交差点での交通事故の場合、過失割合はどのように決まるの?
今回の記事では、交差点での事故による過失割合をケースごとにチェックしていこう!
交差点では交通事故が頻繁に発生します。
もしも車を運転していて交差点で事故に巻き込まれたら、お互いの過失割合はどのくらいになるのでしょうか?
こちらの過失割合を高くされると相手から支払われる賠償金の金額を大きく減額されてしまう可能性があるので、注意が必要です。
示談交渉に備えて、正しい知識をもっておきましょう。
今回は交差点の交通事故における基本の過失割合や相手に請求できる慰謝料などの賠償金について、パターン別にわかりやすく解説します。
事故に遭われた方はぜひ参考にしてみてください!
目次
直進車同士の出会い頭の交通事故における過失割合(信号機あり)
一方が黄色信号の場合や、赤信号同士で事故が起きてしまった場合の過失割合も見てみよう。
まずは信号機のある交差点で、直進車同士が出会い頭で衝突して交通事故が起こった場合の過失割合を確認しましょう。
赤信号と青信号
一方が赤、他方が青信号の場合、赤信号車の過失割合が100%となります。
道路交通法上、信号機による指示には絶対的に従わねばならないためです。
赤信号:青信号=100%:0%
黄信号と赤信号
一方が赤信号、一方が黄信号の場合、赤信号の車の過失割合が80%、黄信号の車の過失割合が20%となります。
赤信号:黄信号=80%:20%
どちらも赤信号
どちらも赤信号の場合、それぞれの過失割合が50%ずつとなります。
赤信号:赤信号=50%:50%
歩行者用の押しボタン式信号のある交差点
歩行者用の押しボタン式信号のある交差点で交通事故が起こる場合の交通事故のパターンです。
一方は車両用信号機の色が赤で進入、他方は歩行者の押しボタン式信号の色が青で進入して交通事故が起こった場合、お互いの過失割合は以下の通りです。
車両用信号機が赤:押しボタン式信号機が青=70%:30%
右折車と直進車の交通事故における過失割合(信号機あり)
交差点では、一方が右折しようとしているときに直進車と接触してしまう交通事故もよく発生しています。
信号機のある交差点で直進車と右折車が接触した場合のお互いの過失割合をみてみましょう。
直進車 |
右折車 |
直進車の過失割合 |
右折車の過失割合 |
青 |
青 |
80% |
20% |
黄 |
黄 |
40% |
60% |
黄 |
青信号で交差点に入り、途中で黄色に変わった |
70% |
30% |
赤 |
赤 |
50% |
50% |
赤 |
青信号で交差点に進入し、途中で赤信号に変わった |
90% |
10% |
赤 |
黄信号で交差点に進入し、途中で赤信号に変わった |
70% |
30% |
赤 |
右折の青矢印信号 |
100% |
0% |
どちらも青信号
どちらの信号機の色も青の場合、右折車の過失割合が80%になります。
道路交通法上、右折車と直進車では直進車が優先する決まりになっているためです。
右折車:直進車=80%:20%
直進車が黄信号
直進車が黄信号の場合、右折車の信号機の色によってお互いの過失割合が変わります。
右折車も黄信号だった場合、右折車の過失割合は60%となります。
直進車(黄):右折車(黄)=40%:60%
右折車が青信号で交差点に入り、途中で黄色に変わった場合には右折車の過失割合が30%になります。
直進車(黄):右折車(青矢印→黄)=70%:30%
どちらも赤信号
右折車、直進車ともに赤信号で交差点に入った場合、どちらの過失割合も50%となります。
直進車:右折車=50%:50%
直進車が赤信号、右折車が青信号で進入して途中で赤になった
直進車が赤信号、右折車が青信号で交差点に入ったけれども途中で赤信号に変わってしまった場合、過失割合は以下の通りとなります。
直進車:右折車=90%:10%
直進車が赤信号、右折車が黄信号で進入して途中で赤になった
直進車が赤信号、右折車が黄信号で交差点に入ったけれども途中で赤信号に変わってしまった場合、過失割合は以下の通りです。
直進車:右折車=70%:30%
直進車が赤信号、右折車が右折の青矢印信号で進入した
直進車が赤信号、右折車が右折の青矢印信号で交差点に入った場合、お互いの過失割合は以下の通りです。
直進車:右折車=100%:0%
信号がない場合の交差点での直進車同士の交通事故による過失割合
次に信号機のない交差点上において、直進車同士が接触した交通事故における過失割合をみてみましょう。
原則的な過失割合
信号機のない交差点では「左側」を走行している車が優先されます。
またそれぞれが減速したかどうかでも過失割合が変わってきます。
左方車 |
右方車 |
左方車の過失割合 |
右方車の過失割合 |
同程度の速度 |
40% |
60% |
|
減速しない |
減速した |
60% |
40% |
減速した |
減速しない |
20% |
80% |
一方通行違反の場合
どちらか一方通行違反をしている場合、過失割合は以下のようになります。
一方通行違反車:違反していない車=20%:80%
一時停止がある交差点
一方に一時停止規制がある場合、一時停止義務のある側の過失割合が高めになります。
ただしこの場合にも、お互いが減速したかどうかで過失割合が変わってきます。
具体的には以下の表のとおりになるので、確認しましょう。
一時停止義務なし |
一時停止義務あり |
一時停止義務のない車 |
一時停止義務のある車 |
同程度の速度 |
20% |
80% |
|
減速しない |
減速した |
30% |
70% |
減速した |
減速しない |
10% |
90% |
|
一時停止してから進入した |
40% |
60% |
一方が優先道路だった場合
交差点では、一方が優先道路とされるケースもあります。
優先道路とは、道路標識などによって「優先道路」と指定されていたり、中央線や車両通行帯がもうけられていたりする道路をいいます。
一方が優先道路となっている場合には、優先道路を走行している車の過失割合が低くなります。
優先道路車:非優先道路車=10%:90%
道路幅が異なる場合
一方が明らかに広い道路の場合、基本的に広路を走っている車が優先されます。
ただしそれぞれが減速したかどうかによっても過失割合が変わってきます。
具体的な過失割合は以下の表のとおりとなるのでみてみましょう。
広路車 |
狭路車 |
広路車の過失割合 |
狭路者の過失割合 |
同程度の速度 |
30% |
70% |
|
減速しない |
減速した |
40% |
60% |
減速した |
減速しない |
20% |
80% |
過失割合の修正要素とは
以上のように、交差点で交通事故が起こった場合の過失割合は状況によって変わります。
ただし必ず上記の通りの過失割合になるとは限りません。
交通事故では個別事情により、過失割合が修正される可能性があるからです。
過失割合の数値を調整する事情を「修正要素」といいます。
たとえば以下のような事情があると、過失割合が加算されます。
- 飲酒運転
酒酔い運転や酒気帯び運転をしていて交通事故を起こしたら、過失割合が上がります。
酒気帯運転の場合に5~10%程度、酒酔い運転なら10~15%くらい加算される可能性があります。 - ながら運転
スマホやカーナビ、テレビなどを見ながら運転していると、過失割合が加算されます。 - 著しく不適切なハンドブレーキ操作
ハンドルやブレーキの操作が著しく不適切で高い危険を発生させると過失割合が加算されます。 - スピード違反
時速15キロメートル以上のスピード違反をすると5~10%程度、時速30キロメートル以上のスピード違反をすると10~15%程度、過失割合が加算される可能性があります。 - 大回り右折、早回り右折
右折の際、大回りしたり早回りしたりすると危険が生じるので、過失割合が加算される可能性があります。 - 相手が明らかに先に交差点に入っていた
相手が明らかに先に交差点に入っているのに無理やり進入していって事故を起こした場合には過失割合が加算される可能性があります。 - 右折の合図をしなかった
右折車がシグナルを出さずにいきなり右折すると、相手にとっては予想外となり事故の危険性が高まります。
そこで右折車の過失割合が加算される修正要素となります。
もしも事故の相手に上記のような行動があれば、修正要素を反映して相手の過失割合を加算しなければなりません。
そうでないとこちらの過失割合が高くなって損をしてしまいます。
保険会社と示談交渉するとき、相手が正しく修正要素を反映しているとは限りません。
示談交渉の際には、きちんと個別事情が反映されているかどうかチェックしましょう。
過失割合で慰謝料が大きく変わる!
過失割合が50%の場合、慰謝料を半分しか受け取れなくなってしまうから注意しよう。
交通事故で示談交渉するとき、みなさんはなんとなく「自分の過失割合を高くされたくない」と感じるかもしれません。
ただ過失割合によって具体的にどのくらい賠償金額が変わるのか、把握されていない方も多いでしょう。
実際、過失割合によって受け取れる慰謝料や賠償金額が思った以上に大幅に変わってくるので注意しなければなりません。
以下で過失割合による慰謝料や賠償金への影響について、解説します。
過失割合が高くなると慰謝料、賠償金が減額される
過失割合が高くなると、相手に請求できる慰謝料や賠償金額が減額されます。
減額される度合いは「過失割合の割合」に応じて変わります。
このような減額計算を法律上、「過失相殺」といいます。
たとえば過失割合が0%であれば全額の賠償金を受け取れますが、過失割合が10%になると90%しか払ってもらえません。
過失割合が50%にもなれば、賠償金は半額になってしまいます。
それでは治療費すら満足に払ってもらえない可能性もあるので注意しなければなりません。
過失相殺の具体例
【交差点で交通事故に遭い、治療費や休業損害、慰謝料などで合計800万円の損害が発生したケース】
この場合、被害者の過失割合が0%であれば800万円全額払ってもらえます。
しかし過失割合が20%になれば、2割減額した640万円しか払ってもらえません。
過失割合が40%になると、たった480万円になってしまいます。
交通事故では慰謝料の金額と同じくらい過失割合が重要なポイントとなるので、納得できないなら妥協せずに弁護士に相談しましょう。
適正な過失割合をあてはめるために
交通事故で適正な過失割合をあてはめるには、法律の専門知識が必要です。
自分では保険会社からの提示額が適正かわからない方も多いでしょう。
そんなときには弁護士に相談してみてください。
弁護士であれば修正要素も加味して正しい過失割合を算定してくれますし、保険会社との示談交渉も任せられます。
弁護士が対応すると過失割合が適正な数値となり、慰謝料などの賠償金額も大幅にアップする例も少なくありません。
交差点の交通事故でお悩みの方がおられましたら、まずは交通事故に積極的に取り組んでいる弁護士に相談してみましょう。
福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、弁護士として約10年間活動。うち7年間は独立開業して事務所の運営を行う。
実務においては交通事故案件を多数担当し、示談交渉のみならず訴訟案件も含め、多くの事件に関与し解決。
現在はライターとして、法律関係の記事を執筆している。
■ご覧のみなさまへのメッセージ:
交通事故に遭うと、今までのように仕事を続けられなくなったり相手の保険会社の言い分に納得できなかったりして、被害者の方はさまざまなストレスを抱えておられると思います。
そんなとき、助けになるのは正確な法律知識とサポートしてくれる専門家です。まずは交通事故の賠償金計算方法や示談交渉の流れなどの基本知識を身に付けて、相手と対等に交渉できるようになりましょう。
お一人で悩んでいるとどんどん精神的にも追い詰められてしまいます。専門家に話を聞いてもらうだけで楽になることも多いので、悩んでおられるなら一度弁護士に相談してみると良いと思いますよ。