適正にするためにも、弁護士に依頼してみてください。
より高い後遺障害等級を獲得する
後遺障害6級の症状があるケースでも、状況によってはさらに高い等級認定を受けられる可能性があります。
後遺障害には「併合」という制度があり、異なる系列(種類)の症状が2つ以上あると後遺障害等級を繰り上げてもらえるからです。
一方、きちんと症状を証明できなければ、本来は6級相当の症状があるのに低い等級にされてしまうケースもあります。
後遺障害の慰謝料は等級が高いほど高額になるので、慰謝料を増額したいならより高い等級の後遺障害認定を目指しましょう。
後遺障害認定制度について正確な知識を持ち、認定を受けるための適切な行動をとることが重要です。
1人で対応するのは不安に感じる人も多いため、交通事故に詳しい弁護士に依頼しながら進めるようにしましょう。
まとめ
弁護士に依頼するだけでこんなにも慰謝料に差が出るなんて知らなかったよ!
弁護士に依頼する事で、適正な過失割合を当てはめてもらったり、被害者側の任意保険会社との交渉をお願いしたり、後遺障害認定取得の手続きなど、様々な点でサポートしてもらう事ができるよ。
交通事故で後遺症が残ったら、まずは症状固定するまでしっかりと治療を継続することが大切です。
治療期間が終了したら、検査結果や後遺障害診断書等の資料を揃えて後遺障害等級認定を申請してください。
高い等級の認定を受ければ、その分高額な慰謝料を獲得できます。
交通事故の後遺障害の中でも、「6級」は重症の部類です。
辛い症状にお悩みであれば、交通事故に詳しい弁護士のサポートを受けて後遺障害認定を受けるところから始めましょう。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。