これらの慰謝料は、弁護士に依頼するかどうかで、金額が大きく変わってくるよ。
今回の記事では、後遺障害5級の症状や、慰謝料の相場、増額するための方法について、詳しく見ていこう。
交通事故の後遺障害は1級から14級までの14段階に分類されます。
後遺障害5級は上から5番目に重い障害なので、相当「重症」なケースといえるでしょう。
後遺障害5級に認定されたとき、慰謝料の相場はどのくらいになるのでしょうか?
今回は後遺障害5級に認定される症状や慰謝料の相場、できるだけ高額な賠償金を支払ってもらう方法を解説します。
交通事故で重傷を負った方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
後遺障害5級に認定される症状は重篤
交通事故で後遺障害認定を受けるには、加害者の自賠責保険へ申請して定められた症状を証明しなければなりません。
後遺障害5級に認定されるのは、以下の8種類の症状です。
後遺障害5級に認定される8種類の症状
- 1号 片眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの
片眼が失明して他方の眼の視力が0.1以下になった場合です。
失明には眼球そのものを失った場合も含まれます。
このときの「視力」についてはメガネやコンタクトレンズで矯正した後のものを基準とします。
矯正可能な場合、後遺障害として認定されません。 - 2号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
脳障害や脊髄損傷などで神経系にダメージを受けて、身体を動かせなくなった場合や精神障害が残った場合です。
一人で手順通りに仕事を完成するのが難しく、簡単な単純労働しかできなくなった場合に5級が認定されます。 - 3号 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
交通事故で内臓機能を損傷し、特に簡単な単純労働しかできなくなった場合に5級が認定されます。
5級が認定される内臓機能の障害は、主に泌尿器系の症状です。 - 4号 1上肢を手関節以上で失ったもの
片腕を手首の関節から肘関節の部分で切断してしまった場合に認定されます。
事故そのものによる切断だけではなく、手術によって切断せざるを得なかったケースも含みます。 - 5号 1下肢を足関節以上で失ったもの
片脚を足首の関節から膝関節の部分で切断してしまった場合に認定されます。
腕のケースと同様、事故そのものの影響だけではなく手術によって切断せざるを得なかったケースも含まれます。 - 6号 1上肢の用の全廃したもの
片腕の機能を失った場合に認定されます。
機能を失ったといえるのは、関節を全く動かせなくなった場合や関節可動域が10%以下に制限されてしまった場合です。 - 7号 1下肢の用を全廃したもの
片脚の機能を失った場合に認定されます。
腕のケースと同様、完全麻痺または関節可動域が10%以下に制限された場合が該当します。 - 8号 両足の足指の全部を失ったもの
両足の足指をすべて欠損してしまったら、後遺障害5級として認定されます。
交通事故後、上記のいずれかに該当する症状が残ったら後遺障害5級が認定される可能性が高いといえるでしょう。
自賠責保険へ後遺障害等級認定の申請をして、まずは5級の認定を目指しましょう。
後遺障害5級の認定を受けられなかった場合の対処方法
後遺障害5級は諦めるしかないのかな?
異議申し立てを行うには、前回とは違う形で再申請を行う必要があるんだよ。
自賠責へ後遺障害等級認定の請求をしても、期待どおりに認定されるとは限りません。
等級を下げられてしまうケースが多々あります。
納得できない場合、以下のように対応しましょう。
異議申立を行う
交通事故の後遺障害認定結果に対しては「異議申立」が可能です。
異議申立とは、自賠責保険に対して再審査を求める手続きです。
1度目よりも詳細な資料を提出し適切な主張をすれば、判断が変更されて後遺障害認定を受けられたり等級を上げてもらえたりする可能性があります。
被害者請求に切り替える
一度目の後遺障害認定請求の際に「事前認定」の手続きを利用した方は、異議申立の際に「被害者請求」に切り替えましょう。
事前認定とは、相手の任意保険会社に後遺障害認定の手続きを代行してもらう方法です。
この場合、自分で積極的に資料提出や主張ができないので、状況を正確に伝えられない可能性が高くなります。
被害者請求は、被害者自身が自賠責保険へ後遺障害等級認定の申請をする手続きです。
こちらであれば被害者が直接自賠責へ資料を提出したり状況を説明したりできるので、より正確に等級認定してもらいやすくなる傾向があります。
1回目のときには任意保険会社に手続きをお願いした場合でも、異議申立の際には被害者請求への切り替えが可能です。
自分で手続きを進めて適切な等級認定を目指しましょう。
弁護士に依頼する
後遺障害認定に対する異議申立をするときには、弁護士に依頼するよう強くお勧めします。
被害者請求に切り替えるとしても、素人ではどういった資料や主張が有効か、わかりにくいからです。
必要書類を集めるのにせいいっぱいで、効果的な主張や立証ができないまま手続きが終わってしまい「結果は1回目と同じ」といった事態に陥ってしまうでしょう。
被害者請求は、後遺障害等級認定に詳しい弁護士に依頼してこそ効果を発揮する手続きです。
5級相当の症状が残っているのに等級を下げられて納得できない方は、まずは交通事故に積極的に取り組んでいる弁護士に相談してみてください。
自賠責保険・共済紛争処理機構を利用する
自賠責保険に異議申立をしても等級が変わらなかった場合には、自賠責保険・共済紛争処理機構の利用を検討しましょう。
これは自賠責保険や共済との紛争を解決するためのADR(裁判害の紛争処理機関)です。
自賠責保険・共済紛争処理機構は自賠責とは異なる機関なので、自賠責で異議申立が認められなかったケースでも判断を変更してもらえる可能性があります。
裁判する
異議申立、自賠責保険・紛争処理機関を利用しても等級が変わらなかったとしても、最終的に裁判をすれば適切に等級を認定してもらえます。
裁判所は自賠責や紛争処理機構による判断結果に拘束されず、裁判官が適正な等級を判定するからです。
現実に後遺障害等級が争われて裁判所が自賠責より高い等級を認定した事例は少なくありません。
ただし裁判を有利に進めるには弁護士によるサポートが必須となるでしょう。
裁判を検討する際にも、まずは交通事故に詳しい弁護士に相談してみてください。
後遺障害5級で受け取れる慰謝料の相場
後遺障害5級が認定されたら「入通院慰謝料」と「後遺障害慰謝料」の2種類の慰謝料を受け取れます。
交通事故の慰謝料計算基準には3種類があるので、以下では種類ごとの慰謝料の相場を確認しましょう。
自賠責基準
自賠責基準とは、自賠責保険が保険金を計算するときに適用する基準です。
入通院慰謝料について
入通院慰謝料は以下のようにして計算します。
4,200円×治療期間に対応する日数
ただし実治療日数が少ない場合には「4,200円×実治療日数×2」となります。
たとえば3か月入院して6か月通院した場合(治療日数270日)、4,200円×270日=1,134,000円となります。
入通院の日数が100日であれば、4,200円×200日=84万円です。
後遺障害慰謝料について
自賠責基準による5級の後遺障害慰謝料は、599万円です。
弁護士基準
弁護士基準とは、弁護士や裁判所が利用する法的な基準です。
入通院慰謝料について
弁護士基準による入通院慰謝料は、以下のとおりです。
入院 |
|
1ヶ月 |
2ヶ月 |
3ヶ月 |
4ヶ月 |
5ヶ月 |
6ヶ月 |
7ヶ月 |
8ヶ月 |
9ヶ月 |
10ヶ月 |
|
通院 |
53 |
101 |
145 |
184 |
217 |
244 |
266 |
284 |
297 |
306 |
||
1ヶ月 |
28 |
77 |
122 |
162 |
199 |
228 |
252 |
274 |
291 |
303 |
311 |
|
2ヶ月 |
52 |
98 |
139 |
177 |
210 |
236 |
260 |
281 |
297 |
308 |
315 |
|
3ヶ月 |
73 |
115 |
154 |
188 |
218 |
244 |
267 |
287 |
302 |
312 |
319 |
|
4ヶ月 |
90 |
130 |
165 |
196 |
226 |
251 |
273 |
292 |
306 |
326 |
323 |
|
5ヶ月 |
105 |
141 |
173 |
204 |
233 |
257 |
278 |
296 |
310 |
320 |
325 |
|
6ヶ月 |
116 |
149 |
181 |
211 |
239 |
262 |
282 |
300 |
314 |
322 |
327 |
|
7ヶ月 |
124 |
157 |
188 |
217 |
244 |
266 |
286 |
301 |
316 |
324 |
329 |
|
8ヶ月 |
132 |
164 |
194 |
222 |
248 |
270 |
290 |
306 |
318 |
326 |
331 |
|
9ヶ月 |
139 |
170 |
199 |
226 |
252 |
274 |
292 |
308 |
320 |
328 |
333 |
|
10ヶ月 |
145 |
175 |
203 |
230 |
256 |
276 |
294 |
310 |
322 |
330 |
335 |
弁護士基準の場合、通院時よりも入院時の金額の方が高額になります。
たとえば3か月入院、6か月通院の場合には211万円で、自賠責基準の2倍程度になります。
後遺障害慰謝料について
弁護士基準による後遺障害5級の慰謝料額は1,400万円です。
自賠責基準の2.3倍程度の金額になります。
任意保険基準
任意保険基準は、任意保険会社が保険金を計算するときに適用する基準です。
各保険会社が独自に定めているので、一律の数値はありません。
相場として、自賠責基準より多少高い程度に設定されているケースが多数となります。
たとえば後遺障害5級の後遺障害慰謝料なら、700万円前後とされる会社が多いでしょう。
弁護士基準に比べると2分の1くらいに減額される計算です。
交通事故の被害者が適正な慰謝料額を獲得するには「弁護士基準」で計算する必要があるといえるでしょう。
自分で示談交渉をすると任意保険基準をあてはめられて慰謝料額を減額されるおそれが高いので、弁護士に依頼してください。
後遺障害5級で慰謝料謝料を増額する方法
弁護士に依頼すると、適正な後遺障害等級を取得したり、過失割合を適正な物にしてもらう事ができるんだ。
交通事故で後遺障害が残ったとき、なるべく慰謝料額を増額するにはどうすれば良いのでしょうか?
適正な等級認定を受ける
まずは適正な等級認定を受けることが必須です。
交通事故では、後遺障害認定を受けると高額な「後遺障害慰謝料」が払われます。
仕事をしていた方は、さらに高額な「後遺障害逸失利益」も受け取れます。
つまり後遺障害認定を受けられたら一気に慰謝料や賠償金がアップする仕組みになっているといえるでしょう。
慰謝料も逸失利益も「等級」が上がるほど高額になるため、できるだけ高い等級を認定してもらう必要があります。
後遺障害認定を受けるには、必要な検査を受けて医師には適切な内容の後遺障害診断書を書いてもらわねばなりません。
弁護士に依頼して、医師とも連携しながら対応しましょう。
賠償金を正しく計算する
交通事故で適正な慰謝料を獲得するには、正しい知識が必須です。
たとえば相手の保険会社から慰謝料額の提示を受けたとき、知識がなかったらそれが妥当な金額なのか判断しにくいでしょう。
相場より低くされていても気づかず合意してしまうかもしれません。
なるべく高額な慰謝料、賠償金を獲得するには、交通事故の賠償金計算に関する詳細で正確な知識が必須です。
素人ではどうしても知識や経験が不足しがちなので、迷ったときには弁護士に相談してみてください。
過失割合を正しく算定する
交通事故で慰謝料を計算するとき「過失割合」が極めて重要です。
被害者の過失割合が大きくなると、その分過失相殺されて受け取れる慰謝料額を減らされてしまうからです。
被害者が自分で交渉すると相手の保険会社から不当に高い過失割合をあてはめられて慰謝料を減額されるケースが少なくありません。
過失割合に納得できない場合、弁護士に相談して適切な割合を確認しましょう。
弁護士基準を適用する
交通事故の慰謝料額は、弁護士基準と任意保険基準で大きく異なります。
より高額な慰謝料を受け取るには弁護士基準をあてはめなければなりません。
ただ被害者が自分で交渉しても弁護士基準で計算してもらうのは困難です。
弁護士に依頼するだけで弁護士基準が適用されて賠償金が大きくアップするので、示談交渉の際には必ず弁護士の力を頼りましょう。
まとめ
後遺障害5級が認定されるほどの重症なら、必ず後遺障害等級認定を受けて適切な慰謝料や逸失利益の支払いを受けましょう。
自分で対応すると認定等級を下げられたり慰謝料を減額されたりして不利益を受ける可能性が高まります。
必ず弁護士に相談・依頼して被害者としての権利を守ってもらいましょう。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。